給排水管の劣化調査・診断

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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給水、給湯の配管材料
1)水道用亜鉛めっき鋼管(SGP、白管)
 
・耐食性を持たせるために亜鉛めっきを施したガス・水道用の鋼管。内外面にめっき。
・高度経済成長期に多用されたが、その後耐食性は充分ではなかったことが判明し、水道管として使用した場合には赤水や白水の発生原因となる。
 
2)ライニング鋼管
 
①硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-VA等)
・錆の発生を防ぐため鋼管の内面に硬質塩化ビニルでライニングしたもので、鋼管の強靭性、耐衝撃性、耐火性と塩ビの耐食性とを併せ持っている。
〇初期 ・継手本体はライニングされておらず、管端のネジ部分で鋼部と水が接触していたため、継手部分で錆の発生があった。 〇継手の改良 ・1970年代前半:ライニング継手 ・1980年代半ば以降:管端防食コアとの併用 ・1990年代前半以降:管端防食継手  
②ポリエチレン粉体ライニング鋼管(SGP-PA等)
・白管などの鋼管にポリエチレンを被覆した樹脂ライニング鋼管。
・鋼管の持つ機械的強度とポリエチレン樹脂の優れた耐食性を合わせ持つが、ライニング塗装の塗膜は薄い。
・管端部及びねじ部に防食処理を施す。
  ③耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管
・85℃以下の給湯管に使用可能。
 
3)ステンレス鋼管
 
①ステンレス鋼管(SUS304,316)
②波状ステンレス鋼管(SUS304,316)
 
〇長所
・腐食による赤さびや異味・異臭が発生したり、環境ホルモンが溶出する心配がなく、人体に対して安全性の高い非石油化学系の配管材料。
・管内にスケールの発生がない。
・強度があり、摩耗に強く、外傷やつぶれのおそれが少ない。
・軽量。
・コストパフォーマンスに優れ、将来の改修を考える必要がないので、ランニングコストは長く使うほど安くなる。
 
〇短所
・電食を受けやすい。
・熱膨張率が大きく伸びやすい。
 
4)銅管
 
・鋼管より耐食性・可撓性に優れており、主に専有部の給湯設備配管などに使用される。
 
〇長所
・軽量。
・耐アルカリ性でコンクリート、モルタル内の布設に適する。
・管内にスケールの発生がない。
・可とう性が高く、加工しやすい。
・住宅用などに使われる銅管は安価。ステンレス管よりも安価でコストが低い。
・水道管の場合、水質による影響が少ないことから再生水や中水道、工業用水道等を使用する場合、水質による腐食を防げる。
 
〇短所
・外傷を受けやすい。
・電食を受けやすい。
・原水に遊離炭酸が多いときは、銅が溶解して白布などに着色することがある。
・高価
 
〇注意点
・酸性土壌へ埋設する場合は被覆銅管が望ましい。
・厨房、浴室、ベランダの床や壁面のコンクリートのように水が浸透する箇所に敷設するときには、被覆銅管が望ましい。
 
5)塩化ビニル管
 
・塩ビ管は、赤さびなどが出ないので、水道管をはじめ下水道管・電線管・土木用など極めて広範囲に使用されている。
・主に専有部で使用される。  
①硬質塩化ビニル管
②耐衝撃性硬質塩化ビニル管
 
〇長所
・耐酸、耐アルカリ性に富み、電食のおそれがない。
・管の内面はきわめて滑らかで、摩擦抵抗が小さいため、異物の発生や汚物の付着が少なく、効率よく通水できる。
・施工が容易。異形管が豊富で多様な施工が可能。
・軽量。
 
〇短所
・衝撃に弱く外傷を受けると強度が低下する。
・耐熱性が低い。
・温度に対する膨張率が大きく温度変化の激しい場所に布設する場合は伸縮継手等が必要。
・シンナーなどの溶剤におかされる。
・直射日光を避けて保管する。
 
