躯体改修工事の概要

コンクリート躯体の改修方法についてまとめました。  
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
修繕工事の概要
●目的
・コンクリート躯体のひび割れ等の劣化現象は、美観上好ましくないだけでなく、鉄筋に錆を誘発することによる構造耐力の低下や漏水、外壁仕上げ材の剥離等の原因となる。
→ひび割れ、鉄筋露出、欠損等の劣化・損傷箇所については、適切な修繕工事が必要
 
●一般的な修繕周期
・一般的には、10~15年周期
 
●主な修繕工事の対象
・コンクリート躯体のひび割れ(小ひび・大ひび)・欠損
・鉄筋の発錆・露出
・コールトジョイント(コンクリート打継ぎのひび割れ)
・ジャンカ(分離コンクリートによる豆板)
・モルタル・タイルの浮き・剥離
・エフロレッセンス(遊離アルカリの流出)
・漏水等のコンクリート躯体の劣化
修繕工法選定の目安
●劣化がひび割れの場合
 
〇挙動あり
①ひび割れ幅:0.2㎜未満
・シール工法(可とう性エポキシ樹脂)
②ひび割れ幅0.2~1mm
・自動式低圧樹脂注入工法(軟質系エポキシ樹脂)
・Uカットシール材充填工法(可とう性エポキシ樹脂)
③ひび割れ幅1.0㎜を超える
・Uカットシール材充填工法(シーリング材)
 
〇挙動なし
①ひび割れ幅:0.2㎜未満
・シール工法(パテ状エポキシ樹脂)
②ひび割れ幅0.2~1mm
・自動式低圧樹脂注入工法(硬質系エポキシ樹脂)
③ひび割れ幅1.0㎜を超える
・Uカットシール材充填工法(可とう性エポキシ樹脂)
・手動式樹脂注入工法(硬質系エポキシ樹脂)
 
●劣化が欠損の場合
 
〇欠損部の面積が1箇所当たり0.25㎡程度以下の場合
・充填工法(ポリマーセメントモルタル)
〇欠損部の面積が1箇所当たり0.25㎡程度以上の場合
・モルタル塗替え工法
〇露筋等の深い欠損
・充填工法(エポキシ樹脂モルタル)
エポキシ樹脂の概要
1)エポキシ樹脂の概要
 
〇エポキシ樹脂とは?
・高分子内に残存させたエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称。
・架橋ネットワーク化前のプレポリマーと硬化剤を混合して熱硬化処理を行うと製品として完成するが、プレポリマーも製品化した樹脂も両者ともエポキシ樹脂と呼ばれる。
 
〇エポキシ樹脂の特長
・機械的強度、耐熱性、耐薬品性、接着性に優れる。
・硬化収縮が小さい。
 
2)一液性と二液性
 
①一液性
・本剤に含まれる硬化剤が、加熱により反応して硬化する。
 
〇長所
・管理が容易
・硬化剤によるカブレの可能性が低い。
・耐熱性に優れる。
 
〇短所
・硬化に加熱が必要。
・厚膜硬化が困難の場合あり
・細部隙間に使用した場合、未硬化の危険性
 
②二液性
・本剤と硬化剤を混合することにより硬化する。
 
〇長所
・加熱しなくても室温で硬化
・耐薬品性、電気絶縁性に優れる。
 
〇短所
・二液を計算、混合する煩雑さ
・硬化剤によるカブレの危険性
・可使時間がある。
 
3)種類
 
●注入エポキシ樹脂
・建築物のモルタル,タイル,コンクリートなどのひび割れの補修,浮きの補修,アンカーピンの固定に用いる。
 
●エポキシ樹脂モルタル
・欠損部の充填補修に用いる。
 
●可とう性エポキシ樹脂、パテ状エポキシ樹脂
・ひび割れの補修に用いる。
 
●含浸接着エポキシ樹脂
・連続繊維補強工事に用いる
ひび割れ改修
●概要
・ひび割れ補修は、耐久性や防水性の低下を回復させるために行われる。
 
●シール工法(被覆工法)
 
・ひび割れにエポキシ樹脂や塗膜弾性防水材で被覆する工法。
・0.2mm未満の軽微な収縮ひび割れを対象としたひび割れ補修工法。
・プライマーを塗布したのち,シール材をパテへら等で幅10mm,厚さ2mm程度に塗布し,その表面を平滑に仕上げる。
 
