・管理業務主任者
・マンション管理士
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耐震改修の概要
1)耐震改修とは
・旧耐震基準により建設された建物に対して耐震診断を行った結果、大地震時に必要な耐震性能(目標性能)を満足しない場合に、建物の弱いところ、足りないところを補って構造性能を向上させ目標性能を確保すること。
2)耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の認定手続き、建築確認手続き
①耐震改修促進法に基づく認定を受ける場合
・耐震改修促進法に基づき耐震改修計画の認定手続きを行う場合は、建築確認の手続きが不要となる。
・構造規定以外の防災規定等の既存不適格項目に関しては遡及することが免除される。
・本認定は、支援制度のうち、住宅・建築物耐震改修等事業の耐震改修費用に対する補助の用件となっている。
②建築確認申請の手続きに従う場合
・耐震改修促進法に基づく認定を受けない場合は、建築基準法に基づく手続きに従うことになる。
・一般的なマンションの計画修繕に伴う改修工事については、大規模の修繕又は模様替えに当たることは少ないと考えられるが、耐震補強等で模様替えにあたる工事のうち、主要構造部を過半にわたり大規模に模様替えをする場合については確認申請が必要になる。
・マンションの耐震改修工事については、大規模な模様替えに該当する場合が多いと考えられるため、事前に関係機関に確認しておくことが重要。
・旧耐震基準により建設された建物に対して耐震診断を行った結果、大地震時に必要な耐震性能(目標性能)を満足しない場合に、建物の弱いところ、足りないところを補って構造性能を向上させ目標性能を確保すること。
2)耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の認定手続き、建築確認手続き
①耐震改修促進法に基づく認定を受ける場合
・耐震改修促進法に基づき耐震改修計画の認定手続きを行う場合は、建築確認の手続きが不要となる。
・構造規定以外の防災規定等の既存不適格項目に関しては遡及することが免除される。
・本認定は、支援制度のうち、住宅・建築物耐震改修等事業の耐震改修費用に対する補助の用件となっている。
②建築確認申請の手続きに従う場合
・耐震改修促進法に基づく認定を受けない場合は、建築基準法に基づく手続きに従うことになる。
・一般的なマンションの計画修繕に伴う改修工事については、大規模の修繕又は模様替えに当たることは少ないと考えられるが、耐震補強等で模様替えにあたる工事のうち、主要構造部を過半にわたり大規模に模様替えをする場合については確認申請が必要になる。
・マンションの耐震改修工事については、大規模な模様替えに該当する場合が多いと考えられるため、事前に関係機関に確認しておくことが重要。
耐震、制震、免震
●耐震
・建築物の剛性を高めることによって、地震による揺れや衝撃に対抗する構造形式。
〇例
・鉄骨ブレース:既存コンクリート造の柱・はりの補強
・柱や梁の補強:鋼板巻き付け、炭素繊維シートの巻き付け
・耐震壁の新設・増設:建物全体の構造強度の向上
・外付けフレーム新設
●制震
・建物の梁等の骨組みに配置した制震装置(ダンパー、制震プレース制御壁等)により地震エネルギーを吸収させようとする構造方式。
・建物の固有周期が長い中高層にに向いている。
・ダンパーには、オイルダンパーのような粘性あるいは粘弾性ダンパーや鋼材、鉛等の復元力特性を履歴ダンパー等がある。
●免震
・基礎と上部構造の間に鋼と積層ゴム等で構成された免震装置を設けて、地震により地盤から建物に伝わる揺れや衝撃を軽減しようとする構造方式で、主に中低層に採用されている。
