給水装置設計・施工基準(給水装置編)給水方式の分類、増圧直結方式、受水タンク方式等

東京都水道局の『給水装置設計・施工基準(給水装置編)(R3年10月版)』を読んで給水装置の設計・施工方法を勉強しました。参考になった点、要点等をメモ書きしました。
 
5 給水方式の決定
8.2 増圧直結方式
11 受水タンク方式
 
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給水方式の分類とその特徴
(1)給水方式の分類とその特徴
 
※配水管、配水小管
・配水場から、給水区域まで水を送る管のこと。
・幹線となり、直接給水管を分岐しない「配水本管」と、配水本管から分岐して直接給水管を取り付ける「配水小管」からなる。
・水圧を均等に保ち、管内の水が滞留しないように、道路に沿って網目状に布設されている。
 
※給水管
・配水管から分岐して、各家庭など需要者に水を供給する管のこと。
 
1)直結給水方式
 
・この方式は、貯留機能がないので水道の断減水により支障をきたす建物への採用は避ける必要がある。
 
①直圧直結方式
・配水小管の水圧で蛇口まで直接給水する方式。
・給水できる階高は原則として最大3階まで。
 

②増圧直結方式
・給水管の途中に増圧給水設備を設置し、給水管の圧力を増して給水する方式。
・直圧直結方式では給水できない中高層建物へ直結での給水が可能。
・受水タンク方式に比べ、配水小管の圧力を有効活用するので省エネルギー効果がある。
・受水タンクが不要なため、省スペース化が図れるとともに、タンク清掃等の衛生上の問題が解消できる。
 
〇各戸への給水の方法
・直送方式:ポンプ等で蛇口まで押し上げる。
・高置タンク方式:ポンプにより高所に置かれたタンクに給水し、そこから蛇口まで自然流下させる。
 
③特例直圧給水
・増圧直結方式の対象であるが、現状の配水管圧力において、建物最上階の末端給水栓まで直圧直結給水が可能な場合に、増圧給水設備(増圧ポンプ、減圧式逆流防止器及び制御装置等)の設置を留保し、特例として直圧直結給水を認める。
・この給水方式は、特例として認めているものであるので、受水タンク方式及び増圧直結方式との併用は認められない。
 
2)受水タンク方式
 
・配水小管から給水管を経た水を一旦受水タンクに貯留し、この受水タンクからポンプ等で給水する方式。
・配水小管の圧力が変動しても給水圧、給水量を常に一定に保つことができ、また、タンクが使用水量の変動を調節できるので、一時的に多量の水を必要とする施設や使用水量の変動が大きい施設及び建物に向いている。
 
〇各戸への給水の方法
・直送方式
・高置タンク方式
 
(2)給水方式の選定
 
・給水高さ、所要水量、使用用途、維持管理面等を考慮し決定する。
・建物の4階以上に給水栓を設置する場合については、受水タンク又は増圧給水設備を設置しなければならない。
 ただし、別に定める一定の条件に適合する場合に限り、4階以上であっても特例直圧給水として給水することができる。
 
1)直結給水方式が認められないもの
 
・一時に多量の水を使用するものや使用水量の変動が大きい施設、建物等で、配水小管の水圧低下を来たすもの。
 
2)受水タンク方式が適当なもの
 
・配水小管の水圧は常に変動しているので、常時一定の水圧、水量を必要とするもの。
・断水した場合に、業務停止になるなど影響が大きい施設や、設備停止により損害の発生が予想される施設。(例:冷凍機の冷却水等、給水の継続を必要とするもの)
増圧直結給水方式の概要
(1)増圧直結給水の手続き
 
※参考 東京都水道局 指定給水装置工事事業者工事施行要領
 
1)改造工事の設計審査及び工事検査
 
●設計審査
・工事着手前に設置しようとする給水装置の構造、使用材料及び施行方法が水道法施行令第6条及び都の施工基準に適合していることを確認するために行う。
〇提出書類
・「指定給水装置工事事業者設計審査申込書」及び設計図
・「貯水槽水道設置・変更・廃止届」
・「給水装置不使用兼撤去届」
・「三階までの例外・特例直圧給水・増圧給水設備設置条件承諾書」
・「増圧給水設備等(設置・変更・廃止)状況調査表」
・入館方法の報告
 
