築古マンションでマンション保険の保険料大幅アップ

築20年以上などの築古マンションでは、老朽化によって水漏れ被害等の保険金支払いが増えていて、個人賠償や施設賠償などのオプションの保険料が大幅にアップしているようです。
 
保険料アップの状況、保険会社の対応、代替案などについてまとめてみました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
保険料アップの状況
・築20年以上のマンションでは配管設備などの老朽化によって水漏れ被害が増えているようで、築古マンションではマンション保険の水漏れが関わるオプション、共用部施設賠償、専有部施設賠償、水漏れ原因調査、個人賠償、居住者包括賠償などが大幅に保険料アップしているようです。
 
私が所有している区分所有マンションでは、5年の長期契約中に保険料の改定があったようで、更新時期に共用部施設賠償が約7倍、居住者包括賠償(専有部施設賠償+個人賠償)が約5倍、水漏れ調査費用が約6倍とびっくりするほどの大幅アップの見積もりが届きました。
 
・一部の保険会社を除いては、マンションの築年数と事故歴で保険料決められてしまうようで、メンテナンスを適宜行っていてもそれは考慮されないようです。
 
・専有部の施設賠償はオーナー個人、個人賠償は入居者個人で個々に契約することもできますが、マンション一括で契約した場合の保険料より個々で契約した場合の方が安くなる場合もあるようです。
オプションの水漏れに関する対象範囲
漏水の原因管理組合が入る保険オーナーが入る保険入居者が入る保険
共有部施設賠償専有部施設賠償居住者包括賠償個人賠償施設賠償個人賠償
共用部が原因の階下への漏水✔
専有部の施設(配管、給湯設備など)が原因の階下への漏水✔✔✔
入居者過失による階下への漏水✔✔✔
保険会社を変更して保険料削減
●複数の保険会社から見積もり
 
・複数の保険会社から見積もりを取り比較する。4社の見積もりで、66万~87万(1年)とかなり幅がある事例もあるようです。
・上記で記述したように新規契約を受け付けていない保険会社があったり、建物管理会社が代理店として対応している保険会社の数が少なかったりする場合もあるので注意が必要です。
 
●メンテナンス状況に応じて保険料が決まる保険を検討
 
・マンションの築年数によらず、管理実態の診断結果を基に保険料を決める保険を検討。
マンションドクター火災保険 | 日新火災海上保険株式会社
・マンション管理適正化診断サービスの診断結果に応じて割引される。
※マンション管理適正化診断についてはこちらを参照。
・まだ新しい保険で建物管理会社が保険代理店として取り扱っていない場合が多いようなので、契約手続きや実際の事故対応の面で理事会の負担が大きくなるかもしれません。
各保険会社の対応状況(2024年時点)
損保会社毎に事故歴による保険料割引や管理状況に応じた割引など差異が生じてきています。その概要をまとめました。
※参考資料:マンション管理新聞2024年8月15日号等
 
●東京海上
 
①事故状況による割引
・事故件数による割引が大きく、事故率が最も低いランクの場合は最大で約7割保険料が割引される。
 
②メンテナンス割引
・築20年以上で過去15年間に給排水管の更新をしていれば割引。
 
●三井住友
 
①事故歴による割引
・過去2年間の戸当たり事故件数が少ないと割引
 
②管理状況割引
〇割引が適用される条件
・長期修繕修繕計画を作成
・修繕を実施している又は予定されている
・共用部に監視カメラを設置
・オートロックか管理人が24時間常駐
・排水管の高圧洗浄2年以内に実施済み
 
③敷地内限定補償
・包括個人賠償特約に”敷地内限定補償”を新設し、補償範囲を敷地内の事故に限定されることで保険料が安くなる。
 
●損保ジャパン
 
①事故歴による割引
・過去1年間の戸当たり事故件数が少ないと割引
・築年ごとの保険料が改定され、築年数が25年、50年を超える場合の保険料が上がる
 
●日新火災
 
①マンション管理適正化診断サービスの結果に応じて割引
・他社では事故歴が多いと保険料が引き上げられたり、契約の引受けができない場合もあるが、”マンションドクター”では診断サービスを受ければ保険契約は可能。
 
②2024年以降の変更内容
・現状は適正化診断の診断結果や事故頻度などで保険料が決まるが、変更後は事故頻度が保険料に影響しなくなる。
・築10年未満は診断結果の有無、実際の点数に関わらず診断点数が満点とみなして保険料が決められる。
・事故頻度は保険の引き受け条件として使用され、事故頻度が0.01件以上で診断点数が49点以下だと引き受け条件が限定される。
包括賠償特約を外し、個人で契約
●専有部に関わる賠償特約を外す
 
そもそも管理組合は”共用部”の維持・管理を行うことが目的で、専有部は基本的には範囲外、とも言えるので専有部に関わる特約を外して保険料を軽減するという選択肢もあろうかと思います。
 
ファミリーマンションは、オーナーと入居者は同一である場合が多いかと思いますが、賃貸マンションは、入居者は非オーナーで、入居者の過失による賠償責任に関わる個人賠償保険をオーナーの負担で加入するということについて異論のある方もいるのではないでしょうか?そして、通常は賃借人は契約時に個人賠償保険に加入している場合も多いと思われ、重複して加入している場合が多いように思えます。
 
