エレベーターの種類と特徴、構成要素の概要

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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ロープ式エレベーター
1)トラクション式・機械室あり
 
・ロープの一端をかご、他端を釣合おもりに締結し、綱車とロープ間の摩擦により駆動する。
・高層ビルに適している。
 
〇長所
・ロープのかけ方が単純。
・釣合おもりがあるため、モーター容量が比較的小さい。
・高速にも適する。
 
〇短所
・機械室が必要。(屋上に設置するのが一般的)
・屋上機械室があるため、北側斜線等の規制、景観面、建物への過重負担。
 
2)トラクション式・機械室なし
 
・巻上機、制御盤を昇降路内の上部、下部、ピットなどに設置することで機械室をなくしたタイプ。
・メーカーにより種々のタイプがある。
・1998年に旧法第38条の大臣認定を取得以降、一般エレベータの主流になっている。
・垂直荷重は、ガイドレールを介してピットで支持、のタイプが多い。
 
〇長所
・屋上機械室が不要なため、建築側の設計自由度が増す。日影規制への対応が良い。
・建築側での機械室分のコストが削減できる。
 
〇短所
・ロープのかけ方が複雑であり、超高層ビルにはやや不適、また、非常用エレベーターには適用は不可。
・大容量になると、ロープ本数も増え、昇降路面積が大きくなる傾向がある。
 
3)巻胴式
 
・かごに結ばれたロープを巻胴(ドラム)で巻取り、巻戻してかごを昇降させる。
 
〇長所
・構造が単純であるので、小規模な建物に適する。
・屋上機械室が不要。
・釣合おもりが不要。
 
〇短所
・釣合おもりが無いため、モーター容量が比較的大きい。
・巻胴の直径により、低昇降行程しか対応できない。
油圧式エレベーター
・一般的に最下階に機械室を設置し、油圧ジャッキの圧力油の増減によりかごを昇降させる方式。
・近年の技術力の向上により、展望用エレベーター等への採用が増加しているが、マンションでの採用例は少ない方式。
 
1)直接式
 
・電動ポンプでタンク内の油の圧力を制御してシリンダー内のブランジャー(シリンダー内を往復する円筒形のもの)を上下させて、かごを昇降させる。
・プランジャーがかごの真下に直結されており、直接かごを昇降させる。
・かごと油圧ジャッキが直接結合されており、油圧ジャッキの動きが直接かごに伝達される。
 
〇長所
・機械室内の油圧パワーユニットと昇降路内の油圧ジャッキが圧力配管でつながれているので、建物内で機械室の配置が自由に設計できる。
・構造が単純で昇降路が比較的コンパクト。
・周囲の機器が少なく、展望用エレベータなどのデザイン重視の用途に適する。
・建物上部への荷重がかからない。
・かごの積載量が大きく、重量物の運搬に適している。
 
〇短所
・シリンダーを地下に埋設する必要がある。
・ブランジャー長さに制限があり、低昇降行程にしか対応できない。
・モーター容量が比較的大(釣合おもりがない)で、消費電力も大。
・油圧ジャッキを用いているので、昇降行程および速度に限界がある。
・油の取り扱いに注意が必要。
・機械室からの騒音・振動に注意が必要。
 
2)間接式
 
・電動ポンプでタンク内の油の圧力を制御してプランジャーを上下させるのは直接式と同じだが、プランジャー頂部の綱車を介して掛けたロープにより間接的に昇降させる。
・日本国内では、油圧エレベーターの9割以上が間接式を採用している。
 
〇長所
・機械室内の油圧パワーユニットと昇降路内の油圧ジャッキが圧力配管でつながれているので、建物内で機械室の配置が自由に設計できる。
・上部に機械室がないので、北側斜線等の規制や景観に有効。
・建物上部への荷重がかからない。(フォークタイプ)
・大容量対応が比較的容易(アンダースラングタイプ)
 
〇短所
・直接式よりはかごの昇降行程が長くできるが、それでも5~6階床程度。
・モーター容量が比較的大(釣合おもりがない)で、消費電力も大。
・油圧ジャッキを用いているので、昇降行程および速度に限界がある。
・油の取り扱いに注意が必要。
・機械室からの騒音・振動に注意が必要。
その他のエレベーター
1)リニアモーターエレベーター
 
