(公共工事標準)セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り

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『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)』
用語説明、施工時の注意点
(1)用語説明
 
〇役物
・端部やコーナー部分などに、一般形では納まらない箇所にもちいるタイル。
・単体又は一列に施工する。
・面取りタイル、内幅木タイル、段鼻タイル(階段タイル)、曲がりタイルなど。
 
〇裏あし(back feet)
・モルタルなどとの接着をよくするため,タイルの裏面に付けたリブ又は凹凸。
・接着力は素材の性質によって決まるが、裏足があると見かけ上(=物理的な)の接着力が上がるので、多くのタイルに裏足がついている。
 とくに外壁につかうタイルは、逆ハ型の蟻になった裏足をもち、タイルの大きさによって裏足の深さが決まっている。
・屋外壁に使用する場合、セメントモルタルによるタイル後張り工法又はタイル先付けプレキャストコンクリート工法で施工するタイルには,裏あしがなくてはならない。なお,有機系接着剤によるタイル後張り工法で施工するタイルには,裏あしがなくてもよい。
 
〇ユニットタイル
・施工しやすいように,多数個のタイルを並べて連結したもの。
〇表張りユニットタイル
・タイルの表面に表張り台紙を張り付けて連結したもの。
・表張り台紙は,施工時に剥がす。
〇裏連結ユニットタイル
・タイルの裏面及び/又は側面を裏連結材で連結したもの。
・裏連結材には,ネット,台紙,樹脂などがあり,施工時にそのまま埋め込む。
 
〇伸縮調整目地
・下地の乾燥収縮や湿潤膨張による動き、地震や外荷重による変形、タイルの熱膨張による動きを吸収し、タイルのひび割れ、剥離を防止するために設けられる目地。
 
〇ひび割れ誘発目地
・ひび割れが発生する位置を計画的に定め、所定の間隔で断面欠損部を設けることによって、ひび割れを集中的に発生させることを目的とするもの
 
〇突きつけ目地(ねむり目地)
・板など同じ材料どうしを、隙間を開けずに突付けて施工するときの継ぎ目。
・コンクリートや下地モルタルの収縮や、タイルの熱膨張による動きが吸収できず、タイルのカケ・ひび割れ・剥離の原因になる。
 
〇深目地
・目地のモルタルを見せないようにした目地仕上げのこと。陰影がはっきり出るので、見た目が美しいとされる。
・コンクリート躯体や下地モルタルの収縮、タイルの熱膨張にともなう応力が裏あし部分に集中するため、裏あし破断による剥離が起こりやすくなる。
→目地深さは、タイル厚の1/2以下となるよう目地材を詰めるようにする。
・目地が深いために日頃の掃除がしにくい。
 
(2)施工時の注意点
 
・外壁タイル張りにおいて,降雨・降雪時,強風時等タイル工事に支障のあるとき及びこれらが予想される場合は,施工を行わない。
・塗付け場所の気温が3℃以下及び施工後3℃以下になると予想される場合は,施工を行わない。
躯体、コンクリート素地面の処理
・コンクリート等で,ひずみ,不陸等の著しい箇所は,目荒し,水洗い等のうえモルタル又は下地調整塗材で補修する。
・コンクリート,コンクリートブロック壁面は,デッキブラシ等で水洗いを行い,モルタル等の接着を妨げるものを除く。
・MCR工法あるいは高圧水洗処理により、躯体に凹凸を設け、モルタルとの接着性能を向上させる。
 
〇MCR工法
・専用の中空樹脂シートを型枠に取り付けておいてコンクリートを打設することで、コンクリート表面にあり状の凹凸を設けて、その上に塗るモルタルと噛み合わせることで剥離を防止する。
 
〇高圧水洗処理(目荒し工法)
・高圧水洗処理は、モルタル塗りあるいはタイル張り(直張りの場合)の前に、コンクリート表面を高圧(50~150MPa程度)で水洗いして、モルタルの接着に有効な凹凸の付与、汚れ及び脆弱層の除去を行うこと。
・コンクリートとモルタルとの接着信頼性を高める。
モルタル下地、伸縮調整目地
1)セメントモルタル張りタイル下地施工の注意点
 
・塗厚は,原則として,全仕上げ厚さ,タイル厚さ等から定める。
・タイル張りが,密着張り,改良積上げ張り ,改良圧着張り,マスク張り及びモザイクタイル張りの場合並びにセメント系厚付け仕上塗材の場合は,中塗りまで行う。
・モルタル下地面の仕上げは,原則として,木ごて押えとし,その精度はモザイクタイルでは2mにつき3mm,小口以上のタイルでは2mにつき4㎜とする。
 