・ただし、専有部内配管や給湯管等が原因の水漏れ被害についてはオーナーの責任となるので、オーナー個人で施設賠償保険に入る必要はあります。
 
●オーナー、入居者個々で契約
 
・管理組合の保険の特約でつけている居住者包括賠償(専有部の居住者の過失による事故、専有部の施設が原因の事故におる損害を賠償)を外し、オーナー個人で施設賠償保険、入居者個人で個人賠償保険に加入したほうが安くなる場合もあるようです。
 
・入居者が加入する個人賠償保険は、賃貸の場合は賃貸借契約時に賃貸管理会社から入るように勧められることが多いので、通常は加入していると思われます。
 
・オーナーが加入する施設賠償保険は、物件購入時に契約する火災保険の特約として設定することができますが、設定してしない場合は別途加入する必要があります。
 
●全国の管理組合の加入状況
 
国土交通省のR5年マンション総合調査
・このアンケート調査によると個人賠償保険に加入している管理組合は約56%という調査結果になっています。
 
●上階の加害者が保険未加入の場合に自身が被害にあったら
 
・オーナー自身とその賃借人が対象の保険に加入していれば、自身の部屋が原因の水漏れの賠償を保険でカバーすることはできますが、自分の部屋が水漏れの被害者となった場合に、上階のオーナー又は賃借人が賠償保険に未加入だとどうなってしまうのか、と気になるかもしれません。
 その場合でも自身の専有部にかけている個人の火災保険には”水濡れ”リスクに対する補償がついているので、上階の加害者が賠償をしてくれなくても自身の保険を使って復旧することができるかと思います。
マンション管理適正化診断サービスの診断項目と配点
※マンション管理新聞2020年1月15日号
 
1)診断項目の概要
 
●管理実態
・マンション管理標準指針と管理運営状況
・”マンションみらいネット”登録状況
 
●長期修繕計画
・長期修繕計画の見直し状況
・修繕積立金の設定状況
・区分所有者の滞納状況
 
●法定点検、修繕工事
〇検査、点検実施状況
・特定建築物等定期調査
・建築設備定期検査
・防火設備定期検査
・消防用設備等点検
〇工事実施状況
・給水管工事(更新、更生)
・排水管工事(更新、更生)
・排水管洗浄
・外壁改修工事、屋上・バルコニー防水工事
 
●その他
・漏水事故履歴
・防火管理状況
・喫煙管理状況
・地下室の有無
・防犯装置の設置状況
 
2)給排水管の診断基準
 
●給水管
A.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更新工事を実施している。
B.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入あり)である。
C.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入なし)である。
④直近の長期修繕計画において、共用部分の給水管について、新築時(更新工事実施時)より25年以上の修繕周期が設定されており、診断時点でその修繕周期内である。
 
●排水管
A.診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「汚水管」「雑排水管」の更新工事を実施している。
B.以下のいずれかに該当する
ア)診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「汚水管」「雑排水管」のどちらか一方の更新工事を実施している。
イ)診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「雑排水管」の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入あり)である。
③診断実施日より過去15年以内に、共用部分および専有部分の「雑排水管」の更生工事を実施しており、かつ、業者の保証期間内(業者の大規模修繕工事瑕疵保険への加入なし)である。
④直近の長期修繕計画において、共用部分の「汚水管」「雑排水管」について、新築時(更新工事実施時)より25年以上の修繕周期が設定されており、診断時点でその修繕周期内である。
 
3)配点
 
・築年による区分を設け、区分によって配点が変わる項目もある。
・”給排水管工事の実施状況”が100点満点の50点を占める。
・専有部分の配管は、更新を一斉に行っていなくても自発的に更新した住戸が一定数以上あった場合は加点の対象になる。
・高耐久部材が採用されている、などの理由で更新・更生工事を行っていない築20年以上のマンションは、実際のリスクと比べて評価が低くなってしまうという側面がある。
事故割引、免責金額設定で保険料削減
(1)事故割引を利用して保険料削減
 
●保険料が事故率(1戸室あたりの事故件数)によって割引
 
〇東京海上の例(2023年時点)
 事故件数 総戸数  事故率  区分  割引率
  1件   50戸   0.02   A    62%
  2件   50戸   0.04   B    53%
  5件   50戸   0.1    D    22%
 
●事故件数のカウント期間
・東京海上、三井住友・あいおい:2年間(始期日から6ヵ月前時点から過去2年間)
・損保ジャパン:1年間
 
●カウント期間に関する注意点
・カウント期間は、新たに契約する保険会社の基準で判定される。
・事故カウントにおける”事故”は、事故発生日ではなく、保険金の支払日で判定される。
→カウント期間中に事故が発生しても、保険金の受取時期をカウント期間の範囲外となるように手続きすれば、事故割引への影響をなくすことも可能。
 
(2)免責金額を設定して保険料削減
 
・上記の事故割引の仕様によって、小額の保険金受取を数回実施すると、保険金の受取時期にもよりますが、次の更新時に保険料が大幅に増えてしまうことになりかねません。
 
小額の損害の場合は事故割引を考慮して保険申請を実施しない可能性が高いのであれば、保険契約時に免責金額を設定して保険料を節減するという選択肢もあるかと思います。
 
●免責金額と保険料の例
・建物評価額:7,000万
・契約期間:5年長期一括払い
     免責なし   免責5万  免責10万
保険料  約43.8万円  約37.6万  約32.1万

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