マンション標準管理委託契約書 概要

〇マンション標準管理委託契約書:3,6,9,10,25条以外
〇過去問
・管理業務主任者 H13問6-8、H14問6,8、H15問6-8、H16問7,9,13、H17問8,9、H18問7,8、H19問7,8、H20問8,9、H21問8-9、H22問7、H23問7-9、H24問7,8、H25問7-9、H26問7-9、H27問8、H28問7-9、H29問7-9,28
・マンション管理士 H13問31、H14問33、H15問32,33、H16問33、H17問33、H18問33、H19問、H20問、H21問、H22問、H23問、H24問、H25問、H26問、H27問、H28問、H29問32
 
 
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管理委託契約の概要
●管理委託契約の性質
 
・民法の委任契約(民法643条)であるとされている。
・管理会社には善管注意義務や報告義務が要求される。
・義務を果たさなかった場合(債務不履行)は、民法の規定により契約を解除されたり、損害賠償を請求されたりする場合がある。
 
〇管理会社の責任(①~④は民法の規定、⑤~⑦はマンション管理適正化法の規定)
①善管注意義務
②報告義務
③履行責任
④使用者責任
⑤守秘義務
⑥通知義務
⑦誠実義務
 
●契約締結時の書面交付
 
・管理会社は、管理組合の管理者等に対して、遅滞なく”必要事項を記載した書面”を交付しなければならない。(マンション管理適正化法73条)
→この書面の雛型となるのが”マンション標準管理委託契約書”であり、これを指針として十分に活用する通達が出されている。
・マンション管理適正化法に基づく”契約成立時に交付する書面”に記載すべきとされる事項は、この標準管理委託契約書に記載されている。
管理対象部分(2条)
①敷地
②専有部分に属さない建物の部分(規約共用部分を除く。)
エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、内外壁、床、天井、柱、バルコニー、風除室
③専有部分に属さない建物の附属物
エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、テレビ共同受信設備、消防・防災設備、避雷設備、各種の配線・配管、オートロック設備、宅配ボックス
④規約共用部分
管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫
⑤附属施設
塀、フェンス、駐車場、通路、自転車置場、ゴミ集積所、排水溝、排水口、外灯設備、植栽、掲示板、専用庭、プレイロット
管理事務、第三者への再委託
●管理事務
・詳細は以下の記事参照。
マンション標準管理委託契約書 管理事務
 
〇管理事務の内容
 ①事務管理業務
 イ)基幹事務
 ・会計処理、予算・決算案の作成、収支報告
 ・出納、滞納督促
 ・維持・修繕
 ロ)基幹事務以外
 ・理事会支援
 ・総会支援
 ・点検、諸官庁への届出、図書の管理
 ②管理員業務
 ③清掃業務
 ④建物・設備管理業務
 
●第三者への再委託(4条)
・”事務管理業務”は一括再委託ができない。
※マンション管理適正化法:一括再委託の禁止は”基幹事務”。
 
・管理事務を第三者に再委託した場合においては、再委託した管理事務の適正な処理について、責任を負う。
→排水管の清掃業務や消防用設備等の保守点検業務等は、再委託業者が業務を執行する上で直接甲に接触すること等もあることから、契約締結時に再委託する管理事務及び再委託先の名称が明らかな場合には、事前に甲に通知することが望ましい。
 
・管理事務のうち出納に関する事務は極めて重要であるので、管理費等の収納事務を集金代行会社に再委託する場合その他の出納に関する事務を再委託する場合は、再委託事務等を事前に甲に通知すべきである。
通知義務、守秘義務等
1)通知義務
 
●通知義務(書面必要)
・以下の場合、速やかに、書面をもって、相手方に通知しなければならない
①役員又は組合員が変更したとき
②組合員がその専有部分を第三者に貸与したとき
③管理会社が商号又は住所を変更したとき
④管理会社が合併又は会社分割したとき
⑤管理会社がマンションの管理の適正化の推進に関する法律の規定に基づき処分を受けたとき
⑥管理会社が破産、解散等したとき
 
●通知義務(書面は必須ではない)
〇滅失、き損、瑕疵等の事実を知った場合(管理組合、管理会社双方)
・速やかに、その状況を相手方に通知しなければならない。
 
〇専有部分等への立入りを拒否された場合
・組合員等に対して、専有部分や専用使用部分への立入を請求した際、組合員等が立入りを拒否した場合は、その旨を通知しなければならない。
 
〇緊急時の専有部分等への立入り
・災害又は事故等の事由により、緊急に立入りした際には、組合員等に対し、事後速やかに、報告をしなければならない。
 
2)守秘義務等(16条)
 
・マンション管理業者でなくなった後及びマンション管理業者の使用人でなくなった後にも守秘義務が課せられている。
・組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いを確保しなければならない。
〇例
・管理会社は、その従業員が、その業務の遂行に関し、管理組合に損害を及ぼしたときは、使用者責任を負う。
・管理会社の従業員は、退職後も守秘義務を負う。
※管理会社の従業員が退職後は、管理会社との使用関係が終わっているので、元従業員の守秘義務違反に対しては、管理会社は使用者責任を負わない。
緊急時の対応
●緊急時の業務(8条)
・天災地変による災害、漏水又は火災等の偶発的な事故等をいい、事前に事故等の発生を予測することが極めて困難なもの。
 
〇承認を受ける時間的な余裕がないもの
・承認を受けないで実施することができる。
・この場合において、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を通知しなければならない。
 
●専有部分等への立入り(13条)
・必要があるときは、組合員等に対して、その専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
 
