建築用仕上塗材の概要

建築用仕上塗材の概要、改修の設計・方法、改良工事などについてまとめました。  
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建築用仕上塗材の概要
1)建築用仕上塗材の概要
 
●仕上塗材(しあげぬりざい)とは
・マンションの外装や内装の仕上材として使用される塗料は、一般にペンキと呼ばれる一般塗料とは区分され、”仕上塗材”と呼ばれる。
・数mm程度の比較的厚膜に施工される材料。
 仕上塗材(数ミリ程度)、一般塗料(数十ミクロン)
・仕上塗材は、厚みをもたせて、外装や内装に立体的な模様を付与した仕上材として施される。
・一般に”下塗材+主材+上塗材”の組合せ。
 
〇塗り厚:数mm~約10㎜
〇国交省 標準工事仕様書の区分:左官工事(仕上塗材仕上げ)
〇粘度・粘性:高粘度
〇塗装器具
・万能ガン、スタッコガン、リシンガン、こて、砂骨ローラー(マスチック)
〇仕上がり性
・塗膜が厚い
・自由自在なテクスチャー
・パターン付け
 
●外壁等仕上塗材の種類
・仕上塗材はJIS A 6909建築用仕上塗材で規格化されている。
 薄付仕上塗材:単層、リシン
 厚付仕上塗材:単層、スタッコ
 軽量骨材仕上塗材:単層、ひる石吹付
 複層仕上塗材:複層、吹付タイル
 可とう性形改修仕上塗材:複層、微弾性フィーラー
・マンションの外壁には、造形される模様やテクスチャーが豊富、色彩や光沢の自由度が高いことから、複層形の仕上塗材が多く採用されている。
 
2)塗料との相違
 
●塗料
・仕上塗材の”上塗材”に該当。
 
〇塗り厚:数十ミクロン
〇国交省 標準工事仕様書の区分:塗装工事
〇粘度・粘性:低粘度
〇塗装器具
・はけ、ローラー、スプレーガン、エアレススプレー
〇仕上がり性
・塗膜が薄い
・刷毛目がでにくい
・レベリング性がよい
・一般塗料の厚みでは仕上塗材のような模様は作れない。
 
3)仕上塗材の主要な性能
 
①美観
・テクスチャー
・光沢、色調
・耐汚染
②耐久性
・耐水性、耐アルカリ性
・耐候性、耐熱性
・付着力
③下地保護
・中性化抑制(炭酸ガス、SOX、NOXの透過抑制)
・耐透水性、耐透湿性
・塩化物イオン透過抑制、耐酸性
・下地挙動への追従性
・断熱性
・凍結融解抵抗性
 
4)仕上塗材のテクスチャーと施工方法の例
 
①平滑
・平らな面の仕上り
・刷毛、エアレス、ウールローラー、スプレー
②さざ波
・さざ波状の山立ち仕上げ
・多孔質ローラー
③砂壁状
・砂状の形状が露出した粗い仕上げ
・リシンガン吹付
④ゆず肌
・ゆずの表面肌状の仕上げ
・リシンガン、タイルガン吹付
④凹凸
・大小の玉を散らした山・谷のはっきりした仕上げ
・タイルガン吹付
⑤ヘッド押さえ
・凹凸の凸部をローラーで押えた仕上げ
・タイルガン吹付後凸部押え
⑥スタッコ状 吹放し
・粗く山・谷の差を強調した仕上げ
・スタッコガン吹付け
⑦スタッコヘッド押え
・スタッコの山部をコテ・ローラーで平らに押さえたり、カットした仕上げ
・スタッコガン吹付け後ヘッド押え
⑧ホーロー調
・ゆるく大きな波を打ち艶やかで金属ホーローのような滑らかな仕上げ
・タイルガン吹付け
下塗材・主材・上塗材
1)下塗材、主材、上塗材、
 
〇下塗材
・下地と次に塗る主材の接着材的な役割。
・下地の多孔性による主材の過度の吸い込みや、下地のアルカリ性などによる悪影響が上層の塗膜に及ぶのを防止する役割。
・シーラー、プライマーとも称される。
・下塗材には,基剤及び硬化剤を混合して使用するものがある。
 
