マンション建替え円滑化法 マンション敷地売却事業

〇マンション建替え円滑化法(マンションの建替え等の円滑化に関する法律):102~163条
〇過去問
・管理業務主任者 H29問42
・マンション管理士 H27問19、H28問19、H29問19
 
 
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全体の流れ
●マンション建替法の改正の概要
 
○マンション敷地売却制度の創設
・4/5以上の多数で議決
・適用対象:特定要除却認定を受けたマンション
 ・耐震性の不足
 ・火災に対する安全性の不足
 ・外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
 
○容積率緩和の特例(105条)
・要除却認定を受けた場合には、建替えの際に容積率の緩和特例の適用対象となる。
・適用対象:除却の必要性に係る認定を受けたマンション
 ・特定要除却認定と同様。
 ・給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
 ・バリアフリー基準への不適合
 
●マンション敷地売却制度の流れ
 
①除却の必要性に係る認定(特定要除却認定)(102条)
・管理者等の申請で、特定行政庁が認定
・適用対象
 ・耐震性の不足
 ・火災に対する安全性の不足
 ・外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
②買受計画の認定(買受人(デベロッパー)が申請)(109条)
・マンションの買受け・除却、代替建築物の提供・あっせんを内容とする買受計画を都道府県知事等に申請
③マンション敷地売却決議(4/5以上の多数により決議)(108条)
・買受人となるべき者、売却代金の見込額、分配金の算定方法を決議
④組合から反対区分所有者への売渡し請求(敷地売却決議後、組合設立後)
・反対区分所有者から、組合が区分所有権及等を時価で買い取り
⑤マンション敷地売却組合設立、認可(3/4以上の多数の同意)
・定款および”資金計画”を作成。
・売却合意者は、5人以上が設立発起人となって、都道府県知事等に組合設立認可の申請。
・組合設立の認可および公告
・併せて、組合と買受人とが売買予約契約等を締結(民法上の契約)
⑥組合設立認可の公告後、分配金取得手続開始の登記を申請(140条)
・組合は、組合設立認可の公告があったときは、遅滞なく、区分所有権等について、分配金取得手続開始の登記を申請する必要がある。
・この登記以降は、組合員が売却マンションの区分所有権等を処分するときは、組合の承認を得る必要がある。
⑦分配金取得計画の総会決議・認可(過半数で決議)
・分配金取得計画について、あらかじめ、売却マンションの敷地利用権が賃借権であるときは、売却マンションの敷地の所有権を有する者の同意を得なければならないという規定はあるが、売却マンションについて賃借権を有する者の同意が必要である旨の規定はない。
⑧分配金取得計画の認可後~権利消滅期日
・組合は区分所有者に対し権利消滅期日までに分配金を支払い
・担保権付きの区分所有権に係る分配金は、区分所有者に支払わずに供託し、担保権者が物上代位できることとする。
・組合は借家人等に対し権利消滅期日までに補償金を支払い
・居住者は権利消滅期日までにマンションを明け渡し(分配金取得計画公告の日の翌日から30日を経過していないときは明渡しの猶予を認めている。)
⑨権利消滅期日、組合がマンションと敷地の権利を取得
・分配金取得計画が認可されると権利消滅期日において個別の権利が組合に集約。
・権利売却の登記(150条)
・担保権・借家権は消滅。(借家権の消滅については、あくまで事業法上の手続及び枠組みの中で借家権が消滅するものとなる。このため、私人間の契約関係である借地借家法第28 条に基づく他の賃貸アパートなどの建物賃貸借契約の更新拒絶等に係る正当事由に影響があるものではない。)
⑩買受人にマンションと敷地を売却(113条)
・組合から買受人に権利が移転(売買契約の義務履行)
・買受人がマンションを除却→危険居住を解消
⑪組合の解散(137条)
・マンション敷地売却事業の完了、つまり買受人への売却の完了により組合は解散。
・事業の完了の際の組合の解散は、都道府県知事等の認可を受けなければならず、都道府県知事等が組合解散の認可をしたときは、その旨が公告される。
・借入金があるときは、解散について債権者の同意が必要。
⑫買受人が新たにマンション等を建設
・区分所有者は①新マンションへの再入居②他の住宅への住替えを選択。
・従来の建替えより合意形成が容易。
除却の認定
(1)要除却認定の対象
 