・回転運動を直線運動に置き換えるリニアモーターを利用したエレベーター。
・一次側をつり合いおもりに内蔵し、二次側を昇降路の全長に伸ばすことで、巻上機を設置する必要がなくなった。
・現在のリニアモーター式は「究極の機械室なしタイプ」だが、次世代のリニアモーター式エレベーターとして、つり合いおもりに内蔵されている一次側を、かごに内蔵する研究が進められている。
 この方式が実現すれば、昇降路内に伸ばした二次側にそって一次側の「かご」が移動することになるので、ロープが不要になるほか、水平・垂直・カーブなど、かごの移動方向も制約がなくなり、エレベーターの概念が根底から覆ることになる。
・機械室レスエレベーターの一種であるが、機械室レスエレベーターがすべてリニアモーターエレベーターとは限らない。
 
2)回生電力備蓄システムエレベーター
 
〇回生電力とは?
・電動機を回転させ速度を上昇させるには、電力を供給しなければならないが、回転が維持されている状態から減速に推移する過程では、電動機は発電機となって電力を生み出す。→これを回生といい、回生によって発生した電力は回生電力と呼ばれる。
 
〇回生ブレーキ
・回生による発電電力が系統に戻り、接続された負荷に供給されると、供給元となる電動機に強い制動効果を得られ、ブレーキとして作用する。
 これは回生ブレーキまたは回生制動と呼ばれ、電車やエレベーターなど、強い慣性運動を行う車両や設備のブレーキの一種として活用されている。
 
〇回生電力を活用したエレベーター
・回生によって発生した電力は、系統の電線を伝わって戻り、接続されている他の負荷に供給されることで有効利用されることになり、省エネルギーの観点から非常に有効とされている。
・回生電力を活用したエレベーターは、総合的な消費電力を25%低減できるなど、高い省エネ効果を発揮する。
 
●回生電力備蓄システムを利用したエレベーター
・エレベーターの運転状況により発生する回生電力を建物内で有効利用することで省エネルギー化を図っている。
・エレベーターは、積載荷重の約50%でつりあうように重りが搭載されており、満載のかごを上昇させる場合、及びだれも乗っていないかごを下降させる場合など、つりあいが崩れた状態での動作では、より大きな電力を必要とする。
 一方、だれも乗っていないかごを上昇させる場合や、満載のかごを下降させる場合は、つりあい重りによって上昇や下降が行われるため、電動機に負荷がほとんど発生せず、回生電力が発生する。この電力を蓄電池に充電したり、系統に戻して消費することで電力の損失を最低限に抑えている。
 
〇課題
・回生を有効利用するためには負荷の供給先が必要。
 小規模な建物に設けられるエレベーターでは、回生電力が発生しても消費するための負荷がなく、電力会社の系統にまで影響を及ぼすおそれがあり、回生機能を設けない事例も多い。
 
・小規模建物ではエレベーターが小型で安価なため、これに蓄電池を搭載するコストが割に合わないということも考えられ、回生電力を利用せず、抵抗器で熱として消費するという仕組みも存在する。
主要構成要素の概要
1)巻上機
 
〇歯車なし巻上機(電動機の回転を、歯車を介さずに、直接綱車に伝達する方式)
・電動機軸に駆動綱車とブレーキドラム又はディスクブレーキを直結した構造。
 
〇歯車つき巻上機(電動機の回転を、減速歯車を介して綱車に伝達する方式)
・電動機の回転をウォームギヤ又はヘリカルギヤにより減速して、駆動綱車に伝える。
・停電時に手動により容易にかごを上又は下に移動できる構造。
 
※ウォームギア方式
・1980年代から使われ始めた。
※ヘリカル(平行軸)ギア方式
・1990年代から使われ始めた。
・ウォームギアより効率がよいため省エネ効果がある。
 
2)電動機
 
〇制御方式
・可変電圧可変周波数制御方式。
 
※可変電圧可変周波数制御方式(インバーター制御方式)
・交流をいったん直流に変換し、再度インバーター装置によって任意の周波数の交流に変換する方式のもので、負荷に見合ったトルクを確保しながら交流エレベーターの速度を超低速から定格速度まで連続的に制御することができる。
・従来の直流帰還制御方式のものに比べて、消費電力を約50%低減できる。
 
3)ブレーキ
 
〇二重系
・常時作動型二重系ブレーキ又は別のブレーキ装置により構成する待機型二重系ブレーキ。
・かごの下降時において減速又は停止させ、その状態を保持する能力を備える。
 