〇主材
・主として仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成する目的で使用する。仕上塗材の種類や目的によって比較的平たんに仕上げられる場合もある。
・主材には基剤及び硬化剤、又は粉体及び混和液を混合して使用するものがある。
 
〇上塗材
・仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上、吸水防止などの目的で使用する。
・水系、弱溶剤系、溶剤系などがある。
・上塗仕上げとして、つやあり、つやけし、メタリックなどがある。
・上塗材には基剤及び硬化剤を混合して使用するものがある。
 
2)上塗材の選定
 
●耐候性(複層仕上塗材の耐候性)
・耐候形1種、2種、3種の区分
・キセノンランプによる促進耐候性試験によって性能をグレード化(1種>2種>3種)
 
●上塗材の樹脂と耐候性
①フッ素系塗料
・耐候性:優
・価格指数(材・工):劣
・耐候形の品質(JIS A6909の区分の目安):1種
・耐用年数の目安:15~20年
・耐候性に非常に優れているが、汚染性が低く、価格が高い
②アクリルシリコン系塗料
・耐候性:良
・価格指数(材・工):可
・耐候形の品質(JIS A6909の区分の目安):1種
・耐用年数の目安:12~15年
・ウレタンに比べると高価だが、汚染性・耐久性が高い
③ウレタン系塗料
・耐候性:可
・価格指数(材・工):良
・耐候形の品質(JIS A6909の区分の目安):2種
・耐用年数の目安:7~10年
・耐久性と価格のバランス良い
④アクリル系塗料
・耐候性:劣
・価格指数(材・工):優
・耐候形の品質(JIS A6909の区分の目安):3種
・耐用年数の目安:4~6年
・安価だが耐久性が低い
 
●耐汚染性(雨筋汚れが目立たない塗材)
・塗膜の表面を親水性にする方法などによって汚れにくくした塗材(既存品との比較により評価)
仕上塗材の改修設計
1)改修設計の考え方
 
①美観の回復
・仕上塗材の色、デクスチャー、光沢、耐汚染性
→既存塗膜の状態から、要求される耐汚染性(防藻性など含む)が確認できる
・構造的に問題あれば色などでの対処も検討できる
 
②下地の保護(仕上塗材の耐久性、下地保護)
・耐候性、耐水性、耐アルカリ性など塗膜の耐久性、中性化抑制、下地挙動への追従性などの下地保護性
→既存塗膜の状態から要求される耐候性や、割れなどの状況から要求される下地追従性などがわかる。
・中性化深さの測定を基に、改修による中性化抑制効果により下地保護性能の回復を期待できる仕上塗材の選定が可能になる。
 
③改修工事のタイミング
〇劣化段階を考慮
・美観の維持を目的とする場合は変退色や光沢度低下などの劣化進行が小さくても改修の動機として重視されるが、下地の保護を目的とする場合はあまり重視されない。
→下地の劣化が進んでいない状態だと、大掛かりな下地調整は必要がなくなるが、改修周期は短くなる.
・上塗りのみの劣化段階(比較的に軽微な)で改修を行うことが望ましい。
 
〇修繕計画、修繕周期
・修繕計画と照らし合わせ、改修工事のタイミングを決定する。
・仕様に関しては修繕周期を加味し、耐候性、耐久性、その他機能性を考慮した仕様の選定が望ましい。
 
2)既存塗膜の処理方法の選定のための要因
 
①建物の立地条件、設定耐用年数、改修コスト、工期
②既存塗膜の種類、既存塗膜の劣化状態、下地の種類
③処理技能レベル
④改修に用いる仕上塗材の種類
⑤改修に用いる仕上塗材の工法・テクスチャー
 
