区分マンション投資、理事会活動の記録

断熱材、断熱性能、結露対策、断熱改修の概要

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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建築用断熱材の概要
1)建築用断熱材の概要
 
・断熱材は、省エネだけでなく、快適性の確保や結露防止のために用いられる。
・断熱材の種類によって、材料の熱伝導率や施工のしやすさ等が異なる。
・マンションでは主に発泡プラスチック系断熱材が用いられる。
 
2)建築用断熱材に関係する用語
 
〇断熱材 ・断熱の目的で使用される材料であり,23℃における熱伝導率が0.065W/(m・K)以下のもの。
 
〇基材
・断熱材において,断熱性能を発揮するために不可欠な部分。
・繊維系断熱材では繊維状多孔材料部分,発泡プラスチック断熱材では発泡体部分などをいう。
 
〇外被材
・人造鉱物繊維断熱材の防湿,放射,保護,施工性の向上などを目的として基材の外部を覆うもの。
 
〇面材
・発泡プラスチック断熱材の基材の表面又は裏面に一体化されたシート状又はフィルム状の材料。
 
〇成形面材
・面材のうち,断熱材製造時に基材と一体となる基材成形上必要な面材。
 
〇スキン層
・発泡プラスチック断熱材の発泡時に断熱材の表面に成形される基材の樹脂層。
 
3)建材トップランナー制度の対象製品
 
●建材トップランナー制度とは
・さまざまな製品の省エネ化をはかるために、経済産業省および資源エネルギー庁が中心となり、製品ごとに性能レベルの基準を定めそれを満たすことを求める制度。
 
●対象となる断熱材
・断熱材として広く使われているロックウール、グラスウール、押出法ポリスチレンフォームの3種類。
建築用断熱材の分類
(1)断熱材の分類
 
1)素材による分類
 
●繊維系
・細かい繊維で空気を動きにくくする。
・グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー、インシュレーションファイバー
・水蒸気を通しやすいため防湿層が必要。
・繊維系断熱材は密度によって形状が変わり、綿のような密度のフェルト状が一般的で、密度の高いものにはボード状のもの、吹込み用にはばら状のものがある。
・吸音性がある。
 
●プラスチック系断熱材
・独立した気泡の中に気体を閉じ込める。
・ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム
・プラスチック系断熱材は、水蒸気を通しにくいが、硬質ウレタンフォームは、水蒸気を通しやすいため、繊維系断熱材と同じく防湿層が必要。
・発泡プラスチック系断熱材には、工場で成型されて出荷されるボード状の製品の他、現場発泡の断熱材がある。
 
2)形状による分類
 
●フェルト状
・グラスウール、ロックウール、インシュレーションファイバー
 
●ボード状
・発泡プラスチック系断熱材
・密度の高いものは繊維系断熱材もボード状のものがある。
 
●ばら状
・吹込み用。
・グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー
 
(2)無繊維系(人造鉱物繊維系)断熱材
 
1)グラスウール
 
・ガラスを溶融し,製造した繊維をバインダを用いて成形したもの。
・必要に応じて外被材を用いる。
 
〇グラスウールの用途
・住宅の壁・天井・床・屋根の断熱材として広く用いられるほか、工場・体育館の断熱材としても用いられる。
・吸音材としても機械室の内装吸音用や防音室の素材として用いられている。
・空調ダクト、配管保温用
・不燃材料なので防火性にも優れている。
 
〇グラスウールの特徴
・断熱性能あたりのコストパフォーマンスに優れる。
・切断・曲げなど、自由に加工することができる。
・厚さ・サイズ・密度が豊富
・建築時の雨漏れ等の場合、水を含むと一時的に変形するが、その後乾燥すれば形状と体積はほぼ回復し、断熱性能・吸音性能は概ね低下することはない。
 
