マンションの給湯器・給水器具の選定、改修

マンションの給湯器・給水器具の選定、改修に関する技術情報をまとめました。
 
 
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ガス給湯器給湯能力
●ガス瞬間湯沸器の出湯能力:号数
・1号:1分間に1リットルの水を水温+25℃温度上昇させる能力
 
①瞬間型13号
・8.1L/min、熱出力22.7kW
・2箇所同時使用:やや不足
・シャワー使用:十分
・浴槽湯張り時間:やや不足、25分
・春夏秋3期には同時使用が可能、冬季不適。
 
②瞬間型16号
・10.0L/min、熱出力27.9kW
・2箇所同時使用:やや不足
・シャワー使用:十分
・浴槽湯張り時間:十分、20分
・通年同時使用が可能、ただし冬季やや不足
 
③瞬間型20号
・12.5L/min、熱出力34.9kW
・2箇所同時使用:十分
・シャワー使用:十分
・浴槽湯張り時間:十分、16分
・20号を標準給湯容量とする、通年同時使用が可能。
給水圧力、給水器具の選定
1)給水圧力
 
・圧力が高すぎると流水音が発生することや、ウォーターハンマーを起こすことがある。
・圧力が低いとガス給湯器が作動不良を起こすことや、シャワーが適正な機能を発揮できない原因ともなりうる。
・給水圧力が高い場合は、一般的には水道メーター廻りに減圧(逆止)弁等を設置し、給水圧力を適正(200~400kPa)に設定することにしており、配管系統の圧力損失を減じた圧力が器具給水圧力として得られる。
・最近の高機能水栓には抵抗の大きいものもあり、一方では低圧作動型の機器・器具もある。
 
〇器具の最低必要圧力(kPa)
・一般水栓:30
・大便器洗浄弁:70
・小便器水栓;30
・小便器洗浄弁:70
・シャワー:70
・ガス瞬間式湯沸器 7~16号:50、22~30号;80
 
2)混合水栓選定のチェックポイント
 
・給水元圧が標準圧力に満たない場合には、器具抵抗の小さいものを選ぶ必要がある。
・瞬間型給湯機との組合せでは同時使用などで一次側給湯温度に変動が予想されるので、混合水栓はサーモミキシング型が望ましい。
・浴槽への給湯には、定量止水機構付きのものであれば無駄な水の使用を省ける。
・台所用混合水栓としてツーバルブ型を使用する場合は、一時止水機構付きが便利。
 
3)給湯量を確保する給湯システムの所要圧力のチェック
 
・水栓からの所定の吐出量を確保するには、給湯量を確保する給湯システムの所要圧力をチェックし、供給水圧をシステム圧力損失のバランスを検討する。
・給湯システム設計後、標準流量計時の所要圧力概算を行い、給水圧力以下であることを確認する。
 
〇圧力チェックの手順
ⅰ)選定した給湯機の所要圧力Pbを確認する。
ⅱ)給湯先別に、水栓+配管+実揚程を合わせた所要圧力値を求め最も大きいルートを選定し、その水栓所要圧力値Pvを求める。
ⅲ)同様に、最大ルートの配管相当長さ(管実長×1.5)を求め、10m当り給湯配管所要圧力値を参照して全配管所要圧力Ppを計算し、揚程Phを確認する。
ⅳ)同上ルートの全所要圧力を加算し合計値とし、給水圧力と比較する。
 
〇給湯量を確保する給湯システムの所要圧力
①給湯機 Pb
・13号:8.1L/min→所要圧力:40~50kPa
・16号:10.0L/min→所要圧力:40~90kPa
・20号:12.5L/min→所要圧力:40~50kPa
②混合水栓 Pv
・シャワーバス水栓、サーモ:8L/min→所要圧力:45kPa
③配管 Pp
・銅管:8A:4L/min→34kPa、15A:10L/min→13kPa、20A:20L/min→9kPa
・樹脂可とう管(PB、PEX):8A:4L/min→35kPa、13A:10L/min→19kPa、16A:20L/min→14kPa
④揚程 Ph
・水道メータレベルから最高所水栓吐水口までの実高
⑤合計所要圧力
・Pb+Pv+Pp+Ph
・給水圧力‐全所要圧力=余裕圧力
給湯・ガス設備の変遷
1)1960年(昭和35年)~
 