1)要除却認定の類型
 
イ)生命・身体に危険性があると認められるもの(特定要除却認定)
①耐震性不足
②火災安全性不足
③外壁等剥落危険性
 
ロ)生活インフラに問題があると認められるもの
④配管設備腐食等
⑤バリアフリー不適合
 
2)活用できる制度
 
イ)容積率緩和の特例
・上記類型①~⑤
・マンションの建替えの際に容積率の緩和特例の適用対象となる。
 
ロ)敷地売却事業
・上記類型①~③(特定要除却認定)
 
ハ)団地における敷地分割事業
・上記類型①~③(特定要除却認定)
 
(2)認定の申請
 
1)除却の必要性に係る認定(102条)
 
・管理者等は特定行政庁に対し、国土交通省令で定めるところにより、”除却する必要がある旨の認定”を申請することができる。
・集会の普通決議が必要。
・団地においては、各棟の管理者等が各棟について認定の申請を行う必要がある。
 
〇要除却認定マンションの区分所有者の除却の努力(103条)
・区分所有者は、当該要除却認定マンションについて除却を行うよう努めなければならない
 
〇都道府県知事等による指導・助言、指示、公表(104条)
・要除却認定マンションの除却について必要な指導及び助言をすることができる。
・除却が行われていないと認めるときは、必要な指示をすることができる。
・指示を受けたも、正当な理由がなく、その指示に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
 
2)認定申請書に添付する書類
 
イ)耐震性不足の類型の場合
 
①認定の申請を決議した集会の議事録の写し
②耐震改修促進法施行規則第28条第2項の表に掲げる事項を明示した構造計算書
③第三者機関による耐震診断の判定を受けた旨の証明書等、特定行政庁が規則で定める書類
 
ロ)それ以外の類型の場合
 
①認定の申請を決議した集会の議事録の写し
②当該マンションが国土交通大臣の定める基準に適合していないこと又は該当することを証する書類
③その他特定行政庁が規則で定める書類
 
3)認定基準の概要
 
①耐震性の不足
・耐震改修促進法で定められた耐震診断を行った結果、地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性があるものとして判定されたもの(構造耐震指標(Is値)が0.6未満など)。
※”建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針”(平成18年国土交通省告示184号)
 
②火災安全性不足
・耐火構造関係
・防火区画関係
・避難施設関係(非常用エレベータ、直通階段までの歩行距離、2以上の直通階段等)
 
③外壁等剥落危険性
・鉄筋に沿ったひび割れ数が一定値以上。
 
④配管設備腐食等
・”スラブ下配管方式”の排水管で2箇所以上の漏水
 
⑤バリアフリー不適合
・マンションの出入口から各住戸までの経路において、出入口幅、廊下幅、傾斜路の勾配などの基準に適合しない。
買受計画の認定(109条)
・選定されたデベロッパー等は、区分所有者によるマンション敷地売却決議で”買受人となるべき者”として定められることとなる。
・敷地売却決議が行われる前にデベロッパー等は買受計画(要除却認定マンションの買受け及び除却並びに代替建築物の提供等に関する計画)を作成し、都道府県知事等の認定を受ける必要がある。
・団地の場合、買受計画の認定申請についても各棟ごとに行う。
 
〇買受計画に記載すべき事項
①買い受けた日から除却する日までの間におけるマンションの管理に関する事項
・自ら管理を行うか、委託して管理を行うか等を記載
②買受け及び除却の予定時期
③買受け及び除却に関する資金計画
④代替建築物の提供等に関する計画
・”区分所有者又は借家人の意向確認の状況”として、アンケートやヒアリング等により行った区分所有者や借家人の意向把握の内容・結果等を記載する。
・具体的な代替建築物の提供・あっせんの方法(再建マンション等への優先入居や、関連会社や地元の不動産会社を通じた分譲住宅や賃貸住宅等のあっせん、公共賃貸住宅管理者との連携による公社賃貸住宅やUR賃貸住宅のあっせん、高齢者等特段の配慮を要する者へのサポートなど)を記載する。
⑤除却した後の土地の利用に関する事項
⑥その他国土交通省令で定める事項
・マンション敷地売却決議の予定時期
・団地内の他棟の買受計画の認定申請予定時期
 
〇マンション敷地売却決議の届出(111条)
・認定買受人は、マンション敷地売却決議があったときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事等に届け出なければならない。
マンション敷地売却決議(108条)
・買受人となるべき者、売却代金の見込額、分配金の算定方法を決議。
・区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各4/5以上の賛成。
 
〇通知事項
・会議の目的たる事項(”マンション敷地売却決議”について問う旨)
・議案の要領(マンション敷地売却決議で定める事項を要約したもの)
・売却を必要とする理由
・耐震改修又は建替えをしない理由
・耐震改修に要する費用の概算額
 
〇マンション敷地売却決議で定める事項
・買受人となるべき者の氏名又は名称
・売却による代金の見込額
・分配金の額の算定方法に関する事項
反対区分所有者への売渡し請求(108条10項)
・区分所有法63条、64条を準用。
 
マンション敷地売却組合設立、認可(3/4以上の多数の同意)
●定款に記載する事項(118条)
 
①組合の名称
・名称中に”マンション敷地売却組合”という文字
②売却マンションの名称及びその所在地
③事務所の所在地
④事業に要する経費の分担に関する事項
・組合員が負担する賦課金に関する事項を記載。
⑤役員の定数、任期、職務の分担並びに選挙及び選任の方法に関する事項
⑥総会に関する事項
⑦総代会を設けるときは、総代及び総代会に関する事項
⑧事業年度
⑨公告の方法
・組合の行う公告は、分配金取得計画の公告(147条)、書類の送付に代わる公告(159条)がある。
⑩その他国土交通省令で定める事項
・審査委員に関する事項及び会計に関する事項を定める。(規則56条)
 
●マンション敷地売却組合の認可申請(120条)
 
・定款および”資金計画”を作成。
・定款及び資金計画については、売却合意者並びにその議決権及び敷地利用権の持分価格の各3/4以上の多数の同意が必要。
・売却合意者は、5人以上が設立発起人となって、都道府県知事等に組合設立認可の申請。
 
●組合の運営
 
〇組合員(125条)
・組合の設立が認可されると、売却に参加する区分所有者の全員が組合の構成員となる。
 
〇役員(126条)
・マンション建替組合と異なり、役員・総代の任期は1年。
 
〇総会の決議事項(128条)
・分配金取得計画の決定・変更は普通決議。
 
〇審査委員の選任
・”土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公平な判断をすることができる者”のうちから、審査委員3人以上を選任する必要がある。(136条)
・一般的には、弁護士や不動産鑑定士等が審査委員として選任されるものと考えられる。
分配金取得計画の決定・認可
●分配金取得手続開始の登記(140条)
 
・組合は、組合設立認可の公告があったときは、遅滞なく、区分所有権及び敷地利用権について、分配金取得手続開始の登記を申請する必要がある。
・この登記以降は、組合員が売却マンションの区分所有権等を処分するときは、組合の承認を得る必要がある。組合は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、前項の承認を拒むことができない。
 
●分配金取得計画の決定及び認可(141条)
 
