石綿含有仕上塗材の除去手順(石綿防止対策徹底マニュアル)

石綿含有仕上塗材の除去手順についてまとめました。
※厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局大気環境課「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」令和3年3月
 
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仕上塗材の法規制の概要
(1)令和3(2021)年4月からの変更点
 
●大気汚染防止法による規制
・令和2(2020)年5月の大気汚染防止法の改正(一部を除き令和3(2021)年4月施行)により施工方法にかかわらず規制対象とされるとともに、作業基準が設けられ、仕上塗材特有の周辺環境への石綿飛散防止方法が示された。
 
●石綿則による規制
・従前から規制対象であったが、令和2(2020)年7月の石綿則の改正(一部を除き令和3(2021)年4月施行)において、施工方法にかかわらず「吹付けられている石綿等」から除かれることとなり、仕上塗材の除去に係る措置が定められた。
 
(2)石綿含有仕上塗材に係る具体的な措置
 
●大気汚染防止法による規制
〇作業計画の作成
※計画の届出については対象外
〇作業基準の遵守
〇各種掲示・表示
〇作業完了の確認
〇作業状況の記録・保存
・3年保存、概要は40年
〇事業発注者への説明等
 
●石綿則
〇作業計画の作成及び作業者への周知
〇除去等に係る措置
〇石綿作業主任者の選任
〇保護具の使用
イ)電動工具を使用しない場合
・呼吸用保護具:防じんマスクor電動ファン付き
・保護衣:専用の作業衣or保護衣
ロ)電動工具を使用する場合
・呼吸用保護具:電動ファン付き
・保護衣:フード付き保護衣
〇各種掲示・表示(一部は安衛則、通達)
〇除去に係る措置の遵守
〇記録の保存等
・3年保存、概要は40年
〇作業者
・全員が石綿特別教育(石綿使用建築物等解体等業務特別教育)を受講している必要がある。
〇立入禁止措置
・作業場を離れる時や帰宅する時においても作業場へ関係者以外が立ち入らないように封鎖をする。
 
●規制の対象外
・上塗り作業等、現存する材料等の除去を行わない場合は、大防法及び石綿則の規制対象とならない。
 
●廃棄物処理法
・石綿含有廃棄物として処理
 
●都道府県等の条例等
・大防法第18条の17や石綿則第5条に基づく作業の実施の届出、安衛法第88条第3項の計画の届出は不要であるが、都道府県等によっては条例等に基づき届出が必要な場合があるため、作業に際しては都道府県等における取組み(条例等)の確認が必要。
 
(3)大気汚染防止法と石綿則の規制の条項
 
  項目      大気汚染防止法        石綿則
事前調査の実施   18条の15第1項(規則16条の5) 3条
作業計画の作成   18条の14(規則16条の4第一号) 4条
作業、計画の届出  届出対象外          届出対象外
事前調査結果の報告 18条の15第6項(規則16条の11) 4条の2
事前調査結果の掲示 18条の15第5項 3条
その他掲示     18条の14(規則16条の4第二号) 15条他
隔離養生(負圧不要)18条の14(規則別表第7の3)  6条の3
立入禁止措置    ―              15条
湿潤化       18条の14(規則別表第7の3)  6条の3
完了確認      18条の14(規則16条の4)    ―
石綿作業主任者   ―              19条
石綿特別教育    ―              27条
呼吸用保護具    ―              14条
保護衣等      ―              14条
作業記録      18条の14(規則16条の8)   35条
石綿含有仕上塗材の除去に関する規制
(1)石綿含有仕上塗材の除去に係る各法律の規制内容
 
●大気汚染防止法(規則別表第7の3の項)
・除去する建材を薬液等により湿潤化すること。
・電気グラインダーその他の電動工具を用いて建材を除去するときは、除去を行う部分を事前に隔離養生(負圧不要)するとともに、除去する建材を薬液等により湿潤化すること。
・除去後、作業場内の石綿を清掃すること。隔離養生(負圧不要)をした場合は、当該隔離養生を解くに当たって隔離養生内の清掃その他の石綿の処理を行うこと。
 
