塗装の劣化調査・診断

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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各種金属材料の特徴、劣化現象
(1)アルミ(アルミニウム合金)
 
●用途
・サッシ、手すり、面格子、防水笠木、物干金物、エキスパンションジョイント金物、集合郵便箱等
 
●表面処理
〇シルバー
・腐食防止のため、陽極酸化被膜が施され、クリア塗装がされている。
〇カラーアルミ
・電解発色させたものと着色焼付塗装したものがある。
 
●劣化症状
〇孔食、点食
・腐食すると表面に白い斑点が現れる。
・多発するとほこり等の汚れも付着して見苦しくなるが、部材の強度低下や穴あきに至るには、相当の年月がかかる。
〇塗装部の劣化症状
・経年により塗膜の剥がれや変色を生じる。
・アルミ合金の耐久性は、陽極酸化被膜と表面塗膜の厚さで左右されるが、アルミ合金は、付着したほこり等の箇所から腐食が始まるので、年1~2回、表面クリーニングを行うと長持ちする。
 
(2)ステンレス
 
●表面処理
・屋根葺材として着色塗装したカラーステンレスがあるが、無塗装でヘアーライン仕上げ又は鏡面仕上げとするのが一般的。
 
●用途
・エキスパンションジョイント金物、立て樋や手すり等の支持金物、物干金物、扉の下枠、バルコニーの避難ハッチ、集合郵便箱、ノンスリップ等。
 
●劣化症状
・表面に鉄粉、鉄錆等が付着してもらい錆現象を呈したり、海塩、大気汚染物質等が固着して錆びることがある。
・高耐久性で半永久的と言われたりするが、沿岸部や雨掛かり部では錆に留意する。 アルミと同様、クリーニングが重要。
 
(3)鋼(炭素鋼)
 
●用途
・鉄骨階段、玄関扉等の各種扉類、手すり、面格子、物干金物等に多用されてきたが、現在では使用箇所が少なくなっている。
 
●表面処理
・一般的には、防錆処理として塗装仕上げとする。
・塗替えが大変な箇所では、溶融亜鉛めっき品を使用することが多い。
 
●劣化症状
・発錆、腐食、穴あき、破損等。
・鉄骨階段や鋼製手すり(特に支柱付け根部)の腐食は、落下事故につながる恐れがあるので、塗替えや腐食部の補修に注意を要する。
・手すり等がアルミの場合でも、支柱の埋込部に鋼製のアンカープレートが使われ、これが腐食して、埋込部のモルタルやコンクリートを押し出したり、手すり強度を低下させることがある。
・屋外鉄骨階段では、防音のため、床面に防音マットや合成樹脂系シートを張ることがあるが、その内側に入った水が抜けなくて鉄板の腐食を著しく速める場合があるので留意する。
 
●調査・診断時の注意点
・外観だけでなく、固定状態や強度等も調査する必要がある。
・錆、腐食状態だけでなく、塗替えが容易かどうか等、施工性についての判定も必要。
主な診断対象、劣化現象
(1)主な診断対象
 
〇手摺
・廊下、屋外階段、バルコニー、屋上
〇鉄骨階段
〇金物
・避難ハッチ、物干し、支持金物、換気口等
〇鋼製建具の扉及び枠
・玄関ドア・防火戸、メーターボックス扉等
 
(2)主な劣化現象
 
1)仕様によらず共通の事項

・日射、風雨、衝撃、摩耗等によって劣化する。

〇塗装の割れ、はがれ
〇塗装の変退色、チョーキング、汚れ
〇さび、腐食、孔食
 
2)鉄製の手摺、鉄骨階段、金物
 
・手摺内部への雨水の浸入、結露等によって劣化する。
 
〇手摺脚部のさび、腐食
〇鉄骨階段のさび、腐食
 
3)鋼製建具の扉及び枠
 
・日射、衝撃、摩耗等によって劣化する。
 
〇扉の塗装のはがれ、変退色、チョーキング、汚れ
〇さび、腐食、枠や沓ずり(くつずり:ドア枠の下枠)のさび、腐食
 
4)アルミ製、ステンレス製
 
・日射、風雨、汚れの付着等によって劣化する。
・塗装が劣化すると、アルミの点食が進む。
 
〇損傷
〇さび、点食、孔食
 
5)樹脂製
 
・日射、風雨等によって劣化する。
・塗装が劣化すると、樹脂の劣化が進む。
 
〇損傷
〇樹脂の変退色
 
6)ボード、サイディング
 
・衝撃等によって劣化する。
 
〇ひび割れ、欠け
調査と診断
1)診断のレベル
 
①1次診断
〇目視調査
・劣化の位置、範囲、程度等の状況を確認する。
〇触診調査
・チョーキング、汚れの付着や固着強度などを確認する。
 
②2次診断
・劣化度の標準パターンとの比較、簡易試験
 
③3次診断
・光沢系:色差計等で測定
・クロスカットテスト
 
2)1次、2次診断の調査項目
 
〇塗装表面
・変退色、光沢度低下、白亜化、汚れ
〇塗膜層
・ふくれ、割れ、剥がれ、剥がれ等の混在、摩耗、付着力の低下
〇塗膜層+下地
・エフロレッセンス、錆汁、クラック、結露の有無、漏水
 
3)3次診断の調査項目
 
・3次診断のうち色差や鏡面光沢度の測定においては、色見本(劣化していない同一材料)が保管されていないと、どの程度劣化しているかを比較することが困難な場合が多い。
 
●テープ法による白亜化の等級判定(JIS K 5600-8-6)
・塗膜の欠陥の量,大きさ及び均一な外観変化の程度を等級で表示するシステムにおいて,テープ法によって塗膜の白亜化の程度を標準の写真(図版)と対比して判定(等級付け)する方法。
 
〇原理
・白亜化した塗膜表面に貼り付けた粘着テープを剥がし,テープに付着した微粉を,微粉が目立つ背景色(白又は黒)の上で目視観察し,標準図版と比較して等級を判定する。
 
〇測定手順
①粘着テープの一片を塗膜の上に貼り,強く押しつけ,指でこする。
②テープを塗膜表面と垂直に剥がし,テープに付着している付着物のコントラストを更にはっきりさせるため,背景面の上にテープが接するように置く。
③一定の照度下で,テープの上に付着した白亜化物の量を標準図版と比較して,白亜化の程度を遅滞なく評価する。
※背景面がよく見えるほど,白亜化程度は低い。
 
〇注意
・白亜化の程度は,試料表面の場所によってばらつく可能性があるため,模様のない塗膜の均一な場所を用いなければならない。
・試料表面が大きい場合は,複数の箇所で測定して,その平均値及び最大値と最小値との幅を報告することが望ましい。
 
●色差試験
・ほとんどの物質は光にあたることで色・質感が変化していく。
→色差計(カラーメーター)はこの変化を色相・明度・彩度として数値化することで、色・質感の評価を行うことができる。
 
●光沢計
・物体表面のつやの度合い、正反射方向の反射の度合い(鏡面光沢度)を数値化する。
・塗装面の質感判定や耐候試験時の耐候性評価等、測色計とともに広く使用されている。

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