・積層ゴムなどの免震層を配置することにより、地震力に対して建築物がゆっくりと水平移動し、建物の曲げや変形を少なくする。
・建物の耐震性能が高まるだけでなく、家具の転倒や非構造部材の破壊が少なくなる等の従来の耐震構造にはない利点があるとされ、マンションでの採用が増えている。
・免震装置の維持管理が必要となる。
・免震構造に用いられる免震材料は、鉛直荷重を支持し、建築物の水平方向の変形性能を確保する支承材だけでなく、支承(アイソレーター)の変形量が大きくなりすぎないようにする減衰装置(ダンパー)もある。
・免震装置で地震エネルギーを低減させようとするものだが、免震装置を設置する位置により、基礎免震と中間階免震等に分類される。
・基礎免震:建物と地盤面との間に免震装置を取り付ける。
・中間階免震:建物の中間階で、既存の柱を切断し、免震装置を取り付ける。
・建築物の剛性を高めることによって、地震による揺れや衝撃に対抗する構造形式。
〇例
・鉄骨ブレース:既存コンクリート造の柱・はりの補強
・柱や梁の補強:鋼板巻き付け、炭素繊維シートの巻き付け
・耐震壁の新設・増設:建物全体の構造強度の向上
・外付けフレーム新設
●制震
・建物の梁等の骨組みに配置した制震装置(ダンパー、制震プレース制御壁等)により地震エネルギーを吸収させようとする構造方式。
・建物の固有周期が長い中高層にに向いている。
・ダンパーには、オイルダンパーのような粘性あるいは粘弾性ダンパーや鋼材、鉛等の復元力特性を履歴ダンパー等がある。
●免震
・基礎と上部構造の間に鋼と積層ゴム等で構成された免震装置を設けて、地震により地盤から建物に伝わる揺れや衝撃を軽減しようとする構造方式で、主に中低層に採用されている。
・積層ゴムなどの免震層を配置することにより、地震力に対して建築物がゆっくりと水平移動し、建物の曲げや変形を少なくする。
・建物の耐震性能が高まるだけでなく、家具の転倒や非構造部材の破壊が少なくなる等の従来の耐震構造にはない利点があるとされ、マンションでの採用が増えている。
・免震装置の維持管理が必要となる。
・免震構造に用いられる免震材料は、鉛直荷重を支持し、建築物の水平方向の変形性能を確保する支承材だけでなく、支承(アイソレーター)の変形量が大きくなりすぎないようにする減衰装置(ダンパー)もある。
・免震装置で地震エネルギーを低減させようとするものだが、免震装置を設置する位置により、基礎免震と中間階免震等に分類される。
・基礎免震:建物と地盤面との間に免震装置を取り付ける。
・中間階免震:建物の中間階で、既存の柱を切断し、免震装置を取り付ける。
耐震補強の種類
1)耐震性能の不足の要因
①耐力の不足
②靱性の不足
③剛性のバランス不良
④材料の劣化・不良
2)耐震補強の方法
①強度型の耐震補強
〇強度型の耐震補強とは
・建物の耐震性能のうち強度を高くして、地震エネルギーを吸収させる方法。
・水平耐力そのものが低い建物、水平変形が期待できない建物、大きな水平変形を生じさせてはいけない建物等に適用される。
〇強度型補強の方法
・耐震壁(鉄筋コンクリート壁又は鉄骨ブレース)の増設
・開口部の閉塞
・既存耐震壁の増打ち等
〇実施条件、居住性への影響等
・外壁面の補強は、外観デザインに大きな影響を与えるため、外観のデザイン改修・外装材改修等が必要になることがある。
・耐震壁の増設や開口部の閉塞は、住宅としての用途や使用勝手に大きな影響を与える場合がある。
・既存耐震壁の増打ち補強により、居室面積が小さくなる。また、補強部位が柱又は梁の断面幅内に収まる必要がある。
②靱性型の耐震補強
〇靱性型の耐震補強とは
