UR賃貸住宅の工法の変遷、修繕方法(屋根防水、床防水)

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。 ※参考 UR都市機構 ’ING REPORT 建
屋上防水の工法の変遷
(1)陸屋根
 
1)概要
 
・日本住宅公団の発足当初は、現在のようなアスファルト防水材を用いない防水工法であった。
・昭和50年代からは、最上階住戸の”ほてり現象”の改善と防水性・耐久性の向上を目的とした外断熱防水工法となっている。
・平成に入ってからは、改質アスファルト防水工法(トーチ工法)が使用されるようになってきた。
 
2)防水工法の種類、変遷
 
①モルタル防水
・防水剤を普通モルタルに混入し、コテ塗りにした工法。
・施工は容易だが、せん断・引っ張りに対する抵抗力が弱く、乾燥収縮によってクラックが生じる恐れがあり、コンクリート防水やアスファルト防水が使わるようになってからは、ひさし、パラペット笠木に使用される程度。
 
②コンクリート防水
・ひび割れや亀裂を防ぐために、ワイヤーメッシュを敷き込み、コンクリートで防水する方法。
 
③アスファルト防水
・平成に入ってからは、アスファルトルーフィングの質を向上させ、溶融アスファルトルーフィングを用いない改質アスファルト工法(トーチ工法)が使われるようになった。
 
④外断熱アスファルト防水
・屋根スラブの上に防水層を施し、その上に断熱材を設置しコンクリート等で押さえるものでUSD(アップサイドダウン)工法とも呼ばれている。
・外断熱にすることで屋根スラブの熱応力が大幅に低減され、躯体、防水層とも安定した状態を保つことができる。
 
⑤塗膜防水
・常温で塗布してシームレスな防水層を形成できることから、複雑な形状の屋根防水に適している防水工法。
・現在はパラペット・バルコニー等の部分的な防水に使われている。
 
(2)勾配屋根
 
1)概要
 
・アスファルトシングル、化粧スレート、金属板等の屋根葺材がある。
 
2)防水工法の種類、変遷
 
・昭和50年代後半から勾配屋根付きの建物が多く建設されはじめ、特に1985年から2004年に多く建設された。
・屋根葺き材料として化粧スレートが多くみられるが、他にはアスファルトシングル葺き、瓦、鉄板など様々な種類のものが使われていた。
屋根防水の修繕方法
(1)陸屋根
 
1)断熱工法
 
・既に防水層が敷設された屋根の断熱性を向上するための改修工法。
・1985年頃に採用されたが、2011年から屋根断熱の改修は外断熱露出防水工法に移行し、コンクリートブロック工法等は部分的な修繕工事のみに採用されている。
 
①コンクリートブロック工法
・断熱材上部にコンクリートブロック層(25mm厚)を構成する工法
・在来工法やMF工法の壁式構造及びPC工法の中層住宅に用いられてきた。
 
②アスファルト成形板工法
・断熱材上部にアスファルト成形板(6mm厚)を粘着または接着する工法。
・コンクリートブロック工法より軽量であることから、高層住宅等に用いられてきた。
 
2)外断熱露出防水工法
 
・1985年以降、断熱工法による改修を行ってきたが、経年劣化により修繕時期を迎えてきたことから、2011年より断熱工法を用いて改修された屋根の再修繕仕様として外断熱露出防水工法を追加した。
 
①外断熱露出アスファルト防水工法(2011年~)
・断熱工法の断熱材や押え材を撤去し、既存防水の上に新規の断熱材や防水層(改質アスファルトルーフィング)を重ね、トップコート(仕上塗材)や抑え金物で仕上げる工法。
 
②外断熱加硫ゴム系ルーフィングシート防水工法(2014年~)
・外断熱露出アスファルト防水工法同様に、断熱工法の断熱材や押え材を撤去し、既存防水の上に新規の断熱材や防水層(加硫ゴム系ルーフィングシート)を敷設する工法。
 
3)脱気絶縁複合防水工法
 
・防水層に保護コンクリートを施した屋根の表層に、塗膜防水又はシート防水を施す修繕工法。
・温度変化等が大きい屋根面において防水層の破断を防ぐため、防水層と下地を密着させず、下地に含まれる水分を外部に排出するための通気層や脱気装置を設ける工法。
 
〇開放使用している屋根
・屋根への人の出入り等による防水層の損耗を考慮して以下を採用している。
①歩行用のウレタンゴム系塗膜防水工法
②ポリマーセメント系塗膜防水工法等
 
〇非開放で使用を制限している屋根
①歩行用の改質アスファルトルーフィングシート防水工法
②加硫ゴム系ルーフィングシート防水工法
 
(2)勾配屋根
 
①既存シングル改修工法
・既存屋根の劣化が著しく、飛散のおそれがある場合に、既存シングル屋根に改質アスファルトシート防水をかぶせる工法。
・トーチ工法や自着工法がある。
 
②既存スレート(波形)改修工法
・既存屋根の劣化が著しく、飛散のおそれがある場合に、既存スレート(波形)に改修専用屋根材をかぶせる工法。
・改修屋根材はガルバリウム鋼板の両面に塗装(表面は仕上塗装)を施したものを使用する。
床防水の修繕方法
(1)バルコニーの床防水
 
・防水モルタル塗り仕上げ、またはコンクリート素地仕上げになっていたが、経年によるひび割れや防水性の低下等が生じる。
・1989年よりウレタン系またはポリマーセメント系(無機質系)の材料による塗膜防水を行っている。
 
(2)階段室の床防水
 
・バルコニーの床と同様の趣旨で、1992年から実施。
・階段室は日常的に生活通路として使用されていることから、修繕にあたっては、施工後、短時間で歩行できる超速乾性の2液性ウレタン樹脂(超速硬化ウレタン)を、専用のスプレーマシンで吹き付ける工法としている。
・共用廊下を長尺ビニルシートにより改修する場合は、階段室も長尺ビニルシートにより改修することもある。
 
(3)共用廊下の床仕上げ
 
・共用廊下やエレベーターホール等の床については、外壁修繕等にあわせて、防音性や美観性等の向上を図るビニール床シートの新設又は張替えを行う計画的修繕を実施している。
計画修繕
●現在の計画修繕で実施している主な項目
 
〇屋根断熱防水
・全体的に劣化等が著しいもの、もしくは部分修繕が多いものを棟単位で断熱防水を行っている。
 
〇勾配屋根
・屋根仕上材がシングルやスレート(波型)で、全体的に劣化等が著しいものを棟単位で改修を行っている。
 
〇階段室床等の防水
・概ね18年以上経過したもので、モルタル等のひび割れ等が著しく、漏水の恐れのあるものを棟単位で全面塗膜防水を行っている。
 
〇バルコニー床防水
・概ね18年以上経過したもので、モルタル等のひび割れ等が著しく、漏水の恐れのあるものを棟単位で全面塗膜防水を行っている。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください