建築物省エネ法

〇建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)
〇過去問
・管理業務主任者 H18問24、H24問44、H27問25
・マンション管理士 H19問42、H25問39、H29問42、R2問41
 
 
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省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)の概要
●目的
・内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置等を講ずることとし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
 
●住宅・建築物における規制する分野
①建築時:住宅・建築物の建築主
②増改築、大規模改修時:住宅・建築物の所有者・管理者
③特定住宅(戸建て住宅): 住宅供給事業者(住宅事業建築主)
※平成29年4月1日より”建築物省エネ法”において措置
 
〇省エネ措置の届出等
・省エネ法に基づく省エネ措置の届出等については、平成29年3月31日をもって廃止となり、以降は建築物省エネ法に基づく手続が必要となる。
 
●建築物に関わる者の努力(143条)
 
・次に掲げる者は、基本方針の定めるところに留意して、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び建築物に設ける空気調和設備その他の政令で定める建築設備に係るエネルギーの効率的利用のための措置を適確に実施することにより、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めるとともに、建築物に設ける電気を消費する機械器具に係る電気の需要の平準化に資する電気の利用のための措置を適確に実施することにより、電気の需要の平準化に資するよう努めなければならない。
①建築物の建築をしようとする者
②建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合にあつては、管理者)
③建築物の直接外気に接する屋根、壁又は床(これらに設ける窓その他の開口部を含む。)の修繕又は模様替をしようとする者
④建築物への空気調和設備等の設置又は建築物に設けた空気調和設備等の改修をしようとする者
建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の概要
・平成27年7月8日に公布(平成27年法律第53号)。
・大きく以下の2つの措置を一体的に講じたもの。
①適合性判定制度
・大規模非住宅建築物の省エネ基準適合義務等の規制措置
②エネルギー消費性能の認定・表示制度
・省エネ基準に適合している旨の表示制度
・誘導基準に適合した建築物の容積率特例の誘導措置
 
〇エネルギー消費性能基準への適合義務、エネルギー消費性能向上計画の認定制度
・建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置が講じられた。
 
〇”性能向上計画認定・容積率特例”や”基準適合認定・表示制度”など
・新たに”大規模非住宅建築物の適合義務”、”特殊な構造・設備を用いた建築物の大臣認定制度”、”性能向上計画認定・容積率特例”や”基準適合認定・表示制度”が措置された。
 
〇省エネ法からの移行
・従来の省エネ法で措置されていた300m2以上の建築物の新築等の”省エネ措置の届出”や住宅事業建築主が新築する一戸建て住宅に対する”住宅トップランナー制度”等の措置が建築物省エネ法に移行された。
 
●用語の定義
 
〇建築物エネルギー消費性能基準
・建築物の備えるべきエネルギー消費性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する経済産業省令・国土交通省令で定める基準をいう。
 
〇特定建築物
・住宅部分(居住のために継続的に使用する室その他の政令で定める建築物の部分)以外の非住宅部分(住宅部分を除く建築物の部分)の床面積が2,000m2以上である建築物。
 
〇特定建築行為
・特定建築物の新築若しくは増築若しくは改築(非住宅部分の増築又は改築の規模が政令で定める規模以上であるものに限る。)又は特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築の規模が政令で定める規模以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る。)をいう。
 
〇特定増改築
・特定建築行為に該当する増築又は改築のうち、当該増築又は改築に係る部分(非住宅部分に限る。)の床面積の合計の増改築後の特定建築物(非住宅部分に限る。)の延べ面積に対する割合が1/2以内であるものをいう。
建築主等の努力、義務、誘導措置
1)建築主等の努力(6条)
 
・建築主は、その建築等(建築物の新築、増築若しくは改築、建築物の修繕若しくは模様替等)をしようとする建築物について、エネルギー消費性能の向上を図るよう努めなければならない。
 
2)規制措置(義務)
 
