(公共工事標準)塗装改修工事の下地処理、錆止め

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。 ※参考資料
『建築用仕上塗材ハンドブック 2007年版』
『公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)』
塗装下地の種類、特徴
1)コンクリート(主成分:セメント、砂、砂利)
 
〇乾燥
・遅く、厚さと構造に支配される。
〇アルカリ性
・強く、中和に長時間要する。
・内部からの水分はアルカリ性を呈する。
〇表面状態
・粗く、吸込みが大きい。
・巣穴・段差、不陸、レイタンス、エフロレッセンス
 
2)モルタル(主成分:セメント、砂)
 
〇乾燥
・表面乾燥は速いが、内部含水率は構造体の作用を受ける。
〇アルカリ性
・コンクリートより強く、内部からの水分はアルカリ性を呈する。
〇表面状態
・粗面・平滑・ひび割れなどがあり、吸込み程度が異なる。
・巣穴・コテ跡、刷毛引き跡
 
3)PCパネル(主成分:セメント、砂、砂利、軽量骨材)
 
〇乾燥
・遅く、厚さと構造に支配される。
〇アルカリ性
・強く、中和に長時間要する。
・内部からの水分はアルカリ性を呈する。
〇表面状態
・巣穴、比較的平滑
・吸込みが大きい。
 
4)押出成形セメント板(主成分:セメント、硅砂、無機質繊維)
 
〇乾燥
・工場養生されているため早い。
〇アルカリ性
・極めて高く、中和が非常に遅い。
〇表面状態
・平滑又は凹凸造形。表面は滑らかで緻密。
・吸い込みは小さい。
 
5)ALCパネル(主成分:セメント、硅砂、石灰、発泡剤)
 
〇乾燥
・早い。
〇アルカリ性
・ほとんどアルカリ性を示さない。
〇表面状態
・粗く、粉化性があり、吸込みが特に大きい。
・下地表面強度が低く損傷を受けやすい。
 
6)石膏ボード(主成分:羊水石膏、ボード用原紙)
 
〇乾燥
・早い。
〇アルカリ性
・ほとんどアルカリ性を示さない。
〇表面状態
・平滑。
・吸込みが非常に大きい。
・水のかかる場所、湿気の多い場所に用いることはできない。
 
7)鉄(鉄鋼)
 
〇表面状態
・素材は、熱間圧延鉄で、表面は黒皮(一般にミルスケールという:10~80μmの酸化鉄層)で覆われている。この黒皮は、硬く脆いため割れを発生し脱落していく。
 このような黒皮の上に塗装すると黒皮毎塗膜が剥がれを起こしその跡が赤くさびてくる。
・鉄のさびは、一般に赤さび。
 
〇下地処理』の概要、注意点
・脆い黒皮を入念に(またはブラスト処理で完全除去)除去する。また、赤さびも入念に除去する。
 
8)亜鉛めっき
 
〇表面状態
・溶融亜鉛めっきと電気亜鉛めっきがある。
・亜鉛めっきは、鉄に被覆する事で鉄より先にさび(白さび)て鉄を保護するために行う防食方法。
・建築素材は、主に溶融亜鉛めっき素材(板厚3㎜以下の亜鉛めっき板と板厚3㎜以上の亜鉛めっき板)が使われる。
・亜鉛めっきのさびは、一般に白さび。
 
〇下地処理の概要、注意点
・板厚3㎜以上の亜鉛めっきで白さび防止で施されているクロメート処理は塗膜の付着を阻害するので注意が必要。
・溶剤脱脂処理や手工具・電動工具などによる白さび、付着物の除去を行ない清浄な面とする。
・エッチングプライマー1種(メタラクトH5)を塗付する方法もある。
・化学的処理(りん酸亜鉛処理またはクロム酸処理)、特にクロム酸処理で剥がれを起す場合があるので注意が必要。
 
9)アルミ
 
〇表面状態
・表面に酸化アルミニウムなどの皮膜が形成されてそれ自体が安定した耐食性を発揮する。
・無垢のアルミニウムは、酸化しやすく表面に白さび(酸化アルミニウム)を生じる。
 
〇下地処理の概要、注意点
・建材用アルミには、いろいろな表面処理がしてあるので塗装の時には、表面処理を確認する必要がある。
・一般的に、溶剤脱脂処理、化学処理(クロメート処理など)、電解処理(アルマイト処理)などが行なわれる。
・アルマイトは陽極酸化被膜で、封孔処理をするものとしないものがあり、種類によっては塗料の付着性が劣る場合がある。
 
10)ステンレス
 
〇表面状態
・ステンレスの表面処理は、研磨を一方向に連続に仕上げあたヘアライン(HL)と鏡面仕上げが一般的。
・塩分を含む環境では、ステンレスに孔食(赤さび)が生じることがある。この場合は、ステンレス塗装システムを塗装するのが良い。
 
〇下地処理の概要、注意点
・溶剤脱脂処理や手工具・電動工具などにより付着物の除去を行ない清浄な面とする。
下地処理
1)RA種、RB種、RC種
 
・RA種、RB種、RC種とは、塗装を補修する際の下地調整の種別のこと。
 
〇ケレンとは?
・改修工事などで建築物の塗装を行う前には、下地のサビを落としたり、劣化した塗膜を除去したりという調整処理が必要となるが、このような下地調整のことをケレン(塗膜剥離)と言う。
・国土交通省の改修仕様書レベルにおいては、ケレンには3種類の判定基準があり、塗装部の錆や損傷の程度によって作業内容が異なる
 
①RA種(全ケレン)
・塗装面だけでなく、下地にまで損傷が生じて劣化している場合。
・既存塗膜を全面ケレン除去する。
②RB種(準ケレン)
・部分的に塗装面と塗膜内部に損傷が生じている場合。
・劣化・損傷した部分の塗膜をケレン除去する。
③RC種(洗浄)
・塗膜表面にのみ劣化がある場合。
・表面を研磨し洗浄する。
 
2)施工方法
 
●研磨
・研磨紙は,JIS R 6251 (研磨布) 及びJIS R 6252 (研磨紙) による。
・研磨紙ずりは,下層塗膜及びパテが硬化乾燥したのち,各層ごとに研磨紙で素地の長手方向に,下層の塗膜を研ぎ去らないように注意して研ぐ。
 
●穴埋め,パテかい及びパテしごき
〇穴埋め
・深い穴,大きな隙間等に穴埋め用パテ等をへら又はこてで押し込み埋める。
 
〇パテかい
・面の状況に応じて,面のくぼみ,隙間,目違い等の部分に,パテをへら又はこてで薄く付ける。
 
〇パテしごき
・穴埋め、パテかいの工程を行ったのち,研磨紙ずりを行い,パテを全面にへら付けし,表面に過剰のパテを残さないよう,素地が現れるまで十分しごき取る。
 
3)鉄鋼面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により、塗膜及び錆等を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分及び錆等を除去し,活膜は残す。
(2)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により,除去する。
(3)油類除去
・溶剤ぶき
(4)研磨紙ずり
・全面を平らに研磨する。
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3)(4)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4)
・RC種(洗浄)  : (2) (4)
 
4)亜鉛めっき鋼面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により、塗膜及び錆等を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分及び錆等を除去し,活膜は残す。
(2)錆の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,除去する。
(3)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により,除去する。
(4)研磨紙ずり
・全面を平らに研磨する。
(5)油類除去
・溶剤ぶき
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3) (5)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4)(5)
・RC種(洗浄)  : (3)(4)
 
5)モルタル面及びプラスター面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により、塗膜及び錆等を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分及び錆等を除去する。
(2)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により,除去する。
(3)ひび割れ部の補修
(4)吸込止め
・合成樹脂エマルションシーラーを全面に塗り付ける。
(5)穴埋め,パテかい
・建築用下地調整塗材(セメント系C-1)又は合成樹脂エマルションパテ(耐水形)で、ひび割れ、穴等を埋めて不陸を調整する。
(6)研磨紙ずり
・パテ乾燥後,表面を平らに研磨する。
(7)パテしごき
・全面にパテをしごき取り平滑にする。
(8)研磨紙ずり
・パテ乾燥後,全面を平らに研磨する。
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4)(5)(6)
・RC種(洗浄)  : (2) (6)
 
6)コンクリート面及びALCパネル面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により、塗膜及び錆等を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分及び錆等を除去する。
(2)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により,除去する。
(3)ひび割れ部の補修
(4a)下地調整塗り
・建築用下地調整塗材(セメント系C-1,2)を全面に塗り付けて平滑にする。
(4b)下地調整塗り
・建築用下地調整塗材(セメント系C-1,2)又は合成樹脂エマルションパテ(耐水形)で、既存の塗膜の除去部分の不陸を調整する。
(5)研磨紙ずり
・乾燥後,表面を平らに研磨する。
(6)パテしごき
・全面にパテをしごき取り平滑にする。
(7)研磨紙ずり
・パテ乾燥後,全面を平らに研磨する。
※ALCパネル面の場合は,工程(4)の前に合成樹脂エマルションシーラーを全面に塗り付ける。
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3)(4a)(5)(6)(7)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4b)(5)
・RC種(洗浄)  : (2) (5)
 
