使用貸借、消費貸借

〇民法:587~600条
〇過去問
・管理業務主任者 H15問3、H16問3、H19問3、H21問2、H23問4
・マンション管理士 H27問15、H29問15
 
 
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使用貸借の概要
1)使用貸借とは
 
●使用貸借とは(593条)
・ある物の無償での貸し借りのこと。
・使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。(無償・諾成契約)
・使用貸借は、借りた”その物”を返還する必要がある。
※消費貸借は”種類、品質及び数量の同じ物”を返還。
 
●借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除(593条の2)
・貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
・ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
 
●借用物の費用の負担(595条)
・借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
・有益費については、賃貸借の場合と同様。
使用貸借の借主が目的物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、”貸主”の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。
 
2)引渡義務、担保責任
 
●引渡義務(596条)
・貸主は、使用貸借の目的物を、使用貸借の目的として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定する。
 
〇特定物の引渡しの場合の注意義務(400条)
・債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
 
●使用貸借の貸主の担保責任(596条)
・贈与の規定が準用されているので、貸主は、使用貸借の目的である物の瑕疵について、原則として責任を負わないが、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、担保責任を負う。
使用貸借の終了、借主による収去
1)使用貸借の終了・契約解除(597、598条)
 
①使用貸借の期間を定めたとき
・その期間が満了することによって終了する。
②使用貸借の期間を定めなかった場合
・使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
→使用・収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、契約を解除できる。
③期間、使用収益の目的も定めなかった場合
・貸主は、いつでも契約を解除できる。
 
〇借主からの解除
・借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
 
〇借主の死亡による使用貸借の終了
・使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
→使用貸借は無償契約であり、貸主と借主の間に何らかの人間関係があることがほとんど。
→借主が死亡すれば、借主の相続人との間ではこの特別な人間関係があてはまるとは限らないので、借主の死亡により使用貸借は終了する。(借主の地位は相続されない。)
※貸主が死亡した場合は、その効力を失わない。
 
〇目的物が譲渡された場合
・使用貸借において、貸主が使用貸借の目的物を譲渡した場合、不動産登記法上、使用貸借を登記することは認められておらず、また使用貸借には借地借家法の適用もないことから、借主が引渡しを受けていても新所有者に対抗することはできない。
・無償での使用貸借では、借主と貸主の緊密な信頼関係を前提としているので、新しい買主は、元の貸主との間で、従前の契約の履行をも引き受けるという合意がなされない限り、従前の使用貸借契約には拘束されない。
→たとえ居住を目的としていても、借主は新しい所有者に対しては、引き続き借主であることを主張することはできない。
 
2)借主による収去
 
●借主による収去等(599条)
〇附属物の収去
・借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
・借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
 
●損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限(600条)
・契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
賃貸借との相違
・無償契約
・借主の死亡により当然に終了し、使用貸借は相続されない。
・使用収益権に、対抗力を備える方法(登記)がない。
・借主は、目的物の通常の必要費を負担しなければならない。
※通常の必要費:借地上の建物の使用貸借における、建物の固定資産税、建物の敷地の地代など。
消費貸借
●消費貸借とは(587条)
・当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって成立する契約。
・原則は、要物契約。
・有償(利息つき)と無償の場合がある。
・使用貸借や賃貸借が借りたもの”そのもの”を返還するのに対し、消費貸借は、借りたものは”消費”して、同種・同等・同量の別のものを返還する。
・借りたものは消費するので、その所有権は、借主に移転することになる。
 
●書面でする消費貸借等(587条の2)
・消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すこと、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを、書面で契約することによって、諾成契約とすることができる。
・書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
 
●返還の時期(591条)
①返還時期の定めがある場合
〇貸主
・期限到来まで返還請求できない。
・借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
〇借主
・いつでも返還できる。
②返還時期の定めがない場合
〇貸主
・相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
〇借主
・いつでも返還できる。
 
●準消費貸借(588条)
・金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
例)履行期の到来した売買代金債務を、消費貸借とする場合など

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