2)外装タイル張り下地等の下地モルタル塗りの確認
 
・下地モルタルの硬化後,全面にわたり打診を行う。
・浮き及び精度について,不具合が確認された場合は直ちに補修を行う。
・下地モルタルの接着力試験は,特記による。
 
3)伸縮調整目地
 
・コンクリートやモルタル下地の乾燥収縮や湿潤膨張による動き、あるいは、タイルやモルタル等の熱膨張による動きを吸収し、タイルのひび割れ、剥離を防止するために伸縮調整目地を設ける。
 
〇設置位置の例
・躯体のひび割れ誘発目地の位置(柱周辺、開口部周辺等)
・各階ごとのコンクリート打継ぎ部
・他部材(サッシなど)との取り合い部
・水平方向と垂直方向の伸縮調整目地で囲まれた面積が、10㎡以内となるようにする。(3~4m毎)
・R部等挙動の大きい部位は1~3m毎に設置。
 
〇施工上の注意点
・タイルの伸縮調整目地に合わせて幅10mm以上の伸縮調整目地を設ける。
・伸縮調整目地は,発泡合成樹脂板の類を用い,目地周辺から浮きが発生しないよう,原則として,構造体まで達するようにする。
壁タイル張り
1)施工上の注意点
 
・夏期に屋外のタイル張りを行う場合は,下地モルタルに前日散水し,十分吸水させる。
・タイル張りに先立ち,下地モルタルに適度の水湿し又は吸水調整材の塗布を行う。ただし,改良積上げ張りの場合,吸水調整材の塗布は行わない。
・吸水性のあるタイルは,必要に応じて,適度の水湿しを行う。
・タイルごしらえは,必要に応じて行う。
・伸縮調整目地にはみ出した張付け用モルタルはすべて削り落とし,張付けモルタルの施工が適切でなく隙間のできた場合はモルタルを補充し,目地の形状を整える。
 
2)密着張り
 
●概要
・下地に張付けモルタルを塗り付け、専用の振動工具(ヴィブラート)を用いてタイルをモルタル中に埋め込むように張り付ける工法。
・目地部に盛り上がったモルタルをこて押さえをして、目地も同時に仕上げることができる。目地深さが深くなる場合には、後目地施工を行う。
・塗厚:5~8mm
・1枚ずつ張り付ける。
 
●施工
〇張付け
・張付けモルタルは2層に分けて塗り付けるものとし,1層目はこて圧をかけて塗り付ける。なお,張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度は2㎡以下とし,かつ,20分以内に張り終える面積とする。
・張付け順序は,目地割りに基づいて水糸を引き通し,窓,出入口回り,隅,角等の役物を先に行う。
・張付けは,張付けモルタルの塗付け後,直ちにタイルをモルタルに押し当て,タイル張り用振動機(ヴィブラート)を用い,タイル表面に振動を与え,張付けモルタルがタイル裏面全面に回り,さらに,タイル周辺からモルタルがはみ出すまで振動機を移動させながら,目違いのないよう通りよく張り付ける。
 
〇化粧目地
・タイル張付け後,24 時間以上経過したのち,張付けモルタルの硬化を見計らって,目地詰めを行う。
・目地の深さは,タイル厚さの1/2以下とする。
・目地詰めに先立ち,タイル面及び目地部分の清掃を行い,必要に応じて,目地部分の水湿しを行う。
・目地詰め後,モルタルの硬化を見計らい,目地ごて等で仕上げる。
・目地成形後,タイル面の清掃を行う。
 
3)改良積上げ張り
 
●概要
・精度の良い下地に対して、タイル裏面に張付けモルタルを塗り、タイルを張る工法。
・タイルは、下段より積上げて施工していくので、三丁掛・四丁掛等大形の外装タイルの施工に適している。
・塗厚:4~7mm
・1枚ずつ張り付ける。
 
●施工
〇張付け
・目地割りに基づいて役物を張り付け,水糸を引き通し,原則として,下から張り上げる。
・張付けは,張付けモルタルをタイル裏面全面に平らに塗り付けて張り付けたのち,適切な方法でタイル周辺からモルタルがはみ出すまで入念にたたき締め,通りよく平らに張り付ける。なお,モルタルの塗置き時間は5分以内とする。
・1日の張付け高さの限度は,1.5m程度とする。
 
〇化粧目地
・密着張りの場合と同様。
 
4)改良圧着張り
 
●概要
・張付けモルタルを下地面に塗り、モルタルが固まらないうちにタイル側にも薄く張付けモルタルを塗りつけて張り付ける工法。
・下地とタイルの両側に張付けモルタルを塗り付けるため、ばらつきが少なく良好な接着強さが得られる。
・塗厚:下地側4~6mm、タイル側3~4mm
・1枚ずつ張り付ける。
 