●工事検査
ⅰ)指定事業者の自主検査
・給水装置工事主任技術者は給水装置工事完了後、次により自主検査を行い、工事の適否を確認しなければならない。
 
①工事完成図(都に提出予定のもの)により、次の事項を確認すること。
ア 管の延長
イ 管の埋設深度
ウ 管の接合方法
エ 分岐、屈曲、径落し箇所及び工法
オ 逆流防止機器の設置状況、吐水口空間の確保及び器具の取付方法
カ メータ設置基準及びメータますの設置状況
キ クロスコネクションがないこと
ク 給水管防護方法
ケ 「給水装置設計・施工基準25 設計図及び完成図の作成方法」により、完成図が正しく作成されていること
②給水装置の構造及び材質
・政令第6条及び都施工基準に適合していることを確認すること。
③耐圧検査
・「給水装置設計・施工基準23 耐圧試験」により、耐圧検査を行い、漏水及び変形、破壊その他の異常がないことを確認すること。
④水質の確認
・「給水装置設計・施工基準12.5.2 給水装置工事完成時の水質確認」により、残留塩素測定等による水質の確認を行うこと。
⑤通水確認
・誤配管(クロス配管)の防止、吐水状況及びメータの逆取付がないことを通水により確認を行うこと。
 
ⅱ)指定給水装置工事事業者工事検査
・給水条例第6 条第2 項第2 号の規定に基づき、指定事業者が施行する給水装置工事が完了したときに、都が行う検査であり、工事場所を所管する取扱事業所へ申し込む。
〇提出書類
・「指定給水装置工事事業者工事検査申込書」
・「完成図」
 
2)既設配管を使用する場合の取扱い
 
・給水条例第32 条の3 の規定に基づき、あらかじめ当該配管材料の耐圧及び水質を確認する。
①耐圧の確認
・配管及び器具について、あらかじめ耐圧試験(試験水圧0.75MPa)を行い、漏水のないことを確認し、設計審査申込書に水圧試験実施日を赤書きで記入すること。
②水質の確認
・都が別に定める方法により水質試験(又は浸出性能試験)を行い、その結果書の写しを提示し、設計審査申込書に水質検査実施月日を赤書きで記入すること。
 
3)増圧給水設備設置者に対する指導
 
・増圧直結給水方式では、直圧方式の給水装置と異なりポンプ等の機器を使用して給水するため、機械部分等の故障により逆流の危険及び正常な各戸への給水が損なわれるおそれがある。
 そこで、1年以内ごとに1回以上点検を行う義務(給水条例施行規程第8 条の2)があることを設置者等へ理解させ、増圧直結給水方式における事故防止を図るため、「増圧給水設備以下の給水装置維持管理」を設備の設置者に手渡し、管理上の注意事項を周知する。
 
4)メータの設置されている既設の受水タンク以下装置を改造し、増圧給水設備以下で使用する場合
 
・この場合は、既設の受水タンク以下装置のメータ撤去手続と合わせて増圧給水設備以下の給水装置のメータ新設の手続が必要となる。
①受水タンク以下装置のメータ撤去の手続
〇提出書類
・「受水タンク以下装置メータ撤去承認申請書」
・「設計図」
・「受水タンク以下装置メータ撤去調書」
②増圧給水設備以下の給水装置のメータ新設の手続
〇提出書類
・「増圧給水設備以下メータ設置(新設)承認申請書」
・「増圧給水設備設置条件承諾書」
・「設計図」
・「指定給水装置工事事業者設計審査申込書 兼、増圧給水設備以下給水装置メータ設置(新設)調書」
・「入館方法の報告」
 
5)直結切替増径工事に関する取扱い
 
・貯水槽水道方式から直結給水方式への切替えに伴う給水管増径工事の申込みが所有者等からされ、事業の対象になるものについて、直結切替増径工事を都の負担により施行する。
・都が負担する、直結切替増径工事の取扱いは次による。
 
