建築物の検査・報告

〇建築基準法:12条、建築基準法施行規則:5~6条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問18、H14問18、H15問17、H17問19,21、H18問18、H19問19、H22問27、H23問25、H25問21、H29問27
・マンション管理士 H18問36、H19問20、H21問37、H22問36、H28問36、H29問21
 
 
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定期報告制度の概要
1)建築物の適法性のチェック
 
〇建築物使用前のチェック
・建築確認・完了検査などの手続きを定めることで、建築物を使用する前における適法性をチェックする体制を整えている。
 
〇建築物使用開始後の適法性のチェック
・建築物の使用が開始された後も、引き続き、適法な状態を確保し続けることが重要であるという考え方から、定期的な調査や報告を求めている。
→”定期報告制度”
 
2)定期報告制度の概要
 
・建築基準法12条においては、①建築物(敷地を含む)、②建築設備(給排水設備、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置)、③昇降機等、④防火設備について、経年劣化などの状況を定期的に調査・検査する制度が設けられている。
●特定建築物の定期調査(法12条1項)
・国が政令で指定する建築物(令16条)
・特定行政庁が指定する建築物
●定建築設備等の定期検査(法12条3項)
・国が政令で指定する昇降機等、防火設備(令16条3項)
・特定行政庁が指定する建築設備(給排水設備、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置等)、昇降機等、防火設備
 
・具体的には、一定の条件を満たす建築物等の所有者・管理者の義務として、専門技術を有する資格者に、建築物等の調査・検査をさせ、その結果を特定行政庁へ報告することを定めている。
 
3)報告手続きの流れ
 
①委託
・所有者・管理者→専門技術を有する資格者
②調査・検査
・専門技術を有する資格者が調査・検査→所有者・管理者
③結果を報告
・所有者・管理者→特定行政庁
④必要に応じて違反是正指導等
・特定行政庁→所有者・管理者
 
●報告義務者(→特定行政庁に報告)
・管理者、管理者がいない場合は所有者。
・報告義務を怠った場合は、100万円以下の罰金が科せられる(第101条2号)。
 
4)調査・検査を行うことができる資格者
 
〇一級建築士
〇二級建築士
〇法定講習の修了者で国土交通大臣から資格者証の交付を受けた者
・特定建築物調査員
・建築設備検査員
・昇降機等検査員
・防火設備検査員
定期報告の対象となる建築物・設備、報告の時期
1)特定建築物の定期調査
 
●定期報告の時期(規則5条)
・法12条1項の規定による報告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね6月から3年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とする。
 
●定期報告の対象となる建築物
「安全上、防火上、衛生上特に重要である建築物等」については、政令により一律に定期報告の対象とし、それ以外の建築物等については、特定行政庁が地域の実情に応じた指定を行う。
①国が政令で指定
・6条1項1号に掲げる特殊建築物(別表第一に掲げる用途で200㎡超)で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(令16条)
※共同住宅は含まれていない。
 
②特定行政庁が指定する建築物
〇東京都の場合
・下宿、共同住宅、寄宿舎:階数5階以上で、共同住宅の用途部分の延べ面積1,000㎡以上。
・3年ごとに報告
 
2)特定建築設備等の定期検査
 
●定期報告の時期(規則第6条)
・建築設備の種類、用途、構造等に応じて、おおむね6月から1年まで(ただし、国土交通大臣が定める検査の項目については、1年から3年まで)の間隔をおいて特定行政庁が定める時期。
 
●定期報告の対象となる設備
・すべての昇降機。
・上記特殊建築物に設けられている建築設備(電気設備、給排水設備、排煙設備等)
・昇降機以外の建築設備で定期検査を行わなければならないものは、政令又は特定行政庁が指定する。
報告の要請、立入検査等
●報告の要請(法12条5項)
・特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、所有者・管理者・占有者・設計者・工事管理者・調査者(エレベーターの検査をした一級建築士等)に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途又は建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況に関する報告を求めることができる。
 
●立入り、検査(法12条6項)
・建築主事等は、使用制限その他保安上必要な措置の勧告等のため、必要な限度において、当該建築物等に立ち入り、建築設備等を検査することができる。
 
●定期検査報告概要書の閲覧(施行規則11条の4第2項)
・特定行政庁は、所有者が提出した定期検査報告概要書を当該建築物が滅失し、又は除却されるまで、閲覧に供さなければならない。
調査・点検の項目
・建築物:平成20年国土交通省告示282号
建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件
・昇降機:平成20年国土交通省告示283号
昇降機の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件
・建築設備:平成20年国土交通省告示285号
建築設備(昇降機を除く。)の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件
 
●検査の内容の概要
 
〇調査・検査の項目、項目ごとの調査・検査の方法、結果の判定基準
・建築物定期調査、建築設備及び昇降機定期検査のいずれについても、具体的な調査・検査の項目並びに項目ごとの調査・検査の方法、結果の判定基準は国土交通大臣の定めるところによるものとされており、告示で定められている。
・建築物定期調査は、定量的な調査だけでなく、目視などによる定性的な調査についても幅広く行われる。
 
〇建築設備に関する定期検査の項目
・換気設備の風量測定、非常用の照明装置の照度測定を含んでいる。
 
〇昇降機定期検査
・ロープ式、油圧式等それぞれに検査結果表の様式が告示で詳細に定められている。
 
〇外装タイル(乾式工法によるものを除く。)の劣化及び損傷の状況の調査
・竣工後、外壁改修後若しくは落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等を実施した後10年を超え、かつ3年以内に落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等を実施していない場合にあっては、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分を全面的にテストハンマーによる打診等により確認する。
 
〇防火設備である防火戸の閉鎖又は作動の状況の調査
・各階の主要な防火設備の閉鎖又は作動を確認しなければならない。ただし、3年以内に実施した点検の記録がある場合にあっては、当該記録により確認することで足りる。
 
〇免震装置の劣化及び損傷の状況(免震装置が可視状態にある場合に限る。)
・”目視により確認”するとともに、3年以内に実施した点検の記録がある場合にあっては、当該記録により確認する。記録の確認だけでなく、目視による確認も必要である。
 
〇非常用照明装置の予備電源
・予備電源への切替え及び器具の点灯の状況を確認する。

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