・建物の耐震性能のうち靱性(建物の粘り強さ)を高め、強度をあまり落とすることなく水平変形能力を高め、地震エネルギーを吸収させる方法。
〇靱性型補強の方法
・せん断破壊の恐れのある柱への鉄鋼板や炭素繊維の巻き付け
・袖壁の増設
・増打ちによる柱断面の増強等
〇実施条件、居住性への影響等
・柱のせん断補強は、袖壁・垂壁・腰壁の存在により補強が難しい場合がある。
・柱周りに設備配管がある場合は改修範囲が広がってしまう。
・梁のせん断補強は梁周りに天井・設備ダクト等が近接している場合には難しい場合がある。
・個々の柱・梁部材を補強するため、工事範囲が建物全体に及ぶ。
③極脆性部材を解消する
・新耐震基準以前の耐震基準で設計された建物は、地震時の変形能力に配慮した検討が十分に行われていないため、一つの建物に様々な変形能力を持った部材が混在している場合があり、地震時に大きな水平力を受けた場合には、変形の増大に伴って負担力も増大し部材が連鎖的に破壊されるおそれがある。
例)外廊下型の高層マンションでは、北側通路側の柱は腰壁・垂壁で拘束された極単柱が多く、極脆性的なせん断破壊が生じるおそれがある。
・建物内に、上記のような極脆性部材が存在する場合には、その解消を図る必要がある。
①耐力の不足
②靱性の不足
③剛性のバランス不良
④材料の劣化・不良
2)耐震補強の方法
①強度型の耐震補強
〇強度型の耐震補強とは
・建物の耐震性能のうち強度を高くして、地震エネルギーを吸収させる方法。
・水平耐力そのものが低い建物、水平変形が期待できない建物、大きな水平変形を生じさせてはいけない建物等に適用される。
〇強度型補強の方法
・耐震壁(鉄筋コンクリート壁又は鉄骨ブレース)の増設
・開口部の閉塞
・既存耐震壁の増打ち等
〇実施条件、居住性への影響等
・外壁面の補強は、外観デザインに大きな影響を与えるため、外観のデザイン改修・外装材改修等が必要になることがある。
・耐震壁の増設や開口部の閉塞は、住宅としての用途や使用勝手に大きな影響を与える場合がある。
・既存耐震壁の増打ち補強により、居室面積が小さくなる。また、補強部位が柱又は梁の断面幅内に収まる必要がある。
②靱性型の耐震補強
〇靱性型の耐震補強とは
・建物の耐震性能のうち靱性(建物の粘り強さ)を高め、強度をあまり落とすることなく水平変形能力を高め、地震エネルギーを吸収させる方法。
〇靱性型補強の方法
・せん断破壊の恐れのある柱への鉄鋼板や炭素繊維の巻き付け
・袖壁の増設
・増打ちによる柱断面の増強等
〇実施条件、居住性への影響等
・柱のせん断補強は、袖壁・垂壁・腰壁の存在により補強が難しい場合がある。
・柱周りに設備配管がある場合は改修範囲が広がってしまう。
・梁のせん断補強は梁周りに天井・設備ダクト等が近接している場合には難しい場合がある。
・個々の柱・梁部材を補強するため、工事範囲が建物全体に及ぶ。
③極脆性部材を解消する
・新耐震基準以前の耐震基準で設計された建物は、地震時の変形能力に配慮した検討が十分に行われていないため、一つの建物に様々な変形能力を持った部材が混在している場合があり、地震時に大きな水平力を受けた場合には、変形の増大に伴って負担力も増大し部材が連鎖的に破壊されるおそれがある。
例)外廊下型の高層マンションでは、北側通路側の柱は腰壁・垂壁で拘束された極単柱が多く、極脆性的なせん断破壊が生じるおそれがある。
・建物内に、上記のような極脆性部材が存在する場合には、その解消を図る必要がある。
各耐震工法の概要
1)強度型の耐震補強工法
●耐震壁等による開口部等の補強工法
〇耐震壁の増設
・開口部周りの既存骨組み内に耐震壁や袖壁等を新設し(既存躯体の四周面にあと施工アンカーを打設し、割裂補強筋を配して一体化を図る)、主に建物の水平耐力を増大させる工法。