〇対象となる工事及び施行範囲
・貯水槽給水方式から直結給水方式へ変更する場合の改造工事において、指定事業者の流量計算結果により、給水管の増径工事が必要と判断されたもの。
・都が施行する直結切替増径工事の範囲は、原則として申込みのあった建物の前面道路に布設されている配水小管分岐部からメータまでとする。
 
〇申込方法
①提出書類及び記入方法
ア 「直結切替増径工事条件承諾書兼工事申込書」
イ 「委任状」
ウ 「給水管口径(増径)の選定基準となる流量計算書」
 
(2)配管構造等
 
1)給水形態
 
●増圧給水設備直列多段給水方式
・高層建物において、高層階に給水する場合は、複数の増圧給水設備を直列・多段に設置し、各戸に給水することができる。
※増圧給水設備並列給水方式との併用は不可とする。
 
●増圧給水設備並列給水方式
・大規模集合住宅等へ給水する場合は、複数の増圧給水設備を並列に設置し、各戸に給水することができる。
※増圧給水設備多段給水方式との併用は不可とする。
 
(3)増圧給水設備
 
1)増圧給水設備とは
 
・増圧給水設備は、増圧ポンプ、逆流防止用機器及び制御装置等で構成されたもので、日水協規格適合品(呼び径20~75 ㎜の製品)とする。
 
2)増圧給水設備の製品例
 
●増圧給水設備の主要構造
ア)増圧ポンプユニット
・増圧ポンプ、制御装置等で構成
イ)逆流防止用機器
 
●増圧給水設備の基本条件
・増圧設備下流側の水が配水管側に逆流しない構造であるように、逆流防止機器を増圧ポンプユニットの上流側(吸込み口)に近接して接続する。ただし、吸込み圧力が十分確保できない場合は、逆流防止機器を吐出側(吐出口)に近接して接続できる。
・増圧給水設備の吸込み側圧力を検出できるように、逆流防止機器の上流に圧力検出用機器を設置する。ただし、逆流防止機器を増圧ポンプユニットの吐出側に設置した場合には、同ポンプユニットの上流側(吸込み口)に圧力検出用機器を設置する。
・増圧給水設備内部には運転中に負圧が生じてはならない。
・空気が混入しない構造であること。
・ポンプ停止時に、配水圧により可能な高さまで給水できるバイパスを設けてあること。
 
3)逆流防止用機器、減圧式逆流防止器
 
・従来の受水槽方式では、吐水口空間により水の本管側への逆流を防止していたが、直結給水方式では受水槽を使用しない為、その吐水口空間に代わる逆流防止装置が必要となる。
・逆流防止用機器には減圧式逆流防止器を使用し、配水管側から止水弁、ストレーナ、逆流防止器、止水弁の順で構成されるものとする。また、機能確認ができるように上流側、中間、下流側に点検孔があること。
・減圧式逆流防止器は2つの逆止弁の間にダイアフラムにより動作する逃し弁を備えた中間室が設けられ、逆流及び逆サイホンに対して、中間室の水を逃し弁から排水して空間を作ることにより、管路を遮断する。
 
4)直結増圧ポンプの製品例
 
●構成
・キャビネット形とする。
〇ポンプ
・2台以上
・電動機直動形とする。
〇圧力発信器等
・圧力を受圧エレメントで検出し、電気信号を発信するものとする。
〇制御盤
〇圧力タンク
・隔膜式とし、タンク本体は鋼板製で、接液部の防錆は樹脂粉体コーティング、樹脂ライニング、樹脂シート貼り等とし、衛生上無害なものとする。
〇電動機
〇バルブ類
〇逆流防止装置等
・直結加圧形ポンプユニットには水質を汚染しない、配水管の水圧に影響を与えない等の目的で逆流防止器を設置しなくてはならない。
・JWWA B 129(水道用逆流防止弁)又はJWWA B 134(水道用減圧式逆流防止器)によるもの。
・特記がない場合は吸込側に設ける。
 
