マンション外壁塗装 改修工事の概要

マンションの改修工事で使用されている外壁塗装の工法、注意点等についてまとめました。
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建築用仕上塗材の概要
 
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マンション外壁塗装の改修の概要
1)マンション外壁で使用される仕上塗材
 
●マンションに使用される仕上塗材
・外装を陶磁器質タイルで仕上げているマンションも多いが、タイル張りのマンションであっても塗材で仕上げられている部位が混在している。
 
●アスベスト含有仕上塗材
・仕上塗材にもアスベストを含有した製品が製造されていた時期がある。
・施工時のダレや塗膜のひび割れ防止が期待されたことから、添加剤として少量のアスベストが含有されていたものがある。
・2006年月より前に建設されたマンションにあっては、アスベスト含有仕上塗材が施されている可能性がある。
 
2)マンション外壁塗装改修の概要
 
・塗装は、外観をきれいに見せる目的だけでなく、各種の劣化原因(雨水、飛散・浮遊物質、二酸化炭素ガス、紫外線など)から外壁を保護する目的がある。
 
・既存の塗膜の劣化に応じて、劣化した塗膜を除去し、再塗装を行う。劣化具合によっては全面除去が必要になる場合もある。
 
●改修工程
 
①状態の確認
・劣化状況(変色、浮き・膨れなど)を確認する。
 
②下地調整
・サンダーや高圧水、ケレンなどを用いて劣化塗膜や錆などを除去する。
・コンクリート面にひび割れがある場合は補修する。
・この工程が不十分なまま塗装を行えば、塗料の密着不良によりやがて塗膜剥れなどを引き起こす要因となる。
・劣化した塗膜も剥離が可能となる。
 
③下地処理
・高圧水でも落ちない頑固な汚れやはがれた塗膜などを皮スキ・ワイヤーブラシ・マジックロン(セラミックでできた網状の道具)などにより削り落とす。
 
④下塗り
・下塗り材は下地への吸い込み防止し、塗膜を密着強化して上塗りを長持ちさせ、きれいに仕上げるために重要。
 
⑤中塗り、上塗り
 
⑥養生
・塗膜面が汚れないように雨、強風、直射日光を防ぐ。
外壁塗装の下地処理
(1)外壁塗装の下地処理
 
●下地の補修
・コンクリートやモルタルなど、塗材の下地に生じたひび割れ、欠損、浮き部を補修する。
 
●仕上塗材を塗り重ねる場合
・新たな塗材による再仕上げを施す事前処理として、高圧水などによる洗浄を行う。
→表面に付着した汚れや劣化層を取り除く。
 
●既存塗材を除去する場合
・既存の仕上塗材の付着力が著しく低下している場合は、既存塗材を剥がしたうえで、新たな塗材による再仕上げを行う。
 
〇既存の仕上塗材の付着力
・計画段階において、既存仕上塗材の付着強度試験を行い、付着状態を確認することがある。
→ただし、塗装されている個所の全てが均一な付着状態にあることはなく、健全な部分と脆弱化している部分が混在している。
→目視・触診・打診などにより、脆弱化懸念される部分の分布状況を把握して、事前処理方法を検討することが重要。
 
(2)既存仕上塗材の処理工法
 
1)処理工法
 
・水洗機(高圧水洗又は高圧温水洗)による工法
・剥離剤併用による工法
・機械工具による工法
 
2)既存仕上塗材の下地調整の器具・方法
 
・電動工具(ディスクサンダー)
・手動工具(スクレーパー、ワイヤーブラシ、皮すき、研磨布・研磨紙)
・ブラスト法(サンドブラスト、ショットブラスト)
・高圧水洗
・シンナー拭き
・剥離液(リムーバー)
・超音波剥離機
・スチーム、温水
 
(3)既存塗膜の処理方法の選定
 
・既存塗膜の種類、劣化現象の種類や程度、処理範囲、改修塗料の種類などに応じて選定する。
・高圧水洗等により外壁面を洗浄した上で、旧塗膜面が剥離していない場合は、旧塗膜を残すのが一般的。
 
