区分マンション投資、理事会活動の記録

タイル張り仕上げ改修工事の概要

タイル張り仕上げの改修方法をまとめました。  
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タイル施工に関する用語
〇裏あし(back feet)
・モルタルなどとの接着をよくするため,タイルの裏面に付けたリブ又は凹凸。
・接着力は素材の性質によって決まるが、裏足があると見かけ上(=物理的な)の接着力が上がるので、多くのタイルに裏足がついている。
 とくに外壁につかうタイルは、逆ハ型の蟻になった裏足をもち、タイルの大きさによって裏足の深さが決まっている。
・屋外壁に使用する場合、セメントモルタルによるタイル後張り工法又はタイル先付けプレキャストコンクリート工法で施工するタイルには,裏あしがなくてはならない。なお,有機系接着剤によるタイル後張り工法で施工するタイルには,裏あしがなくてもよい。
 
〇化粧目地
・タイルの隙間をモルタルでつぶす普通の目地。
 
〇ひび割れ誘発目地
・ひび割れが発生する位置を計画的に定め、所定の間隔で断面欠損部を設けることによって、ひび割れを集中的に発生させることを目的とするもの
 
〇伸縮調整目地
・コンクリートやモルタル下地の乾燥収縮や湿潤膨張による動き、あるいは、タイルやモルタル等の熱膨張による動きを吸収し、タイルのひび割れ、剥離を防止するために設ける目地。
 
〇突きつけ目地(ねむり目地)
・板など同じ材料どうしを、隙間を開けずに突付けて施工するときの継ぎ目。
・コンクリートや下地モルタルの収縮や、タイルの熱膨張による動きが吸収できず、タイルのカケ・ひび割れ・剥離の原因になる。
 
〇深目地
・目地のモルタルを見せないようにした目地仕上げのこと。陰影がはっきり出るので、見た目が美しいとされる。
・コンクリート躯体や下地モルタルの収縮、タイルの熱膨張にともなう応力が裏あし部分に集中するため、裏あし破断による剥離が起こりやすくなる。
→目地深さは、タイル厚の1/2以下となるよう目地材を詰めるようにする。
・目地が深いために日頃の掃除がしにくい。
ひび割れ部改修工法
(1)タイルひび割れ部補修の注意点
 
・コンクリートのひび割れの影響でタイルがひび割れていて、放置すれば雨水が侵入する恐れがある場合は、タイルをはつり取り、躯体を補修した上で、タイルを張り替える。
・タイル表面のヘアークラック、非常に小さな角欠けのように、躯体に影響しない、漏水に繋がる事も無く下地にしっかりと接着されているような微細の不具合の場合は補修しないこともある。
 
(2)ひび割れ部の改修
 
1)目地部分のみの軽微なひび割れの場合
 
〇目地ひび割れ部改修工法
〇伸縮調整目地改修工法
 
2)ひび割れがタイルのみで構造体コンクリートに達していない場合
 
①タイルのひび割れ幅が0.2㎜以上の場合
〇タイル部分張替え工法
 
②タイルのひび割れ幅が0.2㎜以下の場合
・タイル表面のひび割れ幅が0.2mm未満であり、ひび割れ長さも小さい場合には経過観察とする場合もある。
 
③タイル張りを撤去しない場合の改修工法
〇樹脂注入工法
 
3)ひび割れが構造体コンクリートまで達している場合
 
①構造体コンクリートのひび割れ幅が0.2㎜以上の場合
〇樹脂注入工法 or Uカットシール材充填工法で躯体改修
→〇タイル部分張替え工法
 
②構造体コンクリートのひび割れ幅が0.2㎜未満の場合
〇タイル部分張替え工法
 
4)ひび割れ部分に漏水や錆汁あり(単なるひび割れでなく、劣化が進行していると考えられる場合)
 
・タイル張り仕上げ層の一部分を除去して、下地の劣化の有無を確認。
→鉄筋腐食やコンクリート躯体に問題がある場合は、コンクリート躯体の改修を含めた工事を実施する必要がある。
欠損部の改修工法
(1)欠損部の改修
 