①非住宅2,000m2以上の新築・増改築、特定建築行為(特定増改築を除く)
・届出義務プラス省エネ基準に適合していることの所轄行政庁等による判定(適合性判定)が必要。
・建築物エネルギー消費性能基準(一次エネルギー消費量基準)
 
②建築物(住宅・非住宅)300m2以上の新築・増改築(19条)
・所轄行政庁への”消費性能確保のための構造及び設備に関する計画”の届出が必要。(工事着手21日前までに)
・建築物エネルギー消費性能基準(外皮基準、一次エネルギー消費量基準)
 
〇所管行政庁による指示・命令
・省エネ基準に適合せず、必要と認めるときは、受理した日から21日以内に限り、計画の変更その他必要な措置をとるべきことを指示することができる。
・正当な理由がなくて前項の指示に係る措置をとらなかったときは、相当の期限を定めて、その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
 
※300m2未満の小規模建築物は努力義務。
 
3)誘導措置
 
・省エネ基準適合認定表示制度(所管行政庁から認定を受ける)
・誘導基準適合建築物の容積率の特例(性能向上計画認定制度)延べ面積の10%が限度で容積率に不算入。
 
①全ての建築物の新築、増改築、修繕・模様替、設備の設置・改修(29,30条)
・建築物エネルギー消費性能向上計画の申請→認定(建設地の所轄行政庁)
 
〇認定基準
・”誘導基準”(建築物エネルギー消費性能基準を超え、かつ、建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進のために誘導すべき経済産業省令・国土交通省令で定める基準に適合するもの)に適合すること。
・計画に記載された事項が基本方針に照らして適切なものであること。
・資金計画が適切であること。
 
〇容積率特例
・省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分を不算入(建築物の延べ面積の10%を上限)
 
②全ての既存建築物(36条)
・建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定を申請→申請(建設地の所管行政庁)
・建築物エネルギー消費性能基準(外皮基準、一次エネルギー消費量基準)
・認定を受けると、対象となる建築物の広告や契約書などに、法で定める基準適合認定表示(eマーク)を付けることができるようになる。
 
4)その他の措置
 
・上記に該当しない新技術(特殊な構造や設備)を用いた建築物については、国土交通省の認定を受けた登録省エネ評価機関が性能評価を行い、その性能評価書に基づいて国土交通大臣が認定を行う”新技術の評価のための大臣認定制度”が新設されている。
建築物のエネルギー消費性能基準
●建築物省エネ法の基準(建築物のエネルギー消費性能基準)
平成28年経済産業省・国土交通省令第1号 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令
 
●住宅用途に係わる基準の概要
 
・住宅の省エネ性能の評価には下記の2つの基準を用いる。
 
1)住宅の窓や外壁などの外皮性能を評価する基準
 
・冬を想定した断熱性の基準(外皮平均熱貫流率(UA)による基準)と、夏を想定した日射遮蔽性の基準(冷房期の平均日射取得率(ηAC値)の基準)の二本立て。
 
2)設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準
 
・設計内容に応じ計算される各設備機器の一次エネルギー消費量の合計値(設計一次エネルギー消費量)が、標準的な設備を導入したと仮定して計算される一次エネルギー消費量の合計値(基準一次エネルギー消費量)を超えないことを確認する。  
一次エネルギー消費量=暖冷房設備一次E消費量+換気設備~+照明設備~+給湯設備~
+その他(家電等)~ -エネルギー利用効率化設備(太陽電池等)による一次E消費量の削減量
 
※共同住宅の場合、共用部も考慮し、共用部の一次エネルギー消費量は非住宅に係る基準に準じた計算により求める。
 共用部分の一次エネルギー消費量の対象:空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機
外皮性能を評価する基準の概要
1)外皮平均熱貫流率(UA)による基準
 
・屋外にどのくらい熱が移動するかを表す指標が熱貫流率。
・外皮熱貫流率とは、住宅全体からの熱損失量と天井、壁、床、窓などの外皮合計面積で割った値。数値が小さいほど断熱性能が高い住宅。
UA=単位温度当りの総熱損失量/外皮面積の合計
 
