マンションの構造と材料

マンションの構造と材料に関する基本知識をまとめました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
S造、RC造、SRC造の違い、特徴
●鉄骨造(S造)
 
・鉄骨で骨組みを作る構造。
・鉄骨造の梁には、H形鋼と呼ばれる断面がH形のものが使われる。
・柱には箱形断面をもつ角形鋼管やH形鋼が使われる。
・事前に工場で角形鋼管、H鋼、I鋼などの規格鋼材を加工及び溶接して、工場から建築現場に運び、組み立てを行う。
・建築の際のコストが鉄筋よりも低いケースが多く、また広い間取りを確保できるため、アパート建築では多い。
 
●鉄筋コンクリート造(RC造)
 
・引っ張りに弱いコンクリートを補強するために鉄筋を配したコンクリートで構成された構造。
・引っ張り力が作用しても引き抜けないように異形鉄筋(表面に”リブ”や”節”と呼ばれる凹凸の突起を設けた棒状の鋼材)が用いられる。
 
●鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)
 
・鉄骨で柱や梁などの骨組みを組み、その周りに鉄筋を配筋してコンクリートを打ち込む構造。
・鉄筋コンクリート造と鉄骨造の長所を兼ね備えており、鉄筋コンクリート造に比べて耐震性などに優れ、柱や梁の断面も小さくすることができるため高層建築に用いられる。
 
●鉄筋と鉄骨の違い
 
・鉄骨造は、鉄筋に使う鉄より大きな鉄製や鋼製の部材(角形鋼管、H鋼、I鋼)などを用いる。
 
・鉄筋は直径数㎝の鉄の棒を複数用い型をつくり、その型をつくったところに、コンクリートを流し込むことで柱や梁、床、壁などをつくり建築物をたてる。
 
・鉄筋コンクリート構造の場合、他の構造に比べて防音性に優れている。
コンクリート、セメント、骨材、混和剤の概要
(1)コンクリートの概要
 
●コンクリートとは?
 
・セメントに水、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)を加えて練り混ぜたもので、混和材料(化学混和剤や混和剤)を加える場合もある。
 
・セメントを水で溶いて混ぜただけのものをセメントペースト、これに細骨材の砂を練混ぜたものをモルタルと呼び区別する。
 
●コンクリートの製造方法
 
①レディーミクストコンクリート
・生コンクリート工場で練り混ぜ合わせ、トラックミキサによって現場に運ばれる。
 
②現場練りコンクリート
・現場で混合されて作られる。
 
※プレキャストコンクリート
柱や梁などの鉄筋コンクリート部材をあらかじめ工場内で作って運搬する。
 
●コンクリートの長所、短所
 
○長所
・圧縮強度、耐久性、耐火性が高い。
・流動性があり、自由な造形が可能。
・アルカリ性のため、鉄筋が錆びにくい。
 
○短所
・引張り強度が低い。
・比重が重い。
・強度が出るまでに時間を要する。
・ひび割れを生じやすい。
 
(2)セメント
 
●セメントとは?
 
・水や液剤などにより水和や重合し硬化する粉体を指す。
・ほとんどがコンクリートとして使われている。
 
●セメントの分類
 
①ポルトランドセメント
・クリンカ(石灰石と粘土を混ぜて焼いたもの)+せっこう
・日本で使われるセメントの約70%を占める。
 
②混合セメント
・クリンカ+せっこう+混合材料
・高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント
 
③特殊セメント
 
(3)コンクリートの骨材
 
・骨材はコンクリートの容積の65~80%を占め、コンクリートの品質に大きく影響する。
・大きさにより細骨材、粗骨材に分類される。
・比重により普通骨材、軽量骨材、重量骨材に分類される。
・天然骨材、人工骨材、リサイクル骨材の種類がある。
 
(4)混和材料
 
コンクリートやモルタルの性質を改善したり機能を追加したりするために加える材料。
 
●主な使用目的
 
・ワーカビリティ(生コンの打ち込み作業のしやすさ)の改善。
・凝結や硬化時間の調整
・強度性状の改善
・耐久性の改善
 
●混和剤
 
・薬品的に少量使用し、以下のようなものがある。
 
①AE剤
界面活性剤の一種で、ワーカビリティと耐凍害性を向上させる。
 
②減水剤
セメント粒子の分散作用により、流動性を改善し、強度を向上させる。
 
③そのほかの混和剤
防水剤、防錆剤などの化学的な混和剤。
フレッシュコンクリートの性質、凝結・硬化時の現象
●フレッシュコンクリート(まだ固まっていないコンクリート)の性質
 