・欠損しているタイルを接着モルタルごと剥がす
→躯体修繕や鉄筋の腐食箇所の修繕
→接着モルタルを再度塗布
→タイルを張替える
 
(2)改修方法の選択
 
1)かぶりコンクリートのはく落等がある場合
 
・躯体コンクリートを含めた改修が必要
 
2)下地モルタル層を含んだ欠損
 
〇タイル張替え工法
 
3)下地モルタル層を含まない欠損
 
〇タイル部分張替え工法
浮き部改修工法
(1)浮き部の改修
 
1)アンカーピンニング・注入併用工法
 
・タイル陶片の浮きが無く、目地モルタルが健全で、躯体コンクリートと下地モルタルの間に発生している浮きに対する改修工法。
・タイル自体の浮きでは無く下地モルタルの浮きの場合、電動ドリルでタイルの目地の交点に躯体コンクリートに貫通するまで穴を開け、エポキシ樹脂を注入後、ステンレスピンを挿入する。
・浮いたタイルが剥落しないようにエポキシ樹脂とステンレスピンで留めている。
・部分エポキシ樹脂注入、全面エポキシ樹脂抽入、全面ポリマーセメントスラリー注入などの方法がある。
 
2)補修対象の浮きタイル
 
・タイルの浮きの状態は、一タイルの一部分が浮いているもの、一タイル全体が浮いているもの、複数のタイルがまとまって浮いているもの、など様々ある。
・ポールハンマーという打診棒で空隙音を確認し、空隙音がしたタイルが補修対象となるが、空隙音がしなかったからといって付着力が健全であるとは言い切れず、近い将来浮きが発生することもありえる。
・内壁、腰より低い位置のタイルなど、落下による災害が無い部位での小面積の浮きの補修、無足場で簡単に直しに行ける部位での浮き補修は、コストダウン及び健全タイルへの浮き補修振動等による悪影響も考慮し、行わないという選択肢もある。
 
3)浮きタイル補修の注意点
 
・タイルは目地が健全であれば、小型の浮きは目地材を充填することで落下防止をしている。
→この意味で、タイル深目地(目地が入っていない)は推奨されない。
 目地はタイル落下防止に有効に働いているのが、補修時に目地にを傷つけてしまったり、健全な部分に悪影響を与えてしまう可能性があるので注意する。
・タイルの張替えではなく、ピンニング工法による補修の場合は、補修後の打診で空隙音がなくならない場合もある。
→浮き全体をエポキシ樹脂の注入により、空隙音が無くなるまで注入することは技術的に難しい。
→無理に注入すると浮きの範囲を広げかねない。基本的には落下防止が目的で注入する事に目的があるわけではない。
 
(2)改修方法の選択
 
1)通常レベルの打撃力によってはく落するおそれのある浮き
 
①タイル等除去
・ハンマー等で打撃し、タイル陶片orタイル張り仕上げ層をはく落させる。
②欠損部と同様に改修
・改修工法は欠損部改修工法と同様に選定する。
・”タイル部分張替え工法”or”タイル張替え工法”
 
2)躯体コンクリートの劣化(鉄筋腐食等)を含めての浮き
 
・タイル張り仕上げ層の改修だけでは対応できないため、躯体コンクリートを含めた改修工事が必要となる。
 
3)浮きがタイル陶片のみの場合
 
〇タイル部分張替え工法
〇注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入タイル固定工法
・特殊ドリルを使用して,タイル中央に穿孔し直接注入口付アンカーピンを打ち込み,注入用エポキシ樹脂を注入してタイルを固定する。タイルにあけた孔は化粧キャップor樹脂パテでふさぐ。
・大きなタイル陶片の浮きには有効であるが、モザイクタイルのように小さなタイルには、煩雑な作業となり効率的ではない。
 
4)下地モルタルを含むタイル張り仕上げ層が躯体コンクリートとの間ではく離し、浮いている場合
 
・一ヶ所の浮き面積の大きさ、および浮き改修の目的により浮き部改修工法の種類が異なる。
・アンカーピンを使用する工法で改修
→タイル陶片の浮きが無く、目地モルタルが健全で、躯体コンクリートと下地モルタルの間に発生している浮きに対する改修工法。
 