〇注意点
・軟弱地盤又は化学薬品に浸された土壌での使用禁止。
・給湯管への使用禁止。
 
③耐熱性硬質塩化ビニル管
 
・耐食性に優れ、接着接合で施工が容易で経済性に優れているが、直射日光、衝撃、凍結には弱い。
・腐食に強く加工が容易だが、外圧、衝撃に弱いため、主として、専有部分で使用される。
 
〇長所
・耐酸、耐アルカリ性に富み、電食のおそれがない。
・スケールの発生がない。
・施工が容易。
・軽量。
 
〇短所
・衝撃に弱く外傷を受けると強度が低下する。
・温度に対する膨張率が大きく温度変化の激しい場所に布設する場合は伸縮継手等が必要。
・シンナーなどの溶剤におかされる。
 
〇注意点
・90℃以下の給湯管に使用可能。
・使用水温により、使用圧力が異なる。
・軟弱地盤又は化学薬品に浸された土壌での使用禁止。
 
6)架橋ポリエチレン管、ポリブテン管
 
・主に専有部で使用される。 ・さや管ヘッダー方式に使用される。   ①水道用架橋ポリエチレン管
・熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレンの分子どうしのところどころを結合させ、立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレンを材料とする合成樹脂管。
・ヘッダー配管と共に最近の住宅の給水・給湯配管に多く用いられている。
・屋外露出配管の場合には、管に直射日光が当たらないように外面被覆を施す。
・管は傷つきやすいので、投げたり、引きずったりするようなことは避ける。
 
②水道用ポリブテン管
・ポリエチレンや、ポリプロピレンと同じポリオレフィン系の樹脂(ポリブテン)で作られた合成樹脂管。
・主に水道水の屋内配管として使用される。一般の給水配管から給湯配管や床暖房の温水配管などの配管等、常温の水から温水にわたる幅広い範囲で使用されている
・屋外露出配管の場合には、管に直射日光が当たらないように外面被覆を施す。
・管の色は明るい灰黄(ベージュ)色。
・管は傷つきやすいので、投げたり、引きずったりするようなことは避ける。
 
〇長所
・耐寒性、耐衝撃強さ、耐食性、耐塩素水性に優れている。
・軽量。
・柔軟性に富んでいる。
・長尺物のため、少ない継手で施工出来る。
 
〇短所
・有機溶剤などに侵されるおそれがある。
排水の配管材料
1)配管用炭素鋼鋼管(SGP)
 
・汚水管、雑排水管、通気管として広く使われていた。
・排水系統によっては腐食の進行が早い。
・ねじ込み式のドレネージ継手部分で管端ネジの肉薄箇所から錆が始まり、錆がさらに進行すると管に穴があいて漏水する。 ・台所系排水横引管では、管底にスライムがたまり、好色性バクテリアを生じて直管部分でも穴があくこともある。  
2)排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(D-VA)
 
・汚水管、雑排水管として使われている。
・錆の発生を防ぐために、炭素鋼鋼管内面に耐食性に優れた硬質塩化ビニル管を内張り(ライニング)したもので、鋼管の強度と耐衝撃性、耐火性と塩化ビニル管の耐食性を兼ね備えている。
・従来の鋳鉄管や亜鉛めっき鋼管に比べ軽量化されており、施工性にも優れている。
・防火区画貫通部で使用できる。
・鋼管が薄く、ねじ込み式の継手が使用できないので、ボルトで締めるMD継手(Mechanical Drainage、メカニカル接合型、排水鋼管用可とう継手、MDジョイント)と呼ばれる継手や、MD継手の改良型が使用されている。
 
3)タールエポキシ塗装鋼管
 
・汚雑排水管として使われている。
・管内面をタールエポキシで塗装し、耐腐食性を持たせたもの。
・排水鋼管用可とう継手のMD継手(メカニカルジョイント)とねじ込み式排水管継手が用いられる。  
4)排水用鋳鉄管(CIP)
 
・古くから汚水系統に使用されている。 ・一般的に腐食に強いと言われていて、汚水単独系統では耐久性が高く長持ちする。
・接続方法は、当初は鉛コーキングであったが、その後ゴムリング接合、メカニカル接合と進化してきている。  
5)排水用硬質塩化ビニル管
 