3)改修材料・工法の選定時のポイント
 
・仕上面の状態、耐用年数、塗膜の機能、価格
・要求される性能
・中性化抑制効果
・有機溶剤の削減
・既存塗膜との適合性
・シーリング材との適合性
 
4)改修工事における目標とする耐用年数
 
・適用する仕上塗材の種類やその工法の特性のみによって決定されるものではなく,下地や部位さらには使用される環境条件や用途などによって変化する。
・下地の補修方法や既存塗膜の処理方法などによっても大きな影響を受ける。
・上述の項目以外にも材料性能を十分に発揮させるための施工工程,さらには検査の項目や方法などを十分に検討して仕様書を作成しておくことが重要。
建築用仕上塗材の改修方法
1)一般的な改修方法
 
①仕上塗材の上塗材表面のみの劣化
・表面ケレン後に上塗材塗り
②仕上塗材の主材層からの劣化(膨れ、割れ、剥がれ)
・仕上塗材の全面除去後、仕上塗材再施工
③仕上塗材の主材層の部分劣化
・主材の部分除去、除去部分の再施工・模様合わせ後、上塗材の全面塗装
 
2)典型的な改修例
 
〇薄付け仕上塗材
・高圧水洗(15MPa)で仕上塗材層を部分除去し、薄付け仕上塗材で改修
・全面除去し、仕上塗材等で改修
 
〇複層仕上塗材
・高圧水洗で上塗材、主材を部分除去し、可とう形改修用仕上塗材で改修
・主材まで劣化した部分を除去し、除去部分に模様付けし、上塗材を全面塗装
・劣化した上塗材を洗浄し、上塗材を全面塗装
 
〇厚付け仕上塗材
・洗浄、上塗材再塗装
・主材の部分的除去、部分的模様付け等
改良工事
1)長寿命につながる機能
 
●躯体保護の持続性
①雨水、炭酸ガス浸入抑制
→コンクリート中性化抑制
 
②連続塗膜の持続性
・モルタルなどの下地にひび割れが生じた際、伸縮性を持たない塗材では一緒に塗膜にもヒビが生じてしまう。
→ひび割れ追従性を有する塗材では、下地のヒビに追従して表面化することを防ぐ。
 
〇ひび割れ追従性、弾性性能
・弾性性能を有する塗膜は既存塗膜に発生している微細なひび割れ、巣穴等をカバーすると共に、ひび割れ追従性を発揮する。
 
〇弾性タイプの塗材
・弾性タイプの塗材は、下地の微細なひび割れに対して優れた追従性を示し、雨水の浸入を防止すると共にコンクリート下地の中性化防止に役立つ。
 
〇防水形と可とう形
・防水形:弾性、高弾性
・可とう形:微弾性(硬い塗膜を硬質、伸びる性質を持つ防水形の弾性塗膜を弾性とすると、可とう形はその中間に位置づけられる)
 
●美観と持続性
 
①耐候性塗料系の上塗材への適用化
②低汚染型塗料の上塗材活用
・親水性塗膜による低汚染化
→膜表面の緻密性は高く、汚れが付着し難い
→高い表面親水性により、汚れが浮き上がる
→浮き上がった汚れは降雨とともに流れ落ちる(セルフクリーニング)
塗膜表面を親水性にすることにより雨水が塗膜となじみ汚れを洗い流す。
 
2)可とう形改修用仕上塗材
 
・既存塗膜を下地とする改修に適用。
・シーラーとフィラーの機能を兼ね備えているので、さまざまな種類の既存塗膜に直接塗装できる。
・下地のひび割れに追随する
 
●従来の一般的な改修工法との比較
 
〇従来の一般的な改修工法
・セメント系下地調整塗材 + 下塗り + 各種仕上げ
〇現在の主流
・可とう形改修用仕上塗材 + 上塗り
 
〇セメント系下地調整材(JIS A6916)
・強度が高く、強固な被塗装面を形成することができる。
・比較的通気性が高く、塗膜膨れ防止の緩衝作用を有するのでセメント系下地、骨材混入塗膜などに有利。
〇可とう形改修用仕上塗材(JIS A6909)
・微弾性機能があり、比較的防水性に優れている。
・樹脂系既存塗膜が下地の場合、シーラーを省略することができる。

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