●石綿則(13条、第6条の3)
・石綿等を塗布し、注入し、又は貼り付けたものの解体等の作業(電動工具による除去は除く)を行う時は、石綿等を湿潤な状態のものとすること。
・電動工具を使用して除去する場合はビニールシート等で隔離養生(負圧不要)するとともに、建材を常時湿潤な状態に保つこと。
 
(2)石綿含有仕上塗材の除去作業に関する規制の概要
 
●湿潤化
・原則として湿潤化を行う。剥離剤を使用する方法も含む。
・作業前に散水等により対象となる材料を一度湿潤な状態にすることだけではなく、切断面等への散水等の措置を講じるなど、作業中においても湿潤な状態を保つ必要がある。
 
●湿潤化を行うことが著しく困難な場合
・HEPAフィルタ付きの十分な集じん性能を有する電動工具を使用することや隔離養生(負圧不要)を行うことにより、飛散防止措置を実施する。
 
●隔離養生
・電気グラインダー等の電動工具を用いて石綿含有仕上塗材を除去する作業においては、上記の湿潤化に加えて隔離養生(負圧不要)を行わなければならない。
※電動工具を用いて除去する工法は、仕上塗材の特性上、高圧水洗工法や剥離剤工法に比べ十分な湿潤状態を保持できないため、破片や粉じん等が周辺へ飛び散るリスクを抑えるための措置。
・電動工具を使う場合は、上記飛散防止措置に加え集じん機能付きの工具を使用するか高性能真空掃除機で粉じんを吸い取る等の措置を講じることが望ましい。
・電動工具を使用する場合であっても、十分な集じん機能を有する集じん装置を使用する場合は、当該措置を湿潤化及び隔離養生(負圧不要)と同等以上の効果を有する措置と判断し、隔離養生を行わないことも可能。
・高圧水洗工法、超音波ケレン工法等を用いる場合についても、各作業現場の状況に応じて湿潤化に加えて隔離養生(負圧不要)を行うことが望ましい。
石綿含有仕上塗材の除去を行う場合の一般的手順
(1)事前調査
 
●事前調査(元請業者が実施)
・事前調査は、解体等工事の作業に係る建築物等の全ての部分について行うものであり、内装仕上材の内側や下地等、外観からでは直接確認できない部分についても網羅して調査を行う必要がある。目視調査の段階で当該建築物等の構造上確認することができない箇所があった場合には、解体等工事に着手後、目視が可能となった時点で調査を行うことが必要である。
〇事前調査の対象外
・平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等
・既存の塗装の上に新たに塗装を塗る作業等、現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業。
〇書面調査、現地での目視調査
・まず、設計図書等を確認し、書面上で石綿含有建材の使用場所等を把握する。その後、現地において設計図書と異なる点がないかを確認するとともに、建築材料に印字されている製品名や製品番号等を確認することにより使用されている建材を確認する。
・確認した建材は、石綿(アスベスト)含有建材データベースとの照合などにより石綿含有の有無を判断する。ただし、データベースに記載がないからといって石綿含有無しと判断してはならない。
・書面及び現地での目視調査は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に規定される石綿含有建材調査者等に依頼することが望ましい。(令和5(2023)年10月からは義務付け)
〇分析調査による判定or”含有みなし”
・書面調査や現地での目視調査を実施し、これらの調査で建材の石綿含有の有無が分からなかった場合は分析調査を行い、石綿含有の有無を判断する。
・ただし、石綿含有が不明な建材を石綿含有ありとみなして飛散防止対策を行う場合は分析調査を行う必要はない。”含有みなし”とした場合、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならない。
・分析調査は、厚生労働大臣が認める分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者に依頼することが望ましい。(令和5(2023)年10月からは義務付け)
〇事前調査時の石綿の飛散・ばく露防止
・事前調査では、石綿を含有する可能性がある粉じんを飛散させないこと、調査者等の粉じん吸入を防ぐことが必要となる。
・建材に表示等されている情報の確認(裏面等の確認)は、原則、照明やコンセントなどの電気設備の取り外し等により行い、建材の取り外し等はできる限り避ける。
・やむを得ず建材の取り外し等を行う際や分析調査のための試料採取の際には、呼吸用保護具の着用や湿潤化など、作業に応じて石綿則に基づく必要な措置を講じる。
 
