ビニル床シート・床タイルの施工方法

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
下地の種類と注意点
1)吸水性のある下地
 
・接着剤とのなじみが良く、エマルジョン形、ラテックス形、溶剤形接着剤は特に乾燥固化しやすい。
 
〇モルタル
コンクリートの上にセメントモルタルを塗って金ゴテ仕上げをした床。吸水性が良く、床材施工に適している。
 
〇土間コンクリート
・地面に接しているコンクリート床の総称。
・下地湿気が抜けにくい状況にある。
・防水シートなどによる下地水分の遮断は必須。
 
〇軽量コンクリート
・砂利の代わりに軽量骨材を使用し、床スラブとして軽量化できる。
・軽量骨材が水分を含んでいるため下地の乾燥に長時間を要する。
 
〇セルフレベリング床
・自己水平性(セルフレベリング)を持つが、配合によっては表面強度に劣る。
・粉ふきが多いので要注意。
・石こう系のセルフレベリング材は強度も弱く、ビニル床材の下地としては適さない。
・セメント系のセルフレベリング材は石こう系に比べると強度はあるが、コンクリート・モルタルに比べると弱いので要注意。打ち込み厚さの割りに乾燥が遅いので、乾燥度も重要なチェックポイントになる。
※セルフレベリング
石膏又はセメント系の自然流動材で、不陸のあるコンクリート床面やべた基礎・布基礎の立ち上がり部の上端に5~20㎜程度流して、平たん、平滑な面をコテ押えなしで仕上げる材料。
 
〇下地補修した下地
・モルタル・コンクリート下地の不陸やカケなどに対し、モルタル・コンクリート下地補修材などで補修した下地。
 
〇コンクリート埋込型床暖房
・コンクリートの下に敷設された、防水性のある断熱材によって下地湿気が抜けにくい。
・暖房時の加湿による問題が大きい。
 
2)吸収性の少ない下地
 
・接着剤のなじみが悪く、表面が緻密なため、接着剤の乾燥を遅らせる傾向にある。
・反応形接着剤を使用するか、塗布量を少なくし接着剤の乾燥を促進させる必要がある。
・待ち時間・残存ワックスにも要注意。
・サンダー等で表面を荒らし接着性を上げる事も対策のひとつ。
 
〇木質系下地(コンパネ等)
・段差、隙間、たわみによる目地部の膨れが生じやすい。
・木質系の場合、防腐剤、防蟻剤が塗布されていると、床材を汚染することがあるので注意が必要。
 
〇人造石(テラゾ)
・ワックスが残っている場合には除去が必要。
・防水層がない場合の下地からの湿気上昇、段差、目地あき、ブロックの浮きに要注意。
 
3)吸収性のない下地
 
・接着剤の乾燥に時間を要する。
・床材の変質、目地からの接着剤のにじみ出しの可能性がある。
・反応形接着剤を使用する。
・塗布量をやや少なめにして待ち時間にも要注意。
 
〇金属系
・サビ止め塗料と接着剤のなじみが悪い場合があるので注意する。
 
〇塗床
・さざ波仕上げで凹凸があったり、平滑性に欠ける場合は要注意。
 
〇石材系(天然)
・ワックスが残っている場合には除去が必要。
・防水層がない場合の下地からの湿気上昇、段差、目地あき、ブロックの浮きに要注意。
 
〇重ね貼り
・施工後に問題が発生しやすい。
・既設床材が緻密な材質の場合やワックスが塗布されている場合には特に要注意。
※軟質な床材上への硬質な床材の重ね貼りは不可。
下地の影響要因
1)下地の湿気
 
●湿気による床材への影響
・床材が剥がれる。
・タイルが突上がる。
・床材が縮む。
・タイルの目地から汚れた水が出てきて、目地の周囲が汚れる。
・床材に膨れが出る。床材の下に水が溜まっている場合は、直径数センチの膨れになり、下地に結晶物が生成した場合には直径数ミリの膨れとなる。
・カビまたは異臭が発生する。
・動荷重(キャスター走行)のかかる所が剥がれる(膨れる)。
 
