マンションの外壁・躯体の劣化・調査診断

マンションの外壁・躯体の劣化・調査診断に関する技術情報をまとめました。
 
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外壁・躯体のひび割れの調査方法
●乾燥収縮によるひび割れ
・コンクリートには硬化した後も内部に多くの水が存在。
→コンクリートが乾燥してこの水が蒸発
→その水の蒸発量に応じた体積の減少が生じ、その際コンクリートには収縮力が働くが、コンクリートはこの収縮力に応じる引っ張り強さがかなり小さいため、鉄筋などに拘束されていることによりひび割れが生じる
 
・開口部回りに多く発生する。
 
●調査方法
 
○クラックスケールによる測定
・クラックスケールという専用の測定器具があって、外壁表面にあるひび割れに実際にクラックスケールをあて、ひびのの幅と深さを測定する。
 
○超音波法
・コンクリート表面から超音波の信号を流すと、コンクリート内部にあるひび割れの部分は通らずに迂回して進んでいくため、超音波の伝播速度を測定すると、コンクリート内部にあるひび割れの深さを算出する事ができる。
 
○デジタルカメラによる測定
・デジタルカメラを使って遠隔から撮影し、撮影した画像データをコンピュータ処理してひび割れを測定。
・遠隔から出来るので、足場を組んだり、高所作業車が不要となるメリットがある。
外壁・躯体の脆弱部、内部の空洞の調査方法
●打音法
・コンクリートをハンマなどで叩き、その際に発生する音を測定し、表層や内部の欠陥の有無を判断する方法。
・従来から行われている、人がハンマーで叩いて判断する「叩き点検」を、属人性を排除し、定量的に評価できるように機器の開発が行われている。
 
●赤外線サーモグラフィ法
・コンクリートの内部に空洞があると熱の伝わり方が変化するということを利用した方法で、コンクリート表面から放射されている赤外線量を熱画像として捉えて内部の空洞などを判断できる。
 
●衝撃弾性波法
・コンクリートをハンマー等で衝撃を与え、その反響波(コンクリート中を伝わった弾性波)を測定すると、正常部と脆弱部では、弾性波の伝わり方が異なるため、欠陥部が判断できる。
 
●超音波法
・ひび割れ調査の場合と同様。
コンクリートの圧縮強度
マンションのコンクリートの圧縮強度を把握する事によって、必要な強度を維持しているかの確認や経年劣化に対する評価を行う事ができる。
 
●反発度法
・リバウンドハンマーという器具でコンクリート面を打撃した際に測定される反発度(跳ね返り強さ)からコンクリートの圧縮強度を推定する。
・コンクリートの面で測定するため、塗装やモルタル、タイルが施されている場合はそれらを除去してから行う必要がある。
 
●衝撃弾性波法
・コンクリートの弾性波速度と圧縮強度との相関を利用して圧縮強度を求める。
 
●超音波法
・コンクリートの超音波の伝播速度と圧縮強度との相関を利用して圧縮強度を求める。
 
●小径コア法
・直径50mm以下の小径コアをボーリングにより採取し、採取した小径コアを圧縮試験機によって圧縮強度を測定する。
・破壊検査で、小径コアを採取した部分を復旧する必要がある。
・他の破壊、非破壊試験と比較して、直接コンクリートのサンプルを取得して測定するため、正確に強度を把握できる。ただし、サンプルコアを目的に合わせて採取し、端面部の整形なども必要。
鉄筋の非破壊検査
●マンションの鉄筋露出現象
 
○コンクリートの中性化
・コンクリートは、セメントに含まれる水酸化カルシウムによりpH12~13程度の強アルカリ性を示しているが、空気中の炭酸ガスの作用により、徐々に炭酸カルシウムに変化し、アルカリ性が失われる。このpHが10以下になることをコンクリートの中性化と呼ぶ。
 
