借地借家法 借家

〇借地借家法:1~2、26~40条
〇過去問
・管理業務主任者 H15問4、H18問44、H19問45、H20問43、H21問45、H22問44、H23問3,44、H24問43、H25問4,42、H26問43、H27問44、H28問40、H29問44
・マンション管理士 H17問14、H25問15,16、H26問12
 
 
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民法の”賃貸権”と借地借家法
●民法の賃貸権と借地借家法の関係
・民法の賃貸借に関する特別法として、借主保護のために置かれた規定が、借地借家法であり、民法に優先して適用される。
・民法の賃貸借の規定は、不動産・動産を問わず、すべての物に適用されるが、建物の所有を目的とする借地や建物の賃貸借には借地借家法の適用を受ける。
・貸し別荘の賃貸借など借地借家法に規定がない場合は民法の適用を受ける。
 
●建物の賃貸借
・催し物会場や貸し別荘など一定期間だけ貸すような場合の一時使用については適用されない。
・借地借家法は、”建物の賃貸借”を対象とし、特にその用途を限定していない。
→業務用も借地借家法の対象。
建物賃貸借の期間、更新、終了
1)建物賃貸借の存続期間(29条)
 
①期間の定めがある場合
・最長:上限なし
・最短:1年。1年未満とした場合は、期間の定めのない契約となる。
②期間の定めがない場合
・借地のような法定期間はなく、解約されるまで存続する。
 
※一時使用目的の場合(民法が適用)
・最長:50年。
・最短:下限なし。1年未満も可
 
2)建物賃貸借の更新、解約
 
①期間の定めがある場合:更新拒絶、法定更新(26条)
 
・存続期間の定めがある場合、その期間が満了した場合、当事者は、契約を更新することができる。
 
イ)更新について当事者間の合意がある場合
・更新後の契約内容は、その同意による。
 
ロ)更新について当事者間の合意がない場合
●更新を拒絶する場合(更新拒絶の通知)
・通知期間(満了の1年前から6ヶ月前)までに、当事者(賃貸人の場合は正当事由をもって)が更新しない旨の通知または条件を変更しなければ更新しない旨の通知をした場合は、賃貸借は終了する。
※賃借人からの更新拒絶については、正当事由は不要で、通知期間を特約で短縮することも可能。
 
●更新の場合(法定更新)
・期間の定めのある建物賃貸借の場合、合意がなくても、以下ⅰ)ⅱ)のように原則として更新される。
・従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は、従前と同一ではなく、定めがないものとする。
ⅰ)上記”更新拒絶の通知”がない場合
・更新したとみなされる。
ⅱ)上記”更新拒絶の通知”→期間満了→使用継続の場合(使用継続による法定更新)
・上記”更新拒絶の通知”があった場合でも、期間満了後、賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したとみなされる。
 
②期間の定めがない場合:解約による終了(27条)
 
・存続期間の定めがない場合、契約を終了させる場合は、相手方に対して解約申入れを行う。
 
イ)賃貸人からの解約申入れ
・解約申入れの日から6ヶ月後に終了。
・正当事由が必要。
※使用継続による法定更新も適用される。(26条)
・解約申入れに正当事由があって終了する場合も、賃借人が使用継続し、これに遅滞なく賃貸人が異議を述べなければ、賃貸借は継続することになる。
 
ロ)賃借人からの解約申入れ
・解約申入れの日から3ヵ月後に終了
・借地借家法に規定がないので民法が適用される。
 
●建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件(28条)
・賃貸人からの更新拒絶、解約申入れには、正当事由が必要。
・正当事由は、拒絶の通知や解約申入れの時点から契約終了時まで間断なく必要とされている(判例)。
 
〇正当事由
・自己使用の必要性を主たる要素(必要的要素)とし、他の要素を従たる要素(補完的要素)として”総合的に判断”する。
①主たる要素
・賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情
②従たる要素
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況及び建物の現況
・明渡料の給付の申出
※賃貸借契約は、当事者の信頼関係を基に成立しているので、賃貸借契約を解除するには、たとえ賃借人に債務不履行があったとしても、当事者間の信頼関係を破壊しない事情があれば、賃貸人は賃貸借契約を解除することはできない(判例)。
賃料の不払いについては、1ヶ月程度では当事者の信頼関係を破壊するとはいえないとされる。
契約内容の変更、各種権利、建物賃貸借の対抗力等
1)建物賃貸借の対抗力等(31条)
 
・建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後建物を買い受けた者に対し、その効力を生ずる。
 
〇譲受人
・不動産が譲受人に譲渡され、賃料を請求するなど譲受人が賃貸人としての地位を賃借人に対して主張するには、所有権の移転登記が必要。
 
2)借賃増減請求権(32条)
 
借地の地代等増減請求権(11条)と同様。
借地借家法 借地の”契約内容の変更、各種権利、借地権の対抗力等”参照
 
3)造作買取請求権(33条)
 
〇造作とは
・電気・水道施設などの取り外しができないもの
・畳や襖など個別性の高いもの
・エアコンなど取り外しができるものは造作にはならない。
 
〇造作買取請求権とは
・賃貸借契約終了時、賃借人が建物に付け加えた造作がある場合、これらをすべて収去して、建物を賃貸人に返還するのが原則。
・以下の場合は、借家人が建物に付け加えた造作を、借家契約終了時に、賃貸人に時価で買取請求ができる(造作買取請求権)
 イ)建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作
 ロ)建物の賃貸人から買い受けた造作
・賃貸人は、この造作請求を拒むことはできない。
 
〇排除特約
・借家人と賃貸人は双方合意の上で契約上、この買取請求権を排除する旨の特約も有効。
 
4)賃借人に不利な特約(30、37条)
 
建物の賃借人に不利な次の特約は無効
・契約の更新
・更新拒絶の要件
・1年未満の建物賃貸借の期間
・対抗力
・転借人の保護
・借地上の建物の賃借人の保護
※賃貸人にとって居住の必要性が生じたときは、契約期間内であっても解約申入れができるという特約は、たとえ予告期間を設けても無効。
 
〇解除に関する特約
・定期建物賃貸借契約においては、賃借人からの中途解約の規定があるが、通常の建物賃貸借契約では、このような規定はなく、期間2年間の賃貸借契約は賃貸人からも賃借人からも中途解約はできないので、賃借人からの中途解約を認めない旨の特約は、特に賃借人に不利なものとはいえず、このような特約も有効。
建物賃貸借の譲渡・転貸・承継
1)建物賃貸借の譲渡・転貸(民法612条)
 
・建物賃貸借の譲渡・転貸には、賃貸人の承諾が必要。
・無断での譲渡・転貸は、原則として、契約の解除事由となる。
・借地権のような、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判の制度はない。
 
2)転借人の保護(34条)
 
・民法の規定では、原賃貸借契約が終了すると転貸借が無効となり、即座に立ち退きが必要になるなど、転借人の保護の規定がない。
・借地借家法では、以下のように転借人の保護をはかっている。
 
①期間満了又は解約の申入れによって終了
・転借人の立退きは6ヶ月後まで。
・建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の”通知”をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
・建物の賃貸人がこの通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から”6月”を経過することによって終了する。
・上記規定は賃貸人が”転借人”に賃貸借の終了を”対抗できない”ということなので、賃貸人は”賃借人”には賃貸借の終了を主張できる。
 
②合意解除によって終了
・転借人は立退きの必要なし。賃貸人は転借人に対抗できない。
・”合意解除”というのは、2年の契約で賃貸借を結んだが、1年後に賃貸人・賃借人の両当事者が、”合意”で、つまり契約でこの賃貸借契約を解消すること
→賃借人の一方的な都合で転借人が不利益を受けることになるので、判例はこれを認めていない。
 
③賃借人の債務不履行による契約解除
・転借人は保護されない。立退きが必要。
・賃借人に責任があるので、これによって賃貸人の解除権の行使を制約すべきではない。
→賃貸人の解除による原賃貸借の終了を転借人に対抗できるとしている。
 
3)賃借人の死亡と建物賃借権の承継
 
●建物賃借権の相続
・建物の賃借人が死亡したときは、その相続人に、建物賃借権の相続が認められる。
 
●事実上の夫婦等の賃貸借の承継(36条)
・”居住用建物”の賃借人が”相続人なしに”死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった”同居”者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。
〇承継の条件
・居住用の建物に限られる。
・同居していたものに限られる。
〇承継の拒絶
・相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、建物賃借権を放棄できる。
〇排除特約
・あらかじめ、賃貸人・賃借人・同居者の三者間で、特約で排除することができる。
 
4)借地上の建物の賃借人の保護(35条)
 
・借地上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
定期建物賃貸借
1)定期建物賃貸借(38条)
 
〇契約
・賃貸人に正当事由がなくても更新せずに期間満了できる。
・期間満了し契約終了後に、同じ賃借人が同じ建物を継続使用する場合は、当事者間の”再契約”となる。
・以下の①②に従って契約する必要がある。
①更新がない旨を書面を交付して説明
・あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
・この説明がない場合は、通常の建物賃貸借となり、正当事由がなければ更新を拒絶できない。
②書面で契約
・契約の更新がないこととする旨を定める。
・契約は書面で行う。(公正証書による”等”書面)
 
〇賃借人に不利な特約
・賃貸人にとって居住の必要性が生じたときは、契約期間内であっても、解約申入れができるという特約は、たとえ予告期間を設けても無効
 
〇期間
・制限はなく、1年未満でもよい。
 
〇終了
・1年以上の契約の場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、終了する旨の通知をしなければ終了を賃借人に対抗できない。
 上記の通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、賃貸借の終了を対抗できる。
・定期建物賃貸借は、基本的に契約期間中の解約は、特約がない限りすることができない。
 
〇賃借人からのやむを得ない事情による中途解約
・居住用建物の提起建物賃貸借(床面積が200㎡未満の建物に限る)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は、解約の申入れをすることができる。
 賃借人がこの解約申入れをすると、解約の申入れの日から”1か月”を経過すれば終了する。
・”居住用”建物については、一定の場合に途中解約を認める規定があるが、”店舗用”建物については、特約がなければ途中解約できない。
 
〇定期建物賃貸借の借賃増減請求
・家賃を増額しない旨の特約だけでなく、減額しない旨の特約も有効になる。
・この規定は”借賃の改定に係る特約がある場合”に限定されるので、そのような特約がない場合は、通常の借賃の増減請求が排除されているわけではなく、賃料の増減額請求権を行使することもできる。
 
2)取壊し予定の建物の賃貸借(39条)
 
・法令や契約によって建物を取り壊すことが明らかな場合、建物取壊し時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。
 
〇取り壊すことが明らかな事情の例
・法令:収用、都市計画事業で移転、土地区画整理事業の施行
・契約:定期借地、事業用定期借地
 
〇契約方法
・建物を取り壊すべき事由を記載した書面によって行う。
※定期借地の場合のような、”交付して説明”は義務付けられていない。

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