・屋外配管、住戸内配管に広く使われている。
・接合方法は、排水用硬質塩化ビニル管継手(DV継手)による接着接合。
  〇食器洗い乾燥機の排水管
・通常使用される硬質塩化ビニル管(VP管)の耐熱温度は60℃以下
→食器洗い乾燥機には高温の排水が流れるので、耐熱性硬質塩化ビニル管(HTVP)を使用する。これだと耐熱90℃程度まで可能。
 
6)耐火二層管
 
●耐火二層管
・内張り管に硬質ポリ塩化ビニル管、外張り管に繊維モルタル製耐火管を被覆している配管材料。
・接合方法は、排水用耐火二層管継手による接着結合となる。 ・耐火二層管は、繊維モルタルで被覆され、吸水性や吸湿性があり、鋼管や銅管・ステンレス管などの金属管・塩ビ管のような防露施工を必要としない。
・水流音の遮音性や耐食・耐震などの特長を持つ。
・マンション・ホテル・事務所ビルを中心に、家庭やオフィス等の排水管として身近なところで配管として使われている。
・”トミジ管”若しくは、繊維補強モルタル二層管とも呼ばれ、防火区画の貫通処理が必要な場所で使用できる。
 
7)鉛管
 
・水道の引き込み管、水道メーターの前後や床下給水和式便器の給水管などの地中の狭い箇所や曲がり角に使われている。
 
〇長所
・耐食性
・曲げ加工が容易
かつて、水道管の引き込み管に使用されていたが、現在はビニール管となる。
・耐酸性をもつ
 
〇短所
・鉛自体は有害物質で、現在では水道管に使用する事を禁止されている。
主な劣化現象
1)配管の材質と劣化
 
〇鋼管
・水道メーター回りで青銅製バルブと鋼管を直接つなぐと、異なった金属を接触させることにより、鋼管に腐食が起きることがある。
・水道メーター、バルブの接続部などでは、配管である鉄と水道メーターやバルブの銅合金など異なった金属同士が接触しているため、鋼管に異種金属接触腐食が生じることがある。
 
〇硬質塩化ビニルライニング鋼管
・腐食は、直線部ではなく継手の接合部でライニングがなくなり生じやすい。
・当初は、継手部分での錆が発生していたが、今は継手にも錆びない素材が使われている。
 
〇樹脂管
・腐食の問題はないが、強度低下、変形及び継手部の緩み等による漏水問題がある。

 
〇土中埋設の鋼管
・土壌の電流が流入し、土壌に再度流出するときに電位差が生ずることにより、鋼管外面に腐食が起きることがある。
・大地は巨大な電導体であり、土中埋設の鋼管は、絶好の電導体である。特に電位差の大きい場所に埋設された鋼管は電流が流入されやすく、再び土壌中に流出する地点では、電位差が生ずることにより、鋼管外面に腐食が起きることがある。
 
〇給湯管に使用される鋼管
・管内の流速が速いことにより、鋼管の表面が削り取られて腐食することがある。
・銅管では、潰食といって、銅管の表面上の保護皮膜が過大な流速、気泡の巻き込みや流れの乱れによって削り取られ腐食することがある。
 
〇亜鉛めっき鋼管
・以前の給水管のほとんどは亜鉛めっき鋼管を使用していたが、亜鉛メッキが剥げると給水管は全体的に錆びてゆき、赤水が発生するので、現在では亜鉛めっき鋼管はほどんど使われなくなった。

2)給水管の劣化
 
●仕様によらず共通の事項
・継手部パッキン等の劣化、弁類の腐食等によって劣化する。
〇さびこぶ、継手からの漏水
〇配管支持金物の損傷・脱落
〇弁類の動作不良
・さびにより可動部分が固着
 