①ワーカビリティ
 
・材料分離を生ずることなく,運搬,打込み,締固め,仕上げなどの作業が容易にできる程度を表すフレッシュコンクリートの性質。
 
・影響を及ぼす要因としては,コンクリートの配(調)合条件,使用材料の種類および品質,練混ぜ時間など。
 
・天候、施工方法などといった作業環境も影響を与える。
 
②コンシステンシー
 
・変形あるいは流動に対する抵抗性の程度を表すもの。
 
③空気量
 
・混和剤を使用している場合、少しの空気を含んでいる。この空気泡は,コンクリートのワーカビリティーを改善し、耐凍害性を向上させる。
 
・全体の容積の4~5%が適当とされる。
 
④材料分離
 
・コンクリートは比重の異なる材料を調合するため、運搬時や施工中に材料が分離する恐れがある。
 
・骨材の分離は,重力に起因するものであり,骨材を分離させる力は粒子の半径の3乗に比例する。また,分離を妨げる力は,粒子が周囲から受ける抵抗であり,これは粒子の半径の2乗に比例する。従って,骨材粒子が大きいほど,また粘性が低いほど分離しやすい傾向がある。
 
・骨材(粗骨材)が局部的に集中、ブリージング。
 
●凝結・硬化処理における性質
 
コンクリートは打設後、フレッシュコンクリートの状態を経て、凝結・硬化する。この凝結・硬化家庭の中で以下のような現象や性質が現れる。
 
①凝結
 
・水とセメントが反応することで、こわばりを生じる現象。
 
②ブリージング
 
・打ち込み後のコンクリートは,密度の大きいセメントや骨材は沈降し,密度の小さい水は微細な物質を伴って上昇する。この水が上昇する現象(水の分離)をブリーディングという。
 
・粉末度が大きく,凝結時間が早いセメントほどブリージングは少なくなる。
・細骨材の粒度が細かいほど、ブリージングは少なくなる。
・水セメント比が大きいほどブリージングは増加する。
・化学混和剤の使用は,ブリージングの低減に有効。
・コンクリートの温度が低いほどブリージングは長く継続する。
・過度の締め固めや仕上げは,ブリージングを増加させる。
 
③レイタンス
 
・ブリーディングに伴って上昇した微粒分が、水分蒸発後にコンクリート表面に薄膜となって沈積したもの。
 
④温度上昇
 
・水とセメントの水和反応によって、水和熱が発生する。
 
・温度上昇は、セメントの種類,セメント量,コンクリートの打込み温度,養生温度,気象条件,コンクリート断面の大きさなども影響する。
 
・硬化時の温度が高くなると温度ひび割れの発生が懸念される。
 
⑤初期ひび割れ
 
・コンクリートの凝結過程で起こるひび割れ。
コンクリートの耐久性
(1)中性化
 
●中性化とは?
 
・本来高アルカリ性であるコンクリートが中性に近づく現象。
 
・コンクリート中の物質が炭酸ガスと反応して炭酸塩を生じることによる炭酸化が進み、アルカリ性が低下して中性化する。
 
●中性化による鉄筋コンクリートの劣化
 
・鉄筋を覆っているコンクリートが中性化すると、鉄筋に錆が生じる。鉄筋は錆びると体積が膨張するため、コンクリートにひび割れが発生しやすくなる。
 
ひび割れが起きるとさらに鉄筋のさびを助長してしまう。
 
・コンクリート中の水分と酸素の量により、鉄筋の腐食進行速度は異なる。
 
(2)乾燥収縮
 
・コンクリートには硬化した後も内部に多くの水が存在していて、乾燥してこの水が蒸発すると、その水の蒸発量に応じた体積の減少が生じて収縮する。
 
これによって生じるひび割れを、乾燥収縮ひび割れと呼ぶ。
 
・乾燥収縮は数ヶ月から数年を経て進行する。
 
・乾燥収縮が大きくなる原因としては、単位水量が多い、スランプ値(生コンの流動性)が大きい、水セメント比が大きい、セメントの粉末度が細かい、などがある。
 
(3)凍害
 
・コンクリート中の水分の凍結膨張によって発生するものであり、長年にわたる凍結と融解の繰り返しによってコンクリートが徐々に劣化する現象のことを言う。
 
・単位水量を少なくし、初期の養生期間にはコンクリートの温度が0度以下にならないようにする必要がある。

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