10万円以上のリフォーム費用や設備交換費用は経費計上?、減価償却?

リフォーム工事や設備交換の費用が10万円以上の場合、一括して経費計上できない場合があり、減価償却の処理が費用な場合がある、といった話を聞くことがあります。  
一括して経費計上なのか減価償却なのかは、
 資本的支出なのか、それとも修繕費なのか?
 既存の資産の修理・交換・改良なのか、それとも新規に資産を取得したのか?
 白色申告なのか、それとも青色申告なのか?
などによって処理の仕方が異なるようです。
 
以下、法律の規定、国税庁の通達などの情報を整理し、具体的な処理方法について調べてまとめました。
 
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法律の規定の概要
ネットで調べるとすぐにいろんな情報を得ることができますが、その情報が以下のどちらについて記載しているのかを把握していないと、
 資産の新規取得に関することか、それとも既存の資産の修理・交換・改良なのか、
 個人(所得税)に関することか、それとも法人(法人税)なのか、
複数のネット情報で矛盾を感じたり検索すればするほど混乱してしまうこともあります。
 
以下に、法律の既定の大まかな概要をまとめました。
 
1)資産の取得
 
・量的増加をもたらす支出。
・建物の増築は既存の資産に対する行為ではあるが、”量的増加”をもたらすので、”資本的支出”ではなく、”取得”として取り扱われる。
 
※第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係|国税庁
 
○費用の金額と経費計上
①10万円未満の資産取得(少額な減価償却資産)
・全額、経費計上できる。
※所得税法施行令138条、法人税法施行令133条
 
②10万円以上20万円未満の資産取得(一括償却資産)
・”一括償却資産”として、3年で均等に割った金額で経費計上できる。
※所得税法施行令139条、法人税法施行令133条の2
 
③30万円未満の資産取得(少額減価償却資産)※青色申告者のみ
・”少額減価償却資産”として、経費計上できる。
※租税特別措置法28条の2、租税特別措置法67条の5
 
2)既存の資産の維持管理・原状回復:修繕費
 
・壁紙や床材の張り替え、設備のメンテナンス・修理等、処理の内容が通常の維持管理・現状回復であれば、その費用の金額に関わらず”修繕費”として経費計上できる。
 
3)既存の資産の質的増加(価値の向上、耐久性増加):資本的支出
 
・原則としては、固定資産として減価償却する。
・ただし、費用が20万円未満の”資本的支出”の場合は、”修繕費”として経費計上できる。
・費用が20万円以上で、かつ”修繕費”とみなすことができない場合は”資本的支出”となり、固定資産として減価償却する。
※原則として、少額減価償却資産(30万円未満の資産取得)の特例が適用できない。
 
※所得税通達37-10、法人税通達7-8-1
※参考資料
〔資本的支出と修繕費等〕|国税庁
No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却|国税庁
No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出をした場合|国税庁
第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係|国税庁
プチリノベ(デザインリノベーション)の事例
●工事の概要
 
18m2の築古ワンルームで一式価格が約50万円のプチリノベ(間取り変更を伴わない簡易的なデザインリノベーション)を行った際の事例を紹介します。
 
通常の原状回復工事ではなく、”価値の向上”を伴うリフォーム工事なので、”資本的支出”に該当します。
 
プチリノベ一括の見積価格の総額は約50万円でしたが、工事項目単位別に見ると原状回復とみなされる項目もあるので、内訳の内容を基に”資本的支出”か”修繕費”か判断します。
 
○内訳概要
①ルームクリーニング、床ワックス:約3万
②クロス貼替え:約6.5万
③CF→フロアタイル貼り、ソフト巾木貼替:約11万
④ダイノックシート貼り:約6万
⑤ユニットバスワイド鏡交換:約4万
⑥カーテンレール交換:約0.8万
⑦造作飾り棚新設、下地補強:約4万
⑧スイッチ、コンセント交換:約3万
⑨枠塗装:約5万
⑩その他備品、処分費、養生費、諸経費:約6.7万
 
●上記事例の帳簿処理
 
・上記内訳のうち、①②は原状回復工事で明らかに修繕費と言えます。
・上記内訳の③~⑨は”価値の向上”と伴っているので”資本的支出”に該当しますが、すべて20万円未満なので、”修繕費”として経費計上することができます。
 
一式約50万のプリリノベを実施したので、減価償却処理が必要かと思っていましたが、詳細内訳を見て各工事単位ごとに判断したところ、結果的にすべて経費計上することができました。
 
●20万円以上の工事が含まれていた場合
 
上記事例では税込み20万円以上の工事が含まれていなかったため、減価償却処理は必要ありませんでした。
 
参考のため、上記事例③のフロアタイル貼り等が20万円以上だった場合の処理方法について検討してみました。
 
この場合は、資本的支出として固定資産として計上し、減価償却処理が必要となります。
 
〇資本的支出を行った場合の減価償却
・国税庁の資料によると、原則としては”その資本的支出を行った減価償却資産と種類および耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとして、その資本的支出を取得価額として減価償却を行う。”とあります。
※No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却|国税庁
 
“その資本的支出を行った減価償却資産”が”建物”ということになると耐用年数が47年ということになります。
 しかし、樹脂であるフロアタイルを建物の47年の耐用年数というのは実態に即していないため、例えば、種類を”建物付属設備その他”として耐用年数を10年、償却率0.1にして資産計上し、万が一税務署からの指摘があれば、話し合いで解決するというのが、実務では一般的のようです。
10万円以上の給湯器交換の場合
上記のプチリノベ工事の場合は、既存の設備に対する工事費用であるのに対し、この事例の場合は設備機器の交換ということで、ネットの情報ではいくつか異なる解釈の仕方がありました。
 
●新規取得か?、既存資産の改良(資本的支出)か?
 
イ)建物内の給湯器を新しいものに交換して”建物を改良”したとみなす(資本的支出)
・この場合は、給湯器の交換は”資本的支出”となりますが、20万円未満の場合は”修繕費”として経費計上することができます。
 
ロ)古い設備を撤去して、新たな資産を取得したとみなす(資産の取得)
・青色申告者の場合、30万円未満の場合は、”少額減価償却資産”として、経費計上できる。
・10万円以上20万円未満の場合、”一括償却資産”として、3年で均等に割った金額で経費計上できる。
※上記で説明したように以下の国税庁の情報によると原則としては資本的支出とみなされると思われます。
第67条の5《中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例》関係|国税庁
 
ただ、一般的なガス給湯器の交換費用は20万円未満なので、青色申告者の場合はイ)ロ)のどちらの解釈をしても一括経費計上できるので、帳簿処理の仕方は異なりますが、納める税金面では同一になるかと思います。
 白色申告者の場合は、ロ)の解釈をすると”一括償却資産”として3年間で1/3ずつ経費計上することになるという点で違いが出てきますが、通常の減価償却処理は必要ないことになります。
 
●資本的支出か?、原状回復か?
 
ネットで調べた情報では、大半が上記で述べた”資本的支出”又は”新規の資産取得”として処理する方法が大半でしたが、いくつか原状回復とみなして”修繕費”として処理することが可能、とありました。
 
イ)原状回復として修繕費として経費計上できる場合
・老朽化が原因で給湯器を入れ替えるためにかかる費用は、修繕として計上できる。
※故障や定期的な入れ替えなどは、必要性のあるリフォームとみなされる。
 
ロ)資本的支出としてみなされる場合
・追いたき機能付きなど機能をグレードアップした場合は、資本的支出に該当。
 
ただし、資本的支出とみなされる場合でも、費用が20万円未満の場合は”修繕費”として費用計上できるので、交換費用が通常は20万円未満の給湯器においては、この解釈の違いは実質的に影響はないと思われます。

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