●施工
〇張付け
・張付けモルタルは2層に分けて塗り付けるものとし,1層目はこて圧をかけて塗り付ける。なお,張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度は2㎡以下とし,かつ,張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度は,60分以内に張り終える面積とする。また,練り混ぜる量は1回の塗付け量及び張付け量とする。
・張付け順序は,目地割りに基づいて水糸を引き通し,窓,出入口回り,隅,角等の役物を先に行う。
・張付けに先立ち,下地側に張付けモルタルをむらなく平たんに塗り付ける。 ・張付けは,タイル裏面全面に張付けモルタルを平らに塗り付けて張り付け,適切な方法でタイル周辺からモルタルがはみ出すまでたたき締め,通りよく平らに張り付ける。
・1回のモルタル塗面にタイルを張り終わったとき,モルタルの硬化の程度により,張付けが終わったタイル周辺にはみ出しているモルタルを取り除き,塗り直してからタイルを張り進める。
 
〇化粧目地
・密着張りの場合と同様。
 
5)マスク張り(25mm角を超え小口未満のタイル)
 
●概要
・タイルユニットの裏面に所定のマスクをかぶせてモルタルを塗り下地面に張り付ける工法で、モザイクタイルに適用する。
・塗厚:3~4mm
・ユニットごとに張り付ける。
 
●施工
〇張付け
・張付けモルタルには,混和剤を用いる。
・張付け順序は,目地割りに基づいて水糸を引き通し,窓,出入口回り,隅,角等の役物を先に行う。
・役物及び切物タイルの張付けは,以下による。
張付けモルタルをタイル裏面全面に平らに塗り付けて張り付けたのち,適切な方法でタイル周辺からモルタルがはみ出すまで入念にたたき締め,通りよく平らに張り付ける。
・張付けは,張付けモルタルをタイルに見合った,ユニットタイル用マスクを用い,ユニット裏面全面にこてで圧着して塗り付け,縦横及び目地幅の通りをそろえて張り付け,適切な方法で目地部分に張付けモルタルがタイル周辺からはみ出すまでたたき締める。なお,モルタルの塗置き時間は,5分以内とする。
・表張り紙の紙はがしは,張付け後,時期を見計らって水湿しをして紙をはがし,著しい配列の乱れがある場合は,タイルの配列を直す。
 
〇化粧目地
・すり込み目地とする。
・タイル張付け後,24 時間以上経過したのち,張付けモルタルの硬化を見計らって,目地詰めを行う。
・目地の深さは,タイル厚さの1/2以下とする。
・目地詰めに先立ち,タイル面及び目地部分の清掃を行い,必要に応じて,目地部分の水湿しを行う。
・目地詰め後,タイル面の清掃を行う。
 
6)モザイクタイル張り(小口未満のタイル)
 
●概要
・下地に張付けモルタルを塗り、タイルユニットをたたき板等で叩き押さえて張り付ける工法で、モザイクタイルに適用する。
・塗厚:3~5mm
・ユニットごとに張り付ける。
 
●施工
〇張付け
・張付けモルタルは2層に分けて塗り付けるものとし,1層目はこて圧をかけて塗り付ける。なお,張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度は,3㎡以下とし,20分以内に張り終える面積とする。
・張付けモルタルを塗り付けたのち,タイルを張り付け,縦横及び目地幅の通りをそろえ,適切な方法で目地部分に張付けモルタルが盛り上がるまでたたき締める。なお,タイル張継ぎ部分の張付けモルタルは,除去し塗り直す。
・表張り紙の紙はがしは,張付け後,時期を見計らって水湿しをして紙をはがし,著しい配列の乱れがある場合は,タイルの配列を直す。
 
〇化粧目地
・すり込み目地とする。
・タイル張付け後,24 時間以上経過したのち,張付けモルタルの硬化を見計らって,目地詰めを行う。
・目地の深さは,タイル厚さの1/2以下とする。
・目地詰めに先立ち,タイル面及び目地部分の清掃を行い,必要に応じて,目地部分の水湿しを行う。
・目地詰め後,タイル面の清掃を行う。
まぐさ,窓台等のタイル張り
・小口タイル以上の大きさの,まぐさ及びひさし先端下部のタイルを張り付ける場合は,引金物を張付けモルタルに塗り込み,必要に応じて,受木を添えて24時間以上支持する。
・窓台部分のタイルは,窓枠,水切り板等の裏面に差し込み,裏面に隙間のないようにモルタルを充填する。
養生及び清掃
1)養生
 
・屋外施工の場合で,強い直射日光,風,雨等により損傷を受けるおそれのある場合は,シートを張るなどして養生を行う。
・施工中及びモルタルが十分硬化しないうちに,タイル張り面に振動,衝撃等を与えない。
 
2)清掃
 
・タイル張り終了後,タイル表面を傷めないように清掃し,汚れを取り除く。
・やむを得ず清掃に酸類を用いる場合は,清掃前に十分水湿しをし,酸洗い後は直ちに水洗いを行い,酸分が残らないようにする。なお,金物類には,酸類が掛からないように養生を行う。

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