長期修繕計画、修繕積立金

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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長期修繕計画作成ガイドライン
※令和3年9月国土交通省”長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント”
 
1)長期修繕計画の作成の目的
 
●マンションの補修・修繕・改修のイメージ
 
①補修
・現状レベルを実用上支障のないレベルまで回復させる
 
②修繕
・現状レベルを新築当初のレベルまで回復させる
・マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時適切な修繕工事を行うことが必要。
 
③改修
・現状レベルを現時点で望まれるレベル(社会の変化等により向上していく水準)まで回復させる(修繕+改良)
・区分所有者の要望など必要に応じて、建物及び設備の耐震性や断熱性などの性能を新築時の水準から向上させる改修工事を行うことが望まれる。
 特に、築古のマンションは省エネ性能が低い水準にとどまっているものが多く存在していることから、大規模修繕工事の機会をとらえて、マンションの省エネ性能を向上させる改修工事(壁や屋上の外断熱改修工事や窓の断熱改修工事等)を実施することは、各区分所有者の光熱費負担を低下させる観点からも有意義と考えられる。
 
2)長期修繕計画の見直し
 
●長期修繕計画の見直し
・一定期間(5年程度)ごとに見直していく。
 
●見直しのタイミング
・大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う
・大規模修繕工事の直前に基本計画の検討に併せて行う
・大規模修繕工事の実施の直後に修繕工事の結果を踏まえて行う
 
3)調査・診断
 
〇予備調査・診断:現状把握、本調査・診断の要否
・資料調査、目視調査、アンケート調査
・設計図書、修繕等履歴情報、外観
 
①1次診断(簡易診断):現状把握、劣化の危険性の判断
・資料調査、目視調査、軽微な機器
・設計図書、修繕等履歴情報、外観
 
②2次診断:劣化の危険性の判断、修繕の要否の判断
・非破壊試験、微破壊試験
・主に共用部分
 
③3次診断:より詳細な診断、評価
・局部破壊試験を伴う
・主に共用部分、一部の専有部分を含む
 
4)修繕積立金
 
〇取り崩す対象
・災害や不測の事故に伴う特別の修繕等
・マンションの建替えを目的とした調査等に要する経費。
 
〇積立方法
修繕積立金の積立ては、長期修繕計画の作成時点において、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を均等にする積立方式(以下「均等積立方式」という。)を基本とする。
 
5)長期修繕計画の作成の方法
 
●推定修繕工事
・建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、回復させる修繕工事を基本とする。
 
〇推定修繕工事項目の設定
・「長期修繕計画の見直し」、大規模修繕工事のための調査・診断、修繕設計及び工事監理の費用を含んでいる。
 
〇推定修繕工事費の算定
・「単価の設定」として、現場管理費及び一般管理費は、見込まれる推定修繕工事ごとの総額に応じた比率の額を単価に含めて設定している。
・現場管理費・一般管理費・法定福利費、大規模修繕瑕疵保険の保険料等の諸経費および消費税等相当額については、別途設定する方法と、前述の諸経費について、見込まれる推定修繕工事ごとの総額に応じた比率の額を単価に含めて設定する方法がある。
 
〇数量計算の方法
・新築マンションの場合
設計図書、工事請負契約による請負代金内訳書、数量計算書等を参考とする。
・既存マンションの場合
現状の長期修繕計画を踏まえ、保管している設計図書、数量計算書、修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果等を参考として、「建築数量積算基準((財)建築コスト管理システム研究所発行)」等に準拠して、長期修繕計画用に算出する。
※「公共建築数量積算基準」
 
〇法定福利費について
・国土交通省において、現場作業員の社会保険加入対策の一環として、法定福利費を見積書に内訳明示する事を推進している。
・法定福利費とは、法律によって定められた福利のために使用する事業者が義務的に負担する費用であって、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険のほか、中小企業退職金共済法の規定に基づく建設業退職金共済制度の加入事業者である場合は同制度の掛金相当額が含まれる。
 
〇大規模修繕瑕疵保険について
・計画修繕工事の請負契約に伴う保険で、住宅瑕疵担保履行法に基づき国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人(保険法人)が引き受けるもの。
・具体的には、工事を請け負った工事業者が加入申込みを行い、保険法人の検査員が現場検査を行った上で保険を引き受け、工事終了後に瑕疵が見つかった場合、補修に要する費用等が支払われる。
 
●計画期間の設定計画期間
・30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上。
 
〇新築時に計画期間を30年とした場合において、修繕周期が計画期間を上回る場合
・”修繕周期に到達しないため推定修繕工事費を計上していない。”旨を明示する。
・計画期間内に修繕周期に到達しない項目に係る工事について、参考情報として当該工事の予定時期及び推定修繕工事費を明示するとともに、多額の費用を要するものは修繕積立金を計画的に積み立てる観点から、計画期間に応じた推定修繕工事費を計上しておくことも考えられる。
 
