区分マンション投資、理事会活動の記録

外部コンサルを利用して大規模修繕

外部の専門家(一級建築士)に支援してもらいながら大規模修繕工事を行った事例について紹介します。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
大規模修繕工事組合支援コンサル業務の発注
●主な業務内容
 
①建物一日診断
②修繕設計、修繕工事概算書作成、設計図書作成
③施工会社選定支援
④工事管理支援
 
●費用
 
約150万(約30戸のワンルームマンション)
建物診断
コンサルが建物診断を行った結果を書類にまとめ、実際にマンションを見ながら説明して頂きました。主な報告項目は以下になります。
 
●調査目的
 
・建物の目視検査が主で、現状の建物各部位の劣化度を確認・判定し、大規模修繕工事の立案を行う。
 
●調査項目
 
①屋上立入り調査
・平場、立上り、鉄部、他
・目視、触診
 
②外壁目視調査
・天井、壁面、鉄部、他付属物
・目視
 
③廊下、階段目視調査
・壁、天井、床、他付属物
・目視、打検、触診
 
④外構目視調査
・駐輪場、ゴミ置き場等
・目視、打検、触診
 
⑤バルコニー立入り調査
・天井、壁、床、鉄部等
・目視、打検、触診
 
●報告内容
 
①各部の現況写真
②診断結果
大・中・小の3段階で各項目の劣化度を評価
③診断総括
各調査項目について診断結果のコメント
④今後のスケジュール案
・建物診断結果を踏まえ工事範囲を決定
・基本計画、見積もり作成要綱作成
・見積もり依頼、ヒアリング業者選定
・業者ヒアリング、業者選定
・総会で承認
・工事実施
コンサルから工事概算費用の説明
●資料の内容は?
 
資料は、最初に各項目毎の概算費用と合計の概算費用を記述した一覧表があり、以降に各項目毎の内訳の説明が写真入で記載されていました。
 
そして、基本案と縮減案の2パターンが記載されていました。
 
項目は下記のようになっていました。
 
1)直接工事
 
・建物外周足場
 
2)下地補修工事
 
・洗浄
・各種補修(手すり壁、壁、天井など)
 
3)タイル補修工事
 
・洗浄(タイル面全体)
・タイル補修
・タイル制作費(張替用タイル)
 
4)シーリング工事
 
・外壁、バルコニー廻りシーリング打替
・廊下、階段廻りシーリング打替
 
5)外壁等塗装工事
 
・外壁、バルコニー、共用廊下、外部階段廻りなどの壁面、天井の塗装
 
6)鉄部塗装工事
 
・屋上、外壁、バルコニー、共用廊下・階段廻りの鉄部塗装
 
7)防水工事
 
・屋上廻り、バルコニー、共用廊下、外部階段などの防水
 
8)その他
 
・エントランス床面洗浄
・サッシ、ガラス外部クリーニング
・EV扉、化粧シート張り
 
9)共通仮設工事
 
・現場事務所、作業員詰所、倉庫
・仮設水道、電気、トイレ、洗い場
・安全対策、ガードマン等
・場外駐車場
・各種養生、清掃
 
10)諸経費
 
・現場代理人経費(工事期間中1名常駐)
・一般管理費
・工事記録写真
・竣工図書作成、製本費
・各種保険(労災保険、損害賠償責任保険)
 
ページにして10ページ程度で、各項目についての概算の費用が記載されていました。
 
●マンションを実際に見て説明
 
実際にマンション内を見てまわりながら各工事項目について説明頂きました。基本案と縮減案があったので、縮減案の対象となっている場所について詳しく説明頂きました。
 
鉄部の錆びや外壁のタイルが変色している部分などは実際に現地で説明いただくとよく分かりました。同じ外壁タイルでも陽のあたりやすさ、雨のあたりやすさの違いがあるためか劣化の度合いが大きく異なっていることもよく分かりました。
見積参加会社の選定と見積作成要綱
●見積作成要綱
 
主な内容は下記の通りです。
 
1)建物概要
2)工事概要
・工事内容・対象範囲の詳細は「設計仕様書」、「見積書式」を参照。
3)貸与資料
・設計仕様書、見積書式、質問書式、設計図面
4)現地確認
・現地確認についての注意事項
5)質問受付・回答
・質問受付についての注意事項、回答は全社分を集約して共通のものとして回答。
6)見積提出
・期限
・提出書類の内訳(見積内訳書、全体工程表、仮設計図面)
7)支払条件
・着工後 出来高30%達成時に30%請求
・竣工後 1ヵ月以内 残金請求
8)工事保証
9)工事期間
10)契約までのスケジュール
・ヒアリング、結果連絡、契約締結
 
