区分マンション投資、理事会活動の記録

排水設備要綱 排水槽、ディスポーザ、半地下からの排水

東京都下水道局の『東京都排水設備要綱(R2年3月版)』を読んで排水設備の設計・施工方法を勉強しました。参考になった点、要点等をメモ書きしました。
 
第3章:屋内排水設備-第2節:排水槽、ディスポーザ、半地下からの排水
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
排水槽
(1)排水槽とは
 
・排水ポンプによって排除するために設けられた槽のことを排水槽(ビルピット)という。
 
〇排水ポンプがなぜ必要?
・建築物の地階部分のように、公共下水道より低い位置に設けられた設備からの排水は、自然流下によって排除できないため、一旦建築物の最深部に設けられた槽に集めて、排水ポンプにより公共下水道等に排除される。
※自然流下が可能な排水は、一般的には排水槽と別系統で排水する。
 
〇排水槽の維持管理
・構造および維持管理が適切でないと、槽内で排水の腐敗が進行し、悪臭成分が生成され、排水が公共下水道等へ排除された際に、悪臭が雨水ます等を伝わって強烈な臭気を発散する。(ビルピット臭気)
※排水槽の設置については、下水道法施行令8条11号において「臭気の発散により生活環境の保全上支障が生じないようにするための措置が講ぜられていること」と定められている。
 
(2)排水槽の種類
 
〇汚水槽
・水洗便所等のし尿を含む排水を貯留するための槽をいう。
 
〇雑排水槽
・厨房その他の施設から排除されるし尿を含まない排水を貯留するための槽をいう。
 
〇合併槽
・し尿及び雑排水を併せて貯留するための槽をいう。
※槽の設置については、原則として各々独立した槽とする。ただし、1槽当り1m3未満または、各槽の合計が3m3未満のもので悪臭の発生を防止できる場合は合併槽とすることができる。
 
〇排水調整槽
・当該地域の公共下水道計画汚水量と排水量の調節を図る目的で、排水を一定時間貯留し、排水量を調整するために設ける槽をいう。
 
〇湧水槽
・湧水を貯留するための槽をいう。
 
〇雨水槽
・雨水を貯留するための槽をいう。
 
(3)悪臭発生の原因
 
・悪臭の原因は、排水が腐敗して発生する「硫化水素」等の物質によるもの。
・排水槽の底部が水平であったり、排水ポンプの吸込み位置が高いなどの理由により排水槽内の汚水等を完全に排除できない場合に、一部の汚水や沈殿物が滞留して腐敗する。
・排水槽の容量が必要以上に大きい場合には、汚水の槽内貯留時間が長くなり、貯留汚水の腐敗が進行する。
 
(4)悪臭発生の対応策
 
●既設排水槽の改善
・ばっ気・かくはん併設装置または、排水用補助ポンプを設置する。
・排水ポンプの運転は、水位(レベル)制御、時間(タイマー)制御(2時間以内)の併用方式とする。
・排水槽に異物や油脂分が流入しないように、阻集器を設置する。
・排水槽の構造、容量の改善を可能な限り行う。
ディスポーザ排水処理システム
(1)ディスポーザ排水処理システムとは
 
・ディスポーザで粉砕した生ごみを含む排水を、排水処理装置で処理してから下水道に流すもので、施設や環境へ与える負荷が増大しないことを目的とした設備で、排水設備のひとつとして位置づけられている。
 
(2)ディスポーザ排水処理システムの種類
 
1)生物処理タイプ
 
・ディスポーザからの排水を専用配管で排水処理槽(排水処理部)へ排出し、生物処理した後排水のみを公共下水道へ排除し、汚泥は別途廃棄する方式。
 
2)機械処理タイプ
 
・ディスポーザからの排水を機械装置(排水処理部)によって固形物(乾燥ごみ等)と液体とに分離し、分離された液体のみを公共下水道へ排除し、乾燥ごみ等は別途廃棄する方式。
 
(3)設置・維持の注意点
 
●設置上の注意点
・清掃等の維持管理上や排水処理槽の流出水の水質調査用に排水処理槽の下流側にますを設置することが望ましい。
 
●排水処理槽から公共下水道へ排出する際の水質基準
〇東京都の排水処理部からの総流出水の基準
・BOD:600mg/l未満
・SS:400mg/l未満
・n-ヘキサン抽出物質:70mg/l以下
半地下建物からの排水
(1)半地下建物の排水の問題点
 
・地下室その他下水の自然流下が充分でない場所における排水は、ポンプ施設を設けてしなければならない。
 
1)「自然流下が充分でない場所」からの排水
 
〇「自然流下が充分でない場所」とは
・豪雨の際に下水の自然流下が不充分となるおそれのある箇所で、排水先の道路面よりも低い位置に、衛生設備や私設ますなどの開口部がある場合も含む。
 
〇「自然流下が充分でない場所」からの排水
・建築基準法に定義する「地階」だけでなく、このような場合においても、逆流防止機能を付けた排水ポンプ施設の設置が必要。
 
2)地階における排水
 
〇建築物の地盤面
・建築物の地盤面はこれに接する周囲の土地より高く設定されている必要がある(建築基準法第19条)。
 これは、建築物の地盤面が周囲より低い場合、衛生上の問題と大雨時に周囲の水が敷地内に流れ込むおそれがあるため。
 
〇地階の排水
・建築基準法施行令1条に定義されている「地階」(床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの1/3以上のものをいう)となる建物を建築する場合は、排水設備にポンプ設備などの設置を行い、逆流防止の対策をとるなど地階への安全面・衛生面の配慮がなされている。
 
3)半地下建物からの排水における問題点
 
・掘り下げ高を抑えた(床面から地盤面までの高さが、天井高の1/3未満)建物、いわゆる「半地下建物」では、建築基準法上の地階扱いを受けないことから、ポンプ設備を設置しない「自然流下方式」(下水道本管まで傾斜こう配だけで汚水を排除する方法)で設計・施工してしまうものが多い。
 
・近年、短時間に大量の雨が降り、雨水が下水道に流れ込むことにより、こうした半地下建物に対しての浸水被害が多くなっている。
この浸水被害の主なものとして、次のようなことが生じている。
①排水設備を自然流下方式としているので、晴天時には何の問題もなく機能しているが、大雨時になると、道路面などからの流入を防いでも下水道管内の水位上昇により宅地内へ逆流し、道路面や周辺の地面より低い位置にある「浴室」や「洗面器」などの排水口から下水があふれてしまうことが起きやすい。(屋内浸水)
②周辺より低い地盤としているため、道路面などからあふれた雨水などが駐車場などのスロープを伝わって外部から浸水し、床上浸水となりやすい。
③地盤を下げていない家屋には被害が無い場合でも、半地下家屋は浸水被害を受ける場合がある。
 
(2)対策
 
豪雨時の対策
 
①浸水対策
・土のう、水のう
・ステップアップ:出入口を道路側より高くする。
・止水板:板などを出入口に設置する。
 
②下水道からの逆流防止対策
・汚水用排水ポンプ槽を設置
・汚水用排水ポンプ槽とは、汚水用水中ポンプ、排水管、逆流防止弁が付属した排水槽のこと。
 
〇対策の効果
・ポンプ施設により下水は逆流しなくなり、土のうなどの対策により浸水被害を軽減。
・ポンプ施設を設置する場合は、宅地内の雨どいなどの雨水排水をポンプ施設の下流側に接続すると、ポンプ施設の運転を最小限に抑えることができる。
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