①一ヶ所の浮き面積が0.25㎡未満の場合
〇アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法
・アンカーピン及びエポキシ樹脂により浮き部を躯体に部分的に固定する工法。
・エポキシ樹脂は部分的にしか注入されないので、水分の侵入が懸念される場合には使用できない。
・アンカーピンニングの本数:16本/㎡(一般部)
※指定部分(見上げ面,ひさしのはな,まぐさ隅角部分等)は25本/㎡
・アンカーピン固定部には25ml/ヶ所のエポキシ樹脂が注入されている。
→もし、浮き代が1.0mmとするとアンカーピンの周囲に直径18㎝の円状に注入されていることになる。
・浮き部分にドリルで30㎜程度の深さ穿孔
→穿孔部にエポキシ樹脂注入
→アンカーピン挿入
→アンカーピン固定部のエポキシ樹脂の広がり,固着状況について全数テストハンマーの打診により確認を行う。
 
〇注入口付アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法
・仕上げ層の浮き部分をドリルで穿孔して注入口付アンカーピンを挿入し、その部分からエポキシ樹脂を注入して固定する。
・注入口付アンカーピンを打ち込んでからエポキシ樹脂を注入するため、アンカーピンにより既に躯体コンクリートに機械的固定がなされていることから、エポキシ樹脂注入による浮き拡大が回避できる。
・アンカーピンニングの本数:一般部分:9本/㎡、指定部分:16
・浮き部分にドリルで20㎜程度の深さ穿孔
→穿孔部に注入口付アンカーピン挿入
→注入口付アンカーピンの注入口からエポキシ樹脂を注入
→アンカーピン固定部のエポキシ樹脂の広がり,固着状況について全数テストハンマーの打診により確認を行う。
 
※アンカーピンとエポキシ樹脂を併用する効果
・浮き間隙に注入されたエポキシ樹脂はコンクリート躯体とタイル張り仕上げ層を必ずしも確実に接着するとは考えられない。
←エポキシ樹脂が注入される浮き間隙の表面は劣化しているはずであり、そこにエポキシ樹脂を注入しただけでは両者を確実に接着できるとは限らない。
→アンカーピンをタイル仕上げから躯体コンクリートまで架かるように挿入し、さらにエポキシ樹脂を注入した工法では、タイル張り仕上げ層と躯体コンクリートとが、穿孔穴内でアンカーピンとエポキシ樹脂とが一体化し固着することで固定化されるため、浮き間隙に充填したエポキシ樹脂には頼っていない。
→”アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法”および”注入口付アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法”は、タイル張り仕上げ層のはく落防止性を確保できる工法と考えられる。
 
②一ヶ所の浮き面積が0.25㎡以上の浮きの場合
・”はく落に対する安全性を確保する”、のか、”はく落に対する安全性および耐久性を確保する”、のかの目的により、選択する工法が異なる。
 
イ)はく落に対する安全性を確保するだけの場合
〇アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法
〇注入口付アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法
※浮き部分のはく落に対する安全性はアンカーピンニングにより確保する。
 
ロ)はく落に対する安全性に加え耐久性も確保したい場合
・全面に樹脂を注入
→アンカーピンニング部分のエポキシ樹脂の硬化を確認してから、全面注入のための穿孔を行い、エポキシ樹脂orポリマーセメントスラリーの全面注入を打診により確認しながら実施する。
Ⅰ)浮き代が1.0mm以下の場合
〇アンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法
・アンカーピン及びエポキシ樹脂により浮き部全体を躯体に固定する工法。
・アンカーピンニングの本数:一般部分:13本/㎡、指定部分:20
・注入口の箇所数:一般部分:12箇所/㎡、指定部分:20
・浮き部分にドリルでアンカーピン固定部の穿孔を行う。
→アンカーピン固定用穿孔部にエポキシ樹脂注入
→アンカーピン挿入
→残存浮き部分を確認し、マーキング、注入口の穿孔(約5mmの深さ)
→残存浮き部用注入口からエポキシ樹脂を浮き部全面に注入。下部から上部へ,片端部から他端部へ,打診しながら残存浮き部全面に注入する。
→注入材料の硬化後,アンカーピン固定部,注入部及びその周辺500mm程度にわたり打診により確認を行う。
 
〇注入口付アンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法
・アンカーピンニングの本数:一般部分:9本/㎡、指定部分:16
・注入口の箇所数:一般部分:9箇所/㎡、指定部分:16
 