●見積り参加会社選定
 
・コンサル推薦の会社が3~4社
・建物管理会社の施工担当
・前回の大規模修繕実施工事会社
・理事推薦の会社
 
上記から5~6社選んで見積りを依頼する事になりました。
見積りを見比べて3社ぐらいを選び、3社からヒアリングを行って最終選定する事になりました。
見積業者を書類選考
●選考に使った資料
 
1)工事項目別の見積り金額比較一覧表
 
見積り仕様書を作り、統一した仕様を基に見積書を作成してもらっているので、業者毎に並べて比較します。
 
※項目
A.直接工事
①直接仮設工事
・建物外周足場
 
②下地補修工事
・洗浄
・各種補修(手すり壁、壁、天井など)
 
③タイル補修工事
・洗浄(タイル面全体)
・タイル補修
・タイル制作費(張替用タイル)
 
④シーリング工事
・外壁、バルコニー廻りシーリング打替
・廊下、階段廻りシーリング打替
 
⑤外壁等塗装工事
・外壁、バルコニー、共用廊下、外部階段廻りなどの壁面、天井の塗装。
 
⑥鉄部塗装工事
屋上、外壁、バルコニー、共用廊下・階段廻りの鉄部塗装
 
⑦防水工事
・屋上廻り、バルコニー、共用廊下、外部階段などの防水
 
⑧その他
・エントランス床面洗浄
・サッシ、ガラス外部クリーニング
・EV扉、化粧シート張り
 
B.共通仮設
 現場事務所、倉庫、安全対策・ガードマン、駐車場費、各種養生・清掃
 
C.諸経費
 現場代理人経費、一般管理費、記録・図書、保険
 
D.工期
 
2)仮設計図、配置図
 
マンション敷地に対する下記項目の位置を図示。
 
足場、廃材置き場、資材倉庫、洗い場、センサーライト、出入り口養生
 
●選考作業
 
・まず建物管理会社の施工部署の見積額だけが他の業者と比べて2割以上高く、飛びぬけていました。管理会社は大規模修繕工事の際に2~3割り乗せていると聞いた事がありましたが、本当にそうなんだと実感しました。
 
小規模のワンルームマンションで工事代金が2,000万程度でも400~500万高くなってしまうのでとても目立ちました。
 
・それ以外の会社は±10%ぐらいの範囲におさまっていました。
 
・各工事項目によって安い会社と高い会社が異なっていて、比較するのが大変でした。
 
・敷地内の空きスペースがあまりなく、事務所を近隣のマンションを借りる形にせざるをえなかったので、共通仮設の費用が想定より高くなってしまいました。当初は直接工事費の10%程度を見込んでいましたが、25%ほどにまでなってしまいました。
 
・他の業者と比べて極端に安い金額であればその業者は除外する予定でしたが、見積り金額が低い上位3社の金額がそれほど大きな差がなかったので、見積り金額上位3社をヒアリング業者として選定しました。
見積り業者のヒアリング、工事業者の決定
1)ヒアリングの際に用意した資料
 
コンサル支援担当が、下記資料を用意しました。
 
・当日のスケジュール
 各会社当り1時間。(業者からの説明;30分、コンサルからの質問:20分、理事会からの質問:10分)
 
・ヒアリングシート
 見積り金額、工期、予定質問事項と回答欄など。
 
2)業者の説明資料と説明内容
 
●参加者
 
・各業者とも3~4人ぐらい参加していました。営業上司、営業担当、現場代理人、現場代理人上司といった立場の人達です。
 
・現場代理人は、どの業者も20代中頃の若い方でした。
 
●資料の内容と説明内容
 
・会社の概要
(施工実績、ISOの取得など)
 
・現場代理人の紹介、実績
 
・施工管理体制
 
・工程表
(騒音・振動が発生する時期、バルコニー立入り制限の時期)
 
・現場配置図
(洗い場・廃材置き場など)
 
・コミュニケーション
(工事用掲示板、配布チラシ、工事用ポスト、着工前近隣挨拶、緊急受付電話窓口)
 
・安全計画
(安全通路・誘導員、作業員ベスト、センサーライト、枠組み足場の入口を施錠、侵入防止金網、サッシ補助錠の貸し出し、安全データシート(MSDS))
 
・品質管理、検査
(入居者アンケート、社内検査、管理者検査、組合検査)
 
・保険
(請負者賠償責任保険、生産物賠償責任保険(PL保険)、普通障害保険)
 
・バルコニーの作業と入居者対応
(BSアンテナの撤去・復旧は別途費用。エアコン室外機のチューブが短い場合は一時取り外し・復旧が必要で別途費用発生。網戸・その他の荷物の整理は入居者が行う)
 
・アフターメンテナンス
(各施工箇所毎に2、3、5、10年の保証期間。1、2、3、5、7、10年目に点検)
 
●ヒアリング後の選考
  ・ヒアリング後にそのまま理事会で業者選定を行いました。配布資料については多少、資料のボリューム、設計図面や工程表の詳細さで差はありましたが、内容自体は大きな違いはありませんでした。
 
・現場代理人もどの業者も20代中頃の若い方で差は見受けられませんでした。
 
・ヒアリング内容からは差は感じられなかったので、見積り金額が一番低い会社に決定しました。
総会承認と住民説明会
1)理事会で業者決定、タイルのサンプル焼き
 
見積り業者ヒアリングを行って、理事会で業者を決定しました。正式な決定は総会での承認が必要になるのですが、工事開始予定が総会から1ヶ月後と余裕がなかったので、張替え用のタイルのサンプル焼きを先行で開始してもらいました。
 
張替え用のタイルは、既製品だと既存のタイルと色がなかなか合わないようで、既存のタイルに合わせて製作する必要があるとの事でした。本番用を製作する前にまずサンプルのタイルを作成し、色などの理事会で確認し、了承されてから本番用のタイルを製作するという工程になります。
 
2)総会承認
 
投資用のマンションという事もあり、理事のメンバー以外では出席者が1人で特に問題なく終了しました。
  入居者に対する工事説明会を通常は工事開始2週間程前に行うとのことで、その日程を総会後に決定し、資料の送付などの手続きを確認しました。
 
3)入居者説明会
 
お盆休みの週の日曜日だったせいか、理事会のメンバー以外は参加者がいませんでした。
 
マンション近くの会議室を借りて行ったのですが、少し場所が離れていたからなのか、それともワンルームマンションで1人暮らしの若い方が多く、土曜日以外は出勤中に工事が行われるということであまり関心がなかったのでしょうか。
 
他のマンションではマンションのエントランスに集合して、実際にマンションの敷地やマンションを見ながら説明する形を取っていましたが、この方が良かったかもしれません。
 
●説明内容
 
・工事の概要
 
・現場代理人の紹介、事務所の連絡先、連絡用ポストの設置など
 
・連絡方法
チラシ、掲示板
 
・安全、防犯対策
朝顔養生、誘導員、搬入、作業員のベストの色・デザイン、サッシ用補助錠
 
・バルコニーに関する注意事項
荷物片付け、網戸取り外し、アンテナ取り外し、エアコン室外機の移動・取り外し
 
・スケジュール
 
●質疑事項
 
・網戸の取り外しについて、入居者に行ってもらうとの説明がありましたが、工事業者が外から取り外すことが出来ないか確認してもらうように依頼しました。
 
・エアコンの室外機は、冷媒管の長さが短いと室外機を移動することが出来ず、一時的に取り外す必要があり、取り外し費用は有料(2万円弱)との事。
 
費用の負担や支払い方法について別途理事会で検討する必要があるので、足場設置後に早急に移動が必要な戸数を確認して欲しいと依頼しました。
  理事会メンバー以外に参加者がいなくて、結局いつもの理事会と同じような雰囲気でした。
進捗確認、検査
1)理事会、コンサル、施工業者の打ち合わせ
 
必要に応じて進捗確認、打ち合わせを行います。主な確認事項として以下の項目がありました。
 
・居住者、近隣住民に対する対応報告
・工事の進捗状況、問題点、追加工事の必要性などの報告
・下地補修、タイル補修などの実数清算
・バルコニーの設備移動、撤去などの状況確認(エアコンの室外機、BSアンテナなど、場合によっては有料の対応が必要)
・居住者立会いが必要な作業の進捗。理事会・管理会社から入居者・所有者への立会い依頼が必要な場合もある。
 
2)足場解体前検査
 
理事、コンサル、施工業者が実際に足場に乗って確認。
 
3)竣工検査
 
4)引渡し
 
・竣工検査時の指摘事項の修繕結果確認。
・各種書類の受取。
・アフター点検についての説明。
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