●制御方式
・圧力発信器等からの信号によりインバーター制御を行い、末端圧力が一定となる吐出圧力を推定して圧力を制御する末端圧力推定制御とする。
・停電時に配水管の圧力により、直圧給水ができる構造とする。
 
●運転方式
・ポンプの切替えは小水量停止時に自動的に行われるものとする。
〇ポンプ2台の場合
・自動交互運転
〇ポンプ3台以上の場合
・予備機を設けた自動交互・並列運転とし、ローテーション機能を備えたものとする。
 
5)増圧給水設備の設置
 
・増圧給水設備の呼び径はメータ口径と同等以下とする。
・増圧給水設備の設置位置は、メータの下流側で保守点検及び修繕を容易に行える場所とし、これらに必要なスペースを確保する。また、維持管理の際の排水処理を考慮する。
・減圧式逆流防止器を設置する場合は、その吐水口からの排水等により、増圧給水設備が水没することなどのないよう、排水処理に考慮する。
 
6)増圧給水設備の維持管理
 
・増圧給水設備設置者等管理責任を有するものは、次の機能について1年以内ごとに1回の定期点検を行わなければならない。(東京都給水条例施行規程第8条の2)
ア 逆流防止機能
イ 運転制御機能
ウ ア及びイのほか正常な運転に必要な機能
 
(4)メータバイパスユニット
 
・メータバイパスユニットは、都の認証品とする。
・メータバイパスユニットは、第一止水栓(仕切弁B)以降に設置し、直近上流側に止水栓を設置すること。
※第一止水栓;給水管上に設置されている、宅地内の最初の栓
・メータバイパスユニットにおけるメータ設置方法は、メータ一次側の切換弁(盗水防止のため特殊な開栓器を使用)と二次側の仕切弁を操作し、設置する。
・メータを取り付けた後、スライドハンドルを結束バンドで固定し、回転を防止する。
 
(5)増圧給水設備以下の配管
 
1)配管方法
 
・停滞空気が発生しない構造とする。
・衝撃防止及び凍結防止のための必要な措置を構じる。
・各戸にメータが設置される場合は、メータに近接して上流側に止水器具を、下流側には逆止弁を設置する。
※メータユニット設置で対応可。
・メータ前後の配管は、規定に適合するものとする。
・低層階等で給水圧が過大になる場合には、必要に応じ減圧弁を設置するなどの措置を施す。
 
2)吸排気弁
 
●吸排気弁の設置
・立上り管の最頂部に、吸排気弁等を設置する。
・必要に応じて、配管上で空気の溜まりやすい位置にも、吸排気弁等を設置する。
 
●吸排気弁の機能
①排気機能(排気を円滑に行う)
・最頂部に滞留する空気を自動的に排除することによって、円滑な給水を促進し、ウォーターハンマ、脈動によるメータの誤作動および管内腐食を防止する。
②急速吸気機能(多量吸気を急速に行う)
・断水時等に、立上り配管内に負圧が発生した場合、負圧解消として管内に速やかに空気を吸引し、逆サイフォン現象を防止する。
③圧力下排気機能(圧力下排気を円滑に行う)
・ポンプメンテナンス時等に、管内に滞留する空気を充水しながら排気する。
・管内の圧力が大気圧以下になった場合、速やかに吸気弁が開き、確実に吸気動作を行うこと。
 
3)既存の受水タンク以下装置を流用する場合の特例措置
 
“指定給水装置工事事業者による事前確認”などの要件に適合する場合には、既存の受水タンク以下装置を増圧給水設備以下の給水装置に切り替えて使用することができる。
 
●指定給水装置工事事業者による事前確認
①既設配管の材質の確認
・「給水装置の構造及び材質の基準」に適合した製品が使用されていることを現場及び図面にて確認する。
②耐圧の確認
・受水タンク以下装置を給水装置に切替える場合の試験水圧は0.75MPaとし、1分間水圧を加えた後、漏水のないことを確認する。
③水質(又は浸出性能)の確認
・水質試験(又は浸出性能試験)を行い、該当する事項を確認する。
なお、設計審査申込の際には試験成績書を提示する。
〇水質試験(更生工事の履歴のない場合)
・直結給水ヘの切替え前において、水道法第20条第3項に規定する者による水質試験を行う。
・採水方法は、毎分5Lの流量で5分間流して捨て、その後15分間滞留させたのち採水するものとする。
・試験項目は、味、臭気、色度、濁度の4項目において、水道法第4条に定める水質基準を満足していることを確認する。
 
(6)共用の直圧給水栓の設置
 
・増圧給水設備の故障、停電及び水道施設の工事等による、一時的な出水不良が生じた場合に備えて増圧給水設備使用者が使用できる共用の直圧給水栓を設置する。
 
(7)増圧給水設備の設置に伴う耐圧試験
 
1)増圧給水設備以下の給水装置(増圧給水設備は除く)
 
・配管工事の一部又は全部が完了したときには耐圧試験を行う。
・試験圧力は配管の最低部において、ポンプ吐出圧の2倍又は1.75MPaのうち大きい数値とし、1分間保持する。
 
2)第1仕切弁より増圧給水設備までの給水装置(増圧給水設備は除く)
 
・試験圧力は1.75MPaとする。ただし、メータバイパスユニットを設置した場合は、この部分の配管の試験圧力は0.75MPaとする
※これは、流路切換弁の構造上、弁座漏れ試験を0.75MPaとしていることから、弁座の機能を損なわないよう0.75MPaの圧力で行うものである。
 
3)増圧給水設備の試験について
 
・増圧給水設備は、製造業者の工場において、既に必要な水圧試験を実施済である。
・増圧給水設備には、試験圧力がかかると損傷するおそれのある機器(圧力検出装置等)が取り付けられているため、現場での水圧試験は行わないこととする。
受水タンク方式の概要
(1)設置上の注意点
 
・配水管圧を直接利用して給水することが困難である高所への給水、あるいは一時に多量の水を使用する場合は、受水タンクを設置することが必要。
・受水タンクの設置位置、構造等の適否は、給水状況に多大な影響を与え水質汚染の要因となる場合もあるので、正しい設計施工を行う必要がある。
 
(2)受水タンクの設置位置
 
●低置タンク
・周囲にごみ、汚物置場、汚水槽などのない衛生的なところ
・わき水、たまり水、雨水などによる影響を受けないところ
・下水、排水などがその上を通らないところ
・ボイラーその他の機械類や給湯管が近くにないところ
・点検、修理が容易なところ
 
●高置タンク
・土砂、ほこり、雨水、汚水などの影響を受けないところ
・風通しが良く湿気の少ない衛生的なところ
・点検、修理が容易なところ
・高置タンクの設置位置が地上より40m以上の高さになる場合は、中間タンク・減圧弁を設けるなど落差による水圧上昇を防ぐ措置を施すことが望ましい。
 
●給水圧力とゾーニング
・超高層のような建物の場合には、給水系統を1系統とすると下層階においては給水圧力が過大となり、水栓・器具などの使用に支障をきたしたり、騒音やウォータハンマなどが生じたり、水栓や弁などの部品の摩耗が激しくなり寿命が短くなったりする。
・給水圧力の上限は、ホテルやアパートなど人間の私的生活の場においては、300~400kPa程度、事務所や工場などにおいては400~500kPa程度に抑える。
・上記以上の圧力となる場合には、下層階に対しては中間水槽や減圧弁の措置によって給水圧力を調整しなければならない。
 
(3)受水タンクの材質、構造
 
1)材質
・FRP(ガラス繊維強化ポリエステル)、ステンレス、その他堅牢なもので水質に悪影響を及ぼさない材質とする。
・塗料、仕上剤は、公的試験機関で安全性が確認されているものを使用する。
 
2)構造
〇点検しやすい構造
・外部から受水タンクの天井、底又は周壁の保安点検を容易かつ安全に行うことができる構造とする。
・受水タンクの天井、底又は周壁は、建築物の他の部分と兼用しない。
※上記により受水タンクのすべての面の表面と建築物の他の部分との間に空間があり、6面点検が容易にできる構造でなければならない。
 
