エレベータ制御リニューアルの相見積の事例

投資用ワンルームマンションでは、費用削減のためエレベーターの一式交換ではなく制御リニューアルを実施する場合が多いと思います。
ワンルームマンションで制御リニューアルの相見積を実施した事例を紹介します。
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
撤去新設方式と制御リニューアル方式
●撤去新設方式
・既存エレベーターのすべての構成機器を撤去し、最新式の機種に更新する。
・マシンルームレス仕様等の採用も可能となるが、工期は長期間を要する。
 
●制御リニューアル方式
・耐久部材を引き続き利用し、経年劣化した部品を交換。
・建物に固定された機器(ガイドレール、乗場三方枠等)を再利用し、巻上機や制御盤等を最新機種に取り替える。
・リレー制御からインバーター制御へ変更することもでき、工期も短くてすむ。
油圧式の制御リニューアルの流用・交換部品
1)機械室の機器、部品
 
●交換部品
・制御盤
・油圧パワーユニット(モーター、油圧ポンプ、バルブ、オイルタンク)
・作動油
・油圧ユニット架台
 
2)昇降路内の機器、部品
 
●交換部品
・主ロープ、ガバナロープ、制御ケーブル
・着床センサー、リミットスイッチ
 
●既存部品流用
・メインレール
・プランジャー
・油圧配管
・緩衝器
 
3)かご
 
●交換部品
・かご内操作盤、かご内位置表示器(操作盤に組込)
・ドアモーター、ドアコントローラー
 
●既存部品流用
・かご枠、かご側板、かご扉、かご床、かご内敷居
・かご天井(LED)
 
4)乗場
 
●交換部品
・乗場操作盤、乗場位置表示器(操作盤に組込)
 
●既存部品流用
・乗場三方枠、乗場敷居
・乗場扉、乗場扉開閉機構
 
5)安全装置
 
●追加施工する機器
〇地震時管制運転装置(S/P)
・P波を感知し、最寄階へ休止及びドアを開き避難後ドアを閉じる。
・一定以上のS波を感知した場合は待機し、S波が小さい場合には自動復旧する。
 
〇停電時管制運転装置(予備バッテリ)
・停電を感知すると予備バッテリーに切り替わり、エレベーターを最寄階まで自動的に運転し、戸を開き乗客を救出する。
 
〇耐震対策工事(98年指針)
 
●オプションである場合が多い機器
〇戸開走行保護装置
・故障発生時においても戸開走行を防止する、①二重ブレーキ化、②戸開走行検出装置、③二重系の制御装置、の3要件をすべて満たす必要がある。
 
〇マルチビームドアセンター
・かごドア開口部に設置された多数の赤外線ビームが人や台車などのあらゆる動きを感知すると閉まりかけたドアが反転する。
油圧式の制御リニューアルの相見積事例
●エレベーターの概要
 
・積載量:6人/450kg
・階数:4階
・製造年:1980年代後半
 
●相見積の状況
 
項目名独立系A社独立系B社独立系C社
見積価格800万690万520万
納期120日150日90日
工事期間8日9日11日
FM保守月額2.7万2.6万4.0万
※金額は税抜き
 
●交換対象機器が少ない場合も
 
上記の相見積事例では、独立系C社の見積価格が1番安かったのですが、内訳を比較すると以下の機器の交換が含まれていませんでした。
 油圧パワーユニットの交換:240~290万ぐらい
 停電時自動着床装置:約40万
 
上記の約300万円分を加えると820万相当となり、一番高くなります。
 
相見積をした際は、合計金額の比較だけではなく、内訳も比較するのが重要です。
 
●リニューアル後のFM(フルメンテナンス)月額費用の比較も重要
 
上記事例の独立系C社の見積ですが、保守契約をFM契約とすれば部品の交換も無料で行ってもらえるので、制御リニューアル時に油圧パワーユニットを交換しないという選択肢もあるのかもしれません。
 
そこで、制御リニューアル後に保守契約をFM契約にした場合の25年間の費用の比較をしてみます。
   工事費用 25年間の保守費用        合計
A社  800万  2.7万×12ヵ月×25年=810万   1,610万
B社  690万  2.6万×12ヵ月×25年=780万   1,470万
C社  520万  4.0万×12ヵ月×25年=1,200万  1,720万
 
このように月額費用を含めた25年間の費用比較をしても、C社はFM契約の月額費用が高くなっているため、他社と比べて不利になっていることが分かります。
 
制御リニューアル時に油圧パワーユニットを交換していないため、FM契約の月額費用を高くしているものと思われます。
 
●発注してからの納期が90~150日
 
古いエレベータのPOG契約の場合、高額な部品交換が必要になった時点で、部品交換せずに制御リニューアルを検討する、という考え方もあるかもしれません。
 
ただ、見積のための現地確認、理事会での検討期間、総会決議などの時間に加え、発注してからの納期が90~150日かかるので注意が必要です。

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