1)処理グレード
 
〇全面除去
・1種ケレンにより既存塗材を全面に除去
・高圧水洗等により既存塗材を全面に除去
〇準除去
・既存塗材の劣化部分、脆弱部分及び付着強度不良部分のみを除去
〇洗浄
・既存塗材の表面に付着しているゴミ、塵、劣化したトップコート等を洗浄・除去)
 
●処理方法
①清掃
・既存塗膜表面の付着物などを清掃
・水洗機(高圧水洗or高圧温水洗)による工法
 
②除去
・既存塗膜の除去(機械的・化学的)
・剥離剤併用による工法
 
③固定
・既存塗膜の剥がれ・割れなどを下地調整塗材で処理。
・脆弱層をシーラー処理で一体化
 
※塗膜剥離剤工法
・上塗りのみを剥離することは難しく、上塗りのみの塗り替えを行う場合などに適した方法とはいえない。
 
(4)高圧水洗浄
 
●外壁改修工事における高圧水洗浄の目的
〇汚れの除去
・外壁・上裏などの表層部を洗浄して汚れを落とす。
〇下地の脆弱部分の除去、ケレン
・表面の仕上部分の塗膜や下地の脆弱部分を除去して、劣化部分を露にする。
 
●既存塗膜の付着力の重要性
・付着力が弱いと、その上に塗り重ねた新規塗膜が破棄るするなどの原因となる。
・脆弱化した既存塗膜の下にはひび割れやジャンカなど下地コンクリートの不良個所が隠れている場合があるので、既存塗膜の脆弱部は確実に除去する必要がある。
 
●タイル外壁の場合
・脆弱な目地モルタルの除去に対して利用する。
 
●高圧水洗浄の水圧
〇12~15MPa
・洗浄を主目的とし、一般的に行われている高圧水洗浄の水圧。
〇30~70MPa
・脆弱な塗膜の除去を目的
〇100~180MPa
・コンクリート目荒らしに使用される水圧で、鉄骨階段などの塗膜・錆の除去に使用される場合がある。
 
●温水の使用、剥離剤などの薬剤との併用
・事前に試験施工を行い、適切な工法・材料・仕様を選択することが重要。
 
(5)ケレン
 
●全ケレン工法
・既に何度も塗り重ねられている塗膜やスタッコなどでは、既存塗膜を全て除去することがある。
→下地のコンクリートを傷めずに、効率よく完全に除去する”全ケレン工法”を採用することになる。
・漏水の危険のある開口部廻りなどでは、手工具作業または電動式の超音波工具などによる除去作業を検討する必要がある。
外壁塗装の改修
1)外壁塗装の改修方法の概要
 
・既存塗膜を残した状態での重ね塗りによる再塗装が一般的に行われている。
 
・既存塗膜表面及び塗膜下のコンクリート、モルタルに発生しているひび割れ、爆裂、浮き等の不具合をまず修繕し、その後再塗装する。
 
●従来の主流
・下塗材(シーラー)や下地調整剤(フィーラー)を施したうえで、主材(仕上塗材の基層)を塗布し、上塗材で仕上げる。
 
※シーラーの役割
・塗装する面への付着性を向上
・塗料の過度の吸込みを緩和
・下地面から浸出するアク成分などの影響を抑える
 
※フィーラーの役割
・下地面の小さなひび割れや剥がれによる凹凸や段差、不陸などの平滑にする
 
●最近の主流
・既存仕上塗材の上に、可とう性改修用仕上塗材を塗布し、上塗材を施して仕上げる。
 
※可とう性改修用仕上塗材(微弾性フィーラー)
・シーラーとフィーラーの機能を合わせ持つ
・下塗りの工程を省力化できる。
・塗付け量によっては従来の複層仕上塗材における主材のように一定の模様付けを行うことも可能。
 
