築古マンションでマンション保険の保険料大幅アップ

築20年以上などの築古マンションでは、老朽化によって水漏れ被害等の保険金支払いが増えていて、個人賠償や施設賠償などのオプションの保険料が大幅にアップしているようです。
 
保険料アップの状況、保険会社の対応、代替案などについてまとめてみました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
保険料アップの状況
・築20年以上のマンションでは配管設備などの老朽化によって水漏れ被害が増えているようで、築古マンションではマンション保険の水漏れが関わるオプション、共用部施設賠償、専有部施設賠償、水漏れ原因調査、個人賠償、居住者包括賠償などが大幅に保険料アップしているようです。
 
私が所有している区分所有マンションでは、5年の長期契約中に保険料の改定があったようで、更新時期に共用部施設賠償が約7倍、居住者包括賠償(専有部施設賠償+個人賠償)が約5倍、水漏れ調査費用が約6倍とびっくりするほどの大幅アップの見積もりが届きました。
 
・一部の保険会社を除いては、マンションの築年数と事故歴で保険料決められてしまうようで、メンテナンスを適宜行っていてもそれは考慮されないようです。
 
・専有部の施設賠償はオーナー個人、個人賠償は入居者個人で個々に契約することもできますが、マンション一括で契約した場合の保険料より個々で契約した場合の方が安くなる場合もあるようです。
保険会社の対応状況(2019年時点)
損保会社毎に事故歴による保険料割引や管理状況に応じた割引など差異が生じてきています。その概要をまとめました。
※マンション管理新聞2019年8月15日号
 
●東京海上
 
①事故状況による割引
〇対象マンション
・築2年半以上・20戸以上のマンション
〇保険料の割引率
・無事故:57%
・過去2年間の戸当り事故件数が0~0.02件:50%
・            0.02~0.07件:26%
・            0.07~0.14件:13%
 
②メンテナンス割
・築20年以上で過去15年間に給排水管の更新をしていれば、約17%割引。
 
●三井住友
 
①事故歴による割引
〇対象マンション
・築3年以上・20戸以上のマンション
〇保険料の割引率
・過去2年間の戸当たり事故件数が0.02件以下:約25%
 
②管理状況割引
〇割引が適用される条件
・長期修繕修繕計画を作成
・修繕を実施している又は予定されている
・共用部に監視カメラを設置
・オートロックか管理人が24時間常駐
・戸当り事故件数が0.07件以下
〇割引率
・約10%
 
●損保ジャパン
 
①優良物件割引
〇対象マンション
・築1年以上のマンション
〇保険料の割引率
・過去1年間の戸当たり事故件数が0.02件以下:約19~29%
 
●あいおい
 
①無事故割引
〇対象マンション
・築3年以上・20戸以上のマンション
〇保険料の割引率
・過去1年間に保険料支払いがない場合:約25%
 
②管理状況割引
〇割引が適用される条件
・長期修繕修繕計画を作成
・修繕を実施している又は予定されている
・共用部に監視カメラを設置
・オートロックか管理人が24時間常駐
・排水管の高圧洗浄2年以内に実施済み
〇割引率
・約10%
 
●日新
 
①マンション管理適正化診断サービスの結果に応じて割引
・他社では事故歴が多いと保険料が引き上げられたり、契約の引受けができない場合もあるが、”マンションドクター”では診断サービスを受ければ保険契約は可能。
※マンション管理適正化診断についてはこちらを参照。
 
●注意点
・築20年以上または25年以上のマンションの新規契約は受け付けない、という大手保険会社もあります。複数見積もりを行いたくても選択自体少なくなっているようです。
オプションの水漏れに関する対象範囲
漏水の原因管理組合が入る保険オーナーが入る保険入居者が入る保険
共有部施設賠償専有部施設賠償居住者包括賠償個人賠償施設賠償個人賠償
共用部が原因の階下への漏水
専有部の施設(配管、給湯設備など)が原因の階下への漏水
入居者過失による階下への漏水
保険料軽減の対策
●複数見積もり
 
・複数の保険会社から見積もりを取り比較する。4社の見積もりで、66万~87万(1年)とかなり幅がある事例もあるようです。
・上記で記述したように新規契約を受け付けていない保険会社があったり、建物管理会社が代理店として対応している保険会社の数が少なかったりする場合もあるので注意が必要です。
 
●メンテナンス状況に応じて保険料が決まる保険を検討
 
・マンションの築年数によらず、管理実態の診断結果を基に保険料を決める保険を検討。
マンションドクター火災保険 | 日新火災海上保険株式会社
・マンション管理適正化診断サービスの診断結果に応じて割引される。
※マンション管理適正化診断についてはこちらを参照。
・まだ新しい保険で建物管理会社が保険代理店として取り扱っていない場合が多いようなので、契約手続きや実際の事故対応の面で理事会の負担が大きくなるかもしれません。
オプションを外し、個人で契約
●専有部に関わるオプションを外す
 
そもそも管理組合は”共用部”の維持・管理を行うことが目的で、専有部は基本的には範囲外、とも言えるので専有部に関わるオプションを外して保険料を軽減するという選択肢もあろうかと思います。
 
ファミリーマンションは、オーナーと入居者は同一である場合が多いかと思いますが、賃貸マンションは、入居者は非オーナーで、入居者の過失による賠償責任に関わる個人賠償保険をオーナーの負担で加入するということについて異論のある方もいるのではないでしょうか?そして、通常は賃借人は契約時に個人賠償保険に加入している場合も多いと思われ、重複して加入している場合が多いように思えます。
 
・ただし、専有部内配管や給湯管等が原因の水漏れ被害についてはオーナーの責任となるので、オーナー個人で施設賠償保険に入る必要があるかと思います。
 
●オーナー、入居者個々で契約
 
・管理組合の保険でつけている専有部施設賠償、個人賠償、居住者包括賠償を外し、オーナー個人で施設賠償保険、入居者個人で個人賠償保険に加入したほうが安くなる場合もあるようです。
 
・入居者が加入する個人賠償保険は、賃貸の場合は賃貸借契約時に賃貸管理会社から入るように勧められることが多いので、通常は加入していると思われます。
 
・オーナーが加入する施設賠償保険は、物件購入時に契約する火災保険には通常はつけられていないので、別途加入する必要があるかと思います。(私が知っている保険では1年間1,000円の保険料)
 
●全国の管理組合の加入状況
 
国土交通省のH25年マンション総合調査
・このアンケート調査によると個人賠償保険に加入している管理組合は約45%という調査結果になっています。
 
●注意点
 
・オーナー自身とその賃借人が対象の保険に加入していれば、自身の部屋が原因の水漏れの賠償を保険でカバーすることはできますが、自分の部屋が水漏れの被害者となった場合は、上階のオーナー又は賃借人の対応次第となります。
 上階のオーナー又は賃借人が保険に未加入で、かつ、過失を認めなかったりで賠償を拒否されたりするといろいろ面倒なことになるかもしれません。
 
管理組合でオプションをつけていれば、このような場合にも管理組合が加入している保険で対応することができます。こういった面倒なことを避けたい場合は、多少費用負担が増えても管理組合で加入する保険のオプションをつけたまま更新する必要があるかと思います。
.マンション管理適正化診断サービスの診断項目と配点
※マンション管理新聞2020年1月15日号
 
1)診断項目の概要
 
●管理実態
・マンション管理標準指針と管理運営状況
・”マンションみらいネット”登録状況
 
●長期修繕計画
・長期修繕計画の見直し状況
・修繕積立金の設定状況
・区分所有者の滞納状況
 
●法定点検、修繕工事
〇検査、点検実施状況
・特定建築物等定期調査
・建築設備定期検査
・防火設備定期検査
・消防用設備等点検
〇工事実施状況
・給水管工事(更新、更生)
・排水管工事(更新、更生)
・排水管洗浄
・外壁改修工事、屋上・バルコニー防水工事
 
●その他
・漏水事故履歴
・防火管理状況
・喫煙管理状況
・地下室の有無
・防犯装置の設置状況
 
2)給排水管の診断基準
 
●給水管
A.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更新工事を実施している。
B.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入あり)である。
C.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入なし)である。
④直近の長期修繕計画において、共用部分の給水管について、新築時(更新工事実施時)より25年以上の修繕周期が設定されており、診断時点でその修繕周期内である。
 
●排水管
A.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「汚水管」「雑排水管」の更新工事を実施している。
B.以下のいずれかに該当する
ア)診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「汚水管」「雑排水管」のどちらか一方の更新工事を実施している。
イ)診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「雑排水管」の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入あり)である。
③診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「雑排水管」の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入なし)である。
④直近の長期修繕計画において、共用部分の「汚水管」「雑排水管」について、新築時(更新工事実施時)より25年以上の修繕周期が設定されており、診断時点でその修繕周期内である。
 
3)配点
 
・築年による区分を設け、区分によって配点が変わる項目もある。
・”給排水管工事の実施状況”が100点満点の50点を占める。
・専有部分の配管は、更新を一斉に行っていなくても自発的に更新した住戸が一定数以上あった場合は加点の対象になる。
・高耐久部材が採用されている、などの理由で更新・更生工事を行っていない築20年以上のマンションは、実際のリスクと比べて評価が低くなってしまうという側面がある。

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