●事前調査結果及び作業方法の発注者への説明
・大防法では、元請業者は発注者に対して書面により事前調査の結果等を報告することが義務づけられている。
・事前調査において破壊しないと調査できない場所であって解体等工事が始まる前には石綿含有建材の有無を確認できなかった場所があった場合については、解体等工事開始後に事前調査を行った者が確認する必要があること、新たに石綿含有建材が発見された場合は、作業を中断し、必要な手続きを取る必要があることを発注者に説明する。
 
(2)報告、届出
 
●元請業者による事前調査結果の都道府県知事及び労働基準監督署への報告
・令和4(2022)年4月1日より規模要件に応じて電子システムにより報告する。
※石綿無しでも報告必要
 建築物の解体:80㎡以上
 建築物の改修等、工作物:請負金額100万円以上
 
●届出
※大防法第18条の17、石綿則第5条の作業の実施の届出、安衛法第88条第3項の計画の届出
・石綿含有仕上塗材の解体等工事の場合は、届出対象外。
 
(3)掲示等による事前調査結果・作業内容の周知
 
・事前調査結果・作業内容を公衆・作業者に見やすいように掲示。
・事前調査の結果の掲示は、石綿含有建材の使用の有無や大防法や石綿則の届出の対象か否かに関わらず義務付けられているものであり、全ての解体等工事で掲示しなければならない。
・事前調査結果の現場への備え付け
・下請負人への説明
 
(4)作業前処理
 
〇電動工具を用いずに除去する場合
・必要に応じて養生
〇電動工具を用いて除去する場合
・隔離養生(負圧不要)
〇推奨される措置
・作業基準等で養生が求められていない作業においても、作業場所近傍に民家が隣接している場合や、隣接区画で働いている人がいる等、周辺の状況によっては外周養生を行う
 
(5)除去作業
 
〇石綿含有仕上塗材の常時湿潤化
・常に湿潤な状態とした上で除去する
 
〇石綿含有仕上塗材の除去
・解体の場合は、躯体等の解体に先行して撤去する
 
●湿潤化、隔離養生と同等以上の効果を有する措置
・十分な集じん機能を有する集じん装置を使用する場合は、湿潤化及び隔離養生(負圧不要)と同等以上の効果を有する措置と判断しうる工法と考えられる。
 
〇十分な集じん機能を有することを判断するための要件
少なくとも以下を全て満たした上で、湿潤化及び隔離養生(負圧不要)と同等以上の粉じん飛散防止効果があることを個々の現場ごとに示すが必要ある。
・集じん装置を備えたカバー付きの工具であること
・集じん装置はHEPAフィルタを有し、集じんした石綿等が作業空間その他外部環境に漏出しないこと
・当該集じん装置付き工具の集じん性能として、作業中の作業場所の総繊維濃度が0.15本/cm3(作業環境の石綿管理濃度)を下回ることが示されていること
 
(6)事後処理
 
〇作業場内の清掃
 
〇取り残しがないことの確認
・石綿作業主任者等必要な知識を有する者が取り残しの有無を確認する。
・改修等工事の場合は既存の石綿含有仕上塗材を完全に除去するとは限らない。その場合は、既存の石綿含有仕上塗材が下層に残存していることがわかるように記録を残す必要がある。既存仕上塗材層に石綿が含有されている場合は、解体時に除去する必要がある。
 
〇隔離養生・養生の撤去
・隔離養生(負圧不要)を伴う作業の場合は、取り残しの確認及び清掃後に隔離養生を解除する
 
〇仕上清掃
・清掃は、高性能真空掃除機にて行う。隔離養生(負圧不要)を行った場合は、エアレススプレイヤにより飛散防止処理剤等を散布することが望ましく、その後高性能真空掃除機にて清掃を行う。
 