●ローラーを用いた手塗り工法
・主にローラーを用いた手塗り工法が現在の主流。
・吹付工法に比べて塗料の飛び散りが少ない点や、熟練者でなくとも作業がしやすいなどの利点がある。
・吹付工法ほど多彩な模様を造形することは難しく、きちんとした仕上がりや品質を確保するには一定の経験と技量が必要。
・塗替え作業に際しては、試験施工を行い、塗材の希釈や塗布量、仕上りパターンの形成度合いなどを事前に確認する必要がある。
 
2)外壁塗装の上塗塗料(トップコート)
 
・複層仕上塗材や可とう性改修用仕上塗材では、主材の上に色彩選択の自由度が高いトップコートと呼ばれる上塗材を塗布して仕上げられる。
 
●種類
・耐久性、価格の低い順に以下の種類がある。
 アクリル樹脂系<ポリウレタン樹脂系<アクリルシリコン樹脂系<ふっ素樹脂系
 
〇溶剤系(シンナーで希釈)と水性系
・マンションでは、住民が居住しながらの作業であることや環境への配慮などから、臭気が少ない水性系が主流。
・溶剤系塗料の上に水性系塗料を塗る場合は問題となることは多くないが、逆の場合は、下塗材の性能や塗付け量によっては、溶剤の影響により旧仕上塗材を侵して、膨れや縮みなどの不具合が生じることがある。
 
●低汚染系塗料
・塗料表面の親水性を高め、雨水が表面に濡れ広がることにより汚染物質を流去しやすくする。
・低汚染性能に関する統一的な基準や明確な定義は十分にされておらず、実際の施工時の気象条件や塗装部位の形状などによっては、期待通りの性能が発揮されないこともある。
・雨垂れ汚染に対しては、この塗料のみで対処しきれるものではない。
 
3)既存塗膜の再塗装による補修の注意点
 
●下地補修跡が目立ってしまうことも
 
・修繕した箇所は既存塗膜を部分的に削り取ったりした後での再塗装となり、それ以外の部分とのパターン合わせが必要になるが、おのずと限界があり、補修後に目立ってしまうこともある。
 
●改修後の膨れ
 
・改修後、塗材の膨れが発生する場合がある。
 
これは、塗り重ねた新しい塗材が剥離しているのではなく、塗り重ねた下層にある旧塗材が剥離をしたり、旧塗材の化学変化により改修後塗材が膨らんでしまうことが原因であることが多い。
 
・重ね塗りをする場合、塗り重ねが可能かどうかを判定するための既存塗膜との付着試験や既存塗膜との相性を調べるための試験を行ったり、既存塗膜の脆弱部分及び表面にこびりついた汚れの除去などを行ったりするが、全面に渡って付着力の確認を取ることができているわけではなく、全剥離をしない限りこのような膨れの発生が起きる可能性は残ってしまう。
外壁の表面処理改修
●表面含浸工法
 
・表面含浸材をコンクリートに含浸させる事により、表面からの吸水や劣化を防止し、耐久性の向上を図る。
 
・補修効果は施工する下地の状態(施工材料の含浸程度)により異なる。
 
・表面含浸材としては、浸透性吸水防止材、浸透性固化材、アルカリ性付与材などの種類がある。
 
●表面被覆工法
 
・コンクリートの表面を樹脂系やポリマーセメント系の材料で被覆し、劣化進行の抑制、耐久性を向上させる。
 
・表面被覆材は、下記のような複数の材料で構成される。
①下地処理材(プライマー)
②不陸調整材(パテ)
③主材(中塗り材)
④仕上げ材(上塗り材)
など
有機・無機ハイブリッド塗料
1)有機無機ハイブリッド塗料の概要
 
●有機無機ハイブリッド塗料とは?
・塗料の構成要素として、シロキサン結合などの無機成分を導入して設計された塗料。
 
●有機・無機ハイブリッド塗料の特徴、期
・高耐候性塗料として実績のあるフッ素系樹脂塗料と同等の耐候性を有する有機・無機ハイブリッド塗料(ポリシロキサン系塗料)が見られるようになってきている。
・今後さらに暴露試験結果や各種物性データの蓄積が進めば、フッ素以外の高耐候性塗料の選択肢として普及が進む可能性がある。
 