・1960年当時は、浴室・洗面・台所などに給湯できるような給湯器はなく、台所流し台の横に設けられた瞬間湯沸器(13号)で1箇所のみ使用できるものであった。
・風呂釜は従来のCF型からBF型に変わってきた。
 BF型は浴室内の空気を利用せず給排気を行い、1965年に開発され安全面では画期的なものとなった。
 
2)1970年(昭和45年)~
 
・70年代前半よりシャワー機能付きBF風呂釜が用いられていたが、浴槽の大型化に伴い70年後半にはBF型から大型給湯機(13号)へと移行、浴室・台所・洗面の3箇所給湯が可能となった。
 
3)1980年(昭和55年)~
 
・80年代当初は13号であったが、後半になるとさらに大型の16号となる。
 
4)1990年(平成2年)~
 
・さらに大型の24号が開発され、床暖房も可能となった。
・浴槽も直接循環式のものが出ている。
ガス機器の燃焼と排気方式
1)屋内設置
 
①開放方式(Open Frued)
・燃焼用の空気を屋内からとり、燃焼排ガスをそのまま屋内に排出。
・ガス調理コンロ(ガスこんろ、ガスグリル)、小型湯沸かし器(4、5号)、ガスストーブ
・機械排気の場合は、換気扇と給気口を設ける。
・自然排気の場合は、天井に近い位置に容易に開放できる排気口を設ける。
 
②半密閉燃焼式
・燃焼用の空気を屋内から取り、燃焼排ガスを排気筒で屋外に排出する方式。
・排ガスを排気筒で屋外に排出するので開放式よりは安全と言えるが、不完全燃焼の防止や排ガスの適正な排出の為、給気口や排気筒の適正な設定による換気、燃焼部や排気用送風機等の適正な維持管理等にも留意する必要がある。
・ガス風呂釜、ガス瞬間湯沸器、ガス貯湯湯沸器、ガスストーブ
 
イ)自然排気方式(CF方式:Conventional Flue)
・自然通気力による自然排気。
・排気管と上下2箇所の換気口が必要。
・燃焼後の排気ガスは、排気管から屋外に送り出す。
ロ)強制排気方式(FE方式:Forced Flue)
・排気用送風機を用いる。
・燃焼には室内の空気を使い、排気はファンで屋外に排出する。
・必ず換気口が必要。
 
〇採用状況
・昭和40年代初期まではCF方式、その後昭和50年代初期頃まではFE方式が一般的に採用されていた。
・開放廊下型のマンションではCFチャンバー(チャンバー:ガス熱源機を設置する場所で、通常開放廊下に面したスペースを通気用の開口が帯状にあいているガラリ等で区切っている)設置式が広く採用されていた。
・半密閉式は、かつては広く採用されていたが、近ごろでは、取替え用の機器が無かったり、機種が限られたりするため、密閉式や屋外式に変更されている。
 
③密閉式
・屋内空気と隔離された燃焼室内で、屋外から取り入れた空気により燃焼し、屋外に排ガスを排出する方式。
・ガス風呂釜、ガス瞬間湯沸器、ガス貯湯湯沸器、ガスストーブ
 
イ)自然給排気方式(BF方式:Balanced Flue)
・給排気を自然通気力により行う。
・給排気筒を外気に接する壁を貫通して屋外に出し、自然通気力によって給排気を行う。
ロ)強制給排気方式(FF式:Forced Draught Balanced Flue)
・給排気用送風機により給排気を強制的に行う。
・給排気筒を外気に接する壁を貫通して屋外に出し、給排気用ファンにより強制的に給排気を行う。
・BF式に比べ、壁開口面積が約1/5でよいため、寒冷地に適する。
 