Ⅱ)浮き代が1.0mmを超える場合
〇アンカーピンニング全面ポリマーセメントスラリー注入工法
〇注入口付アンカーピンニング全面ポリマーセメントスラリー注入工法
 
※ポリマーセメントスラリーの注入について
・ポリマーセメントスラリーの注入は難しく、あまり実施されていない。
・ポリマーセメントスラリーの注入をスムースにするためには事前の水湿し(水通し)やプライマーの注入が効果的。しかし、建物内部へ漏水しないように十分な注意が必要。
 
※エポキシ樹脂orポリマーセメントスラリーの全面注入の効果
・浮き間隙を接着させることではなく、浮き間隙にエポキシ樹脂orポリマーセメントスラリーを充填することにより浮き間隙をなくし、水の侵入を防ぐことにより、浮いていた部分の耐久性を回復させることにある。
 
5)はく落のおそれがある場合、改修対象とならなかった部分(健全な部分)の将来的な劣化対策
 
〇外壁複合改修構工法(ピンネット工法)
目地ひび割れ部改修工法、伸縮調整目地改修工法
(1)タイル目地の不具合
 
・タイル目地は、タイルとタイルを繋げて面でもたす、タイルの裏側に水が回りこむのを防ぐ、下地の伸縮を吸収する、などの働きを持つ。
・目地の詰めモルタルが取れたままだと、冬季にタイルの裏側に回った水が凍結し、タイルの剥落に繋がる可能性があり、取れた目地は埋め戻す必要がある。
・脆弱した目地モルタル、ひびが入った目地モルタルをどこまで補修するかは判断が難しい。若干目地痩せした程度の場合に薄塗りのように埋めなおしても、効果はあまり期待できない。
・無理に埋めても薄すぎて再剥離を生じたりする場合もあるので、明らかな目地欠損は補修し、それ以外の場合は、止水性を高める浸透型吸収防止剤のようなものを施工することにより、目地からの不具合を進行させない工法を採用する場合もある。
 
(2)タイル目地のひび割れの改修
 
●目地ひび割れ部改修工法
・躯体コンクリートのひび割れに関係なく、タイル張りの目地部分の劣化により目地自体にひび割れが生じたり、目地が部分的にはく落したり欠けたりしている場合。
 
イ)既存目地材をタイルに損傷を与えないように目地に沿って下地モルタル面までダイヤモンドカッターを入れてはつり取る。
ロ)目地材の調合
ハ)ゴムごてまたは目地ごてによる目地材充填
二)タイル面に付着した目地材等の清掃
ホ)直射日光や風雨があたらないようシート等で養生
 
(3)伸縮調整目
 
1)伸縮調整目地とは
 
・躯体のひび割れ誘発目地の位置(柱周辺、開口部周辺等)、各階ごとのコンクリート打継ぎ部、水平方向と垂直方向の伸縮調整目地で囲まれた面積が、10㎡以内となるような(3~4m毎)位置で、タイルの割り付けに合わせた位置に設ける。
・伸縮調整目地幅は10mm以上とし、その深さはコンクリートに達するまでとする。
・シーリング材は、変成シリコーン系またはポリサルファイド系とし、JISA 5758(建築用シーリング材)に適合するものを使用する。
 
2)伸縮調整目地改修工法
 
イ)目地位置に沿って,ダイヤモンドカッターを用いてコンクリート躯体表面まで切り込み,所定の形状になるようはつり器具を用いてはつり取る。
ロ)マスキングテープの張り付け
ハ)プライマーの塗布
二)シーリング材の充填
ホ)マスキングテープの除去、清掃
へ)シーリング材の養生
タイル張替え工法、タイル部分張替え工法
(1)タイルの張替え
 
〇タイル自体の浮き
・タイル裏の空隙が狭く、エポキシ樹脂を注入しても充填出来ない為、張り替え工法を実施する。
〇欠損部の補修
・劣化部を除去した後、新たにタイルを貼ったり、モルタルを塗ったりする。
 
(2)タイル張替え工法
 
1)タイル部分張替え工法
 
・下地モルタル層が健全な場合に適用。
・タイルの部分的な張替えで,既存の下地モルタル等がある場合及び1箇所当たりの張替え面積が0.25㎡程度以下の場合に適用する。
・張付けモルタル層が厚い場合にはポリマーセメントモルタルにより、モザイクタイル張りのように張付けモルタル層が薄い場合には有機系接着剤(JIS A 5557)により張付けられる。
 