〇組合員等がその専有部分等への立入りを拒否した場合
・管理会社はその旨を組合に通知しなければならない。
 
〇緊急時
・災害又は事故等の事由により、緊急に行う必要がある場合、専有部分等に立ち入ることができる。
・この場合において、立ち入った専有部分等に係る組合員等に対し、事後速やかに、報告をしなければならない。
売却等依頼時の管理規約の提供等(14条)
1)売却等依頼時の管理規約、重要事項調査報告書の提供
 
・宅地建物取引業者が、専有部分の売却等の依頼を受け、管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項(重要事項調査報告書)の開示を求めてきたときは、開示するものとする。
・組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。
・要する費用を管理規約の提供等を行う相手方から受領することができる。
・マンション管理会社が提供・開示した件数、受領した金額等については、第9条第3項の報告の一環として管理組合に報告することとすることも考えられる。
 
〇提供方法
イ)管理規約
・管理規約の写しを提供。
・管理規約が電磁的記録により作成されている場合には、記録された情報の内容を書面に表示して、又は電磁的方法により提供するものとする。
ロ)重要事項調査報告書
・書面又は電磁的方法
 
●H28年3月改定の主な項目
①開示対象情報の充実
・管理規約
・管理費等の月額、当該組合員の滞納額。積立金総額、全体滞納額
・修繕の実施状況、大規模修繕工事の予定、アスベスト調査、耐震診断結果
・役員の選任方法、理事会回数等
・管理費等の額の変更予定、特定の者の管理費等の減免措置の有無。
・専有部分使用制限(ペット等)や関連の使用細則条項
・駐車場の空き状況、共用部分の損害保険、管理業者関係、敷地及び共用部分の事故・事件等
②開示の相手方の拡大
・組合員から媒介の依頼を受けた宅建業者、売却予定者(組合員)
③開示方法の充実
・管理規約は写しを提供、その他は書面又は電磁的方法。
・交付の相手方に費用を負担させることも可能。
④その他
・敷地・及び共用部分の事故・事件は、開示にあたり組合に確認することも考えられる。
・プライバシー情報が含まれている場合、個人情報保護法の趣旨を踏まえる必要。
 
2)情報開示の範囲
 
●原則
・管理会社は、当該組合員が管理費等を滞納しているときは、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができる。
・管理会社が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となる。→管理委託契約書に定める範囲外の事項については、組合員又は管理組合に要確認。
・管理委託契約書に定める範囲内の事項であっても、”敷地及び共用部分における重大事故・事件”のように該当事項の個別性が高いと想定されるものについては、該当事項ごとに管理組合に開示の可否を確認し、承認を得た上で開示することとすることも考えられる。
 
●敷地及び共用部分における重大事故・事件に関する情報
・特定の個人名等が含まれている場合を除き、個人情報保護法の趣旨等に照らしても、提供・開示に当たって、特段の配慮が必要となる情報ではない(売主たる組合員の管理費等の滞納額を含む。)。
 
●個人情報、プライバシー情報
・個人情報保護法の趣旨等を踏まえて適切に対応する必要があるため、管理会社は、管理組合の求めに応じ、具体的な対応方法について予め明らかにしておくことが望ましい。
その他の業務
1)管理事務室等の使用(7条)
 
・管理事務を行わせるために不可欠な管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、器具、備品等(次項において”管理事務室等”という。)を無償で使用させるものとする。
 
●”管理事務室等の使用”に係る費用(水道光熱費、通信費、備品、消耗品費等)の負担
・管理組合、管理会社のどちらが負担するか規定する。
 
〇”管理事務の実施”に係る費用(水道光熱費、通信費、備品、消耗品費等)の負担
・管理組合が負担する。
 
2)有害行為の中止要求(11条)
 
・組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し、組合に代わって、以下の行為の中止を求めることができる。
①法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
②建物の保存に有害な行為
③所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
④管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
⑤組合員の共同の利益に反する行為
⑥前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
・中止を求めても、なお組合員等がその行為を中止しないときは、その責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は組合が行うものとする。
契約の更新、解約、解除等
1)契約の解除(18条)
 
●催告した上での解除
・相手方が、義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。
・相手方に対し、損害賠償を請求することができる。(具体的に損害賠償の額を定めた規定はない。)
 
●即時解除
管理会社が以下に該当する場合は、管理組合は即時に契約解除が可能。
・銀行の取引停止・破産・会社更生・民事再生などの状況のとき
・合併又は破産以外の事由により解散したとき
・マンション管理業の登録の取消しの処分を受けたとき
※→業務停止処分を受けただけでは、解除できない。
 
2)解約の申入れ(19条)
 
・相手方に対し、少なくとも3月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。
・民法第651条の規定を踏まえ、契約当事者双方の任意解除権を規定したもの。解約の申入れの時期については、契約終了に伴う管理事務の引継等を合理的に行うのに通常必要な期間を考慮して設定している。
 
3)契約の更新(21条)
 
・契約を更新しようとする場合、有効期間が満了する日の3月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする。
→適正化法第72条により、管理委託契約を更新しようとするときは、あらかじめ重要事項説明を行うと定められていることを踏まえ、3月前までに更新の申入れを行うこととしたもの。
・自動更新は認められていない。
 
●暫定契約
・契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。
→この場合にも適正化法第72条に規定する、同一の条件で契約を更新しようとする場合の重要事項説明等の手続は必要。
 
4)法令改正に伴う契約の変更(22条)
 
・契約締結後の法令改正に伴い管理事務又は委託業務費を変更する必要が生じたときは、協議の上、本契約を変更することができる。
 
5)反社会的勢力の排除(24条)
 
・マンション管理業者自身が反社会的勢力に該当しないことを確約し、判明した場合には、管理組合は管理委託契約を解除することができる旨を規定。

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