7)コンクリート面及び押出成形セメント板面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により、塗膜及び錆等を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・ディスクサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分及び錆等を除去する。
(2)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないようにワイヤブラシ等により,除去する。
(3)ひび割れ部の補修
(4a)下地調整塗り
・建築用下地調整塗材(セメント系C-1,2)を全面に塗り付けて平滑にする。
(4b)下地調整塗り
・建築用下地調整塗材(セメント系C-1,2)又は合成樹脂エマルションパテ(耐水形)で、既存の塗膜の除去部分の不陸を調整する。
(5)吸込止め
・反応形合成樹脂シーラーおよび弱溶剤系反応形合成樹脂シーラーを全面に塗り付ける。
(6)パテしごき
・反応形合成樹脂パテ(2液形エポキシ樹脂パテ)を使用する。
・全面にパテをしごき取り平滑にする。
(7)研磨紙ずり
・乾燥後,全面を平らに研磨する。
※押出成形セメント板面の場合は,工(4)を省略する。
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3)(4a)(5)(6)(7)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4b)(5)
・RC種(洗浄)  : (2) (7)
 
8)石膏ボード面及びその他ボード面の下地調整
 
(1a)既存塗膜の除去
・既存塗膜を全面除去する。
(1b)既存塗膜の除去
・劣化しぜい弱な部分を除去する。
(2)汚れ,付着物除去
・素地を傷つけないように除去する。
(3)穴埋め,パテかい
・合成樹脂エマルションパテ(一般形)又は石膏ボード用目地処理材(ジョイントコンパウンド)で、釘頭,たたき跡,傷等を埋め,不陸を調整する。
(4)研磨紙ずり
・パテ乾燥後,表面を平らに研磨する。
(5)パテしごき
・全面にパテをしごき取り平滑にする。
(6)研磨紙ずり
・パテ乾燥後,全面を平らに研磨する。
 
〇種別
・RA種(全ケレン):(1a)(2)(3)(4)(5)(6)
・RB種(準ケレン):(1b)(2)(3)(4)
・RC種(洗浄)  : (2) (4)
錆止め塗料塗り
1)鉄鋼面
 
●鉄鋼面錆止め塗料
 
①A種(溶剤系)屋外・屋内
・JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種
有機溶剤を揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料。
 
②B種(水系)屋内
・JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 2種
・水系さび止めペイント
 
●施工工程
(0a)下地調整
・RA種(全ケレン)
(0b)下地調整
・RB種(準ケレン)
(1a)錆止め塗料塗り(下塗り1回目)
・全面に塗り付ける。
(1b)錆止め塗料塗り(下塗り1回目)
・素地露出部分のみ塗り付ける。
(2)研磨紙ずり
(3)錆止め塗料塗り(下塗り2回目)
・全面に塗り付ける。
 
〇種別
・A種(新規、見え掛り部分):(0a)(1a)(2)(3)
・B種(新規、見え隠れ部分):(0a)(1a) (3)
・C種(塗替え): (0b)(1b)(2)(3)
 
2)亜鉛めっき鋼面
 
●亜鉛めっき鋼面錆止め塗料
 
①A種 屋外・屋内
・一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント
有機溶剤を揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料。
 
②B種 屋外・屋内
・変性エポキシ樹脂プライマー(変性エポキシ樹脂プライマーおよび弱溶剤系変性エポキシ樹脂プライマー)
 
③C種(水系)屋内
・水系さび止めペイント
 
●施工工程
(0a)下地調整
・RA種(全ケレン)
(0b)下地調整
・RB種(準ケレン)
(1a)錆止め塗料塗り(下塗り1回目)
・全面に塗り付ける。
(1b)錆止め塗料塗り(下塗り1回目)
・亜鉛めっき露出面のみ塗り付ける。
(2)研磨紙ずり
(3)錆止め塗料塗り(下塗り2回目)
・全面に塗り付ける。
 
〇種別
・A種(新規): (0a)(1a)(2)(3)
・B種(): (0a)(1a)
・C種(塗替え):(0b)(1b)
 
3)塗装面の確認
 
・次によることを標準として,塗付け量又は標準膜厚の確認を行う。
(1)工事現場塗装の場合は,使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定する。
(2)工場塗装の場合は,電磁膜厚計その他適切な測定器具により,膜厚の確認を行う。

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