契約の解除、危険負担

〇民法:533~548条
〇過去問
・管理業務主任者 H14問4、H16問5、H19問1,6、H20問2,3、H21問6、H22問2、H25問4、H28問5、
・マンション管理士 H14問6、H15問12、H22問15、H25問14、H26問15、H29問14
 
 
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契約の効力
1)同時履行の抗弁(533条)
 
・売買契約の場合、売主は引渡し義務、買主は支払い義務があるが、当事者双方に義務がある場合、相手方が債務の履行をしない場合、自分の債務について履行を拒むことができる。
 
〇同時履行の抗弁と履行遅滞
・同時履行の抗弁を主張できる場合には、履行期を過ぎても、履行遅滞には陥らない。
・履行遅滞を理由に解除するには、催告のほかに、相手の同時履行の抗弁を奪うために行う、自己の現実の履行の提供が必要。
 
○同時履行となる例
・契約解除後の当事者双方の原状回復義務
・債務の弁済と受取証書の交付
・請負契約の引渡債務と報酬支払債務
 
○同時履行とはならない例
・借家の明け渡し(先)と敷金返還請求(後)
・借家の明け渡し(先)と造作買取請求(後)
・借金の全額返済(先)と抵当権の登記の抹消請求(後)
危険負担
・契約した後に、目的物引渡しまでの間に生じた目的物の危険(リスク)誰が負担するかを”危険負担”。
 
1)滅失が不可抗力による場合
 
・売主が危険を負担。
→債権者(買主)は、反対給付の履行を拒むことができる。
(買主は代金の支払を拒むことができる。)
 
2)滅失の責任が債権者(買主)にある場合
 
・債権者(買主)は、反対給付の履行を拒むことができない。
(買主は代金の支払を拒むことができない。)
・この場合において、債務者(売主)は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者(買主)に償還しなければならない。
例)
・売主が得た火災保険金について、買主は引き渡すよう請求できる。
・内装工事後の引渡しの場合、内装工事が未実施であったとすれば、内装工事費用は買主に償還しなければならない。
 
3)危険負担に関する特約
 
・危険負担に関する規定は任意であり、当事者間で特約をすることができる。
契約の解除
1)契約の解除とは
 
・瑕疵なく有効に成立した契約の効力を消滅させて、その契約がはじめから存在しなかったことにする、当事者の意思表示。
 
●解除事由
 
○法定解除
・法律により解除できることが定められているもの。
例)債務不履行、売主の担保責任による解除、クーリングオフなど。
 
○約定解除
・当事者の契約により解除できると定めたもの。
例)解約手付による解除、融資特約による解除など。
 
〇合意解除
・当事者が契約を解消する合意(解除契約)をする場合。
 
 
2)解除権の行使
 
●解除権の行使方法
・相手方に対する一方的な意思表示で行い、相手方の承諾は不要。
・解除の意思表示は、撤回することができない。
 
●解除権の不可分性(544条)
・契約の当事者の一方又は双方が複数いる場合には、解除権は、全員から、または全員に対して行使しなければいけない。
→解除権は”全員から全員へ”。
・解除権には不可分性があるので、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅することになる。
 
3)履行不履行による解除
 
●催告による解除
・”相当の期間”を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、契約の解除をすることができる。
〇例外
・その期間を経過した時における債務の不履行が、その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除することができない。
〇相当の期間
・履行を準備し、債務を履行するために要する客観的な期間。
※期間が短すぎる(不相当な)催告も有効であり、その場合でも、相当な期間が経過すれば解除できる。
 
●無催告解除
・以下の場合は、催告なしで、直ちに契約の解除をすることができる。
①債務の全部の履行が不能。
②債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
③債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
④契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
⑤その他、債務者がその債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
 
〇債権者の帰責の場合
・上記方法による契約の解除はできない。
 
4)解除の効果(545条)
 
・契約の解除は、契約を白紙撤回することなので、解除権が行使されると、契約は遡及してなかったことになる。
・解除して、さらに損害があるならば、プラスして損害賠償を請求してもよい。
 
〇原状回復義務
・各当事者は、すでに履行されているものがあれば原状回復しなければいけない。
・契約当事者相互に原状回復義務が認められる場合には、533条(同時履行の抗弁権)の規定を準用している。
・金銭を返還するときは、その”受領の時”から利息を付さなければならない。
・金銭以外の物を返還するときは、その”受領の時”以後に生じた果実をも返還しなければならない。
※”受領の時”からで”解除時”ではない。
 
〇第三者の権利の保護
・この解除による原状回復は、第三者の権利を害することはできない。
・不動産の場合に第三者が保護されるには、悪意であってもよいが登記が必要。
 
5)解除権の消滅
 
〇解除権の行使について期間の定めがある場合
・定めに従う。
〇解除権の行使について期間の定めがない場合
・解除される者は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを催告し、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
〇解除権者の故意・過失による目的物の損傷時
・解除権を有する者が故意or過失によって以下をした場合、解除権は消滅する。
 ・契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき
 ・加工or改造によってこれを他の種類の物に変えたとき
ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

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