〇分配金取得計画
・分配金取得計画の内容については、マンション敷地売却決議において定められた算定方法により分配金を算定するのみであり、権利関係の調整は必要としないことから、普通決議で決議する。
 
〇分配金取得計画に定める事項(142条)
1)組合員の氏名又は名称及び住所
2)組合員が売却マンションについて有する区分所有権又は敷地利用権
3)組合員が取得することとなる分配金の価額
・マンション敷地売却決議で定めた算定方法により算定した価額
4)売却マンション又はその敷地に関する権利(組合員の有する区分所有権等を除く。)を有する者で、権利消滅期日において当該権利を失うものの氏名又は名称及び住所、失われる売却マンション又はその敷地について有する権利並びにその価額
・組合の設立認可公告の日における近傍類似の土地又は近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格その他の当該価額の算定の基礎となる事項を考慮して定める相当の価額。
・借家人等の権利の対価として支払われる”権利補償”に係る価額。
5)明渡しにより受ける損失の額
・売却マンション又はその敷地の明渡しにより通常受ける損失として政令で定める額。
・借家人等が通常受ける損失に対する”通損補償”に係る額であり、”移転料、営業上の損失その他国土交通省令で定める損失について、国土交通省令で定めるところにより計算した額”(令32条)とする政令の規定を受けて、省令で具体的に、物件の移転料、物件が移転困難な場合等の物件の正常な取引価格、営業廃止の補償、営業休止の補償、仮営業の補償、営業規模縮小の補償、借家人に対する補償、その他(移転雑費等)を合算した額と定めている。(規則67条)
6)補償金の支払に係る利子又はその決定方法
・利子は分配金取得計画において定める。
7)権利消滅期日
・権利変動が生じる日。
8)その他国土交通省令で定める事項
・分配金及び補償金(利息相当額を含む。)の支払期日及び支払方法。
 
〇分配金取得計画に反対の組合員等の扱い
・分配金取得計画に反対の組合員も賛成の組合員と同様に、分配金取得計画に従って分配金が支払われることとなる。(マンション建替事業における権利変換計画に反対の組合員に係る売渡し請求や買取り請求のような制度(64条)はない。)
・分配金取得計画に反対の組合員、又は借家人等で補償金の額に不満のある者や借家権消滅の手続の有効性に疑義のある者が争う場合には、分配金取得計画に基づく組合の処分に対する行政不服申立て(165条)又は行政事件訴訟(取消訴訟、無効確認の訴え等)等により行われることと考えられる。
分配金取得計画の認可後~権利消滅期日
●分配金(151条)
・組合は、組合員に対し、権利消滅期日までに、分配金を支払わなければならない。
 
●分配金・補償金の供託(152条、154条)
・担保権付きの区分所有権に係る分配金・補償金は、組合が供託することとなり、担保権者は供託された分配金・補償金に対してその権利を行使することができる(物上代位)。
 
●補償金(153条)
・組合は借家人等に対し権利消滅期日までに補償金を支払わなければならない。
 
●明渡し(155条)
・占有者は権利消滅期日までに組合に売却マンション又はその敷地を明け渡さなければならない。
・分配金取得計画公告の日の翌日から30日を経過していないときは明渡しの猶予を認めている。
・分配金・補償金、売渡し請求の代金の支払い等と明渡しは同時履行の関係に立つため、これらの支払等が未だされていないときも明渡しの猶予を認めている。
権利消滅期日、分配金取得計画に基づく権利の変動
●権利消滅期日における権利の帰属等(149条)
 
〇組合に帰属する権利
・マンションの所有権
・敷地の所有権
 
〇消滅する権利
・区分所有権を目的とする全ての権利
・敷地の所有権に係る担保権
・敷地を目的とする債権(駐車場使用権等)
 
●権利売却の登記(150条)
・事業の効率性を向上させる観点から、権利消滅期日に生じた権利変動に係る登記は組合が一括して行う。
・組合が登記を行うまでの間は、他の者による登記はできない。

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