耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針

※平成18年国土交通省告示184号(別添)”建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事項”
 
〇建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事項
〇過去問
・管理業務主任者 H13問24、H14問24、H16問26、H20問22、H23問21、H26問25
・マンション管理士 H26問42
 
 
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耐震診断の概要
●診断対象
・当該建築物の”構造耐力上主要な部分”(令1条第3号)
 
※”構造耐力上主要な部分”(令1条第3号)
・基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。
 
●調査方法
・”構造耐力上主要な部分”の配置、形状、寸法、接合の緊結の度、腐食、腐朽又は摩損の度、材料強度等に関する実地調査、当該建築物の敷地の状況に関する実地調査等
 
●地震に対して安全と判定されるには
・上記調査の結果に基づき、各階の構造耐震指標Isと各階の保有水平耐力に係る指標qを求め、この指標に応じ構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性を評価した結果、地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低いと判断されること。
・この安全性を評価する際には、実地調査等により建築物の部材等の劣化状況を適切に考慮するものとする。
鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断
1)手順の概要
 
①各階の構造耐震指標Isを求める
・各階の構造耐震指標Is=定数×E0
・E0:各階の耐震性能を表すものとして、各階の保有水平耐力及び各階の靭性を考慮して算出
②各階の保有水平耐力に係る指標qを求める
③上記指標に応じ構造耐力上主要な部分の地震に対する安全を評価
注)実地調査等により建築物の部材等の劣化状況を適切に考慮すること。
 
〇各階の構造耐震指標:Is値
・構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性の評価に用いられる指標。
・耐震診断の結果として得られる当該建築物のIs値は、その値が小さいほど耐震性が低い。
 
〇各階の保有水平耐力に係る指標:q
・構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性の評価に用いられる指標。
 
2)各階の構造耐震指標Isの計算方法の概要
 
Is = Eo /(Fes・Z・Rt)
 
〇Fes:形状係数
・各階の形状、バランスの良さの特性を表すものとして、各階の剛性率及び偏心率に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値(令82条の3第2号)
〇Z:地震地域係数
・地域毎に想定される地震の大きさによって定められている低減率。(令88条第1項)
〇Rt:振動特性係数
・地盤の硬さと建物の固有周期(高さと構造形式等で決まる)に応じて定められている低減係数(令88条第1項)
〇Eo:保有性能基本指標
・建物の強さと粘りの指数。
・各階の耐震性能を表すものとして、各階の保有水平耐力及び各階の靱じん性を考慮して以下に定めるところにより算出した数値。下記参照
 
●Eoの計算方法
 
E0 = Qu・F /(W・Ai)
 
〇Qu
・各階の保有水平耐力
〇W
・当該階が支える部分の固定荷重と積載荷重との和。
〇Ai
・地震層せん断力分布係数。
・階による補正係数。
・建物の高さ方向の地震力の違いを求める係数で、高い階ほど地震力が大きくなるので、係数も大きくなる。
〇F
・各階の靱性指標。
・柱及びはりの大部分が鉄骨造である階にあっては、当該階に作用する地震力の多くを負担する架構の種類に応じた別表第7に掲げる Fi と、その他の階にあっては、当該階に作用する地震力の多くを負担する柱又は壁の種類に応じた別表第8に掲げる Fi とする。
・ただし、当該階の地震力の大部分を負担する柱、筋かい又は壁以外の一部の柱の耐力の低下によって建築物が容易に倒壊し、又は崩壊するおそれがある場合においては、柱及びはりの大部分が鉄骨造である階にあっては、当該柱を含む架構の種類に、その他の階にあっては、当該柱の種類に応じた数値としなければならない。
 
3)建築物の各階の保有水平耐力に係る指標qの計算方法
 
q = Qu /(Fes・W・Z・Rt・Ai・St)
 
〇St
・建築物の構造方法に応じて定まる数値。
・鉄骨造及び鉄骨鉄筋コンクリート造にあっては0.25、その他の構造方法にあっては0.3とする。
 
4)上記Is、qの計算結果から安全性評価
 
①Is < 0.3 or q < 0.5
→地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。
 
②①③以外の場合
・地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある。
 
③Is ≧ 0.6 and q ≧ 1.0
・地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。
 
5)構造耐震指標の評価
 
・構造耐震指標の評価は、建物の方向(水平面のX方向、Y方向)、階別に算定され、判定指標をすべて満足している場合に安全と判断し、そうでない場合は耐震化が必要とされる。
耐震改修の指針
・耐震改修は、耐震診断の結果に基づき行う。
・対象とする地震に対して、建築物の構造耐力上主要な部分及び敷地が、安全な構造となるように行う。
 
●鉄筋コンクリート造等に対する基準の概要
 
・建築物を使用しつつ耐震改修を行う場合にあっては、構造耐力上主要な部分を釣合いよく配置し、地震の震動及び衝撃に対して一様に当該建築物の構造耐力が確保されるものとすること。
・耐震改修による地盤の沈下又は変形に対して、建築物の基礎を構造耐力上安全なものとすること。
・建築物に作用する地震の震動及び衝撃に耐えるように、壁を厚くすること等により補強し、又は壁若しくは鉄骨造の筋かいを増設すること。
・柱がせん断破壊等によって急激な耐力の低下を生ずるおそれのある場合には、当該柱に鋼板を巻き付けることその他の靱性をもたせるための措置を講ずること。
 
●液状化するおそれのある地盤の敷地の場合
 
・地盤の液状化により建築物に構造耐力上著しい支障が生じるおそれのある場合においては、締固め等により地盤の改良を行うこと、当該建築物の基礎の構造を鉄筋コンクリート造のべた基礎とすることその他安全上必要な措置を講ずること。

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