シート防水の工法の種類、改修方法

合成高分子系ルーフィングシート防水の概要、工法の種類、施工方法、改修方法についてまとめました。  
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合成高分子系ルーフィングシート防水の概要
1)合成高分子系ルーフィングシート防水
 
・一般にシート防水と総称され、通常、厚さ1~2mmのルーフィングシートを下地に張り付けて構成される。
・原則として、工場で一定の厚さと幅に成形された1枚のシート防水材を接着剤・固定金具などを用いて下地に固定し、露出防水層を形成する。
 
2)シート防水の特徴
 
〇施工性
・品質管理された工場において、シート状に製造されているため、物性・寸法(厚さ・幅・長さ)などのばらつきが少なく、均質な防水層を形成する。
 
・一層のためアスファルト防水と比べて工程が少なく、工期短縮が図れるほか、工程管理が容易になる。
 
〇性能
・合成ゴム又は合成樹脂を主原料としており、耐候性・耐水性・耐熱性等に優れるため、露出仕様でも優れた耐久性を発揮する。
・ルーフィングシートとよく伸びる接着剤を組合わせて防水層を構成すると、下地の挙動に対して優れた追従性を湿す。下地の亀裂に強い
 
〇改修
・改修工事の際、既存防水層を撤去せず、新規シートをかぶせて施工できる。
 
〇デメリット
・ルーフィングシートは厚さが薄いので、外からの飛来物により損傷を受けやすい。
 
3)シート防水の種類
 
①加硫ゴム系シート防水
・EPDM、IIRを主成分として、1~2mm程度の厚さで成形・製造し、現場で溶剤系の接着剤を用いて下地に接着させる工法。
・加硫という工程を経てゴムの分子相互を柔らかに結合させ、網目構造としている。
・シート同士の接合においては、接着剤のみではなく、ジョイント用のシールテープも補助的に用いている。
 
②塩化ビニル樹脂系シート防水
・塩化ビニル樹脂に可塑剤やその他の成分を添加し、1.5~2mm程度の厚みに成形した防水材で、接着剤を用いて下地に固定する接着工法とディスク板等の固定部材等を介して下地に固定する機械的固定工法がある。
・熱可塑性のため、シート同士の接合は熱融着や溶剤溶着で一体化でき、水密性の確保が確実になる。
・塗装仕上げが必要なく、機械的固定工法の場合は、既存防水材にとらわれず特別な下処理を施すことなく施工が可能。
 
4)接着工法と機械的固定工法
 
●接着工法
・プライマー、接着剤を用いて、下地全面にシートを接着させる工法。
・冷工法で比較的急勾配の屋根から変形屋根に至る広範囲の屋根施工可能。
・強風による影響を受けにくく、耐風圧性に優れている。
・下地追従性に優れており、ムーブメントの大きいALCやPCa(プレキャストコンクリート)の屋上でも多くの実績がある。
・かぶせ工法による実績も多く、改修にも適した工法。
・下地の湿気の影響により膨れが生じることがあり、湿気の影響が予想される場合は、脱気工法を採用する必要がある。
 
●機械的固定工法
・固定ビスを用いて下地へ固定金具を固定し、固定金具部で部分的に防水層を固定する工法。
・下地の湿気による影響を受け難く、多少湿潤な下地でも施工可能であり、工期短縮が可能な工法。
・下地に防水層を接着する必要がないため下地調整・補修が軽微ですむことから、改修にも適した工法。
・風荷重を考慮した固定ビスピッチの設計が不可欠であり、下地の固定強度把握、仕様に沿った施工が必要となる。
加硫ゴム系シート防水
1)加硫ゴム系シート防水の特徴
 
・軽量で柔軟性を有し、屋根の軽量化がはかれ、異形屋根にも適している。
・引張強さ、伸び特性が大きく、亀裂追従性、繰返し伸縮などに優れている。
・防水層としての厚みが薄いため、厚塗り塗装材を保護層とすることにより、軽歩行が可能となる。
 
2)材料
 
●加硫ゴムシート
・合成ゴム(EPDM、IIR)に補強材(カーボンブラックなど)、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤などを加えて混練し、押出機orカレンダーロールでシート状に成型(複合タイプは、基布などを積層)した後、加硫缶やロートキュアーで加熱処理して製造したシート。
 
●プライマー
・現場打ちコンクリート、PCa(プレキャスト鉄筋コンクリート部材)などに使用する。
・下地への浸透性を高め、接着剤の接着力を向上させる。
・材質:クロロプレンゴム系、ブチルゴム系
 
●下地用接着剤
・下地~シート、下地~断熱材~シートの接着に使用する。
・防水シートを下地に固着させ、水密性を維持させる。
・材質:クロロプレンゴム系、ブチルゴム系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系
 
●シート接合用接着剤
・シート~シートの接合部に使用する接着剤で、接合部を強固にし、長期にわたり防水層を形成させる。
・材質:クロロプレンゴム系、ブチルゴム系
 
●仕上塗料
・建築物の美観を向上させる。
・遮熱効果のある塗料もあり、建物の省エネに効果がある。
・材質:エチレンプロピレンゴム系、アクリル樹脂系
 
●軽舗装材
・シートの露出仕様の軽歩行用で、ベランダの防水層などに使用する。
・シートの保護、建築物の美観を向上させる。
・材質:アクリル樹脂系、エチレン酢酸ビニル樹脂系
 
●脱気装置
・下地スラブの湿気の排出用に使用する。
・シートのふくれ防止用として、デッキプレート下地などの乾燥困難な下地、及び改修工法に用い、下地水分の防水層外部への排出及びシートのふくれを防止させる。
・材質:ゴム・金属・プラスチックなどの脱気筒、脱気盤、通気テープ(ポリエステル等)、通気シート(ポリエステル不織布、ポリエチレンフォーム)
 
3)施工工程の例
 
〇接着工法
①プライマー塗り
②接着剤塗布
③加硫ゴム系ルーフィングシート(1.2mm)張付け
④仕上塗料塗り
塩化ビニル樹脂系シート防水
1)塩化ビニル樹脂系シート防水の特徴
 
・ルーフィングシート相互は熱融着あるいは溶剤溶着で接合でき、一体化する。
・防水層は自己消火性を有しており、延焼しにくい。
・保護材不要で、軽歩行ができる施工も一般化している。表面強度があるので軽歩行用として使用される。
・シートのデザイン性や接着剤で張るだけといった施工性に優れているが、複雑な形状や狭い場所では、シート同士のジョイントがたくさん発生する。
 
2)材料
 
●塩化ビニル樹脂系シート
・塩化ビニル樹脂に、可塑剤、安定剤、着色剤を加え混練し、カレンダーロールや押出機でシート状に成形する。
 
●接着剤
・接着工法に用いる合成ゴム系、合成樹脂系の接着剤。
・溶剤系と水系のものがある。
 
●溶着剤
・シート同士やシートと樹脂被覆した固定金具との接合に用い、塩化ビニル樹脂表面を溶解させて溶着する溶剤。
・成分はテトラヒドロフランで第二種有機溶剤。
 
●液状シール材
・シートと同材質の塩化ビニル樹脂を溶剤に溶解したシール材で、シート相互接合部のシート端面に塗布し、水密性を高めるために用いる。
 
3)施工工程の例
 
●接着工法
①接着剤塗布
②塩化ビニル樹脂系ルーフィングシート(2.0mm)張付け
・塗布した接着剤のオープンタイムを確認後、ローラー等で転圧して接着。
・シートの重ね幅は,幅方向,長手方向とも40mm以上とする。
・接合部は熱風融着又は溶剤溶着により接合し,その端部を液状シール材でシールする。
 
※増張り、立上り部,出入隅角の補強
・ルーフィングシート施工後に,成形役物を張り付ける。
 
●機械的固定工法
①塩化ビニル樹脂系ルーフィングシート(1.5mm)の固定金具による固定
 
※増張り、立上り部,出入隅角の補強
・立上り部は,その端部にテープ状シール材を張り付けたのちに固定金具を固定し,ルーフィングシートを固定金具に対して溶剤溶着又は熱風融着により張り付け,末端部には不定形シール材を充填する。
シート防水の改修工事
●概要
 
・磨耗や退色、欠損、ふくれ、剥離などの劣化状況を確認後、トップコートの再塗装や全面更新(撤去工法)を行う。
・トップコートは、防水層が光や風雨などによる磨耗によって劣化するのを防ぐ。
・トップコート自身も劣化するため、定期的にトップコートの再塗装を行う。
 
●既存の露出防水層非撤去(かぶせ工法)
 
・既存露出防水層の損傷箇所,継目等のはく離箇所,浮き部分等は,切除し,ポリマーセメントモルタル等で平滑に補修する。ただし,既存防水層の表面が著しく劣化していたり,既存防水層と下地の接着強度が不十分で,ふくれや浮きが全体にわたっている場合は,適宜対応する。
 かぶせる防水が接着工法の場合は、防水層の浮き、はがれ部分は、切開して接着剤を用いて張り付ける。
 
●既存の露出防水層撤去(撤去工法)
 
・既存の露出防水層を撤去し、スラブコンクリート上にシート防水を形成。
・コンクリート面等のひび割れ部は,ポリマーセメントモルタルで補修する。ひび割れ幅が2㎜以上の場合は,Uカットのうえポリウレタン系シーリング材等を充填する。
・下地の欠損部,支障のある浮き部及びぜい弱部等の処置は,ポリマーセメントモルタルで平滑に補修する。

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