●ポリマーセメントモルタルを使用する場合
 
イ)張替え下地面の水湿しor吸水調整材の塗布を行う。
ロ)張替え下地面とタイル裏面の両面にポリマーセメントモルタルを塗り付け,タイルを張り付ける。
ハ)タイル目地詰めは,タイル張り完了後,24時間以上の養生を行った後に目地ごて,ゴムごて等を用いて目地モルタルを塗り込む。
 
●外装タイル張り用有機系接着剤(弾性接着剤)を使用する場合
 
・弾性接着剤による接着層は、タイルと下地間に生ずるディファレンシャルムーブメントに追従できるため、タイルのはく離・はく落故障が少ないという特徴を有している。
・非吸水性下地や表面が平滑な下地にも適用可能であり、高強度コンクリートや押出成形セメント板へのタイル張り等にも適用範囲が拡大している。
・ポリマーセメントモルタル等で接着されたタイルがディファレンシャルムーブメントによるはく落や、躯体のひび割れによるタイル割れ、はく落した場合に、再発防止のため弾性接着剤が使用されている。
 
〇弾性接着剤
・硬化した接着剤自身がゴムのように外力にて変形し、外力がなくなると元に復元する性質を有している接着剤の総称として用いられている。
・市販されている弾性接着剤は引張り弾性率1.0~100(N/mm2)程度の物性値を有しているものが一般的。
・外装タイル張りでは主成分が変成シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系のものが販売されている。
・現在では、変成シリコーン樹脂の使用量が多く、変成シリコーンに一定の比率でエポキシ樹脂を配合することで、長期における耐久性を維持する構造となっている。
 
※JIS A5557:2006外装タイル張り用有機系接着剤
 
〇デメリット
・セメント系張付けモルタルに比べ、内部硬化が遅い為、次工程まで時間が掛かってしまう。
・弾性接着剤の厚みが確保できない為、タイルの高さ調整が困難。
・躯体精度がタイルの仕上り面精度に顕著にあらわれてしまう。特にコンクリート直張りでは仕上り面精度を確保することは非常に困難。
・セメント系に比べ、材料コストが高くなるケースがある。
 
〇工程
イ)張替え下地面を良く乾燥させる。
ロ)張替え下地面に接着剤を塗布し,タイルを張り付ける。
ハ)タイル目地詰めは,タイル張り完了後,24時間以上の養生を行った後に目地ごて,ゴムごて等を用いて目地モルタルを塗り込む。
 
2)タイル張替え工法
 
・下地モルタルまで含めた欠損の場合に採用する。
・基本的に新築のタイル張り工法と同様。
 
①下地モルタルを撤去
②コンクリート素地の処理
・目荒らし工法、高圧水洗処理など
③伸縮調整目地、ひび割れ誘発目地の施工
④タイル下地の下地モルタル塗り
⑤タイル張り
イ)セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り
〇密着張り
・下地に張付けモルタルを塗り付け、専用の振動工具(ヴィブラート)を用いてタイルをモルタル中に埋め込むように張り付ける工法。
・目地部に盛り上がったモルタルをこて押さえをして、目地も同時に仕上げることができる。目地深さが深くなる場合には、後目地施工を行う。
・塗厚:5~8mm
・1枚ずつ張り付ける。
・化粧目地は、タイル張付け後,24時間以上経過したのち,張付けモルタルの硬化を見計らって,目地詰めを行う。
〇改良積上げ張り
・精度の良い下地に対して、タイル裏面に張付けモルタルを塗り、タイルを張る工法。
・タイルは、下段より積上げて施工していくので、三丁掛・四丁掛等大形の外装タイルの施工に適している。
・塗厚:4~7mm
・1枚ずつ張り付ける。
〇改良圧着張り
・張付けモルタルを下地面に塗り、モルタルが固まらないうちにタイル側にも薄く張付けモルタルを塗りつけて張り付ける工法。
・下地とタイルの両側に張付けモルタルを塗り付けるため、ばらつきが少なく良好な接着強さが得られる。
・塗厚:下地側4~6mm、タイル側3~4mm
・1枚ずつ張り付ける。
〇マスク張り(25mm角を超え小口未満のタイル)
・タイルユニットの裏面に所定のマスクをかぶせてモルタルを塗り、下地面に張り付ける工法で、モザイクタイルに適用する。
・塗厚:3~4mm
・ユニットごとに張り付ける。
〇モザイクタイル張り (小口未満のタイル)
・下地に張付けモルタルを塗り、タイルユニットをたたき板等で叩き押さえて張り付ける工法で、モザイクタイルに適用する。
・塗厚:3~5mm
・ユニットごとに張り付ける。
 