〇汚染の措置
・受水タンクの上にポンプ等を設置する場合は、受水タンクの水を汚染することのないよう必要な措置を講じる。
 
〇耐震
・耐震的構造とし、防水処理を施す。
 
〇タンク容量、滞留しない構造
・水が滞留しない構造とする。
ア)低置タンクは、1日当たりの使用水量の4/10~6/10を標準とし、滞留水の生じない構造とする。
 ※高置タンクの場合は、1日当たりの使用水量の1/10を標準とする。
イ)消防用水等と飲料水とは、別個に貯水する。やむを得ず同一タンクに受水し、使用量(消火用水等を除く)に比して容量が過大になる場合は、著しい停滞水が生じないように給水口(流入管)と揚水設備(流出管)を対称(容量が特に大きい場合は対角線)位置に設置したり、下部に通水口を持つ隔壁を中間に設置するなどの措置を施す。
 
〇外部から汚水等が流入しない構造
ア)開口部の防水、水密性に関する留意点
・マンホールなどの開口部は、周囲より10㎝以上高くするなど流入防止の対策を講じる。
・開口部の蓋は、二重蓋など外部からの影響を受けにくい構造とする。
 
イ)越流管(オーバーフロー管)等の設置
・越流管、排水管の先端は、排水設備へ接触しないようその間に適当な間隔(排水口空間)をとる。
・越流管、通気管等、付属配管設備の末端はスクリーン(金網)などにより、虫類等の潜入を防止する。
 
ウ)タンク内部には、飲料水以外の配管設備を設けたり貫通させてはならない。
 
〇警報装置等の設置
・異常水位に対処するため、異常警報装置のほか自動的に止水する電磁弁などを設置する。
 
3)ボールタップ設置上の注意
・水圧の高いところで受水タンクヘ給水する場合、満水になるとボールタップが急激に閉止したり、あるいは満水面が波立つことにより浮球が上下し、ボールタップが間断なく開閉してウォータハンマーが生じ、メータなどの器具又は管路の屈曲部に作用して不測の事故を引起こすことがあるので、ウォータハンマーの防止措置を講じる。
 
(4)配管
 
1)受水タンク以下装置の配管
 
〇配管の強度、材質
・水質に影響を与えないもので、かつ、使用箇所に適した強度を持つ材質の給水管を選定する。
・鋼管を使用する場合、亜鉛メッキ鋼管は内面が腐食しやすいので、硬質塩化ビニルライニング鋼管、ポリエチレン粉体ライニング鋼管又はステンレス鋼管が望ましい。
 
〇止水栓の設置
・給水立て主管からの各階への分岐管等重要な分岐管には、分岐点に近接した部分で、かつ、操作を容易に行うことができる部分に止水栓を設置することが望ましい。
 
〇特殊用途配管の分離
・水質汚染のおそれがある次のような配管系統と飲料水系統とは分離する。
ア)消火用設備を設置する系統。
イ)薬品類、その他が逆流するおそれのある器具を設置する系統。
 
2)非常用給水栓の設置及び維持管理
 
・受水タンク及び高置タンク毎に1~2個程度とし、設置に当たっては、指定給水装置工事事業者やタンク製造業者等と調整し、受水タンク等の構造や材質を踏まえ、強度を損なうことのないよう適正に設置すること。
特例直結方式への変更、施工
(1)特例直圧給水の手続き
 
※参考 東京都水道局 指定給水装置工事事業者工事施行要領
 
1)特例直圧給水とは
 
・増圧直結給水の対象であるが、現状の配水管の水圧で建物最上階の末端給水栓までの直圧直結給水が可能な場合に、増圧給水設備の設置を留保し、特例として直圧直結給水が実施できるものをいう。
 
2)要件
 
・増圧ポンプの設置スペースを確保すること。
・既設の受水タンク以下装置を、特例直圧給水の給水装置に改造する場合は、耐圧及び水質の試験を行った結果において、「給水装置設計・施工基準」に規定する基準を満たすことが確認できること。
 
3)配水管最小動水圧の事前確認
 
・設計審査申込みに先立ち、所管する取扱事業所に調査を申請し、現地配水管の最小動水圧を確認する。
〇提出書類
・「三階までの直圧給水・特例直圧給水事前調査申請書」(様式42)
・「案内図」
 
4)改造工事の設計審査及び工事検査
 
●設計審査
・工事着手前に設置しようとする給水装置の構造、使用材料及び施行方法が水道法施行令第6条及び都の施工基準に適合していることを確認するために行う。
〇提出書類
・「指定給水装置工事事業者設計審査申込書」及び設計図
・「貯水槽水道設置・変更・廃止届」
・「給水装置不使用兼撤去届」
・「三階までの例外・特例直圧給水・増圧給水設備設置条件承諾書」
・「増圧給水設備等(設置・変更・廃止)状況調査表」
・入館方法の報告
 
●工事検査
ⅰ)指定事業者の自主検査
・給水装置工事主任技術者は給水装置工事完了後、次により自主検査を行い、工事の適否を確認しなければならない。
①工事完成図(都に提出予定のもの)により、次の事項を確認すること。
ア 管の延長
イ 管の埋設深度
ウ 管の接合方法
エ 分岐、屈曲、径落し箇所及び工法
オ 逆流防止機器の設置状況、吐水口空間の確保及び器具の取付方法
カ メータ設置基準及びメータますの設置状況
キ クロスコネクションがないこと
ク 給水管防護方法
ケ 「給水装置設計・施工基準25 設計図及び完成図の作成方法」により、完成図が正しく作成されていること
②給水装置の構造及び材質
・政令第6条及び都施工基準に適合していることを確認すること。
③耐圧検査
・「給水装置設計・施工基準23 耐圧試験」により、耐圧検査を行い、漏水及び変形、破壊その他の異常がないことを確認すること。
④水質の確認
・「給水装置設計・施工基準12.5.2 給水装置工事完成時の水質確認」により、残留塩素測定等による水質の確認を行うこと。
⑤通水確認
・誤配管(クロス配管)の防止、吐水状況及びメータの逆取付がないことを通水により確認を行うこと。
 
ⅱ)指定給水装置工事事業者工事検査
・給水条例第6 条第2 項第2 号の規定に基づき、指定事業者が施行する給水装置工事が完了したときに、都が行う検査であり、工事場所を所管する取扱事業所へ申し込む。
〇提出書類
・「指定給水装置工事事業者工事検査申込書」
・「完成図」
 
5)既設配管を使用する場合の取扱い
 
・給水条例第32 条の3 の規定に基づき、あらかじめ当該配管材料の耐圧及び水質を確認する。
①耐圧の確認
・配管及び器具について、あらかじめ耐圧試験(試験水圧0.75MPa)を行い、漏水のないことを確認し、設計審査申込書に水圧試験実施日を赤書きで記入すること。
②水質の確認
・都が別に定める方法により水質試験(又は浸出性能試験)を行い、その結果書の写しを提示し、設計審査申込書に水質検査実施月日を赤書きで記入すること。
 
6)受水タンク以下装置のメータを、特例直圧給水のメータに切り替える場合の手続き
 
・この場合は、既設の受水タンク以下装置のメータ撤去手続と合わせて特例直圧給水の給水装置のメータ新設の手続が必要となる。
①受水タンク以下装置のメータ撤去の手続
〇提出書類
・「受水タンク以下装置メータ撤去承認申請書」
・「設計図」
・「受水タンク以下装置メータ撤去調書」
②特例直圧給水の給水装置のメータ新設の手続
〇提出書類
・「特例直圧給水の給水装置メータ設置(新設)承認申請書」
・「増圧給水設備設置条件承諾書」
・「設計図」
・「指定給水装置工事事業者設計審査申込書 兼、特例直圧給水の給水装置メータ設置(新設)調書」
・「入館方法の報告」
 
7)直結切替増径工事に関する取扱い
 
・貯水槽水道方式から直結給水方式への切替えに伴う給水管増径工事の申込みが所有者等からされ、事業の対象になるものについて、直結切替増径工事を都の負担により施行する。
・都が負担する、直結切替増径工事の取扱いは次による。
 
〇対象となる工事及び施行範囲
・貯水槽給水方式から直結給水方式へ変更する場合の改造工事において、指定事業者の流量計算結果により、給水管の増径工事が必要と判断されたもの。
・都が施行する直結切替増径工事の範囲は、原則として申込みのあった建物の前面道路に布設されている配水小管分岐部からメータまでとする。
 
〇申込方法
①提出書類及び記入方法
ア 「直結切替増径工事条件承諾書兼工事申込書」
イ 「委任状」
ウ 「給水管口径(増径)の選定基準となる流量計算書」
 
(2)特例直圧給水の配管
 
1)配水管最小動水圧の事前確認
 
・特例直圧給水での施行を検討する場合は、設計審査申込みに先立ち、当該給水装置の工事場所を所管する取扱事業所に調査を申請し、現地配水管の最小動水圧を確認する。
 
2)配管構造等
 
●メータバイパスユニットの設置
・特例直圧給水は、あくまで増圧給水設備の設置を留保するものであることから、メータバイパスユニットは、増圧直結給水方式の取扱いにより設置する。
 
●配管形態
・停滞空気が発生しない構造とする。
・衝撃防止及び凍結防止のための必要な措置を構じる。
・親メータから、立上り配管入り口の間で、維持管理が容易な場所に、逆止弁を設置する。
・各戸にメータが設置される場合は、メータに近接して上流側に止水器具を、下流側には逆止弁を設置する。
※メータユニット設置で対応可。
・メータ前後の配管は、規定に適合するものとする。
・低層階等で給水圧が過大になる場合には、必要に応じ減圧弁を設置するなどの措置を施す。
 
●吸排気弁の設置
・立上り管の最頂部や配管上で空気の溜まりやすい位置に吸排気弁等を設置する。
 
3)既存の受水タンク以下装置を流用する場合の特例措置
 
“指定給水装置工事事業者による事前確認”などの要件に適合する場合には、既存の受水タンク以下装置を特例直圧給水の給水装置に切り替えて使用することができる。
 
●指定給水装置工事事業者による事前確認
①既設配管の材質の確認
・「給水装置の構造及び材質の基準」に適合した製品が使用されていることを現場及び図面にて確認する。
②耐圧の確認
・受水タンク以下装置を給水装置に切替える場合の試験水圧は0.75MPaとし、1分間水圧を加えた後、漏水のないことを確認する。
③水質(又は浸出性能)の確認
・水質試験(又は浸出性能試験)を行い、該当する事項を確認する。
なお、設計審査申込の際には試験成績書を提示する。
〇水質試験(更生工事の履歴のない場合)
・直結給水ヘの切替え前において、水道法第20条第3項に規定する者による水質試験を行う。
・採水方法は、毎分5Lの流量で5分間流して捨て、その後15分間滞留させたのち採水するものとする。
・試験項目は、味、臭気、色度、濁度の4項目において、水道法第4条に定める水質基準を満足していることを確認する。
 
4)共用の直圧給水栓の設置
 
・水道施設の工事等による、一時的な出水不良が生じた場合に備えて、増圧直結給水方式と同様に、共用の直結給水栓を設置する。

5)増圧給水設備の設置スペース
 
・特例直圧給水は、増圧給水設備の設置を留保して、特例として直圧直結給水を認めるものであることから、増圧給水設備の設置スペースを確保しなくてはならない。
・増圧ポンプの設置給水設備は、製造メーカや増圧ポンプの型式によって異なるが、増圧の点検寸法まで考慮して確保する必要がある。
 
6)特例直圧給水の実施に伴う耐圧試験
 
・配管工事が完了したときには耐圧試験を行う。
・試験圧力は配管の最低部において、1.75MPaかけ、1分間保持する。
・メータバイパスユニットを設置した場合は、この部分の配管の試験圧力は0.75MPaとし、メータバイパスユニット以降の配管の試験圧力は1.75MPa とする。

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