※各外皮の熱貫流率は、当該部位を熱の貫流する方向に構成している材料の種類及び厚さ等を勘案して算出した数値とする。
 
2)冷房期の平均日射取得率(ηAC値)
 
・住宅に日射がどの位入ってくるかを表したのが日射熱取得率。
・平均日射熱取得率とは、住宅全体の日射取得量を天井、壁、床、窓などの外皮の合計面積で割った値。
・数値が大きいほど、日射熱が侵入しやすい住宅。
ηAC=単位日射強度当りの総日射取得量/外皮総面積×100
一次エネルギー消費量基準の概要
〇一次エネルギーで評価
・化石燃料、原子力燃料、水力、太陽光などから得られるエネルギーを”一次エネルギー”、これらを変換・加工して得られるエネルギー(電気、灯油、都市ガス等)を”二次エネルギーという。
・建築物では”二次エネルギー”が使用されていて、それぞれ異なる計量単位(kWh、L、m3等)で使用されている。
→上記二次エネルギーを一次エネルギー消費量へ換算することにより、建築物の総エネルギー消費量を同じ単位で求めることができるようになる。
 
〇建築物のエネルギー消費性能(省エネ性能)
・建築物に設ける空調(暖冷房)・換気・照明・給湯・昇降機(エレベータ)において、標準的な使用条件のもとで使用されるエネルギー消費量をもとに表される建築物の性能。
 
〇一次エネルギー消費量基準
・設計内容に応じ計算される各設備機器の一次エネルギー消費量の合計値(設計一次エネルギー消費量)が、標準的な設備を導入したと仮定して計算される一次エネルギー消費量の合計値(基準一次エネルギー消費量)を超えないことを確認する。
 
①住宅性能基準
※”建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令” 第1条第1項第2号ロ(1)
 
・計算方法は、国土交通省告示第265号において定められているが、建設地の気象条件や生活スケジュール等を踏まえた計算となっており、実質手計算で行うことは困難となっている。
→計算及び適合確認は、建築研究所ホームページ上に設けられた、エネルギー消費性能計算プログラムにより行うこととなる。
・具体的な審査は、計算結果が適合していることを確認するとともに、申請図書として提出される住宅判定プログラムからの出力シートの記載内容が図面等と整合していることの確認を行うこととなる。
 
②住宅仕様基準
※”建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令” 第1条第1項第2号ロ(2)
 
・設置する暖冷房設備、換気設備、給湯設備及び照明設備について、設備機器ごとに仕様基準で定める性能値以上の機器を用いていることを、図面上などで確認を行い、適合確認を行う基準となっている。
省エネ向上のための取り組み例
①外壁、窓等を通しての熱の損失防止(断熱化)
・外壁の断熱材を厚くする、窓をペアガラスにする等、熱を逃げにくくし室内温度の維持を図ることで、空調設備で消費されるエネルギーを抑える
・外装材と断熱材が一体化した断熱複合パネルを、外壁の”外側”に密着するように取り付けることは、室内の結露と熱損失を軽減するために効果的。
・窓のサッシをかぶせ工法(既存サッシを利用する方法)により取り換え、遮熱断熱複層ガラスをはめ込むことは、夏期の日射熱による冷房負荷を軽減するために役立つ。
 
②設備の効率化
・空調、照明等の設備の効率化を図り、同じ効用(室温、明るさ等)を得るために消費されるエネルギーを抑える
 
③太陽光発電等による創エネ
・太陽光発電等によりエネルギーを創出することで、化石燃料によるエネルギーの消費を抑える
 
〇透水性アスファルト舗装
・歩道、車路及び駐車場を透水性アスファルト舗装にすれば、雨水は地中に浸透することになるので、下水への排水量を軽減するのに役立つ。
 
〇屋上緑化
・屋上を緑化し、冷房負荷を軽減するため、既設の露出防水の全面に保護コンクリートを打設し、耐根対策として耐根シートを敷くなどの対策をした上で、その上に埴土(しょくど)を敷いて芝生を植えた。

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