各種リスクを考慮したキャッシュフローシミュレーションを作成しています。ローンを使って築浅物件を購入し、その後、繰上げ返済した場合のシミュレーションを行いました。繰上げ返済をすると利払いが減るといったプラス効果がある反面、所得が増える分所得税の支払が増えるといった影響もあるので注意が必要です。
シミュレーションはこちら⇒税金、各種リスクを考慮したキャッシュフローシミュレーション
繰上げ返済すると利払いが少なくなるため得をすると思いがちですが、不動産所得が増える分税金も増えるためその影響も考慮する必要があります。
そして所得が増えるということは、所得税率による影響もより受けるようになります。
どちらの影響が大きいのか?
これは定量的にシミュレーションして判断するしかありません。
いろいろな評価の仕方があるかと思いますが、私が作成しているシミュレーションではどうなるか調べてみました。
●物件の条件
・築浅物件
・物件価格 1,500万
・借入金 1,425万、借入期間30年
・金利 当初3%、3年後5%、5年後7%
・自己資金 135万
(頭金5% 75万、諸経費60万)
・家賃 8.5万
・管理費・修繕積立金 0.8万、0.2万の計1万
・賃貸管理手数料 5%
●各種経費、リスクを考慮したキャッシュフローシミュレーション
(1)シミュレーションの条件
①家賃
・4年おきに入居者入れ替わり
・次の賃料発生まで2ヶ月。
・次の家賃は4%減
・リフォーム費用は5万円
②修繕積立金
・10年後に+2,000円
・20年後に+3,000円
③固定資産税
・年5万と想定
④減価償却
税金を計算するのに固定資産税を使います。
とりあえず、建物が800万として下記と仮定します。
・耐用年数 40年
・定額の減価償却費 20万/年
⑤比較対象の投資
比較対象として自己資金(購入時の135万と繰上げ返済分)を1%で単利運用した場合の収支も計算しました。
⑥所得税率
5%と33%で計算。
⑦繰上げ返済
繰上げ返済のサイクル 5年おきに行う
繰上げ返済の額 100万ずつ
繰上げ返済手数料 1回あたり2万
※更新料
・更新料は管理費を除いた家賃に対する1ヵ月で、半分は賃貸管理会社に報酬として支払う。
・退去のタイミングによってもらえたりもらえなかったりするので、とりあえず3年に1回もらえるものとして計算しています。
(2)シミュレーション結果
①金利上昇なしの場合
下記表のようになりました。
税率 繰上有無 |
通年収支 | 自己資金 (差額) |
比較収支 (差額) |
---|---|---|---|
5% 無 |
-16万 | 135万 (-151万) |
178万 (-194万) |
33% 無 |
-219万 | 135万 (-354万) |
178万 (-397万) |
5% 有 |
609万 | 657万 (-48万) |
806万 (-197万) |
33% 有 |
374万 | 657万 (-283万) |
806万 (-432万) |
自己資金に対する差額で考慮すると、税率5%では、繰上げ返済したほうが100万ぐらい収支がプラスになります。一方税率33%では税負担の影響が大きくなるため、70万ほどのプラスに留まります。
自己資金(購入時資金+繰上げ返済額)を単利1%で運用した場合との差額で考慮すると所得税率5%ではトントン、33%ではかえってマイナスとなってしまいました。
②金利上昇ありの場合
今回の繰上げ返済の方法ではあまりメリットがなかったため、金利上昇(3年後に+2%、5年後にさらに+2%)した場合について比較してみました。
比較対象の投資については、5年後にトータルでプラス4%になるということで、単利4%で自己資金(購入時資金+繰上げ額)を運用した場合と比較してみます。
税率 繰上有無 |
通年収支 | 自己資金 (差額) |
比較収支 (差額) |
---|---|---|---|
5% 無 |
-982万 | 135万 (-1117万) |
308万 (-1290万) |
33% 無 |
-1072万 | 135万 (-1207万) |
308万 (-1380万) |
5% 有 |
-120万 | 681万 (-801万) |
1286万 (-1406万) |
33% 有 |
-230万 | 681万 (-911万) |
1286万 (-1516万) |
自己資金の差額で判断すると、金利上昇によって不動産所得が減少しているので利払い減少による効果の方が税負担よりも大きく、繰上げ返済のメリットが大きく出ています。
ただし、自己資金(購入時資金+繰上げ額)を単利4%で運用した場合と比較すると繰上げ返済によって、かえって大幅に収支が悪くなっています。
これはかなり以外の結果ですね。ローンの金利が今からプラス4%になっているということは、通常の預金金利も4%ぐらいになっているはずと思って、このような条件にしたのですが、繰上げ返済しないでそのまま普通預金で運用したほうが収支が良くなる?という事になってしまいます。
ローンの契約時の金利が3%としていますが、これがもう少し高い金利の場合は、もっと繰上げ返済の効果は高くなるかと思いますし、繰上げ返済のタイミングをもっと早い時期に行っても効果は高くなります。
ただそれでも今回の結果にはちょっと違和感があります。何か間違っているかもしれません。ちょっといろいろ考えてみようと思います。