防水改良工事の概要

マンションの防水層の改良工事についてまとめました。
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
防水仕様をグレードアップして修繕周期を延伸
〇露出アスファルト防水の仕様をグレードアップ
・一般的に用いられているストレッチルーフィング材に代えて、ゴムアスファルト系シートを採用することにより、修繕周期を延伸させることができる。
・塗膜防水、シート防水でも同様のグレードアップをすることができる。
断熱改修
1)内断熱と外断熱
 
〇内断熱のデメリット
・高経年マンションでは、コンクリートスラブ下に断熱材を打ち込むスラブ下断熱(内断熱)工法が一般的。
・防水層及びスラブが直達日射や外気の影響を受けるため、最上階住戸では夏は暑く、冬は寒いという室内環境となっている。
・スラブ躯体面の室内側に結露が発生する心配もある。
 
〇外断熱のメリット
・近ごろのマンションでは、屋上スラブの外断熱防水が一般的。
・最上階住戸の断熱性能を向上。
・直達日射による屋上コンクリートスラブの温度伸縮を低減。
・結露による不具合から躯体を保護。
 
2)外断熱工法
 
①スラブ上断熱防水露出工法
・コンクリートスラブ上に断熱材を敷き込み、アスファルト露出防水で押え、砂付きルーフィング仕上げorシルバーコート仕上げとする工法。
・スラブに蓄熱せず、最上階住戸の温度変化や結露も減少するが、アスファルト露出防水は熱劣化の影響を受けやいため耐久性は大きくない。
・過重は減少し、漏水箇所が発見しやすく簡単に修繕できるが、断熱材を取替えることはできない。
 
②防水層断熱ブロック押え工法
・コンクリートスラブ上にアスファルト防水を施し、これに断熱材を敷き込み断熱コンクリートブロックで押える工法。
・スラブに蓄熱せず、最上階住戸の温度変化や結露も減少し耐久性に優れる。
・断熱ブロックは簡単に取り外しができ、漏水箇所が発見しやすく修繕も簡単にできる。
・ただし、①よりもコストは高くなり、積載荷重も増加することになる。
 
③防水層断熱コンクリート押え工法
・コンクリートスラブ上にアスファルト防水を施し、これに断熱材を敷き込み現場打設コンクリートで押える工法。
・一般的には、屋根面歩行用防水工法。
・コンクリートスラブは蓄熱せず、最上階住戸の温度変化や結露も減少し、耐久性にも優れるが、断熱ブロックのように簡単に取り外せないため修繕は手間がかかる。
・コストも比較的高くなる。
・積載荷重は増加するので、既設部分に押えコンクリート層がある場合のみ、それを撤去すれば採用できる。
 
〇注意点
・耐久性、修繕容易性、コスト、積載荷重増加の可能性等の点から最も適した工法を選択する必要があるが、構造的に積載荷重増加の可能性があれば、耐久性や修繕容易性に最も優れている②防水層断熱ブロック押え工法が望ましい工法であると考えられる。
笠木等の材質のグレードアップ
1)パラペットと笠木
 
●笠木とは?
・建築業界では、防水工事を施工するパラペット(屋上などに設けられる手摺壁)等の頂部に施工する仕上材の事、金属製または人造研ぎ出し石、セメント製などの材料の事を”笠木”と言ってきた。
 
●パラペット(コンクリート)のクラックによる漏水事故のリスク
・コンクリートの劣化やクラックの発生によって笠木も劣化し漏水につながる可能性がある。
〇モルタル笠木
・気温変化や吸水・乾燥によりひび割れ・肌分れを起こす。
〇塗膜防水
・ひび割れや下地からの剥離が発生。
〇スチール笠木(本体アンカー固定)
・腐食やジョイント部のシーリング劣化が起こりやすくなる。
〇コンクリート打放し
・コンクリートの中性化が早く、劣化しやすくなる。
 
2)板金笠木(密閉式、シール式)
 
・板金工が工場で曲げ加工した部材を、現場に合わせて制作するもので、パラペットの上に密閉式の台形の箱を被せるもの。
 
〇板金笠木のデメリット
・シーリング材が劣化しやすく、亀裂によって毛細管現象を誘発し、笠木内部に雨水が溜まる危険性がある。
・空気の対流不足により、結露しやすい為、アルミニウムが裏面から腐食する危険性がある。
・笠木の水切り機能がなく、外壁を雨水で汚す。
・製品精度や施工精度が均一でない。
・下地材(スチール)と笠木(アルミ)との接触により、電蝕作用が生じて、笠木が腐食を起こす
 
3)オープン式のアルミ笠木の概要
 
・はめあい方式で笠木本体が躯体と絶縁されているため躯体挙動の影響を受けない。
・オープンジョイント方式のため、パラペットコンクリートの膨張収縮を吸収する。
・笠木裏面とパラペットの間に空気の対流があるので、結露の発生が少なく、腐食や劣化を防止する。
・下地材もアルミを使用し、笠木の腐食を防止する。
・既製品の為、均一な製品精度と施工精度が維持できる。
・電解着色・塗装仕上げによりカラフルな仕上げが可能。
・対候性・耐食性に優れ、変質・変色しにくい。
 
4)笠木等の材質のグレードアップ
 
〇アルミ製品に取替
・パラペット上部の既存笠木がモルタル製・コンクリート製・スチール製の場合、劣化やひび割れ等により漏水のおそれがあるため、アルミ製品に取替え、耐久性を向上させる。
 
〇パラペット立上り部などのシール性改良
・パラペットの立ち上がり防水層の末端部分や切壁面立ち上がりからの雨水の浸入がある場合、水切りあごの下端にアルミ製の水切りを設け、周囲にシーリング材を充填することなどが考えられる。
 
〇排水能力の向上
・屋上の床排水トラップの排水能力に問題がある場合、床排水トラップの増設を行い(増設できない場合はサイズアップするなどし)、目詰まりを防ぐためにステンレス製の大型ストレーナー(排水に含まれるゴミ等を捕集する金属製フィルター)を設置する。
・溢れ出た雨水等の排水対策として、オーバーフロー管の新設も同時に行う。
防水層のない部位に新規防水
1)目的、概要
 
・バルコニー、開放廊下・階段の床、庇、梁型天端等は、建設当初は防水層がない場合が多く、あっても防水モルタル程度。
→防水層のない部位やモルタル防水部について、コンクリート下地をケレンし、修繕及び下地調整を行った上で、防水を施す。
 
・コンクリート下地をケレンし、劣化・損傷箇所を修繕した上で、防水層のない部位への新規防水を施す。
 
・開放廊下と一体的なパイプスペース・メーターボックス内や給湯器置場の床部にも新規防水を施すことが望まれる。
 ただし、狭いスペースにパイプ類があるため、施行が困難な場合や十分な防水の保証ができない場合も考えられる。
 
2)注意点
 
①階段室型住棟の外気に開放されている階段室の床防水
・日常の歩行があるため防水仕様の選択には配慮を要す。
・最近では、速乾性のウレタン塗膜防水が多く採用されている。
 
②外気に開放されている廊下の床
・防音・消音の問題からクッション性を重視する必要がる。
・最近では、塗膜防水に長尺塩ビシートを併用する方法が採用されている。
 
③ルーフバルコニー
・下階が住戸等であるため、屋上防水改修に準じる。
・原則として押え層のある断熱防水等を施す。
 
④改修後に水たまり
〇改修前
・降雨後、水が溜まってもスラブに浸透してしまいあまり目立たなかった。
〇改修後
・水溜まりの解消は蒸発を待つのみになり、水溜まりが目立つようになる場合がある。
〇注意点
・施工上の注意点
・排水溝に向けた水勾配を、施工精度を考慮して1/50程度以上の水勾配を確保してからウレタン塗膜や長尺塩ビシートを施工するようにする。
階段室・開放廊下の雨水の吹き込み対策・排水対策
・階段室踊り場への雨の吹き込みが問題となる場合、階段室踊り場に排水溝を設けることや、踊り場開口部に庇を新設(アルミ板材の使用により庇の形状や勾配を加工したり、焼き付け塗装により仕上げ感を高めたりすることにより、外観にアクセントを付けることもできる)することが考えられる。
・開放廊下への雨水の吹き込みが問題となる場合には、吹き込み防止用のスクリーンを設置する。
・開放廊下の排水が問題となる場合は、排水溝を設ける。また、排水溝の水はけが悪い場合は、コンクリート立上がり部に切欠きを設けることが考えられる。

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