〇廃棄物の保管・運搬・処理
・石綿含有仕上塗材を除去した廃棄物は、石綿含有廃棄物の中でも石綿の飛散性が比較的高いおそれがあることから、保管・運搬の際には確実な梱包を行う必要がある。
・廃棄物の性状が粉状又は泥状であり、袋の破損等が起こると廃棄物が流出する蓋然性が高いため、確実な梱包として十分な強度を有する耐水性のプラスチック袋で二重梱包する。
・乾燥により飛散性が増すことを防ぐため、梱包の前に粉じん飛散防止処理剤等の薬剤により安定化等の措置を講ずることが望ましい。
 
〇作業記録の作成、作業が適切に終了したことの確認
・除去等作業が適切に行われたことの確認は、①除去等作業において、作業計画どおりの飛散・ばく露防止措置がとられていたこと、②除去作業終了後に除去面に石綿の取り残しがないか(封じ込め又は囲い込みを行う場合は、適切な飛散防止措置がとられていること)、その他作業区域内へ破片の飛散や堆積粉じんがないかについて行う。
・計画どおり適切な飛散・ばく露防止措置がとられていたことの確認のためには、作業計画の分担に応じて飛散・ばく露防止措置の内容等を記録しておく必要がある。
 日々の作業の記録は、当該作業の実施者が行い、解体等工事の終了まで保存しなければならない。
・解体等工事の元請業者等は、除去等作業の前・中・後において、適宜、日々の作業の記録の確認や現場の巡回により作業の状況を把握し、計画どおり適切な飛散・ばく露防止措置がとられていたことの確認を行う。
・除去等作業終了後、除去等作業の記録、確認を適切に行うために必要な石綿等に関する知識を有する者が行った石綿の取り残しがないことの確認結果を確認し、確認したことを証明する記録を作成してとりまとめる。
 
〇発注者への終了報告
・大防法では、解体等工事の元請業者は、除去等作業が終了したときはその結果を遅滞なく発注者に書面で報告しなければならないこととしている。また、発注者に報告した書面の写しも保存する必要がある。
 
〇確認結果の記録及び終了報告の保存
・事前調査結果の記録
高圧水洗工法による石綿含有仕上塗材の除去手順
(1)外部足場の設置
 
・仮設足場組立のため、外壁を穿孔してアンカーを打込む場合やコア抜きする場合の条例等による届出の有無については、事前に都道府県等に確認
 
(2)養生、準備
 
●養生
・廃水回収のため床面の養生、周辺への飛散防止のため最上部、周辺の養生を行う。
・廃水を全量回収するため、床面は防水シートで養生し、シートの端部を立ち上げる等して廃水の流出を防止する。
 
●高圧ポンプ等設置、廃水処理装置の設置
・(超)高圧ポンプ等除去装置:(超)高圧ポンプ、吸引装置(専用車両含む)
・廃水処理装置:排水沈殿ろ過槽、汚泥貯留槽
 
(3)除去作業
 
〇(超)高圧水による切削除去
〇吸引装置(バキューム)による吸引
・吸引装置の排気はHEPAフィルタを通して排出
・除去した塗材及び水は回収して固液分離
〇廃水の処理
・未処理の廃水が作業場外へ流出・地下浸透しないようすべて回収し、適切に処理した上で放流する必要がある。
・回収した廃水は、凝集剤などを用いて泥分を沈殿させる。
・廃水処理装置のノッチタンク等から除去した石綿含有仕上塗材等を廃棄物として取り出す際の、タンク周辺にこぼれる廃水に含まれる石綿の飛散防止対策(床にこぼれた廃水の水分が蒸発することに伴う飛散)として、廃水処理装置全体を周囲が養生された空間内に設置し、こぼれた廃水は適切に処理する。
〇水の処理
・上記上澄み水は、ろ過後下水道等に放流する。
〇汚泥の処理
・上記沈殿物は、吸収剤などを用いて吸着させるか、セメントにより固化して、石綿含有廃棄物として廃棄物処理する。
 
(4)撤去、清掃
 
〇床面、足場上、養生面等清掃
〇取り残しの確認
・目視により確認
〇作業場内足場の解体、場外搬出
〇養生の撤去
・養生の撤去前に清掃及び石綿繊維の処理が必要。
・養生シートを廃棄する場合は、石綿含有廃棄物として処理。
〇外部足場の撤去
 