・建物の構造上バランスが良くなる。これにより、偏心や高さの方向の耐力や剛性の不均衡が改善される。
〇増打ち壁による補強
・既存の薄い壁を増し打ち(既存躯体の四周面にあと施工アンカーを打設し、割裂補強筋を配して新旧コンクリートの一体化を図る)で補強する工法。
〇開口閉塞壁補強
・窓開口等を鉄筋コンクリート壁で閉塞して補強する方法。
〇鋼板壁補強
・大きな窓開口を必要とする部分で補強する場合には、鋼板壁で補強すると大きな耐力が得られる。
●袖壁の増設、増打ち
〇袖壁とは
・柱・壁から垂直に張り出した幅の狭い壁、柱のわきについた壁。
・建物から外部へ突出させる幅の狭い壁。目隠し・防火・防音などのために用いる。
・玄関横などに設けられた、建物から少し外に突き出した短い壁、室内でも間仕切りの補助のように少し出っ張った壁を作る場合もある。
〇袖壁の増設による補強
・柱の耐力を増大させ、強度補強を行う。
・柱に袖壁を増設して一体化すると壁として機能するため、せん断強度が増すとともに、軸力保持能力が確保され、耐震性能が向上する。
・補強によって梁降伏を成立させ、靭性指標Fを増大させる。
・開口が必要とされる場合や、通り抜けが必要とされる場合に用いられる。
〇袖壁の増打ちによる補強
・強度の向上
・開口が必要とされる場合や、通り抜けが必要とされる場合に用いられる。
●鉄骨ブレース等による開口部等の補強工法
〇枠付き鉄骨補強
・建物の軸組みを強化するための筋かいのこと。
・既存建物の柱・梁フレーム内に枠付き鉄骨ブレースを挿入する。
・鉄骨補強部材の周辺に鉄骨枠を配し、既存躯体に樹脂アンカーを、鉄骨枠にスタッドを配して、躯体と鉄骨枠を高強度・高流動モルタルで緊結する。
・枠付き鉄骨ブレースによって柱・梁を補強すれば、構造耐力の向上につながる。
・この工法の利点は、採光、通風を阻害することが少なく、軽量であるため建物への影響も少ない。
・コンクリート壁補強より荷重は軽くなり、補強に伴う重量増加を避けたい場合や、補強部材を配置する部位に開口部が必要な場合に適している。
〇外付け鉄骨補強
・鉄骨ブレースを建物の外側に配して補強する工法。
・鉄骨ブレースを建物の外側に配する工法であるため、建物内部の動線や機能を阻害することがなく耐震補強が可能。
〇鉄骨フレーム補強
・建物の美観や使用性に配慮した場合、口型形状や格子型形状の鉄骨フレームを配して補強することが考えられる。
・鉄骨フレームは初期剛性は大きくないもののRC造と異なりひび割れによる剛性低下がないので、剛強な部材を用いればRC造建物やSRC造建物が降伏する1/250~1/150程度の層間変形時には十分な耐力を発揮させることができる。
・鉄骨フレームは鉄骨ブレースと同様なモルタル接合部により建物に取付ける。
●バットレスによる補強
・既存建物の外側にバットレス(控壁のことで,外壁面と直角に外方に突出し,壁体を支持する壁体)を設ける。
・建物本体を構成する主壁に対して直角方向に突き出した補助的な壁のことで、屋根の重量によって主壁に生じる横荷重を受け止めるものであり、地震力の低減を図るためのものではない。
・構造耐力は強化するが、地震力の低減を図るものではない。
●外付けブレースによる補強
・既存建物に近接させて補強ブレース架構を構築し、鉄骨ブレース周辺に配する梁枠と柱枠を剛強な接合部により既存大梁と柱に一体化して補強する。
●外付けフレームによる補強
・建物の北面などに既存の柱・梁の外側に剛強な新設の柱と梁を構築して補強する工法。
・新設フレームの重量および強度が大きい場合には、基礎も増設する。