●湿気の上がりやすい環境
〇ピット上のスラブ
・床スラブの下に高温多湿の貯水層やピットがあると、スラブが結露する。
・この結露水をコンクリートが吸収し、スラブ表面まで達する。
〇隣室で水が使われている
・水を多量に使用している厨房が隣にあったり、スーパーマーケットのバックヤード、保冷庫周辺、野菜売場、あるいは外回りに植栽のある壁際は床が湿潤しやすいので要注意。
〇窓、壁の部屋内結露
・部屋内外の温度差が大きい時、窓ガラスや壁に結露した水が垂れ、床面に広がる。
 
注意点
・表面は乾いていても十分乾燥しておらず、床材施工後、湿気が上がってくることがある。
・立地条件、環境、材令、工法を事前に確認しておく必要がある。
 
2)平滑性
 
・不陸によって、接着剤の塗布量が均一にならず、凹部に塗り溜まりができる。
・下地不陸が床材の表面に出て、ワックスの塗り溜まりができる。
・床材の目地や継ぎ目から接着剤がはみ出すことがある。
・溶剤による床材の軟化、膨れ、突上げなどが発生するおそれがある。
 
3)汚れ
 
・塵埃、モルタル滓、油、塗料、サビなどが付着していると接着を妨げる。
・ワックス、グリス、油類、塗料、防蟻剤、防腐剤、アスファルト系接着剤(黒糊)、油性マジック、オイルステン、塩ビ配管用接着剤、朱墨等の汚染物質を含む汚れがプラスチック系床材に移行。
・既設床材を剥がした後の接着剤(特にアスファルト系接着剤(黒糊))が床材に移行し、裏面から汚染する。
・後日、床材表面に変色(着色)として現れる。
 
4)表面強度・レイタンス(粉ふき)
 
・粉立ちのある場合や、ぜい弱な下地では、十分な接着力は得られない。所定の接着強度を得るためには、下地も十分な強度を備えていなければならない。
・下地の強度不足によって、後日、車輪の移動など負荷がかかった際に下地が破壊される。ザラメモルタルに多い現象。
・レイタンス(粉ふき等)によって、下地と下地補修材や接着剤がなじまず、表面強度が不足している場合がある。
・プラスチック系床材の膨れや剥がれが発生。
・下地表面に接着剤が付着しないので糊入れができない。
 
5)たわみ、剛性
 
・歩行や重量物の通過で下地がたわむ場合、床鳴りや亀裂の原因になる。
・プラスチック系床材の膨れや剥がれが発生。
下地湿気の測定方法
1)ポリエチレンフィルムによる方法(簡易法)
 
・1m四方のポリエチレンフィルムを24時間下地面に広げ、周囲を空気が逃げないように止める。
・フィルムの内面に水滴が溜まったり、下地が黒く変色している場合には、下地未乾燥。
 
2)ポリエチレンフィルム法の応用
 
・床材を24時間1m四方仮敷きするか、24時間前に仮設置された荷物や器具を移動させてその下の状態をみる。
・黒く変色している場合は下地未乾燥。
 
3)コンクリート・モルタル水分計による方法
 
・平坦で日光の直射や通風がなく付着物のない場所を選んで水分計で計測。
 
※吸水性の有無の判断方法
・下地に1~2滴水滴を落として数秒後の状態を観察。
①変化がない→吸収性のない下地
②拭取ると濡れ色が残る→吸水性の少ない下地
③水滴が吸収されてしまう→吸水性のある下地
床貼り換え時の下地処理の注意点
1)既存床を剥がして貼り替える場合
 
〇ビニル系床材仕上げの場合(アスファルト系接着剤残存下地)
・クシ山や部分的なタマリに注意し、ケレン作業で残っている接着剤を取り除くのがポイント。
 
〇塗り床仕上げの場合(ウレタン系)
・下地に残っている処理が大変難しいので、床研磨機を用いて完全に除去することが望ましい。
 
〇フローリング仕上げの場合
・残ったフローリングブロックを撤去、留め金具も除去するか完全につぶし、平滑にする。
・接地床の場合は防湿層等の有無を確かめる。
 
〇カーペット仕上げの場合
・不要なグリッパーをバール等で撤去。
・壊れた下地はフラッターで充填処理する。
 
2)既存床に重ね貼りをする場合
 
〇ビニル系床材を下地とする場合
・施工に制約を受けないカーペットタイルを使用するのがポイント。既存の床の上にそのまま敷き込み可能。
 ただし、浮上がりやへこみ跡・収縮・ふくれ等の欠陥がある場合には、同一材で補修し、下地補修材で充填処理する。
 