●11階以上や超高層マンションの場合の注意点
・階数が11階以上の場合、消防用設備や避難設備などについて考慮する必要がある。
・超高層の場合、免震構造などの躯体関係、航空障害灯などの設備関係のほか、修繕工事の仮設足場にゴンドラ等を使用するなど施工方法も異なるので、これらについて考慮する必要がある。
 
●専有部分の給排水管の取替えを同時に行う場合の注意点
・同時に行うことにより、専有部分の給排水管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の給排水管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて管理規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要。
・修繕積立金から専有部分の工事費用として拠出する場合には、その対象を共用部分と構造上一体となった部分及び共用部分の管理上影響を及ぼす部分(いわゆる横引き配管など)に留め、これに連結された室内設備類は区分所有者の負担とすることが相当。
標準管理規約のコメント
※マンション標準管理規約(単棟型)32条関係コメント
 
●長期修繕計画の必要性
 
・建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。
 
●計画期間
・計画期間が30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすること。
 
●計画修繕の対象工事
・外壁補修
・屋上防水
・給排水管取替え
・窓及び玄関扉等の開口部の改良等
が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。
 また、全体の工事金額が定められたものであること。
 
●計画内容の見直し
・定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが必要。
 
●劣化診断(建物診断)
・長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、併せて行う必要がある。
・調査・診断において、詳細な調査が必要な劣化症状があった場合、必要に応じて劣化症状に応じたサンプリング試験等を行い、その原因を推定し、修繕の要否を判断する
 
●作成又は変更に要する経費等に要する経費の充当
・長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる。
・ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなる。
 
●設計図書の管理
・適正化法103条1項に基づいて宅地建物取引業者から交付される竣工時の付近見取図、配置図、仕様書(仕上げ表を含む)、各階平面図、2面以上の立面図、断面図又は矩計図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書である。
・ただし、同条は、適正化法の施行(平成13年8月1日)前に建設工事が完了した建物の分譲については適用されてないこととなっており、これに該当するマンションには上述の図書が交付されていない場合もある。
 
●修繕等の履歴情報
・大規模修繕工事、計画修繕工事及び設備改修工事等の修繕の時期、箇所、費用及び工事施工者等や、設備の保守点検、建築基準法第12条第1項及び第3項の特殊建築物等の定期調査報告及び建築設備(昇降機を含む。)の定期検査報告、消防法第8条の2の2の防火対象物定期点検報告等の法定点検、耐震診断結果、石綿使用調査結果など、維持管理の情報であり、整理して後に参照できるよう管理しておくことが今後の修繕等を適切に実施するためにも有効な情報である。
 
●残余財産の清算
・建替え等により消滅する管理組合は、管理費や修繕積立金等の残余財産を清算する必要がある。なお、清算の方法については、各マンションの実態に応じて規定を整備しておくことが望ましい。
修繕積立金に関するガイドライン
※令和3年9月国土交通省”マンションの修繕積立金に関するガイドライン”
 
●機械式駐車場の1台当たり月額の修繕工事費
・機械式は、維持にお金がかかり、複雑な構成になれば当然修繕費用も高くなる。
・機械式駐車場には、屋外・屋内、地上・地下等の様々なタイプがあるため、修繕工事費は個別性が強いことに留意する。
・2段(ピット1段)昇降式:6,450円/台・月
・3段(ピット2段)昇降式:5,840円/台・月
・3段(ピット1段)昇降横行式:7,210円/台・月
・4段(ピット2段)昇降横行式:4,645円/台・月
・エレベーター方式(垂直循環方式):5,235円/台・月
 
●建物の規模と工事金額
・一般的に建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる場合があり、規模に応じて修繕工事費の水準が異なる傾向がある。
・超高層マンション(一般に20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にある。
〇20階未満
 建築延床面積     月額の専有面積当たりの平均額
・5,000m2未満       335円/m2・月
・5000~10,000m2未満   252円/m2・月
・10,000~20,000m2未満  271円/m2・月
・20,000m2以上      255円/m2・月
〇20階以上
・            338円/m2・月
 
●屋外が広い場合
・給水管や排水管等が長くなるほか、アスファルト舗装や街灯等も増えるため、これらに要する修繕工事費が高くなる傾向がある。
その他参考情報
●減価償却用資産の耐用年数等
 
〇建物(住宅用の場合)
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの:47年
・れんが造・石造・ブロック造のもの:38年
・金属造のもの(4mm超、3~4mm、3mm以下):34、27、19年
・木造・合成樹脂造のもの:22年
・木骨モルタル造のもの:20年
 
〇建物付属設備
・電気設備(照明設備を含む。)の蓄電池電源設備:6年
・電気設備(照明設備を含む。)のその他:15年
・給排水・衛生設備、ガス設備:15年
・昇降機設備(エレベーター);17年
・消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備:8年

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