〇ブレーキシュー
・強力な発条力により、ブレーキドラム又はディスクを把握でき、その力は調整できる構造。
 
4)電源盤及び制御盤
 
〇機械室なしの場合
・昇降路内又は乗場に設ける。
 
〇地震時管制運転
・地震発生時にエレベーターを地震感知器の作動により、早期に最寄階に停止させ、乗客の安全確保を図る運転機能。
※地震時管制運転
・一般にS波(横波)に対する制御が行われる。
・S波の感知器のレベルは”特低(80gal)”と”低(150gal)”の2段に設定されることが多い。
・”特低”を感知した場合は、自動的に最寄階に停止するが、約1分後に自動復帰し通常運転に戻る。
 ”低”を感知した場合は、自動的に最寄階に停止するが、自動復帰することはなく、点検後異常がないことが認められたら、手動で切り替える。
 
〇火災時管制運転
・火災発生時にエレベーター内の乗客を速やかに避難階に帰着させ、エレベーター内の乗客を避難させる運転機能。
 
〇停電時救出運転
・停電によりエレベーターが、停止した場合にバッテリー電源により、エレベーターを低速で走行させ最寄階へ着床させる運転機能。
 
〇閉じ込め時リスタート運転
・地震により安全装置等が作動したことで、エレベーターが階間に停止した場合、安全装置が正常に復帰後低速で最寄階に行きドアを開放する機能。
 
〇緊急地震速報連動運転
・気象庁から配信された緊急地震速報により、事前に地震に備える機能。
 
〇自動診断仮復旧運転
・地震により、かごが運転休止となった場合に人身被害や損害等の危険性を自動又は遠隔で診断し、二次災害のおそれがないと判断された場合にエレベーターを仮復旧させる機能。
主要構成要素の変遷
1)~1980年
 
〇機械室
・機械室ありが主流
〇巻上機
・歯車付きが主流
〇ブレーキ
・ドラム式が主流。非二重系(1組)
〇制御盤
・リレー系主体
 
2)1980~1990年
 
〇機械室
・機械室ありが主流
〇巻上機
・歯車付きが主流
〇ブレーキ
・ドラム式が主流。非二重系(1組)
〇制御盤
・リレー系主体、電子系あり
 
3)1990~2000年
 
〇機械室
・機械室レスは1998年以降から。
〇巻上機
・機械室ありでは歯車付きが主流。
・機械室なしでは歯車なし。
〇ブレーキ
・機械室ありは、ドラム式、非二重系(1組)
・機械室なしは、ディスク型/ドラム式。二重系(独立した2組)が主流。非二重系もある。
〇制御盤
・電子系が主体、リレー系もあり
 
4)2000年~2010年
 
〇機械室
・機械室なしが主流
〇巻上機
・歯車なしが主流。
・設置場所は、昇降路の側部の上部付近又は下部付近、ピット部分などあり。
・薄型が主流。
〇ブレーキ
・ディスク型/ドラム式。
・二重系(独立した2組)が主流。非二重系もある。
〇制御盤
・電子系主体。薄型が主流。
・運転制御回路にマイクロプロセッサー、基盤等を用いている。
ロープ式機械室レスエレベーターの構造
●機械室レスエレベーターの概要
・1998年に登場。
・最小限の電力で駆動するロープ式エレベーターの特性はそのままに、昇降路上部の機械室を不要としたもの。
・制御盤を分割小型化し昇降路内に分散配置するとともに、巻上機も薄型又は小型化して昇降路内に納めた。
・建築上部に荷重がかからず昇降路を自由に設計できる。
・薄型巻上機を昇降路上部に設置するや小型巻上機を昇降路ピット内に設置する方式がある。
・モーターは一般に永久磁石同期電動機(パーマネントマグネットモーター。PMモーター)を用いる。
・制御盤は、昇降路内又は乗場三方枠内の戸袋内に収納する。
・ギアレス巻上機とインバーター制御方式が採用され、省スペースと省エネが図られている。
・調速機が作動して、エレベーター制御が行われた場合の復帰操作は必ず手動で行われる。
 
●機械室レスエレベーターのメリット
・ロープ式の場合、一般的に機械室は屋上に設置する必要があったが、それが不要になることで、建築物の屋上にあった突起物(機械室)がなくなる。
・北側斜線制限・日影規制(日影による建築物の高さ制限)の影響を受けなくなる。
・建築物上部に荷重がかからなくなる。
・屋根部分を自由にデザインできる。
 