●有機成分・無機成分について
・ハイブリッド塗料は、着色顔料や体質顔料以外の無機成分の他に塗膜性能の向上を目的として無機成分(シロキサン)を導入する。
 
〇有機成分
・アクリル樹脂
・ウレタン樹脂
・フッ素樹脂等
 
〇無機成分
・コロイダルシリカ
・オルガノポリシロキサン等
 
●ポリシロキサン系塗料の特徴
〇長所
・アクリル樹脂の骨格(C-C結合)と比較し、結合エネルギーが高く、高耐候性が期待できる。
・Si-O結合が網目状に形成される事から高硬度で強靭な塗膜が期待できる。
〇短所
・ポリシロキサン単独では伸張性等が得られない。
・有機・無機ハイブリッド塗料は、有機成分が伸張性や弾性を補う。
 
2)製品例:セミフロンスーパーシリーズ(KFケミカル)
 
●成分
・耐候性に優れる無機成分オルガノポリシロキサンと4フッ化フッ素
 
●耐候性
・10年先、20年先まで美観(光沢)を保つ。
・紫外線や雨・風、塩害など過酷な気候条件に強いという大きなメリットがあり、長期間にわたって建築物の美観を保つことで、メンテナンス回数を確実に減らし、トータルコスト削減に貢献する。
・紫外線エネルギーに負けない、結合の強い塗料樹脂で設計されており、長期間光沢を維持する。
 
●耐白亜化性
・通常、塗膜の劣化は光沢低下とチョーキング現象が発生するが、セミフロンスーパーシリーズではラジカル制御技術によりチョーキング現象を抑制させ、指でこすっても大きく白くなるような変化がないため、塗替えサイクルを伸ばすことができる。
 
●低汚染性
・雨筋汚れや生物汚染を未然に防ぐ
・親水性塗膜であるため、空気中の塵や埃、排気ガスなどによる雨筋汚れが少なく、長期に美観が保たれる。
・防藻試験や防カビ試験において、塗膜周囲に藻やカビが生えることがなく、優れた防藻・防カビ性能を発揮する。
 
●フレキシブル性
・耐候性とフレキシブル性のバランスがとれた保護膜。
・しなやかな強靭さにより、ひび割れしにくく、美しさを長もちさせることができる。
 
●オールインワンプロセス
・一般的な塗料が3コートを要するのに対して、耐候性と付着性能を付与した特殊バインダーとの組み合せにより2コートオールインワンプロセスに対応している。
・工期を短くでき柔軟な工程管理に貢献する、コストパフォーマンスに優れた塗料。
改良工事
(1)中性化抑止
 
・中性化が進行している場合は、コンクリート躯体中の鉄筋が錆びやすくなるため、中性化を遅らせる塗装仕様を検討する必要がある。
 
●全面ケレン・中性化抑止の上で再塗装
・既存塗膜の付着力が弱い場合などは、水洗機等により既存塗材を全面に除去し、躯体の中性化抑止を行った上で、再塗装を行うことが望まれる。
 
●弾性塗材
・ひび割れ追従性のある微弾性塗材や高弾性塗材をトップコート塗りの前に塗布することにより、ひび割れからの雨水浸入や中性化の進行を遅らせることができる。
※上記機能を期待するためには、塗膜の厚みが必要。
 
●軒天・上裏等の部位の中性化抑止
・二酸化炭素に対する透気性の大きな仕上げ材が塗られている部位(透湿性のあるリシンなどの塗材)は、一般的に中性化の進行が早いため、透気性が小さく中性化抑止効果の大きな仕上げ材での塗替えが考えられる。
・ポリマーセメントモルタル、マスチック塗材、吹付け材アクリル系エマルション塗材、吹付け材エポキシ系エマルション塗材等の採用が考えられる。
・中性化が進行している場合は、旧塗材を全面除去後、躯体にアルカリ性を付与する材料を塗布し、その上から通気性の小さなポリマーセメントモルタル等でバリア―層を形成して更に再塗装する方法も行われている。

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