大規模修繕工事のアスベスト事前調査

2006年(平成18年)9月1日以前に”着工”したマンションでは、アスベストを含んだ建材が使われている可能性があるため、大規模修繕などの工事を行う際、事前調査が必要なようです。アスベスト事前調査の対象、事前調査の流れをまとめました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
事前調査の対象
1)事前調査の義務
 
●改修等工事受注者の事前調査の義務
 
〇石綿使用の有無を事前に調査
・工事対象となる全ての部材が対象
〇調査結果等を工事場所に掲示
・アスベストの使用の有無に関わらず掲示が必要。
〇発注者に対し調査結果等を書面で説明
〇調査結果の記録を3年間保存
〇事前調査の結果等の届出義務
・都道府県知事及び労働基準監督署への報告。
・令和4(2022)年4月1日より規模要件に応じて電子システムにより報告する。
※石綿無しでも報告必要
 建築物の解体:80 ㎡以上
 建築物の改修等、工作物:請負金額100万円以上
※2022年4月から従来の飛散性の高い建材レベル1、レベル2の以外の、飛散性の比較的低いレベル3の成形板について、従来は条例による規制だったものが、法改正により都道府県及び労働基準監督署への届出義務となる。
 
●マンション管理組合(発注者)の配慮義務
 
〇工事の費用(契約金額)、工期、作業の方法の配慮
・事前調査の結果、石綿が使用されていることが明らかになった場合は、石綿除去等の工事に必要な費用を含めた発注条件について、施工業者が法令を遵守して工事ができるよう配慮する。
〇情報提供
・事前調査が適切に行われるよう、石綿の有無についての情報がある場合は、その情報を施工業者に提供するなどの配慮をする
〇写真の撮影許可
・石綿除去等の工事を行う場合に、施工業者に義務づけられる作業の実施状況についての写真等による記録が適切に行われるよう、写真の撮影を許可する等の配慮をする
 
2)事前調査の対象の建物、部分
 
①新築工事時期で確認
・2006年(平成18年)9月1日以前に”着工”した建物。
※9月1日以降は、石綿を0.1%を超えて含有する建材等を含んだ全てのものの使用が禁止されているので、使用されていないと言える。
 
②改造、増築した場合の例外
・2006年(平成18年)9月1日以後に、改造or増築の工事に着手した部分は、事前調査の対象外。
 
3)主な対象工事個所
 
〇直接仮設工事
・足場組立時の壁つなぎ
〇外壁補修
・塗装、下地調整材
・Uカットシール工法、欠損部の補修、鉄筋露出部の補修、エポキシ樹脂注入工法(樹脂注入のための穿孔)
〇天井補修
・塗装、下地調整材
・接着力が低下した上裏リシンの剥離など
〇アスファルト防水撤去
・アスファルト防水材
・立上り部分は劣化しやすく、撤去・張り直し時に対策必要。
〇シングル屋根撤去
・軒先部分は撤去・張り直し
〇床Pタイル巾木撤去
・床Pタイル材料、接着剤、巾木部分
・床Pタイルを剥がす際に、Pタイルが割れてしまうので対策必要
〇各所ボード交換
・ベランダのパーテーションなど
〇シーリング工事
・既存シーリング撤去(塗膜が被っている箇所のみ)
事前調査の流れ
1)書面調査の実施
 
・新築時の竣工図書、前回の大規模修繕工事等の仕様書などを確認。
 
2)現地調査の実施
 
・上記図面と実際の現場との整合性を確認
 
●調査者
・書面及び現地での目視調査は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に規定される石綿含有建材調査者等に依頼することが望ましい。
※令和5(2023)年10月からは義務付け。
 
3)分析調査の実施
 
・ボード類は、裏側を見るとメーカー名や商品名が記載されているので、メーカーに問合せてアスベスト有無が分かれば分析は不要。
・外壁塗装などはサンプル採取して分析機関に調査を依頼。
・採取する際、アスベストが飛散する可能性があるので、マスク・眼鏡・手袋着用等の対策が必要。
・定性分析(アスベストが0.1%超含有しているか、否か)を実施する。
※要望があれば定量分析(アスベストが何%含有しているか)を実施する場合もある。
 
●サンプルの採取基準
・耐火被覆材(内部レベル1)は3,000㎡を超える場合600㎡に1箇所、外壁関連は仕上材ごとに1箇所(外壁塗材、リシン等)、棟別の集合住宅は棟ごと仕上ごとに1箇所となる。
・上記のような条件のもとで実施すると、超高層建物ではサンプル数が非常に多くなり、分析だけで膨大な費用になると予想される。
→したがって、レベル3に相当する非飛散性含有建材については分析せずに含有建材と見なして措置を講じ、工事を実施するのが現実的な方法になる場合がある。
 
●試料調査
・JIS A 1481-1 偏光顕微鏡法
・JIS A 1481-2 分散染色法+ X線回折分析法
※建築用仕上塗材の分析をする際はどこに石綿が含有しているかを確認できる JISA 1481 -1 偏光顕微鏡法を推奨
 
●分析者
・分析調査は、厚生労働大臣が認める分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者に依頼することが望ましい。
※令和5(2023)年10月からは義務付け。
 
4)調査結果の確認・説明
 
5)調査結果の掲示
・事前調査結果・作業内容を公衆・作業者に見やすいように掲示。
・アスベスト含有の有無に関わらず必要。
・建設業許可表示等の法律で定められた掲示物と一緒に掲示する。

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