・新設の柱・梁は通常はRC造とするが、大きな耐力を必要とする場合には、SRC造とすることがある。剛強なS造のフレームでも補強は可能。
2)靱性型の耐震補強工法の概要
●薄形鋼板による補強
・薄型の角形又は円形の鋼板を柱に巻き立て、溶接で一体化し、柱身と鋼板の隙間に高流動モルタルを充填することにより、柱の耐震性を増強させる工法。
・柱のせん断力に対する強度が増すので、柱の靭性を高める上で有効である。
・柱のコンクリートが鋼板で拘束され圧縮強度が増す。柱がせん断破壊しても鋼板がコンクリートを拘束するため、軸力保持能力が確保される。
●RC巻立て補強
・既存柱の外周部を100~150㎜程度の厚さの鉄筋コンクリートで巻き立てて補強する工法。
・建物の荷重はかなり重くなる。
●炭素繊維シート巻付け
〇柱の補強
・柱の四隅のコーナー部を半径30㎜以上の円形に形成し、幅250~330mmの炭素繊維(炭素繊維に代えて、アラミド繊維による補強工法もある)を敷き並べたシートを、エポキシ樹脂を含浸させながら柱の周囲に巻き付けることにより、柱の靱性を補強する工法。
・炭素繊維は鉄の約1/4の重量で、約10倍の引張り強度を有している。重量物を運搬することなく、少人数で施工が可能で、柱断面寸法や建物荷重をあまり増加させることなく補強をすることができる。
・ただし、原則として防火被覆を必要とする。
〇梁の補強
・炭素繊維シートをスラブ下の梁に張る工法
→梁のせん断力が増し、梁の靭性を高める上で有効。
3)極脆性部材の解消による耐震補強工法
●耐震スリット新設工法
〇柱と一体化した腰壁や垂れ壁
・腰壁とは、壁の仕上げが上下で違う場合の下部の壁のこと。
壁の下半分に板材を張りめぐらせた壁のことで、腰の高さに相当する90cm程度の高さに張られた壁のこと。
・垂れ壁とは、天井から垂れ下がった形状の壁のこと。
・腰壁や垂れ壁が取り付いた柱は、柱の内法長さが短いため柱の主筋が曲げ降伏しないうちに柱がせん断破壊しやすく、柱の耐震性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
・柱と一体化した腰壁や垂れ壁があると、柱が短柱化されることになるので、せん断力により破壊されやすくなる。
〇耐震スリット新設工法
・大きな地震が発生した際に、鉄筋コンクリート造の建築物の柱や梁が破壊しないように、柱と腰壁などの雑壁の間に設けた隙間や目地のことをいう。
・腰壁・垂壁で拘束された極単柱について、垂壁、腰壁をコンクリートカッターで切断して耐震スリットを設ける工法。
・柱に腰壁や垂(たれ)壁が直接付いていると、地震ではその影響で柱がせん断された例があり、これを避けるために柱と腰壁や垂壁との間に設けられた”縁切り”の隙間(スリット)
・柱に取り付く壁と柱の間に隙間を設け(耐震スリット)、壁が柱や梁の地震時の動きに影響を与えないようにすることで耐震性能を改善する。
●極脆性部材の袖壁補強
・腰壁・垂壁で拘束された極単柱について、柱に剛強な袖壁を付加することにより、架構の破壊モードを柱破壊から梁破壊に変化させて耐震性能を向上させる工法。
・耐力と変形能力がともに向上するため、効果的な補強となるが、開口部の面積が減少し居住性などに影響を及ぼすことがある。
●耐震壁等による開口部等の補強工法
〇耐震壁の増設
・開口部周りの既存骨組み内に耐震壁や袖壁等を新設し(既存躯体の四周面にあと施工アンカーを打設し、割裂補強筋を配して一体化を図る)、主に建物の水平耐力を増大させる工法。
・建物の構造上バランスが良くなる。これにより、偏心や高さの方向の耐力や剛性の不均衡が改善される。
〇増打ち壁による補強
・既存の薄い壁を増し打ち(既存躯体の四周面にあと施工アンカーを打設し、割裂補強筋を配して新旧コンクリートの一体化を図る)で補強する工法。
〇開口閉塞壁補強
・窓開口等を鉄筋コンクリート壁で閉塞して補強する方法。
〇鋼板壁補強
・大きな窓開口を必要とする部分で補強する場合には、鋼板壁で補強すると大きな耐力が得られる。
●袖壁の増設、増打ち
〇袖壁とは
・柱・壁から垂直に張り出した幅の狭い壁、柱のわきについた壁。
・建物から外部へ突出させる幅の狭い壁。目隠し・防火・防音などのために用いる。
・玄関横などに設けられた、建物から少し外に突き出した短い壁、室内でも間仕切りの補助のように少し出っ張った壁を作る場合もある。
〇袖壁の増設による補強
・柱の耐力を増大させ、強度補強を行う。
・柱に袖壁を増設して一体化すると壁として機能するため、せん断強度が増すとともに、軸力保持能力が確保され、耐震性能が向上する。
・補強によって梁降伏を成立させ、靭性指標Fを増大させる。
・開口が必要とされる場合や、通り抜けが必要とされる場合に用いられる。
〇袖壁の増打ちによる補強
・強度の向上
・開口が必要とされる場合や、通り抜けが必要とされる場合に用いられる。
●鉄骨ブレース等による開口部等の補強工法
〇枠付き鉄骨補強
・建物の軸組みを強化するための筋かいのこと。
・既存建物の柱・梁フレーム内に枠付き鉄骨ブレースを挿入する。
・鉄骨補強部材の周辺に鉄骨枠を配し、既存躯体に樹脂アンカーを、鉄骨枠にスタッドを配して、躯体と鉄骨枠を高強度・高流動モルタルで緊結する。
・枠付き鉄骨ブレースによって柱・梁を補強すれば、構造耐力の向上につながる。
・この工法の利点は、採光、通風を阻害することが少なく、軽量であるため建物への影響も少ない。
・コンクリート壁補強より荷重は軽くなり、補強に伴う重量増加を避けたい場合や、補強部材を配置する部位に開口部が必要な場合に適している。
〇外付け鉄骨補強
・鉄骨ブレースを建物の外側に配して補強する工法。
・鉄骨ブレースを建物の外側に配する工法であるため、建物内部の動線や機能を阻害することがなく耐震補強が可能。
〇鉄骨フレーム補強
・建物の美観や使用性に配慮した場合、口型形状や格子型形状の鉄骨フレームを配して補強することが考えられる。
・鉄骨フレームは初期剛性は大きくないもののRC造と異なりひび割れによる剛性低下がないので、剛強な部材を用いればRC造建物やSRC造建物が降伏する1/250~1/150程度の層間変形時には十分な耐力を発揮させることができる。
・鉄骨フレームは鉄骨ブレースと同様なモルタル接合部により建物に取付ける。
●バットレスによる補強
・既存建物の外側にバットレス(控壁のことで,外壁面と直角に外方に突出し,壁体を支持する壁体)を設ける。
・建物本体を構成する主壁に対して直角方向に突き出した補助的な壁のことで、屋根の重量によって主壁に生じる横荷重を受け止めるものであり、地震力の低減を図るためのものではない。
・構造耐力は強化するが、地震力の低減を図るものではない。
●外付けブレースによる補強
・既存建物に近接させて補強ブレース架構を構築し、鉄骨ブレース周辺に配する梁枠と柱枠を剛強な接合部により既存大梁と柱に一体化して補強する。
●外付けフレームによる補強
・建物の北面などに既存の柱・梁の外側に剛強な新設の柱と梁を構築して補強する工法。
・新設フレームの重量および強度が大きい場合には、基礎も増設する。
・新設の柱・梁は通常はRC造とするが、大きな耐力を必要とする場合には、SRC造とすることがある。剛強なS造のフレームでも補強は可能。
2)靱性型の耐震補強工法の概要
●薄形鋼板による補強
・薄型の角形又は円形の鋼板を柱に巻き立て、溶接で一体化し、柱身と鋼板の隙間に高流動モルタルを充填することにより、柱の耐震性を増強させる工法。
・柱のせん断力に対する強度が増すので、柱の靭性を高める上で有効である。
・柱のコンクリートが鋼板で拘束され圧縮強度が増す。柱がせん断破壊しても鋼板がコンクリートを拘束するため、軸力保持能力が確保される。
●RC巻立て補強
・既存柱の外周部を100~150㎜程度の厚さの鉄筋コンクリートで巻き立てて補強する工法。
・建物の荷重はかなり重くなる。
●炭素繊維シート巻付け
〇柱の補強
・柱の四隅のコーナー部を半径30㎜以上の円形に形成し、幅250~330mmの炭素繊維(炭素繊維に代えて、アラミド繊維による補強工法もある)を敷き並べたシートを、エポキシ樹脂を含浸させながら柱の周囲に巻き付けることにより、柱の靱性を補強する工法。
・炭素繊維は鉄の約1/4の重量で、約10倍の引張り強度を有している。重量物を運搬することなく、少人数で施工が可能で、柱断面寸法や建物荷重をあまり増加させることなく補強をすることができる。
・ただし、原則として防火被覆を必要とする。
〇梁の補強
・炭素繊維シートをスラブ下の梁に張る工法
→梁のせん断力が増し、梁の靭性を高める上で有効。
3)極脆性部材の解消による耐震補強工法
●耐震スリット新設工法
〇柱と一体化した腰壁や垂れ壁
・腰壁とは、壁の仕上げが上下で違う場合の下部の壁のこと。
壁の下半分に板材を張りめぐらせた壁のことで、腰の高さに相当する90cm程度の高さに張られた壁のこと。
・垂れ壁とは、天井から垂れ下がった形状の壁のこと。
・腰壁や垂れ壁が取り付いた柱は、柱の内法長さが短いため柱の主筋が曲げ降伏しないうちに柱がせん断破壊しやすく、柱の耐震性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
・柱と一体化した腰壁や垂れ壁があると、柱が短柱化されることになるので、せん断力により破壊されやすくなる。
〇耐震スリット新設工法
・大きな地震が発生した際に、鉄筋コンクリート造の建築物の柱や梁が破壊しないように、柱と腰壁などの雑壁の間に設けた隙間や目地のことをいう。
・腰壁・垂壁で拘束された極単柱について、垂壁、腰壁をコンクリートカッターで切断して耐震スリットを設ける工法。
・柱に腰壁や垂(たれ)壁が直接付いていると、地震ではその影響で柱がせん断された例があり、これを避けるために柱と腰壁や垂壁との間に設けられた”縁切り”の隙間(スリット)
・柱に取り付く壁と柱の間に隙間を設け(耐震スリット)、壁が柱や梁の地震時の動きに影響を与えないようにすることで耐震性能を改善する。
●極脆性部材の袖壁補強
・腰壁・垂壁で拘束された極単柱について、柱に剛強な袖壁を付加することにより、架構の破壊モードを柱破壊から梁破壊に変化させて耐震性能を向上させる工法。
・耐力と変形能力がともに向上するため、効果的な補強となるが、開口部の面積が減少し居住性などに影響を及ぼすことがある。
マンション設備の地震対策
1)飲料用水槽の耐震及び地震対策
〇飲料用水槽の耐震クラス
・一般にS、A、Bに分けられ、この中で最も性能が低いのは、耐震クラスBであり、通常、マンションにおいては「耐震クラスA以上」を求められる。
*建築設備耐震設計・施工指針
〇スロッシング
・平成7年の阪神・淡路大震災のときに、スロッシング(水槽に周期的な振動が加わった際に生じる水面が大きくうねる現象)により強力な水圧が発生し、水槽が破壊されたことなどから、スロッシング対策を施すこととなった。
〇緊急遮断弁
・受水槽の出口側給水口端に緊急遮断弁を設けることはでき、また直接水を採取できる弁(水栓)を設けることは適切である。
・受水槽の傾斜により周辺の配管が破断してしまうこともあり、緊急遮断弁を取り付けることも有効。
〇杭の新設
・受水槽は、地上に単独設定され、杭を打たない直接基礎によるものが多いため、基礎地盤の沈下等により傾斜してしまうおそれがあるので、杭の新設による補強を行うことが考えられる。
〇耐震ストッパーの設置
・給水ポンプ等の移動や転倒を防止する。
〇屋上の高置水槽
・新築マンションでは、自重の1.5倍の水平力が加わっても転倒・脱落しないことが基本的な基準となっており、既存のマンションについてもこの基準に合うよう補強しておくことが望ましい。
2)配管
〇地中埋設配管
・更新時には耐震性(可とう性)に優れた給排水管を採用する。
・変位吸収継ぎ手(可とう継ぎ手)を使用する。
〇建物内の配管
・立て管や横引き管は、管軸直角方向への揺れを制御するための耐震支持を設けたり、変位吸収継ぎ手(可とう継ぎ手)を使用する。
3)電気設備の地震対策
・マンションの電気設備(動力設備、TV共聴設備、電話配管設備等)は、コンクリート躯体内に打ち込み配管としている場合があり、多くの電気配管・配線が打ち込まれた帳壁(非耐力壁の総称)は壊れやすく、配管が露出・損傷するおそれがある。
→配管・配線の更新時などには、共用の配管カバーを新設し、その中に配管・配線を収めるなどの対策が望まれる。
4)その他の設備
●貯湯式給湯器の地震対策
・床の上に置かれただけで、固定が不十分な場合が多い。
→地震時に転倒し、配管が破断し、温水が建物内に噴出するおそれがあり、固定するなどの対策が望ましい。
〇飲料用水槽の耐震クラス
・一般にS、A、Bに分けられ、この中で最も性能が低いのは、耐震クラスBであり、通常、マンションにおいては「耐震クラスA以上」を求められる。
*建築設備耐震設計・施工指針
〇スロッシング
・平成7年の阪神・淡路大震災のときに、スロッシング(水槽に周期的な振動が加わった際に生じる水面が大きくうねる現象)により強力な水圧が発生し、水槽が破壊されたことなどから、スロッシング対策を施すこととなった。
〇緊急遮断弁
・受水槽の出口側給水口端に緊急遮断弁を設けることはでき、また直接水を採取できる弁(水栓)を設けることは適切である。
・受水槽の傾斜により周辺の配管が破断してしまうこともあり、緊急遮断弁を取り付けることも有効。
〇杭の新設
・受水槽は、地上に単独設定され、杭を打たない直接基礎によるものが多いため、基礎地盤の沈下等により傾斜してしまうおそれがあるので、杭の新設による補強を行うことが考えられる。
〇耐震ストッパーの設置
・給水ポンプ等の移動や転倒を防止する。
〇屋上の高置水槽
・新築マンションでは、自重の1.5倍の水平力が加わっても転倒・脱落しないことが基本的な基準となっており、既存のマンションについてもこの基準に合うよう補強しておくことが望ましい。
2)配管
〇地中埋設配管
・更新時には耐震性(可とう性)に優れた給排水管を採用する。
・変位吸収継ぎ手(可とう継ぎ手)を使用する。
〇建物内の配管
・立て管や横引き管は、管軸直角方向への揺れを制御するための耐震支持を設けたり、変位吸収継ぎ手(可とう継ぎ手)を使用する。
3)電気設備の地震対策
・マンションの電気設備(動力設備、TV共聴設備、電話配管設備等)は、コンクリート躯体内に打ち込み配管としている場合があり、多くの電気配管・配線が打ち込まれた帳壁(非耐力壁の総称)は壊れやすく、配管が露出・損傷するおそれがある。
→配管・配線の更新時などには、共用の配管カバーを新設し、その中に配管・配線を収めるなどの対策が望まれる。
4)その他の設備
●貯湯式給湯器の地震対策
・床の上に置かれただけで、固定が不十分な場合が多い。
→地震時に転倒し、配管が破断し、温水が建物内に噴出するおそれがあり、固定するなどの対策が望ましい。