○鉄筋の腐食、鉄筋露出現象
・鉄筋を空気中に放置すると錆びてしまうが、コンクリート中の鉄筋は、pH12以上という高いアルカリ性によって、鉄筋に不導体皮膜という薄い酸化化合物の皮膜が形成され保護されている。
・コンクリートのアルカリ性が失われると、不導体皮膜が失われ鉄筋の腐食が始まる。
・鉄筋は錆びると体積が膨張するので、周辺のコンクリートを外側へ押し出し、中の鉄筋が露出してしまう。
 
○鉄筋露出現象はどのような場合に発生
・通常のマンションでは、適正な鉄筋のかぶり厚さ(鉄筋を覆うコンクリートの厚さ)が確保されていて、外壁改修などの保護機能回復工事が行われていれば鉄筋露出現象の発生はほとんどない。
・かぶり厚さの薄い部分が生じることによって、10年未満で発生することもある。
 
●鉄筋の非破壊検査
マンションのコンクリート内の鉄筋や配管の位置やかぶり厚を非破壊検査で診断する方法を以下にしめす。
 
○電磁波レーダー法
・コンクリートに電磁波を放射し、コンクリート内の他の構造物体との境界で発する反射波を受信して、反射した構造体までの距離や状態を測定する。
・条件が整えば、鉄筋以外にも内部の空洞や塩ビ配管等も検出できる。
・一般的な測定器の測定深度は15~30センチ。
 
○X線透過法
・X線を照射し、物体を通過したX線の量を測定する事によって内部の状態を判断できる。
・反対側にフィルムを貼る必要があるため、貼るための空間が必要で、測定深度は30センチぐらい。
 
○電磁誘導法
・測定用コイルに交流電流を流す事によって発生する磁界内に、試験対象構造物をを配置する事によって、鉄筋の位置やかぶり厚さ(コンクリート表面から鉄筋表面までの距離)を測定できる。
・一般的な側的では、測定深度は20センチぐらい。
コンクリートの中性化の調査
●コンクリートの中性化
・コンクリートは、セメントに含まれる水酸化カルシウムによりpH12~13程度の強アルカリ性を示しているが、空気中の炭酸ガスの作用により、徐々に炭酸カルシウムに変化し、アルカリ性が失われる。このpHが10以下になることをコンクリートの中性化と呼ぶ。
 
●ドリル削孔法
・マンションの中性化の深さや塩化物イオンの量を測定できる。塩化物イオンは、コンクリート中の鉄筋を腐食させてしまう。
・孔の径は10mm程度なので、マンションの構造体に与える影響は少ない。
 
○中性化深さの測定
・電動ドリルで孔を開ける際に発生する粉を特殊な溶液を塗布したろ紙で受け止め、ろ紙の色が変化を観察して中性化している深さを測定する。
 
○塩化物イオン量の測定
・削孔時の粉を温水にいれて、可溶性の塩化物イオンを抽出し、簡易的に測定できる。
 
●はつり試験
・コンクリートの中性化や腐食の状況を確認するために行う。
・”はつり”とは、石を割ったり削ったりすること。マンションの診断で行うはつり試験は、コンクリートを削ったりして測定する破壊検査。
 
○調査手順におけるポイント
・中性化の進行の度合いは、降雨の当たり具合、仕上げ材の種類、炭酸ガス濃度によって異なるため、調査ポイントの選定に注意する。
・内部にコンクリートがある部分のコンクリートをはつりして調査する。鉄筋の位置を確認するのに鉄筋探査機を使用する場合がある。
・コンクリートをはつりした部分にフェノールフタレインを噴霧し、変色度合いによって中性化深さを測定する。
 
●コンクリートの化学・組成分析
・コンクリート内の成分の配合を推定し、塩化物イオンやアルカリ量を把握する事を目的に行う。
・コンクリートの配合、塩化物イオン量、アルカリ量を把握する事によって、コンクリートの劣化原因の推定や今後の劣化進行の度合いを予測できる。
 
○配合推定試験
・コンクリートのセメント、骨材、水の割合を分析する方法。
・分析する試料は、採取したコンクリートコアを粉砕し粉末化して酸に溶解して得る。

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