●主要機器上部設置方式のメリット
・制御装置と巻上機を高い位置に置くことで、災害などで万が一昇降路に水が流れ込んだ場合でも、駆動部や制御装置が直接水にさらされにくい。
 
●駆動部、巻上機
・徹底したコンパクト化によって、昇降路頂部への設置を実現している。
 
●制御装置
・昇降路内に設置するための薄型でコンパクトに設計されている。
機械室レスエレベーターの構造の規定
※平成12年建設省告示1413号第1第3号”特殊な構造又は使用形態のエレベーター及びエスカレーターの構造方法を定める件”
 
〇換気設備
・駆動装置及び制御器を設ける場所には、換気上有効な開口部、換気設備又は空気調和設備を設けること。
 ただし、機器の発熱により駆動装置等を設けた場所の温度が7℃以上上昇しないことが計算により確かめられた場合においては、この限りでない。
 
〇駆動装置等の設置位置
・駆動装置等から昇降路の壁又は囲いまでの水平距離は、保守点検に必要な範囲において50㎝以上とすること。
 
〇制御器を昇降路内に設けるもの
・非常の場合に昇降路外において、かごを制御することができる装置を設けること。
 
〇駆動装置等を昇降路の底部に設けるもの
・保守点検を安全に行うことができるよう次に掲げる装置を設け、かつ、かご又は釣合おもりが緩衝器に衝突した場合においても駆動装置等に触れるおそれのないものとすること。
①昇降路外において、かごの降下を停止することができる装置
②昇降路内において、機械的にかごの降下を停止することができる装置
③非常の場合に昇降路内において、動力を切ることにより、かごの降下を停止することができる装置(高さが1m以上の退避上有効な空間が確保されたものにあっては設けないこととすることができる。)
安全装置の概要
1)機械室ありの場合の安全装置
 
〇戸開走行保護装置
・2009年、エレベータのブレーキの二重化が法令上義務付けられた。
・ロープ式エレベータには常時作動型または待機型がある。
①常時作動型ブレーキ
・エレベータの通常ブレーキとは別にもうひとつブレーキ(同じ構造)を設ける仕組み。
②待機型ブレーキ
・エレベータの通常ブレーキとは別にブレーキが利かなかったときに作動する機器を設ける仕組み。
 
〇リミットスイッチ、
 
〇ファイナルリミットスイッチ
・エレベータが正規の減速装置がトラブル等で作動しなかった場合に、エレベータが行き過ぎないよう減速停止させる装置。行き過ぎ制限スイッチ。
 
〇過速安全スイッチ、
 
〇非常止め装置
・エレベータの降下速度が著しく加速した場合には調速機が検出し、レールを強い力で挟みエレベータを停止させる装置。
 
〇緩衝装置
・エレベータの各種安全装置が正常に作動せず、エレベータが下降して昇降路の底に衝突した場合に、エレベータのショックを和らげるための装置。
・かご及び釣合おもりの直下に設けるものとし、緩衝器はエレベーターピット床に取付けた鋼製台に取付けるものとする。
・ばね緩衝器、油入緩衝器などがある。
 
〇インターホン
 
〇ピット内安全スイッチ
・ピット内で作業するときなどに使用するスイッチ。
・全ての運転ができないようにするスイッチで、安全回路の一つ。
「切」側に切替えることにより運転ができなくなる。
 
〇かご上安全手すり
 
2)機械室なしの場合の安全装置(上記1)に加えて)
 
〇手動ブレーキ開放装置(天井救出口を設けない場合)
・救出用。
・ブレーキを開放する場合、最初に少しだけ開放し、かごの移動方向を確認した上で、ブレーキとブレーキ開放を小刻みに繰り返して、少しずつゆっくりとかごが移動するように操作する。
 
〇制御盤扉スイッチ
・のりばドアを電動で戸開閉させるスイッチ。
・かごがドアゾーンにいる場合に操作できる。
 
〇ピット作業台スイッチ
 
〇ピット冠水時管制運転装置
・ピットに冠水センサーを設け、冠水を検出すると直ちに最下階以外の階で運転を休止する運転機能。
・水害でエレベータピットが冠水するような場合でも、センサーが水量を検知し、エレベータを最寄階で停止させ、利用者をエレベータの外へ誘導、2階以上の階で自動停止するシステム。
・利用途中のピット冠水による閉じ込め故障はもとより、エレベータのかご下機器が水に浸かることにより故障範囲が拡大する可能性を低減する

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