〇塗り床を下地とする場合(セメント系)
・部分的な浮き、欠落、クラック等を、ケレン作業や下地補修材、パテ等で完全に補修。
 
〇フローリングを下地とする場合
・既存のフローリングの反り、継ぎ目等の影響を受けないよう、12㎜以上の耐水合板を上から打ち付け下地とする。
 ただし、下地に湿気がある場合は適用できない。
 
〇石材・セラミックタイル等を下地とする場合
・下地補修材を打設し平滑にする。
工法の種類
1)一般工法
 
・湿気の影響を受けない標準的な平場床に適用する。
・床材によって使用する接着剤が異なる
 
2)耐水工法
 
・床材施工後、湿気の影響を受けやすい平場床(玄関まわり、水場まわり、トイレ、毎日水洗浄する箇所等)および土間床・地下階に適用する。
・半屋外や屋外に相当する場所も耐水工法を適用する
・施工時に、下地に湿気が認められる場合は、接着剤の硬化不良が生じることがある。
 
3)垂直面工法
 
・階段のけ込み、ガード巾木・AC、巾木類、およびシートの立ち上げや巻き上げ時に適用する。
 
4)低温時工法
 
・冬期等、施工時の温度が10℃以下となる施工環境下でコンポジションビニル床タイル等を施工する場合に適用する。
・水性形接着剤の使用は、接着強さの発現が遅くなり、床材の納まりが悪くなる。
 
5)継目処理、熱溶接工法
 
・溶接棒と床材とをともに、溶接機を用いて加熱溶融し、圧力を加えながら一体化を行う。
・床材の継目部は隙間なく仕上げ、U字型に溝を切り、溶接棒を熱風溶接機を用い、溶融しながら断面を熱風溶接する。
 
6)端部処理、シール工法
 
・壁際などの端部からの水の浸入を防止し、床材のめくれ、剥がれを防ぐために、端部処理を行う。
施工の工程と注意点
1)接着剤の選定
 
・施工する床材に最も適した接着剤を選択。
・下地の種類と条件、使用条件を考慮して選択。
 
2)下地のチェック
 
・下地は不陸、目違い、突起、凹凸などがないかチェック。
・下地に付着するじんあい(塵埃)、モルタル、油類、さびなどを除去。
・下地を十分乾燥させる。
 
3)接着剤の塗布
 
・接着剤に添付してあるクシ目ゴテを使用する。
・のり溜まり、欠損部が生じないように、所定の塗布量を均一に塗布する。
 欠損部があると、施工後にフクレとして現れたり、のり溜まり部はガスフクレが生じることがある。
 塗布量が少ないと接着剤の乾きが早くなり床材との接着面積が少なくなり、継ぎ目、壁際などの剥がれの原因となる。
・使用中にすり減ったクシ目は、細かい三角やすりで目立てを行ない、所定の寸法に整えて使用する。
 
4)床材の張り付け
 
・各接着剤で規定されているオープンタイム(張り付けを開始するまでに待つ時間)、張付け可能時間を参考にして床材を張付ける。
・オープンタイムや張付け可能時間は、接着剤の塗布量・下地(吸湿性)・温度・湿度・通風量など施工環境によってかわるので、塗布した接着剤の乾燥状態を実際に確かめながら床材を張合わせる。
・オープンタイムの取り方が短すぎると、床材と接着剤との接着面積は大きくなり接着強度は高くなるが、ガスによる膨れが出やすくなる。
 逆に長すぎると、フクレは発生しにくく、納まりは良くなるが期待する接着強度が得られず、施工後に床材の剥がれの原因になる。(オーバータイム)。
 
5)圧着
 
・床材を張り付けた直後にカーペットを巻いたしごき棒やローラーで丁寧にエアー抜きを行う。
・床ローラーで圧着する。特に継目、壁際、柱周辺はハンドローラーで十分圧着させ、床材と接着剤の接着面積を広くする。
・圧着が不足すると施工後に継目、壁際などからの端部から剥がれ、目地の突き上げ、床材表面にクシ目ゴテの模様が生じる。
 
6)床材の継目・端部処理
 
・継目、壁際、柱周辺などの裁断やローラー圧着は、床材を張り付けた直後に行う。裁断やローラー圧着が遅れると接着剤の乾燥や硬化が進み、接着強度が低下してフクレや剥がれの原因になる。
・継目処理は熱溶接工法またはシール工法で、端部処理はシール工法で行う。
・熱溶接工法は接着剤硬化後に行う。
・シール工法は端部処理剤が硬化するまで踏まれないように養生する(2~3日以上)
 
7)養生
 
・接着力が十分に発現するまで、養生する。接着剤が硬化して接着力を発揮するまでには通常1~2日必要。
・接着剤が硬化するまでは直射日光、暖房、冷房など急激な温度変化を与えないよう注意する。
・土足での通行を控え、養生シートを敷いて床材を汚さないようにする。特に重量物を運搬する場合は、合板などを敷いて養生を行う。
・端部処理剤を踏むと、周囲を汚すので、硬化するまで通常2~3日は踏まないようにする。
公共建築改修工事標準仕様
1)材料
 
・ビニル床シートは,JIS A 5705(ビニル系床材)により,特記がなければ,種類は複層ビニル床シート(FS),厚さ2.0mmとする。
・ビニル床タイルは,JIS A 5705により,特記がなければ,厚さ2mmとする。
 
2)工法
 
●下地
・モルタル塗り下地は,施工後14日以上乾燥したものとする。なお,張付けに先立ち下地表面の傷等のへこみは,ポリマーセメントペースト,ポリマーセメントモルタル等により補修を行い,突起等はサンダー掛け等を行い,平滑にする。
 
●ビニル床シート張り
〇準備
・ビニル床シートは,張付けに先立ち,仮敷きを行い,巻きぐせを取る。
 
〇本敷き及び張付け
・施工に先立ち,下地面の清掃を行ったのち,はぎ目,継手,出入口際,柱付き等は,隙間のないように切込みを行う。
・張付けは,接着剤を所定のくし目ごてを用い,下地面へ平均に塗布し,また,必要に応じて裏面にも塗布し,空気だまり,不陸,目違い等のないように,べた張りとする。
・張付け後は,表面に出た余分な接着剤をふき取り,ローラー掛け等の適切な方法で圧着し,必要に応じて,押縁留めをして養生を行う。
 
〇熱溶接工法
・ビニル床シート張付け後,接着剤が硬化したのを見計らい,はぎ目及び継目の溝切りを溝切りカッター等を用いて行う。
・溝は,V字形又はU字形とし,均一な幅に床シート厚さの2/3程度まで溝切りする。
・溶接は,熱溶接機を用いて,ビニル床シートと溶接棒を同時に溶融し,余盛りができる程度に加圧しながら行う。
・溶接完了後,溶接部が完全に冷却したのち,余盛りを削り取り,平滑にする。
 
〇表面仕上げ
・接着剤の硬化後,全面を水ぶき清掃し,乾燥後は,ビニル床シート製造所の指定する樹脂ワックスを用いてつや出しを行う。
 
●ビニル床タイル及びゴム床タイル張り
〇張付け
・下地面の清掃を行ったのち,接着剤を所定のくし目ごてを用い下地面の全面に平均に塗布し,目地の通りよく,出入口際,柱付き等は,隙間のないように張り付け,適切な方法で下地面に圧着し,接着剤が硬化するまで養生を行う。
・ゴム床タイルでゴム系溶剤形接着剤を用いる場合は,接着剤を下地及びタイル裏面に塗布し指触乾燥後,張り付ける。
 
〇表面仕上げ
・上記と同様。
・天然ゴム系のゴム床タイルの場合は,湿潤なのこくず等を散布し,ポリッシャーを用いて清掃後,つや出しを行う。
 
4)寒冷期の施工
 
・張付け時の室温が5℃以下又は接着剤の硬化前に5℃以下になるおそれのある場合は,施工を中止する。やむを得ず施工する場合は,採暖等の養生を行う。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください