『外壁タイル等落下物対策専門委員会報告書』の概要

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『建築技術審査委員会(平成2年3月)外壁タイル等落下物対策専門委員会報告書』
タイル外壁の問題点
(1)工法の種類
 
●高層建築物のタイル工事に採用されている工法と割合 ※(社)全国タイル業協会の推計
①手張り工法   95%
②型枠先付け工法 1%
③PC板先付け工法 4%
 
●手張り工法の種類
・外装タイルでは、圧着張り工法、密着張り工法による施工方法が圧倒的であり、外装モザイクタイルでも圧着張り工法が多い。
 
①圧着張り工法
・下地に張付けモルタルを塗り、タイルをタイル用ハンマーの柄等で叩き押さえて張り付ける工法
 
②密着張り工法
・下地に張付けモルタルを塗り付け、専用の振動工具(ヴィブラート)を用いてタイルをモルタル中に埋め込むように張り付ける工法。
 
③改良圧着張り工法
・張付けモルタルを下地面に塗り、モルタルが固まらないうちにタイル側にも薄く張付けモルタルを塗りつけて張り付ける工法。
 
④改良積上げ張り工法
・精度の良い下地に対して、タイル裏面に5~10mmの厚さで張付けモルタルを塗り、タイルを張る工法。
・タイルは、下段より積上げて施工していくので、三丁掛・四丁掛等大形の外装タイルの施工に適している。
 
⑤マスク工法
・タイルユニットの裏面に所定のマスクをかぶせてモルタルを塗り下地面に張り付ける工法で、モザイクタイルに適用する。
 
(2)タイル手張り工法の品質管理
 
①工法・張付け材料の決定
・接着の信頼性の高い工法の選択
 
②目地深さ
・タイル厚さの1/2以内
 
③下地の検査
・ひび割れ、浮き、汚れのないこと
・亀裂誘発目地の正しい設置
・下地の材齢、含水状態
・下地精度
 
④張付けモルタルの混練
・砂セメント比
・水量
・混和剤の種類と量
 
⑤張付けモルタルの塗布
・塗厚
・下地の水しめし
 
⑥タイル張り
・オープンタイム
・目地部へのモルタルの盛り上げ
・モルタル充填度
 
⑦目地詰め
・目地深さ
・目地材の充填度
 
⑧清掃
・材齢
・酸洗いの場合は酸濃度
 
⑨外観
・汚れ、著しい欠点がないこと
 
⑩打診検査
・テストハンマーにて全数検査し、浮き剥離のないこと
 
⑪接着強度
・4kgf/cm2以上の接着強度を有すること
 
(3)タイル外壁の問題点
 
〇外壁タイル壁面の落下事故の原因
・多くがモルタル下地施工によるものの落下であり、重大事故につながるものも、大きいモルタル下地を伴う場合である。
 
〇下地モルタルの施工の問題点
・仕様書には”左官工事による”とのみ記載され、タイル工事のチェック、検査が必ずしも十分になされていなかった。
 
〇タイル工事業者の品質管理
・タイル工事業者は、企業規模が小さいものが多く、上記(2)の品質管理の各工程における検査、チェック項目が忠実に実行されているとは言い難い。
 
〇設計段階
・剥落防止の観点から、躯体設計、亀裂誘発目地の設置等各種の配慮を要する事項があるが、必ずしもそれらが実行されてはいない。
タイル外壁等診断の問題点
(1)タイル外壁の診断方法
 
1)外観目視法
 
〇基本原理
・診断者が直接壁面に接することのできる箇所については肉眼により、診断者が直接壁面に接することのできない箇所については高倍率の双眼鏡、望遠鏡またはトランシットを使用して、外壁の浮き、剥落、白華現象、ふくれ等を調査する方法。
 
〇特色
・比較的簡単で、経費も比較的少ない。
・広範な調査が可能。
 
〇限界
・外形上の異常の発見が可能であるが、外形上異常が発生していない浮き等については発見できない。
・外形上異常が存在しても、光の具合や障害物等により見落す恐れがある。
・測定結果を客観的な数値として表すことができない。
 
2)打診法
 
〇種類
①部分打診法
・外壁のうち、通常特に剥落の危険の大きいと思われる部分について部分的に打診を実施する方法。
・足場やゴンドラ等を使用せず手の届く部分を実施する場合と、足場やゴンドラ等を使用して部分的に実施する場合とがある。
②全面打診法
・ゴンドラや足場等を利用して、外壁の全面を打診する方法。
 