ロ)有機系接着剤によるタイル張り
・弾性接着剤(変成シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系)を下地に塗り付けて、タイルを張り付けていく工法。
・接着剤は弾性があり、建物の動きを吸収できるため、剥離の危険性やひび割れが軽減できる。
・下地は精度良く、かつ乾燥していることが大切。
 
3)下地モルタルの塗替え工法
 
〇下地処理
・コンクリート壁面に高圧水洗処理で目荒しを行う場合は,水圧及び目荒し時間を適切に設定し,モルタルの接着に適した粗面に仕上げる。
 
〇下塗り
・下地処理ののち,下地の乾燥具合を見計らい,吸水調整材を全面に塗る。
・塗付けは,吸水調整材塗りを行った場合は乾燥後,塗残しのないよう全面に行う。
・下塗り後,モルタル表面のドライアウトを防止するために,水湿しを行う。
※ドライアウト
・下地や、タイル自体が急激に接着モルタルの水分を吸い込んだ結果、圧着強度を低下させたり、タイルが剥がれてしまったりする事。
・モルタルなどの凝結硬化過程で、水分が下地の急速な吸水や直射日光を受けて短時間に蒸発してしまう事で、正常な凝結硬化ができなくなる状態を言う。ドライアウトしたモルタルは、正常な凝結硬化をしていないため強度が低い。
・夏場の日差しの強い南面や水分を吸収しやすいALC版などにモルタルやタイルを貼り付ける際には特に注意が必要。また強風時にも注意する必要がある。
・ドライアウトの予防策として、下地に事前に散水する等といった処置が必要。
〇中塗り
 
〇上塗り
 
〇仕上げの種類
・金ごて:一般塗装下地,防水下地,外装壁タイル接着剤張り下地
・木ごて:セメントモルタル張りタイル下地
外壁複合改修構工法(ピンネット工法)
・繊維ネットとアンカーピンを併用し、既存モルタル層orタイル層を補強し、はく落を防止する構工法。
・既存仕上げ層の外側に、これと一体化した剥落防止層(繊維ネットと、ポリマーセメントモルタルや透明樹脂等により形成)を施工する。さらに既存仕上げ層、または、同層と上記の剥落防止層をアンカーピンで固定することで、施工範囲全体の剥落を防止することができる。
・既存仕上げ材の剥落を防止するとともに、耐久性にも優れた新規仕上げ層を形成することができる効果的な工法であり、従来のエポキシ樹脂注入によるモルタル剥落防止工法に比べて工事が簡素化でき、低コストで建物のリニューアルが実現できる。
・ピンによる仕上げ層のはく落防止と、ネット繊維による既存仕上げの改修層の補強効果がある。
・アンカーピンの使用方法については、既存仕上げ層と剥落防止層を合わせて躯体に固定する方法と、剥離している仕上げ層を固定し、その外側に剥落防止層を形成する方法、の2種類がある。
・浮き、はく離が広範囲にわたっている場合などに適用されている例が多い。
※躯体部分に劣化がある場合は、別途躯体の補修・補強等を行う必要がある。
 
●既存仕上げ層と剥落防止層を合わせて躯体に固定する方法における施工工程例
イ)下地調整
ロ)繊維ネットの施工
ハ)モルタル・樹脂の施工
二)アンカーピン挿入孔の穿孔
ホ)アンカーピンの挿入
へ)モルタル・樹脂の施工
ト)塗装仕上げ
改良工事
1)光触媒コーティング
 
・磁器タイルの改修で防汚効果に優れるコーティング材。
・下塗りに浸透性吸水防止材を組み合わせることで、タイル目地も長期にわたり保護する。
・塗装面への防汚仕上げには使用できない。
 
●特長
①防汚機能(セルフクリーニング機能)
・光触媒機能を持った酸化チタンを配合しており、塗膜表面に付着した有機物の汚れを分解する。
・超親水性の塗膜表面は、雨水により汚れを洗い流し、長期にわたり磁器タイルの美観を守る。
〇メカニズム
光が表面に照射
→活性酸素が光触媒コーティング材表面に発生
→汚れが活性酸素で分解され、付着力が弱くなる
→汚れが親水性の塗膜表面から雨により洗い流される。
 
②防カビ、防藻性
・カビ、藻を分解し、繁殖を抑制。
 
2)浸透性吸水防止材
 
●浸透性吸水防止剤がない場合
・タイル自体には経年による劣化はほとんどないが、モルタル目地部においては酸性雨や塩害、凍害等の影響により、徐々に劣化が進行する。
・特に目地部への雨水の吸水の影響は大きく、表面だけでなく内部まで水が浸入し、中性化やエフロレッセンス等の劣化現象を引き起こす。
 
●浸透性吸水防止材とは?
・陶磁器タイル面の特にモルタル目地部に浸透して、内部に強固な防水層を形成。
→中性化、凍害等を抑制し建物を保護
・浸透性吸水防止剤の防水層は、水をハジクこと(撥水)により吸水防止性を発揮する。
タイル改修の注意点
(1)タイル直張り工法の浮き補修の注意点
 
※国立研究開発法人 建築研究所 建築研究資料No.145号「建築物の長期使用に対応した外装・防水の品質確保ならびに維持保全手法の開発に関する研究」2013(平成25年)8月
 
1)タイル直張り工法について
 
●タイル直張り工法の採用状況
・下地となる構造体コンクリート仕上面の精度の確保のもと、モルタル下地の施工を無くすことで工期短縮とコスト削減等の効果が得られることから近年急速に普及した。
・マンション等の建物のタイル張りで主流になっている。
 
●断面構成
・コンクリート+張付け材料+タイル
 
●タイルの浮きのパターン
①タイル陶片の浮き
②張付けモルタルとコンクリート間の浮き
直張り工法の場合の浮きの発生は、上記②ではく離する割合が多い。
 
●改修工事
・モルタル下地が存在している場合と比較して、モルタル層の厚さ小さいため、モルタル下地があるタイル張り仕上外壁と同様な要領で改修工事が適応できないケースがある。
→浮き補修のためエポキシ樹脂注入を実施した場合には、張付けモルタル層の割れ、浮きの拡大、注入量の減少等が懸念される。
 
2)浮き補修の問題点
 
アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法は、下地モルタルからの浮きを想定した設計になっているが、近年のタイル張り工法は下地モルタルがない場合、または薄い場合が多いため、張付けモルタル層からの浮きにも対応できるように問題点についての検証、必要に応じてアンカーピンの改良が望まれる。
 
●アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法における問題点
・仕上層が薄いためにアンカーピン固定用のエポキシ樹脂を規定量注入すると、注入時の圧力によってタイルがせりあがってくることがある。
・注入材が浮きに充填されない、また圧力をかけて注入すると張付けモルタル層がはらみ出すことや、健全部までも”とも浮き”が生じるなどの不具合が生じることもある。
・タイルと躯体コンクリート間のモルタル層が張付けモルタルのみの場合など5mm以下と薄く、仕上層の強度が弱くなることにより規定のアンカーピンの本数で耐力的に問題ないか検討が不足している。
 
●注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法における問題点
・アンカーピンの形状の関係で下地モルタル層が10mm以上ないと浮きの界面に対してエポキシ樹脂を注入することが難しく、張付けモルタル層からの浮きに対応しにくい。
・タイルと躯体コンクリート間のモルタル層が張付けモルタルのみの場合など5mm以下と薄く、仕上層の強度が弱くなるが、規定のアンカーピンの本数で問題ないか検討が不足している。
 
(2)有機系接着剤を用いたタイル補修の注意点
 
※国立研究開発法人 建築研究所 建築研究資料No.145号「建築物の長期使用に対応した外装・防水の品質確保ならびに維持保全手法の開発に関する研究」2013(平成25年)8月
 
1)弾性接着剤とは
 
・硬化した接着剤自身がゴムのように外力にて変形し、外力がなくなると元に復元する性質を有している接着剤の総称。
・市販されている弾性接着剤は、引張弾性率が1.0~100N/mm2程度の物性値を有している者が一般的。
・外装タイル張りでは、主成分が変成シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系のものが販売されている。
・変成シリコーン樹脂の使用量が多く、変成シリコーンに一定の比率でエポキシ樹脂を配合することで、長期における耐久性を維持する構造となっている。
 