2)ロックウール
 
・石灰及びけい酸を主成分とするスラグ及び鉱物を溶融し,製造した繊維をバインダを用いて成形したもの。
・必要に応じて外被材を用いる。
 
〇ロックウールの用途
・不燃断熱材で、防音性能にも優れている。
・耐火性にも優れていることから、アスベストの代替材として広く使われるようになった。
 
〇ロックウールの特徴
・微細な繊維の隙間に空気層を含んでいるため、優れた保温・断熱性能がある。
・鉱石を原料としているため優れた耐熱性を有している。
・軽量で柔軟性に富んでいるため、取り扱い、加工性に優れている。
・経年変化や劣化が少なく、耐久性に優れている。
・吹き付け用(湿式施工)と成型品(乾式施工)がある。成型品には施工を容易にするために、ビニール袋に包んだ製品も多い。
・700℃まで形状を維持できるだけの耐熱性能があり、400℃までのグラスウールよりも性能が良いが、ビニール袋やバインダーとして使用される接着剤のために火炎によって黒煙を発生する点はグラスウールと同様である。
・水に対してはグラスウールよりも非常に良好で撥水性があり吸湿性が低い。
・グラスウールには無いアルカリに対する耐薬品性がある。
・価格はグラスウールよりわずかに高価となる。
・吸音材としては、グラスウールより低い周波数までよく吸音し、特に400Hz以上では大きな吸音性がある。
 
(2)有機繊維系(木質繊維系)断熱材
 
1)インシュレーションボード
 
・主に木材などの植物繊維をボード状に成形した繊維板。
 
〇用途
・床・壁・天井・屋根などに施工でき、主に充填断熱工法に使用される。
 
〇特徴
・木質繊維なので、湿気を吸収・放出する機能があり、結露しにくい。
・吸音性にも優れる
 
2)セルローズファイバー
 
・天然の木質繊維を利用。
・新聞紙などを繊維状に裁断し、防燃材、その他の添加物を混入してばら状にした断熱材。
・ばら状。
・湿気を吸放出する機能がある。
 
(3)発泡プラスチック系断熱材
 
・プラスチック系の素材に発泡剤(熱や化学反応で気泡を発生させて多孔質の素材を作る薬剤)を混ぜて、保温や断熱に使う建築材料。
・独立した微細な気泡が多数含まれているため熱伝導率が低い。
・工場で成形するタイプと建設現場で発泡して充てんするタイプがある。
 
1)ビーズ法ポリスチレンフォーム
 
・ポリスチレン又はその共重合体に発泡剤,難燃剤及び添加剤を加えた発泡性ビーズを型内発泡成形又は発泡成形したブロックから切り出したもの。
 
〇用途
・金型により成形するため、板や筒など自由な形に仕上げることができる。
・主に外張断熱工法に使用され、床・基礎の断熱にも適する。
 
〇特徴
・水や湿気に強く、軽量で緩衝性が高い。
・成形品のため自由な形に仕上げることが出来る。
 
2)押出法ポリスチレンフォーム
 
・ポリスチレン又はその共重合体に発泡剤及び添加剤を溶融混合し,連続的に押出発泡成形したもの,又は押出発泡成形したブロックから切り出したもの。
・押出し成形で板状に発泡させたものでより一般的な製法。
 
〇用途
・軽量で堅く耐圧力があり、薄くても断熱性能が高いため、外張断熱工法に適している。
・形状維持性が高いのでコンクリート打込み工法に対応できる。
 
〇特徴
・断熱性能が高いため、薄くても断熱効果が得られる。
・水に強く、耐吸湿性があるため、基礎断熱にも適している。
・ビーズ法より断熱性、耐圧性、耐候性に優れ、透湿抵抗が大きいものが得られるが柔軟性に欠ける。
 
3)硬質ウレタンフォーム
 
・ポリイソシアネート,ポリオール及び発泡剤を主剤として,繊細な独立気泡で成形したもの,発泡成形したブロックから切り出したもの,又は成形面材の間で発泡させ一体化した成形面材付きのもの。
 
〇用途
・ボード状のものと、現場で直接吹き付けて施工する現場発泡品があり、充填、外張断熱の両方に使用できる。
 
〇特徴
・微細な気泡の集合体で、気泡には熱伝導率の極めて小さいガスが含まれ、優れた断熱性能を持つ。
・現場発泡品は、自己接着性を持つため、接着剤を使用しなくても多くの材料と自己接着し、複雑な形状の構造物に対しても隙間のない断熱層を作ることができる。
 