〇採用状況
・安全性の向上と小型化により、近ごろでは、屋外式とともによく採用されており、室内に設置する場合は、密閉式が主流となっている。
 
〇注意点
・BF・FF方式ともに給気と排気の部分(給排気筒トップ)が近接しており、ガスの燃焼排気ガスが給気口に流入することが起こらないように設置しなければならないため、機器周囲や開放廊下の形状等に細かな規定が設けられている。
・風の影響による逆流現象、周囲の防火性能、建物内外や共用ダクト間との防火区画などの規定がある
 
2)屋外式(RF方式:Roof Top Flue)
 
・屋外に設置するように設計されたガス機器。
・外壁やベランダ等に設置される壁掛け型、パイプシャフトに設置されるPS設置式および外壁を貫通して設置される壁面貫通型、建築物の外壁の凹状の窪みに設置される壁組込設置型等がある。
・ガス風呂釜、ガス瞬間湯沸器、ガス貯湯湯沸器
・屋外に設置するので、給排気工事の必要が無い。
・屋外式には、自然給排気方式(ガス風呂釜)と強制給排気方式(ガス瞬間湯沸し器)とがある。
 
〇採用の状況
・室内に設置スペースが不用なことから、近ごろでは、室内設置型の密閉式よりも広く採用されていて、寒冷地以外では原則としてこの型式を用いる。
ガス機器の改良工事
(1)”元止め式”から”先止め式”に変更
 
●”元止め式”、”先止め式”
〇元止め式
・給湯器本体の入口側水栓の開閉によりメーンバーナーが点火・消火する。
・元止め式は他の箇所への配管給湯ができないタイプで、高経年マンションでは、台所の流し上にその場所でしか使えない小型の瞬間湯沸器を設置しているケースが多くなっている。
 
〇先止め式
・出口側水洗の開閉によりメーンバーナーが点火・消火する。
・先止め式は数カ所に配管給湯することができるもので、近ごろの新築マンションの住戸内セントラル方式(台所・浴室・洗面所への3ヶ所給湯等)はこのタイプ。
 
●”先止め式”への改良工事
・台所のほか浴室、洗面所での使用ニーズが高まっており、ガス機器のシステムを元止め式から3箇所に給湯できる先止め式に変更する。
・先止め式への変更にあたっては、給湯器から各所への給湯用配管を床下や壁内部などに配する必要がある。
・給湯器がバルコニーやパイプスペース内等の共用部に設置される場合は、共用部分での工事となる。
→この場合、一般的には、専用使用権の取り扱いや外壁スリーブ開口等について規約改正を必要とする。
・ガス機器の変更にあたっては、当該マンションでの使用の可能性についての十分な検討が必要となる。
・機器の設置方法は、(財)日本ガス機器検査協会で発行する「ガス機器の設置基準及び実務指針」に従う必要がある。
 
(2)ガス機器の性能をグレードアップ
 
・台所流しで使用される小型の瞬間湯沸器は5号程度で、セントラル方式に使用されるものは10~32号程度で多くの種類があるが、一般的にはファミリー世帯では24号程度がよく使われている。
・ガス燃焼機器は、機器のガス消費量によって給排気の能力が計算されており、給排気口の周囲条件及びガス機器や排気筒周囲の材料・形態にも一定の防火安全上の基準・規制が設けられている。
→機器の機能及び給湯能力を向上するにあたっては、ガス事業者にガス供給の可否について確認をした上で、取替えるガス機器の種類や設置方法に適合するよう共用部分の変更工事を行うことが必要となる場合がある。
・管理組合として、機器を設置しやすいように共用部分の変更工事を行い、設置できる機器の種類やその設置方法についてのルールを設けておくことが望まれる。

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