2)有機系弾性接着剤によるタイル仕上げの特徴
 
・タイルと下地間に生ずるディファレンシャルムーブメントに追従できるため、タイルのはく離・はく落故障が少ない。
・非吸収性下地や表面が平滑な下地にも適用可能。
 
3)弾性接着剤を用いたタイル補修の問題点
 
〇タイル部分張替え施工の注意点
・水湿しや吸水調整剤の適用は接着性を阻害する。
・接着面に当初施工された吸水調整剤が残っていると接着力が低くなる。
→接着面はサンダー掛け等により吸水調整剤を除去し粉塵をきれいに清掃した後、十分に乾燥させた状態で張付け施工を行う。
 
〇長期耐久性
・主成分が有機高分子のため、長期の耐久性について疑問視する意見がある。
 
〇検査
・弾性接着剤で施工されたタイル面は打診用ハンマーで検査した場合、ポリマーセメントモルタルなどで施工されたタイルと異質の音となると共に、空隙部の浮き音が判別しづらいとの指摘、赤外線サーモグラフィ法での検査でも浮きなどが判別しづらいとの指摘がある。
 
〇弾性接着剤で施工されたタイル面補修時の問題点
・改修時にタイルや接着剤を除去する必要が生じる場合があるが、弾性接着剤が強固に接着しているため除去が困難との指摘がある。
・特に、躯体表面に残っている弾性接着剤をディスクグラインダーやカップワイヤーなど回転力で除去する機械を用いた場合、目詰まりや、接着剤を伸ばす結果となり除去がしづらいとの声がある。
外壁タイルの洗浄
※国立研究開発法人 建築研究所 建築研究資料No.145号「建築物の長期使用に対応した外装・防水の品質確保ならびに維持保全手法の開発に関する研究」2013(平成25年)8月
 
1)洗浄剤
 
〇中性洗剤
・動植物に配慮が必要な箇所には、環境配慮型の中性洗剤が適している。
・酸性系洗浄剤に比べて洗浄能力は低い。
・洗浄能力が足りない場合は、高圧水洗浄やブラシ、化学繊維タワシ等を併用して掻き落とすように洗浄する。
 
〇モルタル、セメント汚水による汚れ
・希塩酸によって反応させ、溶解させた上で洗い流す。
・固化した場合については、ケレン等で削り落とした上で希塩酸にて反応させる。
 
〇カビ汚れ
・塩素系漂白剤、カビ取り剤を塗布し、しばらく放置した後、十分な水で洗浄成分を洗い流す。
 
〇サビ汚れ
・希塩酸またはシュウ酸を汚れの上に塗り、しばらく放置した後、不織布ナイロンブラシで擦り洗う。
・還元系漂白剤を60~70℃の湯に溶いて塗り、しばらく放置した後、不織布ナイロンブラシで擦り洗う。
 
〇フッ酸系洗浄剤
・ガラス成分を溶かすことができる溶剤で、通常タイル洗浄においては使用しない。
・虹彩汚れ等の非常に強力な汚れを洗浄する場合には、フッ酸系洗浄剤の濃度と反応時間を事前に試験確認した上で、フッ酸系洗浄剤による影響(色落ちや光沢度変化等)によってタイル表面が侵され過ぎないことを十分確認してから行う。
 
2)洗浄器具
 
〇水ハケ、洗車用ブラシ
・汚れの掻き落とし効果がほとんど期待できない。
 
〇タワシ(硬質、植毛密度の高い亀の子タワシ等)
・汚れの掻き落とし効果が高く、保水力(塩酸の保持力)も比較的高いが、洗いムラとなる場合がある。
・部分的に汚れがひどい場合に併用可能。
 
〇スポンジ
・保水力(塩酸保持力)が高く、面で擦るような洗浄が可能。
 
〇不織布タワシ
・保水力(塩酸保持力)が比較的高く、面で擦るような洗浄が可能。
・軟質から硬質まで幅広い種類があり、目地残りの状態に合わせて選定が可能。
 
〇メラミンフォームスポンジ
・非常に細かい凹凸に入り込んだ汚れや微粒子状の汚れの除去能力が非常に高い。
 
〇ジェットウォッシャー(高圧洗浄)
・汚れの除去能力は非常に高い。
・温水ジェットウォッシャーは、温水による”糊の溶解能力”が高いので、さらに汚れの除去能力も高い。
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