4)ポリエチレンフォーム
 
・ポリエチレン又はその共重合体に発泡剤及び添加剤を混合して,発泡成形したもの。
 
〇用途
・他のボードより柔軟性が高く、隙間なく施工することができ、主に充填断熱工法に使用される。
・床や壁だけでなく、配管カバーなど断熱、防水と用途が多彩。
 
〇特徴
・耐吸湿・耐吸水性が高く、様々な形状の製品をつくることができる。
・柔軟性があるため、他のプラスチック系断熱材と比べると隙間なく施工することが可能。
 
5)フェノールフォーム
 
・レゾール樹脂,発泡剤及び硬化剤を主剤として,成形面材の間で発泡させ,サンドイッチ状に成形した成形面材付きのもの,又はレゾール樹脂,発泡剤及び硬化剤を主剤として,発泡成形した成形面材なしのもの。
 
〇用途
・主に外張断熱工法に使用される。
 
〇特徴
・素材の安定性が高く、経年劣化が少なく、長期間にわたって優れた断熱性能を有する。 ・130℃までの使用に耐える耐熱性を持ち、炎が当たっても炭化するだけで延焼を防ぐことができ、防火性に優れている。煙や有毒ガスもほとんど発生しない
断熱性能に関する用語
●熱伝達率
・熱伝達とは、熱が、空気から壁(材料)の表面へ、また逆に壁(材料)の表面から空気へ伝わることをいう。
・熱伝達率とは、熱の伝達のしやすを示す値で、一般に空気の動きが大きいと、大きな値となる。
・材料とそれに接する空気との間で熱の伝わりやすさを示す値。
・材料表面の空気の動きに影響される。
 
●熱伝導率
〇熱伝導
・熱伝導とは、壁の内部で一方の表面から他の表面へ、材料中を熱が移動すること。
〇熱伝導率
・”材料そのものがもつ熱の伝わりやすさ”を表した数値
・一般には、重くて冷たい感じの材料は、熱伝導率が大きくて、軽くて暖かい感じのするものは、熱伝導率が小さいといえる。
・熱伝導率は、一般に水分を含むと大きくなる。
・熱伝導率が大きいと、熱の損失も大きくなる。熱伝導率の小さい断熱材の方が熱の損失を軽減する効果がある。
 
●熱抵抗値(R値)
・断熱性能は、素材の厚さによって変化するが、熱抵抗値とはある素材と厚さが決まった場合の、熱の伝わりにくさを示す数値。
・材料の厚みを熱伝導率(材料固有の熱の伝わりやすさ)で割った数値で、数値が大きいほど断熱性が高い。
 
●熱貫流率(U値)
〇熱貫流
・熱貫流とは、床、壁、屋根などを通して、熱が逃げたり、逆に入ってきたりすることで、1つの方向からみた熱の貫流(とおり貫け)をいう。
・熱貫流には、熱伝導と熱伝達の二つの要素があり、それぞれについて計算すれば、貫流する熱量が求められる。
〇熱貫流率
・外壁等の建物の各部位について熱の通過しやすさを示す値。
・熱貫流率の大きい壁は熱を通しやすく、熱貫流率の小さい壁は保温性が高い。これは、空気から壁の表面に熱を伝える”熱伝達”と壁の内部で熱を移動させる”熱伝導”により決まる。
・外壁は、同じ厚さであれば熱貫流率が大きければ、室内と室外の温度の差が大きくなり、結露が発生する可能性が大きくなる。
 
●熱損失係数(Q値)
[各部位の熱損失量] = [熱貫流率] × [面積]
[熱損失係数] = {[各部位の熱損失量の合計] + [換気の熱損失量]} / [延床面積]
・建物の内部と外気の温度を1度としたときに、建物内部から外界へ逃げる時間あたりの熱量を床面積で除した数値。
・外壁や天井・床などの各部位の熱の逃げる量(熱損失量)を計算し、各部位の熱損失量を合計したものを延床面積で割って算出するもの。
・その値が大きいほど断熱性能が低い。
・計算が複雑になるが、断熱性能を住宅全体で判断でき、熱貫流率や熱抵抗値では判断できない、各部位の断熱性能のバランスを把握することができる。
結露対策
(1)結露の原因
 
・結露は、空気中の水蒸気が冷たいものに触れて水(水滴)になったもの。
 冬などで外の温度が低いと壁や窓の室内側の表面温度も外気の低い温度のせいで下がり、その壁や窓の室内側の表面に、結露ができる。
 マンションは気密性が高いので、室内で発生する水蒸気を外部に排出しないと、結露が発生しやすい構造になっている。換気が必要。
 
●表面結露と内部結露
・結露はガラス窓などの表面にできる表面結露と壁の内側にできる内部結露に分けることができる。
 
〇表面結露
・室内側の表面温度と室内の水蒸気量が問題で、窓ガラス面や暖房していない部屋の壁など、他より冷たい所に暖かく湿った空気が触れた時に、表面に現れる結露。
・壁体等の断熱性能が低く外気の影響を受けて表面温度が低温になった時に、室内の水蒸気量の多少によって発生する。
・断熱性の高いガラスを使ったり、壁体内に断熱施工をし、表面温度を上げることで防ぐことができる。
 
〇内部結露
・壁体内の温度とその部分の水蒸気量が問題で、壁体内や床下などの建物内部に侵入した水蒸気が、冷えた外壁裏などに触れた時に発生する。
・壁に断熱材を使用する場合、外気と室内の気温差が大きくなるため、壁の内部が結露することがある。
・断熱材や木材を痛める原因になることもあるため、施工の段階で丁寧な防湿処理をすることが必要。
・表面結露と比べるとその発見が難しいため、発見した時は、深刻な被害になっている場合がある。
・内部結露を防止するためには、壁体内への水蒸気の侵入を抑えるとともに、壁体内にその水蒸気を滞留させないことが重要。
→一般的には室内側に防湿層を設けて水蒸気が入りこまないようにする、また室外側には透湿層を設けて通気を保つことが基本的な対策だと言われている。
 ロックウール断熱材を施工するときには、住宅の室内側に連続した防湿層を設けることとされている。
 
(2)断熱材の断面構成
 
1)断面構成の考え方
 
〇室内側
・防湿層を設けて、断熱層に室内の水蒸気が入りにくくする。
 
〇外気側
・透湿性を高くし、通気層を設けることで外気に水蒸気を通しやすくする。
 
2)断熱材の構成と役割
 
①断熱層
・充填断熱工法では柱間、外張断熱工法では躯体外側の断熱材が施工されている部分。
②防湿層(室内からの水蒸気を防ぐ)
・室内の水蒸気が壁体内に侵入するのを防ぐ層。
・防湿材やテープ等を用いて隙間が生じないように連続させて設ける。
・断熱層に繊維系断熱材等の透湿抵抗の小さい断熱材を施工する場合は、防湿層を必ず設けなければならない。
・防湿層は、断熱材に付属している「付属防湿フィルム」を用いる方法と、断熱材施工後に防湿材を別張りする方法がある。
・湿気を壁体内に侵入させないために、防湿層を連続させることが重要。
→防湿材の継ぎ目は、下地のある部分で30mm以上重ね、ボードまたは木材等で押さえる。
③気密層
・室外と室内の漏気を防ぐ層で、隙間が生じないように連続させる。
・繊維系断熱材による充填断熱工法の場合は、防湿層と兼用する場合が多い。
・ボード状プラスチック系断熱材による外張断熱工法の場合は、断熱層や防風層が兼用することも可能。
・外張断熱工法において、ボード状のプラスチック系断熱材を使用する場合は、断熱材の継目に気密テープを貼るなどの方法によって連続した気密層をつくる。
④防風層(室外からの空気の侵入を防ぐ、水蒸気は逃がす)
・外気から断熱材内部への風の侵入を防ぐ層。通気層と断熱層の間に設け、外気が壁体内に侵入しないようにする。
・防風材やテープ等を用いて連続的に隙間が生じないように設ける。
・防風性とともに、壁体内の湿気を逃がすために、透湿性を有することが必要。
※空気は通さず(防風性)、水蒸気は通す(透湿性)。衣類などに用いられる防水透湿性素材(ゴアテックス、ドライテック等)に似た機能。
・繊維系断熱材を用いる場合は、必須。
⑤通気層(壁体内の水蒸気を外に逃がす)
・壁体内に入ってしまった湿気を逃がす層。
・外壁や屋根には、断熱層の外側に通気層を必ず設け、通気層の入口から出口まで、滞りなく通気できるように、空間を確保する。外壁の通気層の厚さは15mm以上とし、屋根の通気層の厚さは30mm 以上を標準とする。
・天井または床には、通気層を設ける代わりに、断熱層の外側に小屋裏換気(天井断熱の場合)、床下換気(床断熱の場合)等を設けることが必要。
・断熱材の押し込みにより、通気層の空間が塞がれてしまわないように注意する。
・通気層は、充填、外張工法のいずれにも必須。
 