(5)最終清掃、記録
 
〇最終清掃
〇石綿含有廃棄物の搬出
・石綿含有廃棄物収集運搬車へ積み込み
・収集運搬車シート覆い
・石綿含有廃棄物として許可業者に処分を委託
〇記録
・施工記録
・作業員の作業記録
剥離剤を用いる工法による石綿含有仕上塗材の除去手順
(1)外部足場の設置
 
・仮設足場組立のため、外壁を穿孔してアンカーを打込む場合やコア抜きする場合の条例等による届出の有無については、事前に都道府県等に確認
 
(2)養生、準備
 
●養生
・電気グラインダー等による除去を併用する場合は、隔離養生(負圧不要)が必須(十分な集じん機能を有する電動工具を使用する場合は除く)。
・その他の工法を併用する場合は、壁面等の汚れ防止等のための養生を必要に応じて実施。
 
●剥離剤の搬入、噴霧装置等の設置
・噴霧装置は吹付け施工する場合に設置
 
(3)除去作業
 
●試験施工
・試験施工により適合条件の確認を行う。
〇手順
・剥離剤の塗付けor吹付け
→放置(湿潤軟化・膨潤等)
→塗膜の除去
・不適の場合は他の工法を検討
〇確認事項
・剥離剤の剥離効果が期待できない場合がある。一般的に、無機系材料が結合材となっている仕上塗材を剥離剤によって軟化させることは難しい。そのため、剥離剤を用いる工法を選択する場合は、必ず事前に試験施工を実施して次のことを確認する。
イ)剥離剤の有効性(仕上塗材等の構成層(上塗材、主材)のどの部分を軟化して完全に除去できるか)
ロ)剥離剤の使用量、除去開始までのオープンタイム(周辺温度によって異なる。また、揮発を防ぐ目的で剥離剤塗付壁面にシートをかぶせることは有効である。)
ハ)有機溶剤中毒等のおそれ(換気、防毒マスク着用の検討)
ニ)臭気の影響
ホ)作業性など
 
●本施工
・剥離剤の塗付け・吹付け
→放置(湿潤軟化・膨潤等)
→塗膜の除去
・除去出来ない場合は他の工法を併用
 
●仕上塗材除去における注意点
・剥離剤併用手工具ケレン工法の場合、剥離剤を塗布後の放置時間を間違えると、表層だけ剥離し、結果としてケレンで掻き落とす際に石綿含有層の湿潤化が不十分になることに注意が必要。
? 建築物の壁面改修等で既存の石綿含有仕上塗材が除去されずに、何層にも上塗りされている事例がある。このような場合は、完全に軟化することが困難な場合があるので注意が必要。
・剥離剤を利用して既存の石綿含有仕上塗材を除去した場合に、残存する剥離剤が新しく施工する仕上塗材に悪影響を及ぼす場合がある。
・残存する剥離剤を揮散させるためには一定期間が必要になる。
・除去後に微細な凹凸下地等に軟化した仕上塗材が残らないように注意が必要。
 
●剥離剤をつかった作業時の注意点
・剥離剤を使用するにあたっては、ジクロロメタン等の有害性の高い化学物質を使用しないよう、剥離剤の選択にも十分留意する必要がある。
・剥離剤に含まれる溶剤による中毒を防ぐため、SDS(安全データシート)に記載されている事項を遵守する。
・剥離剤の吹付け作業では、防毒マスクの吸収缶が短時間で破過した事例があるため、送気マスクを使用する。
・塗膜の除去時は送気マスクor粉じん機能を有する防毒マスク着用する。
・剥離剤の吹付け作業と、剥離剤を吹付けた後の塗膜のかき落とし作業を近接した場所で同時に行うことは避ける。
 
(4)撤去、清掃
 
〇床面、足場上、養生面等清掃
〇取り残しの確認
・目視により確認
〇作業場内足場の解体、場外搬出
〇養生の撤去
・養生の撤去前に清掃及び石綿繊維の処理が必要。
・養生シートを廃棄する場合は、石綿含有廃棄物として処理。
〇外部足場の撤去
 