〇基本原理
・テストハンマーによりタイル等表面を打撃し、打音の差異(清音-健全、濁音-剥離)を聞き取り、タイル等の浮きの有無と程度を判定する。
 
〇特色
・習熟技術者による精度はかなり高い。
・診断に用いる道具が簡便。
・剥離界面が浅い場合に精度が高い。
 
〇限界
・測定結果を客観的な数値として表すことができない。
・測定者の経験に頼る面が多く、熟練度により判定に差異が出る。
・概ね厚さ40mm以上の場所にある剥離を検知することが困難。
・足場ないしはゴンドラを必要とする。
・型枠先付け工法によるタイル裏側に生じたコンクリートの豆板部についての精度が低い。
 
3)反発法(衝撃振動応答法)
 
〇種類
・衝撃応答加速度法(G法)
・衝撃応答振幅法(T法)
 
〇基本原理
・シュミットハンマ等を用いてタイル面等に一定エネルギーの打撃を与え、その打撃により生じたはね返りの大きさを自動記録し、反発度または音圧の違いによってタイル等の浮きの有無と程度を判定する。
 
〇特色
・判定値を自動的に記録でき、判定者による判定結果の差異がない。
・特別高度な習熟技術を要しない。
・打音法よりも一般的には、精度が高い。
・ロボット化により、足場、ゴンドラが不要である。
・天候、気温等の影響が殆どない。
・短時間で作業が可能。
 
〇限界
・調査対象壁の裏側の状態や周囲の拘束状態の違いなどから誤診する場合がある。
・厚さ40mm~70mm以上の部分の剥離を検知することが困難。
・ロボットの場合、窓回り、凹凸部周辺で一部探知ができない。
・ロボットの場合、適用できる建物の高さに限界がある。
・ロボットの場合、風等の影響により測定誤差を生じる場合がある
 
4)赤外線装置法(表面温度測定法)
 
〇基本原理
・タイル等の剥離部と健全部とでは熱伝導の違いがあるが、これによりタイル等の表面部に温度差が生じる。この温度差を利用して、タイル等の浮きの有無と程度を判定する。
 
〇特色
・非接触型の場合、検査足場や吊り装置を要せず、安全かつ簡便である。
・構造物の大きな一面を短時間に一挙に欠陥判定でき、最も効率的である。
・晴天日の午前中(気温の上昇時)における探知精度が最も高い。
・熱画像の記録、再生ができ、視覚に訴えることができる。
・熱画像をさらに処理すると識別しやすく、かつ精度が向上する。
 
〇限界
・季節、天候、時刻、気温、壁面の向き、カメラ距離、仕上材の色調や、建物の冷暖房・機械類の発熱等の影響を受ける。
・上記の結果、映像の解析には、相当高度の熟練を要する。
・雨や風の強い日の測定が困難。
・壁面と赤外線カメラの間に樹木等の障害物があると測定できない。
・映像装置も含む測定機器の取得価格が比較的高額。
・機器、画像の処理方法による結果の差異が大きい。
・ベランダや庇等の突起物がある場合は、測定が困難
 
5)超音波法
 
〇種類
・反射法
・透過法
 
〇基本原理
・超音波の伝幡速度、反射、減衰が剥離部と健全部とでは相違することを利用して、タイル等の浮きの有無と程度を判定する。
 
〇特色
・検査足場や吊り装置(検査者用の)を要せず、安全かつ簡便である。
・天候、気温等の影響が少ない。
 
〇限界
・センサーの当て方の上手、下手で結果に差異がでる。
・外壁のような広い面には適用しにくい。
・各種の部材から構成されている壁面(タイル張り等)では、電波速度の設定が困難。
・表面が粗いものには適用しにくい。
・装置価格が比較的高額。
 
6)AE(Acoustic Emission)法
 
〇基本原理
・固体中に亀裂が伝播するとき、または固体が変形するときに発生する音の放出を捕捉して変形等を判断する。
 
〇特色
・機械の劣化の判断には適している。
・機械を停止しなくても診断できる。
 
〇限界
・外壁のように面積が大きく、かつ劣化が長いスパンで生じるものについては適用しにくく、またコストも高い。
 
7)電気抵抗法
 
〇基本原理
・電気抵抗の変化を読み取り、劣化を判断する。
 
〇限界
・外壁のように、電気抵抗が大きく、電気的条件が自然条件に左右されるようなものには適用が困難。
 
(2)タイル外壁等診断の問題点
 
●第1次診断について
〇目視
・目視では、タイル等の剥離を発見することは困難。
→修繕歴の調査や壁全体の目視に加えて、第1次診断の段階から、部分的に打診法を採用することが妥当と思われる。
 
〇部分的な打診法
・費用の関係から特に落下の危険のある開口部、パラペット付近、建物出隅部分等の部位及び日射や雨水の影響を受けやすい方位や高さ等による選択基準を作成し、実施する必要がある。
 
〇客観的判定基準
・何をもってタイルの接着状態が異常とするかの客観的判定基準を作成する必要がある。
 
●第2次診断について
〇測定誤差、外的条件の影響などの制限
・打診法は、張り付け厚さが厚くなると判断が困難になり、測定者の習熟程度によって測定結果が左右される。
・赤外線装置法は、日射や風等の外的条件の影響を受けやすい等のいくつかの限界があり、反発法についても同じく限界がある。
・上記限界を明確にしておくとともに、これらの適切な組合せ方法の開発や簡便な診断技術の開発が必要。
 
●第3次診断について
・剥落の危険性の評価を初めて定量的に示している点は高く評価できるが、数字だけが1人歩きし、その背景が忘れられる恐れもあるため、これだけで判断できない場合もあることを診断者に徹底させることが必要。
・第3次診断として、第2次診断を実施した部位だけでなく、新たに壁面全体について診断するのか否かが、明確ではない。
剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針
(1)診断の対象外壁
 
・タイル外壁等の剥落により危害の及ぶと考えられる範囲内に、道路、通路、公共の広場等不特定または多数の人の利用する部分を有する外壁。
・これ以外の外壁についても、本指針に基く診断を実施することが望ましい。
 
(2)診断方法の種類、選定、診断レベル
 
・診断の方法として、①外観目視法、②打診法、③反発法、④赤外線装置法の4つを採用する。
・外観目視法、反発法、赤外線装置法については、打診法と併用するものとする。
 
●診断方法の選定
・診断技術者は、診断すべき建物の立地、規模、形態等及び各種診断方法の適用限界を踏まえて、適正な診断方法及び診断時刻等を選定しなければならない。
 
●診断のレベル
〇診断レベルI
・次のいずれかによる。
①全体の外観目視+部分打診法
②全体の外観目視+部分的な赤外線装置法と部分打診法の併用 or
 全体の外観目視+部分的な反発法と部分打診法の併用
 
〇診断レベルII
・全面打診法 or
 全面的な赤外線装置法と部分打診法の併用 or
 全面的な反発法と部分打診法の併用
 
(3)予備調査
 
・診断レベルを実施する場合には、まず予備調査を実施しなければならない。
・測定の箇所や診断方法、時期等を選定し、診断費用の見積りを行うための調査。
 
●予備調査の内容
①人的災害危険度の大きい外壁の決定
②過去の修繕歴の調査
・管理者よりのヒアリング、修繕の記録の調査を行うとともに、部分的な張替や樹脂注入の痕跡の有無を目視により観察する。
③過去の診断記録の有無
・管理者よりのヒアリング、診断の記録の調査を行うとともに、記録があればその内容を調査する。
④タイル外壁の場合のタイル張り工法の確認
・タイル外壁の場合には、管理者よりのヒアリングや図書により、タイル張りの工法を確認する。
⑤建物の履歴や使用法、地域環境の特徴の調査
 
(4)診断レベルIの診断内容
 
1)全体の外観目視の調査項目
 
・剥落、欠損、白華現象(エフロレッセンス)、ひび割れ、錆水の付着、ふくれ、浮き、汚れ、水濡れ
 
2)部分打診法等による浮きの測定
 
●外観目視での異常部
・外観目視により、剥落、白華現象、ひび割れ等の異常の認められた、下記の部分については、①部分打診法、②赤外線装置法と部分打診法の併用もしくは部分的な反発法と部分打診法の併用のいずれかの方法により浮きを測定する。
 
〇測定個所
・欠損または剥落したタイル、モルタルの周辺概ね1m以内
・ひび割れ部の両側概ね1m以内
・白華部及びその上部概ね1m以内
・錆の流出部及びその上部概ね1m以内
 
●剥落の可能性が大きいと思われる部分
・外観目視により、異常の認められない場合でも、特にタイルまたはモルタルの剥落の可能性が大きいと思われる下記の部分については、①部分打診法、②部分的な赤外線装置法もしくは部分的な反発法と赤外線装置法、反発法では明確な判断ができない部分についての部分打診法の併用のいずれかの方法により浮きを測定する。
 
〇測定個所
・開口部周辺概ね1m以内
・笠木、窓台等の他の材質と接している部分概ね1m以内
・出隅部分、パラペット上端、庇及び窓台部分概ね1m以内
・コンクリート打継部及びエキスパンションジョイント部周辺概ね1m以内
 
3)診断レベルIの測定結果の判定基準
 
・測定結果の判定は、下記①②を標準として診断実施者が行う。
①下記のいずれかに該当する場合は、診断レベルIIを実施するものとする。
・1m2以上のまとまった、タイルまたはモルタルの剥落箇所が1箇所以上存在する場合
・ひび割れが、壁面に全面的に発生している場合
・ふくれが2箇所以上存在する場合
・部分打診法等による探査の結果、浮きの面積が探査面積の30%以上または浮きの面積が3m2以上まとまった箇所が2箇所以上存在する場合
・その他、異常が認められる場合で、タイルまたはモルタルの剥落による災害防止の観点より、診断レベルIIを実施すべきと判断される場合。
②上記①のいずれにも該当しない場合
・剥落箇所、ひび割れ箇所、浮きの箇所等について補修を行う。
 
(5)診断レベルIIの診断内容
 
1)診断レベルIIの内容
 
・壁面全体につき、剥落の危険の箇所を検知するため行う。
・外観目視法により壁面全体について、タイルまたはモルタルの剥落、欠損、白華現象、ひび割れ等を調査するとともに、1) 全面打診法、2) 全面的な赤外線装置法もしくは全面的な反発法の赤外線装置法、反発法では明確な判断ができない部分についての部分打診法の併用のいずれかの方法により、浮きの測定を行う。
・診断レベルIを実施した結果、診断レベルIIを実施する場合は、外観目視による調査は要しない。
 
2)診断レベルIIの測定結果の判定
 
・診断レベルIIの測定結果、発見されたふくれ、浮きについては、全て危険なものと判定し、補修または改修を実施するものとする。
 
(6)診断の実施時期、診断の種類
 
・診断の種類は、定期的外壁診断及び臨時外壁診断の2つとし、その実施の時期は次の通りとする。
 
1)定期的外壁診断
 
①建物竣工後2年以内:診断レベルI
・第1回目の定期的外壁診断については、必要に応じて診断レベルIに加えて接着強度測定を実施するものとする。
 
②これ以降3年以内毎に1回:診断レベルI
 
③建物竣工後10年前後:診断レベルII
・必要に応じて接着強度測定を併せて実施する
 
※臨時外壁診断を実施した場合は、これ以降の定期的外壁診断の実施の時期は、臨時外壁診断の実施時期を起点として3年以内毎とすることができる。
 
2)臨時外壁診断
 
・以下のような場合は、定期的外壁診断とは別に、早急に臨時外壁診断を実施するものとする。
①壁面の一部が剥落した場合(診断レベルII)
②地震があった場合または火災に罹災した場合で、壁面に、ひび割れ、ふくれ等の異常が認められる場合(診断レベルI)
タイル外壁等剥落防止のための設計・施工上の留意事項
(1)設計上の留意事項
 
1)設計全般
 
・伸縮調整目地を設けない大壁面へのモルタル塗及びタイル張りは行わない。
・金属笠木の使用等により、モルタル裏面、タイル裏面に水が回らない設計とする。
 
2)伸縮調整目地の設置
 
●伸縮調整目地、ひび割れ誘発目地とは?
〇伸縮調整目地
・幅が延び縮みする目地で、温度変化や水分変化あるいは外力などによる建物や建物各部の動きによる変形の影響を少なくするために設けられる目地。
 
〇ひび割れ誘発目地
・コンクリートの収縮及び温度・乾湿によるひび割れを「決めた箇所」に発生させるためにコンクリート壁に設置する目地。
 
●伸縮調整目地の設置
・原則として、伸縮調整目地を以下の条件で設置するものとする。
 
①設置場所
・コンクリート打継部(水平方向)
・3~4m毎(垂直方向)
・曲面・パラペット、外階段等で躯体挙動の大きい壁面 1~2m毎
・開口部周辺
・他部材との取り合い部
・柱型周囲、柱間
 
②設置上の注意事項
・ひび割れ誘発目地の設置箇所には必ず伸縮調整目地を設ける。
・適切な幅、深さを確保する。
・タイル仕上げを汚染しないシーリング材を選択する。
・タイル割り付けに合わせた位置に設置する。
 
3)躯体処理
 
・コンクリート面にモルタルを塗布する場合は、表面清掃を行いモルタルの接着性を良くするようにしておく。
 
4)モルタル塗り(タイル下地モルタル、モルタル塗り外壁)
 
・一回のモルタル塗り厚は、原則として7mm以下とし、全塗り厚は25mm以下とする。
・それ以上の厚さを必要とする場合は何らかの方法により、物理的な留め付けを行う。
 
5)タイル張り工法の選択
 
●PC版先付け工法・型枠先付け工法
・これらの工法は最も安全な工法であり、剥離の危険度は小さい。
 
※PC版先付け工法
・プレキャストコンクリート版製造時に型枠ベッド面にタイルを並べ、コンクリート打設することによりタイルとコンクリートを一体化する工法。
※型枠先付け工法
・建築現場の型枠にタイルを並べ、コンクリート打設することによりタイルとコンクリートを一体化する工法。
 
●手張り工法
・以下の改良工法を推奨する。
 
〇モザイクタイル
・ユニットタイル改良積み上げ張り
・但し、25mm以下のタイルはモザイクタイル張りとする。
 
※ユニットタイル改良積み上げ張り(マスク工法)
・ユニットタイル裏面にモルタル塗布用のマスクをかぶせて張付けモルタルを塗り付け、マスクを外してからユニットタイルを叩き押えして張り付ける工法。
※モザイクタイル張り
・下地面に張り付けモルタルを塗り、追いかけて表紙張りのモザイクユニットタイルを叩き押えして張り付ける工法。
 
〇外装タイル
①大きさが3丁掛、4丁掛厚手のタイル(厚さ20mm以上)
・改良積み上げ張り
・改良圧着張り
②その他のタイル(小口平~2丁掛等)
・改良積み上げ張り
・改良圧着張り
・密着張り
 
※改良積み上げ張り
・精度の良い下地を作り、タイル裏面に比較的薄い(5~10mm程度)張り付けモルタルを塗り、タイルを張り付ける工法。
※改良圧着張り
・張り付けモルタルを下地面に塗り、これが硬まらないうちにタイル裏面に同じモルタルを塗ってタイルを張り付ける工法。
※密着張り
・張り付けモルタルを下地面に塗り、これが硬まらないうちにタイルを押えつけタイル張り用振動工具を用いてタイルに振動を与えタイルを張り付ける工法。
 
〇推奨理由
・タイル裏面にモルタルを塗布する工法はタイル接着のバラツキが小さく安全な工法
→従って、できるだけタイル裏面にモルタルを塗布する工法の採用が望ましい。
・工場生産によるタイル張りまたはモルタルを使用しない乾式工法によるタイル施工の開発・普及が望まれる。
 
6)タイルの選択
 
①JIS規格製品によるもの、またはJIS A 5209に適合するものとする。
②磁器質タイルまたはせっ器質とする。せっ器質については耐凍害性を確認のこと。
③裏足は、蟻足型で以下の高さが確保されていること。
・モザイクタイル…高さ0.7mm以上
・外装タイル…高さ1.5mm以上
 
7)現場調合モルタルは、以下の条件を満足すること
 
①セメント
・普通ポルトランドセメントとし、日本工業規格JIS R 5210に合格するものを用いる。
・それ以外のセメントを使用する場合は特記による。
 
②細骨材
・川砂もしくはけい砂及びこれに準ずるものとし、清浄にして耐久的なもので有害量のごみ・泥土・有機不純物・塩分などを含まないものとする。
 
8)タイル目地及び目地材
 
①突き付け目地はしない。
②深目地の禁止。
・目地深さはタイル厚の1/2以下とする。
③骨材の入った目地材を採用する。
・現場調合目地材:骨材の混入
・既製調合目地材の採用
 
(2)施工管理上の留意事項
 
1)工程管理
 
①下地モルタルの施工
・コンクリート打設後最低2週間養生後、行う。
②タイル張り
・下地モルタル施工後最低2週間養生後、行う。
 
2)モルタル施工後のチェック
 
・モルタル塗り仕上げ及びタイル張り下地モルタルは施工後、下記の項目の検査を行う。
①モルタルの浮き・ひび割れ・仕上がり面の不良などの欠陥
②モルタルの効果及び乾燥の程度
③下地モルタル面の汚れ・レイタンス(タイル張り前にチェックする)
※レイタンス
・コンクリートの打設した後に、セメントの石灰石の微粒子や骨材の微粒分が、コンクリートの上面に上昇して堆積した白色の泥膜層のこと。
・この部分は硬化不十分なので除去しなければいけない。
 
3)工事終了後の検査
 
①打診
・モルタルの硬化を見計らって全面にわたり打診する。
 
②接着力試験
・モルタルの強度が出たと思われるときに試験を行う。
・引張強度は、4kg/cm2以上とする。

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