●土中埋設管
・防食不良等によって劣化する。
〇外面の腐食
〇漏水
 
●たて主管
・管端面の防食不良等によって劣化する。
〇さびこぶ、ねじ部の腐食
〇継手からの漏水
 
●枝管
・管端面の防食不良、さびこぶによる閉塞等によって劣化する。
〇さびこぶ、ねじ部の腐食
〇継手からの漏水
〇流量・流速の低下
 
3)排水管の劣化
 
●仕様によらず共通の事項
・付着堆積物、腐食の進行等によって劣化する。
〇管内の閉塞、漏水
 
●土中埋設管
・敷地の沈下、勾配不良等によって劣化する。
〇外面の腐食
〇接合部の外れ・割れ
〇管内のつまり
 
●たて主管
・熱による伸縮、腐食の進行、通気不良、付着堆積物等によって劣化する。
〇配管の破断
〇排水不良
 
●枝管
・勾配不良、熱による伸縮、通気不良、付着堆積物等によって劣化する。
・金属系の排水管では、台所流しの横引排水管の劣化が速い。
〇管内のつまり
〇配管の破断
〇排水不良
調査と診断
〇配管の腐食状況
・配管の腐食状況は水質、水温等により異なり、特にねじ部の劣化が著しい場合が多い。

1)一次診断
 
〇目視調査
・劣化の位置、範囲、程度等の状況を確認する。
・保温材の湿り、弁類・配管継手部からの漏水を確認する。
・排水桝廻りで埋設排水管の勾配不良、段差による排水障害の有無などを確認する。
 
2)詳細調査
 
●非破壊検査
〇超音波肉厚測定
・給水管の外面腐食減肉量を測定する。
・計測データと経年等の値から解析を行い、残存寿命を推測することができる。
〇内視鏡調査
・さびこぶの発生頻度、閉塞量などを観察する。
〇X線調査等
・腐食や減肉の状況をフィルム像より観察。
〇流速、流用測定(末端器具側のみ)
 
●サンプリング(抜管)調査(半割酸洗い)
・サンプリング資料を採取し、腐食や減肉の状況を観察、配管系統全体の腐食状況を推定。
・サンプルの最小肉厚を計測し、残存寿命を求めることができる。
 
●各検査方法の概要
・排水管内の油脂類・雑物等の付着状態を把握するには、内視鏡による直接観察法がもっとも適している。
・超音波肉厚計や放射線透過撮影装置は、給水管・排水管の錆こぶ・減肉状態の診断に用いられる。
 
3)超音波肉厚調査
 
・配管の腐食による減肉を測定する。
 
〇測定方法
・配管に測定器の探触子をあて、配管に超音波のパルスを送り、反対側の配管表面(錆こぶの界面)で反射されてくるまでの時間から、配管肉厚を算出する。
 
〇注意点
・配管の管種が鋼管に限定される。
→ライニング鋼管等は適用が困難。
・直管部のみ観察できるため、継手部は他の方式による。
 
4)内視鏡調査
 
・給排水管の内部の劣化状況を確認する。
 
〇測定方法
・配管内に内視鏡(ファイバースコープ)を挿入し状況を観察する。
・写真やビデオにより、映像を記録する。
 
〇注意
・給排水管の調査時に調査対象となる系統の断水を伴う。
 
5)X線調査
 
・給排水管の内部の劣化状況を確認する。
 
〇測定方法
・配管にX線を照射し、透過したX線の強度変化をフィルムの白黒濃淡影像として観察する。
・減肉部分の濃度とその近傍の減肉部分が少ない部分との白黒コントラストから、配管肉厚の減少やさびこぶの状態を観察できる。
 
〇注意点
・一般的に口径125Aまでが適用可能。
・断水の必要はないが、周囲に放射線が漏洩するてめ、作業半径5m以内は立入禁止となる。
 
6)設備配管のサンプリング調査
 
〇測定方法
・配管の腐食状況の観察については、主要部位を抜管してサンプリング調査を実施する。
・配管抜管→酸洗い→マイクロメーターにより最小肉厚を測定
 
〇注意点
・最適な抜管箇所の選定には統計処理を導入することが望ましい。
・既存配管の接続部分は鋼管と鋼管の接続部、銅管と鋼管の接続部においては、腐食状況が異なるため、別々にサンプリングを行うことが望ましい。

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