(5)最終清掃、記録
 
〇最終清掃
〇石綿含有廃棄物の搬出
・石綿含有廃棄物収集運搬車へ積み込み
・収集運搬車シート覆い
・石綿含有廃棄物として許可業者に処分を委託
〇記録
・施工記録
・作業員の作業記録
電気グラインダー等を使用する工法による石綿含有仕上塗材の除去手順
(1)外部足場の設置
 
・仮設足場組立のため、外壁を穿孔してアンカーを打込む場合やコア抜きする場合の条例等による届出の有無については、事前に都道府県等に確認
 
(2)隔離養生、準備
 
●隔離養生
・電気グラインダー等による除去を併用する場合は、隔離養生(負圧不要)が必須(十分な集じん機能を有する電動工具を使用する場合は除く)。
・湿潤化、隔離養生(負圧不要)が著しく困難な場合は、十分な集じん機能を有する電動工具を用いて飛散防止措置を実施。
 
〇隔離養生(負圧不要)の方法
・石綿含有けい酸カルシウム板第1種の切断等による除去を行う際の隔離養生(負圧不要)と同様であり、石綿繊維の飛散や周辺で作業している作業者へのばく露を防ぐため、作業場の周囲及び上下をビニールシート、防炎シート、防音シート、防音パネル等で囲う。
・隔離養生では、セキュリティゾーンの設置や集じん・排気装置の設置による負圧化までは必要ない。
・屋内で隔離養生(負圧不要)を行う場合は、天井裏や内壁裏に隙間が無いことを確認し、壁貫通部等の開口部がある場合は隙間をあらかじめプラスチックシート等で養生する。
 窓、換気口、空調吹出口等の開口部は目張りし、出入口はプラスチックシート等を垂らして飛散を防止する。
 床面も除去した建材の破片回収等のため、プラスチックシート等で養生を行う。
 汚れ防止等のため、壁面についてもプラスチックシート等で養生することが望ましい。
・屋外で隔離養生(負圧不要)を行う場合は、建物側及び上下は通気性のないシート(プラスチックシート等)を使用し、外周側は除去等のために設置した足場に通気性のないパネル(防音パネル等)又は通気性のないシートを使用する。シート又はパネル間の処理については、目張りまでは求めるものではない。出入口はプラスチックシート等を垂らして飛散を防止する。
 
●電気工具の搬入、散水設備の設置
 
(3)除去作業
 
●湿潤化
・作業中も湿潤な状態を保つ。
・作業中に散水を行う際は、除去部分だけに水がかかるように散水する。
 
●電気グラインダー等による除去
・感電対策を確実に実施。
※電気グラインダー等の電源部をビニールで養生する、絶縁用保護具を使用する等 ・除去できない箇所は他の工法を併用。
・集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法等の電気グラインダー等を使用する工法は、長時間の作業や広い範囲の除去作業を行っていると作業者への負荷が大きくなるため、適切な施工を担保する上で注意が必要。
・一般的に使用される集じん装置は、集じんダストの容量が3~5Lになると一杯になるため、定期的に掃除機内のダストを取り除く作業が発生する。そのため、集じんダストを回収するため周囲と隔離(隔離養生等)されたエリアを現場で確保する等の飛散防止対策を行う。
 
(4)撤去、清掃
 
〇床面、足場上、養生面等清掃
〇取り残しの確認
・目視により確認
〇作業場内足場の解体、場外搬出
〇隔離養生の撤去
・隔離養生の撤去前に清掃及び石綿繊維の処理が必要。
・養生シートを廃棄する場合は、石綿含有廃棄物として処理。
〇外部足場の撤去
 
(5)最終清掃、記録
 
〇最終清掃
〇石綿含有廃棄物の搬出
・石綿含有廃棄物収集運搬車へ積み込み
・収集運搬車シート覆い
・石綿含有廃棄物として許可業者に処分を委託
〇記録
・施工記録
・作業員の作業記録

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