マンションの外壁塗装の劣化・調査診断

マンションの外壁塗装の劣化・調査診断に関する技術情報をまとめました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
外壁仕上げの施工方法
(1)マンションの外壁仕上げの施工方法
 
・マンションの外壁の施工方法には大きく分けて”タイル張り”と”吹き付けタイル”の2種類がある。
 
・タイル張りのマンションでも、バルコニーの内側や共用廊下の壁など、外側から見えない部分は吹き付けタイル等で仕上げられていることがよくある。
 
○タイル張り
・コンクリートの表面を石材や磁器質のタイル張りで仕上げているもののこと。
 
○吹き付けタイル
・コンクリート面に対して合成樹脂とモルタル等を混ぜ合わせた素材を吹き付けて覆うタイプ。
・下塗り・主材・上塗りの3層で構成する。
・耐久性は上塗りの性能で決定され、フッ素系、シリコン性、ウレタン系、アクリル系などがある。
 
(2)セメントモルタル塗り
 
●セメントモルタル塗りの概要
 
・ポルトランドセメントを主材料にした塗り工法。
低温時や特殊な場所で使用する場合は、適合するセメントを選択する必要がある。
・耐候性、耐磨耗性、耐水性、防火性を備える。
・材料の普及度や経済性が高く、最も普及した工法の一つとなっている。
・通常は各種塗り材の下地として施工される場合が多いが、混和材料や骨材を調整することによって、多様な性質と表情を備えた仕上げ塗りが可能。
・乾燥による収縮が大きく、剥離、ひび割れが発生することがあるので、一工程内の作業については乾燥時間に留意しながら作業を進める。
・セメントモルタルの下地としては、メタルラス、ワイヤラス、ラスシートなどのラス下地とコンクリート、レンガ、ALCパネル、PCパネルなどの躯体下地に大きく分類される。
 
●モルタル外壁の主な仕上げ形状
 
高圧コンプレッサーによる吹き付け、またはローラーによる塗りつけにより、仕上げと保護のために皮膜を形成する。
 
○薄付け仕上げ、リシン塗装
・骨材で着色した状態、または着色骨材を多色混合して1回で吹き付けるもの。
・3mm程度の厚さで吹き付ける。
・経済性と作業性がよい。
・耐候性、防汚性に欠けるのが欠点。
 
○厚付け仕上げ、スタッコ塗装
・各種スタッコ(石灰に大理石・砂等を混ぜ合わせた物)材を4~10mm程度の厚さで吹き付けたもの。
・高級感と重厚感ある外壁が表現できる。
 
○複層仕上げ、吹き付けタイル
・下塗り、主材、上塗りと層を重ねて仕上げる。
・複層で構成されるため、多様な仕上がりパターンが可能。
外壁塗装の劣化
1)劣化の第一段階(塗膜表面の劣化)
 
・美観性が損なわれ、外観の機能が失われた段階。
 
●汚れ
・塵あい、鉄さび、手あか、油脂などの付着、菌類、藻・苔類の繁殖により通常の洗浄方法では除去できない状態。
 
●変退色
・紫外線、風雨、熱などにより仕上材表面が劣化し、仕上塗材表面の色相、彩度、明度のどれかが変化する現象
 
●光沢低下
・仕上塗材表面の光沢が低下する現象で主に上塗材の劣化。
 
●白亜化(チョーキング)
・紫外線、風雨、熱などにより仕上塗材表面の樹脂分が劣化し、充填材が離脱しやすくなり表面が粉末状になる現象。
 
●摩耗
・砂塵、雨風などの物理的作用により仕上塗材の塗膜厚が減少する現象
 
2)劣化の第二段階(塗膜内部の劣化)
 
・下地に対する保護機能(中性化抑制)が低下し始めた段階
 
●膨れ(浮き)
・塗膜が気体、液体または腐食生成物などを含んで盛り上がる現象。
・上塗材の膨れ、主材の膨れがある.
 
●割れ
・塗膜に裂け目が発生する現象。
・上塗材の割れ(主に浅割れ:checking)、主材の割れ(深割れ:cracking)に区分される。
・下地モルタルや躯体コンクリートの割れに起因することもある.
 
●剥がれ
・塗膜が付着力を失って被塗物から離れる現象。
・下地モルタルや躯体コンクリートの欠損による場合もある。
 
3)劣化の第三段階(下地に起因する劣化)
 
・下地への付着性が低下して連続性が失われ、保護機能を失い、下地の表面層の劣化が進行し始めた段階
 
●ひび割れ
・下地モルタルや躯体コンクリートの割れに起因して発生した塗膜の割れ。
 
●モルタル浮き
・下地モルタルが浮いている状態。
・剥離、損傷につながり、雨水の侵入など保護機能が失われる
 
●剥離、損傷
・下地コンクリートやモルタルなどの断面が欠損したり、破断した状態。
 
●エフロレッセンス
・下地コンクリートやモルタル中の石灰などのアルカリ成分が水に溶けて表面にしみだし、空気中の炭酸ガスと反応して難溶性の白色物質となり塗膜表面に沈着する現象。
 
●さび汚れ
・中性化や露出により腐食した鉄筋から発生したさびにより塗膜表面が汚染される現象。
外壁の塗装、吹付け材の調査
●目視、触診による診断の調査項目
 
・塗装表面
  色の変化、退色。光沢度、白亜化、汚れ
・塗膜層
  膨れ、割れ、剥がれ、磨耗、付着力の低下
・塗膜層と下地
  錆汁、クラック、結露の有無、漏水
  エフロレッセンス(白華。表面に白い物質が現れ、垂れる)
 
●光沢計・色差計等の機器の使用
 
・白亜化(表面が劣化し、白く粉状になる)の等級
  透明粘着テープに付着した量で測定
・鏡面光沢度
  光沢計で塗膜表面を測定
 
※色見本が保管されていないと劣化程度の判断が出来ない場合も。

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