●樹脂注入工法
 
・エポキシ樹脂やセメントスラリーなどの注入剤をひび割れ深部まで充填させる工法。
・一般的には幅0.2~1.0mmのひび割れに対して施工を行うが、手動式のポンプを使ったり、自動低圧機や電動ポンプを使って建築補修用のエポキシ樹脂等をひび割れ部に注入する方法。
・エポキシ樹脂などの注入材を、注入器具を用いてひび割れ深部まで充填させる工法で、この工法ではエポキシ樹脂が十分に充填されることが重要で、一般にはゴムやバネ、風船などの原理を応用して一定の圧力でゆっくりひびわれのすきまにくまなく充填する。
・エポキシ樹脂では硬質型と軟質型とがあり、ひび割れ部に挙動がある場合には、軟質型を使用する。
 
〇自動式低圧エポキシ樹脂注入工法
・混練りしたエポキシ樹脂を注入器具に入れ,ゴム,バネ,空気圧等により,注入圧を0.4N/mm2以下として注入する。
 
〇手動式エポキシ樹脂注入工法
・ひび割れ部に座金付き注入パイプを取り付ける。注入口を穿孔して注入パイプを取り付ける場合は,穿孔内の切粉を圧さく空気等で除去する
・混練りしたエポキシ樹脂を手動式注入器に入れ,注入器のノズルを注入孔のゴムパッキンに押し付け,ゆっくり注入する。
 
〇機械式エポキシ樹脂注入工法
・エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を注入機の所定の箇所に別々に入れ,注入機のノズルを注入口に押し当てて,エポキシ樹脂を注入する。
 
●Uカットシール材充填工法
 
・ひび割れ幅が、1.0㎜以上や挙動(温度差による動き)が大きくなると、樹脂注入工法(注入工法)ではなく、割れに対して、幅10㎜、深さ10㎜~15㎜のU字型の溝を切って、清掃後、シーリング材や可撓性(かとうせい=動きに追随できるもの)のエポキシ樹脂を充填する工法。
・シーリング材と躯体の接着面積が広くなり、ひび割れの再発を防ぐ。
・主に使われる充填材は、ポリウレタン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系。
 
〇ひび割れ部の処置
・ひび割れ部に沿って電動カッター等を用いて幅10mm程度,深さ10~15mm程度にU字型の溝を設ける。
・被着体に適したプライマーを溝内部に塗残しのないよう均一に塗布する。
 
〇充填
・シーリング材や可とう性エポキシ樹脂を充填する。
・ひび割れの動きが小さい場合には、柔軟性のある可とう性エポキシ樹脂をシール材として選択することが一般的。
 
〇問題点
・Uカットシール後に珪砂を散布するか、ポリマーセメントモルタルを充填するが、珪砂の凹凸に塵埃が付着しやすくなったり、施工箇所が傷跡のように残り、美観上の問題点が指摘される場合も多い。
欠損の改修
●欠損とは?
・コンクリートやモルタルがはがれ落ちる現象を欠損という。
・マンションの場合、ベランダや廊下等にある金属製手すり付根部分に発生するケースが多い。
 
●原因
・衝撃や地震等の強い外力。
・手すり付根部分に発生した場合は、スチール製手すりの埋め込まれている部分の錆びの発生、膨張が原因。
 
●充填工法
 
・ポリマーセメントモルタル等の付着力の強い無機材を充填し成型。
・欠損が大きく深い場所にはエポキシ樹脂モルタルを使用し、浅い場所にはポリマーセメントモルタルを使用して修復する場合が多い。
 
〇エポキシ樹脂モルタルを充填
・プライマーの粘着性のあるうちに,エポキシ樹脂モルタルを充填し,表面を金ごてで加圧しながら平滑に仕上げる。
 
〇ポリマーセメントモルタルを充填or塗り付け
・劣化の状況により,1~3層に分けてポリマーセメントモルタルを充填or塗り付ける。各層の塗り厚は7mm程度とし,表面を金ごてで加圧しながら平滑に仕上げる。
コールドジョイント、ジャンカ
1)コールドジョイント
 
・止水材の注入
・Uカットシール材充填工法
 
※コールドジョイントとは
・コンクリートの打ち継ぎ部に生じる不連続面。
・1回目のコンクリート打設から2回目の打設までに長い時間が経過し、コンクリートが一体化しない場合に生じる空隙。
 
2)ジャンカ
 
・当該部分をハツリ除去し、無収縮モルタルやポリマーセメントモルタルで埋め戻す。
 
※ジャンカとは
・コンクリート打設の際、モルタルペーストの回りが悪く砂利が集まった状態。
・コンクリートの強度低下や防水上の問題を引き起こしかねない。
改良工事
1)再アルカリ化等によるコンクリート躯体の中性化抑止
 