3)構成例
 
①充填断熱工法・繊維系断熱材の構成例
【外装材、通気層、透湿防水シート、面材、断熱材、防湿フィルム、内装材】
・繊維系断熱材は水蒸気を通してしまうので、防湿フィルムが必要。
 
②外張断熱工法・発泡プラスチック系断熱材の構成例
【外装材、通気層、透湿防水シート、断熱材、面材、壁内、内装材】
・プラスチック系断熱材による外張断熱工法の場合は、断熱材が水蒸気を通しにくいので、防湿層は必ずしも必要ではない。ただし、断熱材の外気側に、水蒸気を通しにくい材料を施工するのは避けるようにする。
・通気層は必ず必要。
 
(3)結露対策
 
●換気
・機密性の高い部屋においては、換気を行わなければ、湿気を含む空気が外部に逃げることができないので、換気を行う必要がある。
 
●防湿層
・壁の内部で発生する結露を防止するため、室内からの水蒸気の流入を防止する部材。
・繊維系断熱材や連通孔を有する発泡プラスチック系断熱材(EPSは含まれない)を使用する場合に室内側の面に施工し、材料としてはポリエチレンフィルムがよく使われる。
・防湿層の役目は断熱層への漏気の侵入を防止するもので、防湿層を設けても、室内側に生じる表面結露を防げるとはいえない。
 
〇内断熱の場合の断熱仕様の壁の構成例
室内仕上げ材(ビニールクロス)
石膏ボード:室内仕上げ材の下地
防湿フィルム:グラスウールは水分を遮断する機能がないため設置。
断熱材(グラスウール):コンクリート躯体は外気の温度と近くなるため断熱
コンクリート躯体
外部仕上げ材(塗装)
 
・グラスウールは水分を遮断する性能が無いため、結露を防止するためには、断熱材のグラスウールの室内側に防湿フィルムを中間に配置し、水蒸気の供給を遮断する。
 
●外断熱工法
・建物の外壁を断熱材で覆うので、熱を伝えやすい熱的短絡部である熱橋(ヒートブリッジ)が形成されにくく、内断熱工法より結露発生のリスクは小さくなる。
※熱橋(ヒートブリッジ)
・熱を橋渡しすること。例えば、断熱材があっても、鉄材が断熱材を貫通していると、鉄材を伝わって熱が逃げていく。これがあると、そこから、夏は外から室内に熱が侵入しやすくなり、冬は逆に室内の熱が外に逃げて、その部分は、他の室内に比べて温度が低くなり、結露が生じやすくなる。
 
●低放射複層ガラス(Low-Eガラス)
・断熱性能に優れていて、結露などを減少させる。
※単板ガラスの厚さを2倍など厚くする
・断熱性能の改善はわずかしかなく、複数ガラスのように結露の量を減少させることはできない。
 
●その他関連情報
〇輻射式の暖房装置
・遠赤外線などの輻射によって人体や壁、カーテン、床、天井などの構造物も直接暖めるので結露対策として有効。
・エアコンやファンヒーターなどの温風暖房が室温だけを高くするのに対して、壁や床、人体の表面温度を高め、室内をむらなくあたためる。
 
〇窓にカーテンを設置
・窓自体の熱貫流率には影響を与えない。また、窓にカーテンを設置しても結露が減少するとはいえない。
外壁の断熱改修
・新築時には、屋根を外断熱又は内断熱、外壁は一般的に内断熱で施工される例が多いが、最近では、外断熱工法の新築マンションもある。
・既存マンションの断熱性を向上させ、結露を防止する観点から、外壁に外断熱を施す例が見られる。
 
1)外断熱のメリット
 
・直達日射による躯体の損傷を防止
・内外温度差によって発生する室内の結露を防止
・結露の防止は、カビや漏水の防止にとどまらず、寒冷地等では壁体内の結露水の凍結融解による躯体劣化を防止することにもつながる。
 
2)外壁の外断熱工法の種類
 
①断熱材ピンネット押え工法
・外壁面に断熱材(押出し発泡ポリスチレン系断熱材)を接着材+アンカーピン+ネットを利用して張り付け、ポリマーセメントモルタル左官材で押えて仕上げる工法。
・断熱性能は断熱材の材質や厚みにより決まる。
・コストは最も安価。
 
②GRC複合断熱パネル工法
・外壁面にGRC(ガラス繊維補強コンクリート)複合断熱パネルを接着剤とアンカーピンを併用して張り付ける工法。
・パネルの表面を塗装仕上げとする場合もある。
・断熱性能は断熱材の材質や厚みにより決まる。
・コストは①と③の中間程度。
 
③胴縁サイディング材仕上げ工法
・外壁面に胴縁を配して胴縁間に断熱材を置き、表面にサイディング材を張り空気層を設ける工法。
・一般的には、サイディング材は押出し成形セメント板等の不燃材とし、塗装仕上げとする。
・断熱性能は非常に高まるが、コストも比較的高額となる。
 
④その他
・外壁躯体に断熱材を貼り付け下地を形成した上に塗装やタイルで仕上げる湿式外断熱工法も用いられている。
 
〇注意点
・採用する方法は、断熱範囲、断熱材・下地材の種類と厚さ、端部の納まり、断熱性能、コスト等を総合的に検討して決める必要がある。
充填断熱工法と外張断熱工法の違い
1)充填断熱工法
 
●概要
・壁内の柱・間柱、梁など軸組み間の空隙に断熱材を施工する工法。
・断熱の厚さは、壁の厚さまでとなる。
・断熱材施工のほかに、防湿材や気密材などで構成される気密層を施工しなければならない。
 
●工法と施工部位
・はめ込み工法:壁、屋根、天井(梁間)、床
・敷込み工法:天井
・吹付け工法:壁、屋根、天井、床
・吹込み工法:壁、屋根、床
 
●使用する断熱材と注意点
・主に、繊維系断熱材が用いられる。
〇繊維系断熱材
・保管時や施工時の水濡れに注意が必要。
※湿気を含むと断熱性能が低下する。
〇ボード状発泡プラスチック系断熱材
・隙間を生じさせないよう注意が必要。
 
●内部結露対策
・繊維系断熱材は水蒸気を通しやすいため、水蒸気が侵入しないように、断熱材の室内側に防湿層として防湿フィルムの施工が必要。同時に、断熱材の外側には、水蒸気を外気に排出しやすくするための通気層、防風層(透湿防水シートなど)の施工が必要。
 
●施工上の留意点
・空隙に断熱材を充填する工法なので、柱や間柱等との間に隙間が生じないように留意する。
・施工後、断熱材が自重等により垂れ下がり、落下しないように固定する。
・断熱壁において、電気配線、コンセント・スイッチボックス類を施工する際は、断熱欠損や防湿層・気密層に穴を開けないように注意する。
 
2)外張断熱工法
 
●概要
・柱・間柱、梁など軸組みの外側に断熱材を施工する工法。
・外側に壁厚が増す。
・発泡プラスチック系断熱材自体が空気を通しにくいため、気密材として用いることができる。(ただし、ボード間、その他材料との間の目地処理が必要)
・壁内が空洞のままであるため、配線等が容易。
 
●工法と施工部位
・張付け工法:壁、屋根、床(外気床)
・敷込み工法:天井(梁上)
 
●使用する断熱材
・主に、ボード状発泡プラスチック系断熱材が用いられるが、ボード状の繊維系断熱材を用いることある。
 
内部結露対策
・発泡プラスチック系断熱材を用いる場合は、断熱材が水蒸気を通しにくいため、防湿フィルムの施工は不要。
 ただし、外気側は、断熱材と外装材の間に水蒸気が滞留しないように通気層が必要
 
●施工上の留意点
・断熱材は、柱等に釘、ビスなどで留めつける。
・外装材取付けに際しては、断熱材の外側に通気層を形成し、外装材の下地となる胴縁を釘等で留め付けるため、外装材の重量を考慮し、釘やビス等の選定、留め付け間隔などに留意する。
・外側に壁厚が増すため、サッシ固定枠を壁外側に別途設けなければならない。
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