借地権型マンションの概要
(1)供給状況
・借地権型マンションの数の把握困難。初期に供給されたものに多い。
・定期借地権マンション:1993年~。全国600棟。
(2)借地権型マンションの分類
1)借地権マンションの類型
・旧法借地権マンション
・(新法)普通借地権マンション
・(新法)定期借地権マンション
※旧法(1921年に制定)
※新法(1991年(H4年)8月1日に施行)
2)旧法借地権と(新法)普通借地権
●存続期間
・旧法(堅固建物):当初・30年以上、更新後・30年以上
・新法の普通借地権:当初・30年以上、初回の更新が20年、それ以降は10年
●旧法借地権、(新法)普通借地権の注意点
・更新が法律上認められているとはいえ、借地の残存期間が短くなってくると、市場価値が下落するという問題がある。
・通常金融機関は借地権残存期間を超える期間のローンを組まないので市場において流通しづらくなる。
3)敷地利用権による比較
イ)一般のマンション
・敷地利用権:所有権
・土地の経済的負担:分譲時の土地代金+固定資産税・都市計画税
ロ)普通借地権のマンション
・敷地利用権:普通借地権、更新あり
・土地の経済的負担:一時金+地代(負担総額は所有権マンションより少ない)
ハ)定期借地権のマンション
・敷地利用権:定期借地権、更新なし
・土地の経済的負担:一時金+地代(負担総額は普通借地マンションより少ない)
(3)定期借地権型マンションのメリット・デメリット
●メリット
・マンション購入者は、低価格で好立地なマンションを取得可能。
・底地権利者は、契約更新がなく契約終了時に建物が除却されるため、安心して土地を貸せる。
・契約満了時に建物が除却されることが合意されているとともに、解体費の積立を行っていることから、老朽化マンションが放置されるリスクが少ない。
●デメリット
・区分所有者は、月々の地代や解体費の積立てなどランニングコストが高い。
・契約満了期日が近づくにつれて売却が難しくなる。
・契約満了期日が近づくにつれて区分所有者の管理意識が低下する可能性があり適正な管理を維持することが困難となるおそれがある。
・定期借地権の契約期間終了後の具体的な対応(除却、借地権の再設定、所有権化など)について、実務上の知見が蓄積されていないため、対応に苦慮する可能性がある。
・借地権型マンションの数の把握困難。初期に供給されたものに多い。
・定期借地権マンション:1993年~。全国600棟。
(2)借地権型マンションの分類
1)借地権マンションの類型
・旧法借地権マンション
・(新法)普通借地権マンション
・(新法)定期借地権マンション
※旧法(1921年に制定)
※新法(1991年(H4年)8月1日に施行)
2)旧法借地権と(新法)普通借地権
●存続期間
・旧法(堅固建物):当初・30年以上、更新後・30年以上
・新法の普通借地権:当初・30年以上、初回の更新が20年、それ以降は10年
●旧法借地権、(新法)普通借地権の注意点
・更新が法律上認められているとはいえ、借地の残存期間が短くなってくると、市場価値が下落するという問題がある。
・通常金融機関は借地権残存期間を超える期間のローンを組まないので市場において流通しづらくなる。
3)敷地利用権による比較
イ)一般のマンション
・敷地利用権:所有権
・土地の経済的負担:分譲時の土地代金+固定資産税・都市計画税
ロ)普通借地権のマンション
・敷地利用権:普通借地権、更新あり
・土地の経済的負担:一時金+地代(負担総額は所有権マンションより少ない)
ハ)定期借地権のマンション
・敷地利用権:定期借地権、更新なし
・土地の経済的負担:一時金+地代(負担総額は普通借地マンションより少ない)
(3)定期借地権型マンションのメリット・デメリット
●メリット
・マンション購入者は、低価格で好立地なマンションを取得可能。
・底地権利者は、契約更新がなく契約終了時に建物が除却されるため、安心して土地を貸せる。
・契約満了時に建物が除却されることが合意されているとともに、解体費の積立を行っていることから、老朽化マンションが放置されるリスクが少ない。
●デメリット
・区分所有者は、月々の地代や解体費の積立てなどランニングコストが高い。
・契約満了期日が近づくにつれて売却が難しくなる。
・契約満了期日が近づくにつれて区分所有者の管理意識が低下する可能性があり適正な管理を維持することが困難となるおそれがある。
・定期借地権の契約期間終了後の具体的な対応(除却、借地権の再設定、所有権化など)について、実務上の知見が蓄積されていないため、対応に苦慮する可能性がある。
地代の徴収・改定における懸念点
●地代の徴収、滞納時の対応
・管理費・修繕積立金は”区分所有者”として管理組合に対する負担であり、地代は”借地人”として土地所有者に対する負担なので、本来は両者は別者。
実際に管理組合が徴収して土地所有者に支払っている場合は、管理組合が本来の業務とは別に、借地人たる区分所有者のために便宜上、地代支払事務を代行していると言える。
●地代の改定
・地代改定時の合意形成において、管理組合がどのように関与するかについて明確となっていない。
・管理費・修繕積立金は”区分所有者”として管理組合に対する負担であり、地代は”借地人”として土地所有者に対する負担なので、本来は両者は別者。
実際に管理組合が徴収して土地所有者に支払っている場合は、管理組合が本来の業務とは別に、借地人たる区分所有者のために便宜上、地代支払事務を代行していると言える。
●地代の改定
・地代改定時の合意形成において、管理組合がどのように関与するかについて明確となっていない。
建替え・除却・期間延長の懸念点
(1)建替え時の懸念点
●地主に対する建替承諾
・建替え決議は区分所有法62条の規定で進めることができるが、地主に対する建替え承諾は建替え参加者全員で地主に求めることになり、その後の借地契約の変更(あるいは更新)も建替え参加者全員と地主で契約をすることになる、と言われている。
●マンション建替円滑化法による建替えが困難
・建替えに際して、地主も底地を提供することで所有権マンションにするというニーズがあるものの、現行のマンション建替円滑化法においては、底地の権利者は、建替え事業に参加できる仕組みとなっていない。
・現行法では従前と同じ敷地利用権にしか権利変換できないため、この手続きで対応することができない。
・底地の権利者は、建替え事業に参加することができないため、権利変換の仕組みにより保留床を取得することができないなど、建替え事業に協力するメリットが乏しい。
●過去の実施例
〇建替円滑化法で実施する場合
・権利変換計画の前に、借地権を所有権化する手続きを取る必要がある。
・権利変換計画決定前に区分所有者が底地権を全員同意で取得しておく必要があり、手続きが煩雑。
〇等価交換方式
・等価交換方式による任意の契約で実施している例がある。
※等価交換方式:既存のマンションの権利を事業者に売却する契約と、再取得を希望する区分所有者に対しては再建後のマンションを売却する契約という2つの契約を交わすことで事業を進める手法。
●底地の買取り
・底地権者が自然人の場合、相続による権利複雑化や、敷地の収益性・処分性の観点から、建替えにあたって底借権を売却したいニーズはある。また、事業協力者としても、保留床は、所有権型マンションとして分譲できることが望ましい。
・法整備が十分に進んでおらず、どのような手続き(全員合意が総会決議)で行うか議論が分かれている。
(2)定期借地の場合の契約満了時の対応
1)原状回復、解体
●解体費用
・管理組合が、建物を解体するための積立金を修繕積立金などとは別の特別会計として積み立てているケースが多い。
●解体・原状回復時の懸念点
・建物の解体及び区分所有権の解消に管理組合が関与してよいのか、制度上不明瞭なところがある。
・建物を解体し、更地にして地主に返却することは管理組合の業務ではなく、建物解体及び土地の返却は借地人個人の責任とされているケースがある。
一方で、管理組合の関与を積極的に認め、規約において管理組合の業務として、原状回復や明け渡し、解体準備金の保管を位置づけている例も存在する。
・現在の定期借地権の制度では、借地期間の更新がないため、期間経過後に解体し、更地にして返さないといけないということだけが決まっている。
一方で区分所有者の決議や解体の手続きが決まっていないため、現行制度下では期間経過後に借地権は消滅するものの、解体は区分所有者全員の同意で行わなければならず、占有者が立ち退かない場合には解体できないことが懸念される。
(3)定期借地で建物を解体しない場合の対応
●再契約
・新たに借地契約を締結する。50年以上の期間とする場合は再び定期借地契約を締結することができるし、そうでない場合は借地期間を30年以上とする普通借地契約締結することも可能。
・定期借地権マンションができた当初、借地期間50年で設定されていたが、建物としては、50年以上使用可能であるため、再契約をしたいという需要もある。
・法的には可能であるものの、借地人全員の合意が必要であり、戸数の多いマンションでは困難性が高い。
●地主による建物買取、建物無償譲渡
・建物を取り壊さず原状回復義務を免れる代わりに、建物を土地所有者に無償譲渡して定期借地関係を終了させるという選択肢もある。
●借地人が敷地買取
●借地期間の延長
・土地所有者と定期借地権者間で合意した上で、定期借地契約を期間満了時までに更改し(民法513条)、借地期間の延長をすることも可能。
●土地・建物の同時譲渡
・土地所有者は敷地を、区分所有者は建物を第三者に同時に譲渡することにより、建物を存続させつつ、定期借地関係を終了させる。
●地主に対する建替承諾
・建替え決議は区分所有法62条の規定で進めることができるが、地主に対する建替え承諾は建替え参加者全員で地主に求めることになり、その後の借地契約の変更(あるいは更新)も建替え参加者全員と地主で契約をすることになる、と言われている。
●マンション建替円滑化法による建替えが困難
・建替えに際して、地主も底地を提供することで所有権マンションにするというニーズがあるものの、現行のマンション建替円滑化法においては、底地の権利者は、建替え事業に参加できる仕組みとなっていない。
・現行法では従前と同じ敷地利用権にしか権利変換できないため、この手続きで対応することができない。
・底地の権利者は、建替え事業に参加することができないため、権利変換の仕組みにより保留床を取得することができないなど、建替え事業に協力するメリットが乏しい。
●過去の実施例
〇建替円滑化法で実施する場合
・権利変換計画の前に、借地権を所有権化する手続きを取る必要がある。
・権利変換計画決定前に区分所有者が底地権を全員同意で取得しておく必要があり、手続きが煩雑。
〇等価交換方式
・等価交換方式による任意の契約で実施している例がある。
※等価交換方式:既存のマンションの権利を事業者に売却する契約と、再取得を希望する区分所有者に対しては再建後のマンションを売却する契約という2つの契約を交わすことで事業を進める手法。
●底地の買取り
・底地権者が自然人の場合、相続による権利複雑化や、敷地の収益性・処分性の観点から、建替えにあたって底借権を売却したいニーズはある。また、事業協力者としても、保留床は、所有権型マンションとして分譲できることが望ましい。
・法整備が十分に進んでおらず、どのような手続き(全員合意が総会決議)で行うか議論が分かれている。
(2)定期借地の場合の契約満了時の対応
1)原状回復、解体
●解体費用
・管理組合が、建物を解体するための積立金を修繕積立金などとは別の特別会計として積み立てているケースが多い。
●解体・原状回復時の懸念点
・建物の解体及び区分所有権の解消に管理組合が関与してよいのか、制度上不明瞭なところがある。
・建物を解体し、更地にして地主に返却することは管理組合の業務ではなく、建物解体及び土地の返却は借地人個人の責任とされているケースがある。
一方で、管理組合の関与を積極的に認め、規約において管理組合の業務として、原状回復や明け渡し、解体準備金の保管を位置づけている例も存在する。
・現在の定期借地権の制度では、借地期間の更新がないため、期間経過後に解体し、更地にして返さないといけないということだけが決まっている。
一方で区分所有者の決議や解体の手続きが決まっていないため、現行制度下では期間経過後に借地権は消滅するものの、解体は区分所有者全員の同意で行わなければならず、占有者が立ち退かない場合には解体できないことが懸念される。
(3)定期借地で建物を解体しない場合の対応
●再契約
・新たに借地契約を締結する。50年以上の期間とする場合は再び定期借地契約を締結することができるし、そうでない場合は借地期間を30年以上とする普通借地契約締結することも可能。
・定期借地権マンションができた当初、借地期間50年で設定されていたが、建物としては、50年以上使用可能であるため、再契約をしたいという需要もある。
・法的には可能であるものの、借地人全員の合意が必要であり、戸数の多いマンションでは困難性が高い。
●地主による建物買取、建物無償譲渡
・建物を取り壊さず原状回復義務を免れる代わりに、建物を土地所有者に無償譲渡して定期借地関係を終了させるという選択肢もある。
●借地人が敷地買取
●借地期間の延長
・土地所有者と定期借地権者間で合意した上で、定期借地契約を期間満了時までに更改し(民法513条)、借地期間の延長をすることも可能。
●土地・建物の同時譲渡
・土地所有者は敷地を、区分所有者は建物を第三者に同時に譲渡することにより、建物を存続させつつ、定期借地関係を終了させる。
借地権型区分ワンルームの借地契約の例
(1)事例1
●区分ワンルームの属性
・築年:1987年
・専有面積:21m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:2,000円
●借地契約
〇期間
・2015~2045の30年間
〇更新料
・相続路線価を基準にア)借地権価格の5%、イ)更地価格の3%、のいずれか低い方。 ・2015年の更新時の更新料は約8.8万。
〇地代の年額
・本物件にかかる公租公課(固定資産税・都市計画税)の3倍相当。
・公租公課の増減により地代も増減。
〇賃借権の譲渡手続き
・予め書面によって地主の承諾が必要。地主は本条項の履行がなされる限り、承諾を拒むことはできない。
・売買契約書の写しを地主に交付。
・譲渡価格の3%相当を譲渡承諾料として支払う。
・相続の場合は譲渡承諾料は免除。
●借地権の登記
・借地権の登記:なし
・借地権は、その登記がなくても土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
(2)事例2
●区分ワンルームの属性
・築年:1990年
・専有面積:18m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:1,900円
●借地契約
〇期間
・当初:1988年~2018年の30年間
・更新後:2018~2048年の30年間
〇地代
・当初:8,600円/月
・更新後:1,900円/月
・本物件にかかる公租公課(固定資産税・都市計画税)の3.5倍を限度に改訂可能。
〇更新料
・10.5万
〇賃借権の譲渡手続き
・予め地主の承諾書を得る。
・譲渡価格の3%相当を譲渡承諾料として支払う。
・相続の場合は譲渡承諾料は免除。
(3)事例3
●区分ワンルームの属性
・築年:1988年
・専有面積:21m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:4,800円
●借地契約
〇期間
・2018~2048の30年間
〇更新料
・2015年の更新時の更新料は約10数万。
〇賃借権の譲渡手続き
・地主に届け出る。
・名義書替え料として譲渡金額の1%を支払う。
●区分ワンルームの属性
・築年:1987年
・専有面積:21m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:2,000円
●借地契約
〇期間
・2015~2045の30年間
〇更新料
・相続路線価を基準にア)借地権価格の5%、イ)更地価格の3%、のいずれか低い方。 ・2015年の更新時の更新料は約8.8万。
〇地代の年額
・本物件にかかる公租公課(固定資産税・都市計画税)の3倍相当。
・公租公課の増減により地代も増減。
〇賃借権の譲渡手続き
・予め書面によって地主の承諾が必要。地主は本条項の履行がなされる限り、承諾を拒むことはできない。
・売買契約書の写しを地主に交付。
・譲渡価格の3%相当を譲渡承諾料として支払う。
・相続の場合は譲渡承諾料は免除。
●借地権の登記
・借地権の登記:なし
・借地権は、その登記がなくても土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
(2)事例2
●区分ワンルームの属性
・築年:1990年
・専有面積:18m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:1,900円
●借地契約
〇期間
・当初:1988年~2018年の30年間
・更新後:2018~2048年の30年間
〇地代
・当初:8,600円/月
・更新後:1,900円/月
・本物件にかかる公租公課(固定資産税・都市計画税)の3.5倍を限度に改訂可能。
〇更新料
・10.5万
〇賃借権の譲渡手続き
・予め地主の承諾書を得る。
・譲渡価格の3%相当を譲渡承諾料として支払う。
・相続の場合は譲渡承諾料は免除。
(3)事例3
●区分ワンルームの属性
・築年:1988年
・専有面積:21m2
・土地権利:旧法賃借権
・借地料:4,800円
●借地契約
〇期間
・2018~2048の30年間
〇更新料
・2015年の更新時の更新料は約10数万。
〇賃借権の譲渡手続き
・地主に届け出る。
・名義書替え料として譲渡金額の1%を支払う。