〇中性化による劣化
・コンクリートやモルタルの中性化
→コンクリート中の鉄筋が発錆
→コンクリートのひび割れ、鉄筋のコンクリートへの付着力の低下、鉄筋の断面欠損等が生じる
→躯体の耐久性が低下。
 
①アルカリ性の付与による中性化抑止
・中性化の進行した外壁等の既存塗膜を撤去しコンクリート素地を露出させ、アルカリを付与する水溶液を塗布・含浸させることにより、外壁躯体にアルカリ性を付与し、鉄筋の腐食抑制雰囲気を与える。
・仕上げ材による中性化抑止との併用により、外壁躯体の耐久性向上を図ることが期待できる。
 
②電気化学的再アルカリ工法
・中性化したコンクリートに電気化学的にアルカリを再付与し、再生化する工法。
・コンクリート躯体の外側に外部電極(+)を仮設し、外部電極と内部鉄筋の間に所定の電流密度で直流電流を流し、特殊アルカリ溶液をコンクリートの微細な孔内部に浸透させ、コンクリートを再アルカリ化させる。
 
2)共用廊下、バルコニーなどの片持ちスラブの補強
 
・共用廊下、バルコニー等の片持ちスラブの躯体内に雨水が浸入し、鉄筋腐食によりスラブの耐力が低下していると、地震による上下動で片持ちスラブが脱落するケースがある
・避難経路となる共用廊下・バルコニー等の耐力を調査し、必要に応じて、鋼材ブラケット等による補強をする。
劣化部分の除去方法
●概要
 
・劣化部の除去は、劣化した部分を補修するために、新規に塗膜を形成したり、躯体の補修する際、その前処理として行う。
 
●劣化部の除去方法
 
・サンダー工法
 既存塗幕や素地の劣化部分のみを除去。一般的に最も多く採用されている。
 
・超音波ケレン工法
 低騒音・低粉塵がメリット。施工面積が小規模な場合や高圧水洗浄がしようできない場合に適す。
 
・高圧水洗浄工法
 既存塗幕表面の洗浄を兼ねて劣化塗幕を除去。壁面全体を改めて塗り仕上げを行う場合に有効。
 
・ウォータージェット工法
 下地処理やはつりを行う。鉄筋を傷つけることなく、コンクリートの劣化部を除去できる。
コンクリート断面の修復
●コンクリート断面の劣化
・内部鋼材の腐食膨張、アルカリ骨材反応によるひび割れで欠損。
・ジャンカ(締め固め不足やセメントと砂利の分離などによろうコンクリート不良)などにより遮蔽性能が著しく低下
・中性化、塩化物イオンなどの作用で劣化
 
●左官工法
・修復面積が比較的小さい場合に使用される。
・左官コテを使用して補修材料を充てんする。
・樹脂系モルタル、ポリマーセメントモルタルなどが充てん材料として使用される。
 
●吹き付け工法
・補修面積が比較的大きい場合に使用される。
・あらかじめ練り混ぜた修復剤を吹き付ける湿式工法と粉体と水または混和液を別々に吹き付ける乾式工法がある。
 
●打込み工法
・補修面積が比較的大きい場合に使用される。
・補修断面に合わせた形状で型枠を組み、モルタルあるいはコンクリートをポンプで圧送して充てんする。
・躯体や桁の鉛直、下面などの箇所に使用される。
コンクリートの電気化学的防食
●概要
・コンクリートの中性化や塩害等による劣化に対する補修方法として、電気防食工法、再アルカリ工法などの電気化学的防食工法がある。
・これらの工法は、まず劣化している部分の補修を行った上で実施する必要がある。
 
●電気防食工法
・電気防食は、外部から防食電流を供給する事で、腐食電流を消去する方法。腐食の因子の一つである塩分の侵入を防いだり既に侵入した塩分を除去する方法とは異なり、腐食反応自体を消滅させるので信頼性が高い。
・外部電源方式と流電陽極方式がある。
 
●再アルカリ化工法
・中性化したコンクリートに電気化学的手法でアルカリ成分を浸透させ、再アルカリ化する工法。
・コンクリート表面に仮設した外部電極と内部鉄筋の間に直流電流を流し仮設電極側から、特殊アルカリ溶液を浸透させ、腐食の起こりにくいpHにする。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください