防火に関する用語、材料、設備、性能、構造の基準

〇建築基準法:2条、建築基準法施行令:107-116条
〇過去問
・管理業務主任者 2006問17、2007問17、2009問17、2012問21、2014問17、2015問17、2020問17
・マンション管理士 2019問21
 
 
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防火規制に関わる用語
1)延焼のおそれのある部分(法2条6号)
 
・隣接する建築物からの火災が燃え移りやすい範囲をいう。
・建築物の延焼というのは、2つの建築物の相対的な位置によって決まる。
→基準となる線からの距離が、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。
〇基準となる線
・隣地に関する基準となる線:隣地境界線。
・道路に関する基準となる線:道路中心線。
〇同一敷地内に2以上の建築物がある場合
・延べ面積の合計が500m2以内:一つの建物とみなす。
・延べ面積の合計が500m2超:相互の外壁間の中心線からそれぞれに適用される
 
〇例外
・次のいずれかに該当する場合は除く。
a)防火上有効な公園、広場、川等の空地、水面、耐火構造の壁がある場合。
b)建築物の外壁面と隣地境界線などとの角度に応じて、周囲から発生する火災時の火熱により延焼するおそれがないものとして国土交通大臣が定めた部分。
※火源に対して角度があると、同じ距離でも熱影響が小さいため。
遮炎性能、防火設備
1)防火設備
 
●防火設備とは?
 
・”防火設備”とは、外壁の延焼のおそれのある部分の開口部や防火区画の開口部に使用されるもので、主として延焼や火災の拡大を防ぐための設備。
・具体的には、防火扉、防火シャッターに代表される”防火戸”や、水幕を形成する”ドレンチャー”などがある。
・防火設備が設置される開口部の位置に応じて、加熱時間や炎を遮る方向などの要求性能が異なっている。
 
●防火設備と特定防火設備
 
〇防火設備(法2条9号の2ロ、令109条)
・隣地の火災等による建築物の延焼を防ぐためのもの。
・主に延焼のおそれのある部分に用いられる。
例)アルミサッシに網入りガラスを入れたもの(国土交通大臣の認定を受けたものに限る)が一般的。
 
〇特定防火設備(令112条1項)
・屋内から火災が発生した場合に、火災の拡大を防ぐためのもの。
・主に、大規模建築物の内部に用いられる。
例)住戸の玄関扉のような鋼板製のものが該当。  
●防火設備の要求性能
 
①特定防火設備
・加熱時間:60分間
・要求面:両面
・開口部の位置:防火区画
・告示仕様:H27国交告251号
②防火設備(両面遮炎)
・加熱時間:20分間
・要求面:両面
・開口部の位置:耐火・準耐火建築物
・告示仕様:H12建告1360号
③防火設備(片面遮炎)
・加熱時間:20分間
・要求面:片面
・開口部の位置:防火・準防火地域の準延焼防止建築物、特定避難時間を考慮した準耐火構造の建築物
・告示仕様:令元年国交告196号
 
2)遮炎性能
 
●遮炎性能とは(法2条9号の2)
・通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能。
 
●遮炎性能(両面遮炎)に関する技術的基準(令109条の2)
・防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内と屋外の両面)に火炎を出さないものであることとする。
 
●遮炎性能(片面遮炎)(令元年国交告196号)
・建築物の周囲において発生する通常の火災における火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)に火炎を出さないものであることとする。
不燃材料
1)不燃性能(法2条9号)
 
通常の火災による火熱が加えられた場合に次の条件を満たしていること。
・非燃焼性:燃焼しない
・非損傷性:防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じない。
・非発煙性:避難上有害な煙又はガスを発生しない。
 
2)”不燃材料”、”準不燃材料”、”難燃材料”とは
 
・通常の火災時の火熱に対して
多少の溶融・赤熱を生じることはあっても、
“燃焼現象や防火上有害な損傷を生じることがなく”、かつ、
“避難上有害な煙・ガスを発生しない”性能を有する建築材料
として、建築基準法上で定義されている。
 
・通常の火災による火熱が加えられた場合に、上記の不燃性能を発揮することができる加熱時間の長さに応じて、性能を以下のとおり規定している。
・加熱時間の長さによって性能を規定している関係上、各材料は以下のような包含関係にある。
 不燃材料<準不燃材料<難燃材料
 
①不燃材料
〇性能
・加熱開始後20分間、不燃性能を満たしている建築材料
〇告示仕様(代表的な材料)
・コンクリート・れんが・瓦
・陶磁器質タイル・金属板
・モルタル・ロックウール
・厚さ5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
・厚さ12mm以上の石膏ボード等
 
②準不燃材料
・準不燃材料は、全くの不燃材料だけで構成されたものではなく、若干の可燃材料(木毛、原紙など)を含むものであるが、それらの可燃材料は、ほとんど燃えることなく、不燃材料とほぼ同等の防火性能を有する。
・若干の可燃材料を含むのは、これらは主として仕上材料の下地として用いられるが、下地材料は、軽い、切れる、釘を打てる、曲げることもできる、仕上材の接着性が良い等の諸性質を必要とするため。
・プラスターボードは、原紙がプラスターに密着しているので、それ自体火炎にあたっても燃えることはない。
・上記のような防火性能を有するため、建築基準法上の内装制限の規定では、不燃材料とほとんど同じ扱いをされている。
〇性能
・加熱開始後10分間、不燃性能を満たしている建築材料
〇告示仕様(代表的な材料)
・厚さ15mm以上の木毛セメント板
・厚さ9mm以上の石膏ボード等
 
③難燃材料
・難燃性を付与するには、薬品に浸漬したり、薬品を予め混入しておく等の方法をとる。
・合板等は全て可燃性の材料であるが、それを薬品の力によって燃えにくくしているだけなので、長時間にわたって難燃性を発揮できるものではない。
・初期火災時において、難燃性がフラッシュオーバーを遅らせて、避難を容易にしたり、火勢を押える効果はあるが、やがて薬品の効果がなくなると、後は可燃材料と変わらなくなってしまうので、難燃材料は、使用できる箇所が制限されている。
〇性能
・加熱開始後5分間、不燃性能を満たしている建築材料
〇告示仕様(代表的な材料)
・厚さ5.5mm以上の難燃合板
・厚さ7mm以上の石膏ボード等
耐火構造、準耐火構造、防火構造
1)耐火構造、準耐火構造、防火構造の概要
 
①耐火構造
・”通常の火災”が終了するまでの間、建築物の”倒壊及び延焼を防止”。
・対象部:主要構造部
・対象の火災:建物周囲からの火災、建物内部からの火災
・主に耐火建築物に求められる性能。
・耐火性能:2時間
・鉄筋コンクリート造など
 
②準耐火構造
・”通常の火災”による”延焼を抑制”。
・対象部:主要構造部
・対象の火災:建物周囲からの火災、建物内部からの火災
・主に準耐火建築物に求められる性能。
・準耐火性能:45分間、60分間、75分間、90分間
・木造なども含まれる。
 
③防火構造
・”建築物の周囲において発生する通常の火災”による”延焼を抑制”
・対象部:外壁と軒裏
・対象の火災:建物周囲からの火災
・準防火地域の木造建築物や大規模木造建築物に用いられる。
・防火性能:30分間
・木造など。
 
2)耐火構造
 
●耐火構造とは(法2条7号)
・主要構造部が耐火性能を有するもの。
・鉄筋コンクリート造、れんが造など。
・国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものor国土交通大臣の認定を受けたもの
 
●耐火性能(令107条)
・通常の火災が終了するまでの間、当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。(法2条7号)
 
①主要構造部の非損傷性
・通常の火災による火熱が、主要構造部の各部分に、ある一定時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
 ・屋根・階段:30分
 ・最上階から15階以上の柱・はり:3時間(耐力壁と床は2時間)
 ・最上階から5階~14階の耐力壁、柱、床・はり:2時間
 ・最上階から4階の耐力壁、柱、床・はり:1時間
②壁・床の遮熱性
・1時間の火熱を受けても、加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)が可燃物燃焼温度以上に上昇しないもの。
※可燃物燃焼温度
・加熱面以外の面において、平均160℃、最高200℃のいずれかに達すること。
③外壁・屋根の遮炎性
・屋内火災による1時間の火熱を受けても、屋外に火炎を出す原因となるような亀裂その他の損傷が生じないもの。
 
3)準耐火構造
 
●準耐火構造とは(法2条7の2)
・主要構造部が準耐火性能を有するもの。
・国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものor国土交通大臣の認定を受けたもの
・耐火構造よりは緩いが一般的な準耐火性能(45分間)よりも厳しい基準として、90分/75分/60分準耐火構造がある。
 
●準耐火性能(45分間)(令107条の2)
・通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。(法2条7の2)
注)耐火性能の場合と異なり、”建築物の倒壊の防止”というのが含まれていない。
 
①主要構造部の非損傷性
・通常の火災による火熱が、主要構造部の各部分に加えられた場合に、加熱開始後ある一定時間、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
 ・屋根・階段:30分
 ・それ以外の主要構造部:45分間
②壁・床・軒裏の遮熱性
・45分間の火熱を受けても、加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)が可燃物燃焼温度以上に上昇しないもの。
③外壁・屋根の遮炎性
・屋内火災による45分間の火熱を受けても、屋外に火炎を出す原因となるような亀裂その他の損傷が生じないもの。
 
●1時間準耐火構造(令112条2項)
・準耐火構造のうち、準耐火性能が1時間のもの。
・これらの建築物は、大断面木材などを活用して、木造にできる。
〇関係する主な建築物
・防火地域の建築物(延焼防止建築物、階数3以下)
・大規模木造建築物等(階数3以下)
・特殊建築物(3階建て共同住宅等)
 
●75分間準耐火構造
・準耐火構造のうち、主要構造部の壁・柱・床・はり・屋根の軒裏の準耐火性能が75分間のもの。
〇関係する主な建築物
・防火地域の建築物(延焼防止建築物の外壁・屋根の軒裏、階数3以下)
・大規模木造建築物等(階数3以下)
 
●90分間準耐火構造
・準耐火構造のうち、壁・屋根の軒裏の準耐火性能が90分間のもの。
〇関係する主な建築物
・防火地域の建築物(延焼防止建築物の外壁・屋根の軒裏、階数3以下)
 
4)耐火構造と準耐火構造の相違
 
・耐火構造:”一定時間の火熱が加えられた場合であっても、損傷などが生じない構造”として、性能が定められている。
・準耐火構造:”一定時間の火熱が加えられている間、損傷などが生じない構造(火熱が加えられなくなった後は、損傷などが生じることを許容)”として、性能が定められている。
 
          加熱中             加熱終了後
耐火構造  非損傷性・遮熱性・遮炎性が確保  非損傷性・遮熱性・遮炎性が確保
準耐火構造 非損傷性・遮熱性・遮炎性が確保       -
 
●耐火構造の構造方法の概要(鉄筋コンクリート造の場合)
 
〇耐力壁である間仕切壁の構造方法
・通常の火災による火熱が2時間:厚さが10㎝以上のもの
・通常の火災による火熱が1時間:厚さが7㎝以上のもの
 
〇非耐力壁である間仕切壁の構造方法
・上記と同様
 
〇耐力壁である外壁の構造方法
・通常の火災による火熱が2時間:厚さが10㎝以上のもの
・通常の火災による火熱が1時間:厚さが7㎝以上のもの
 
〇非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分の構造方法
・上記と同様
 
〇床の構造方法
・通常の火災による火熱が2時間:厚さが10㎝のもの
・通常の火災による火熱が1時間:厚さが7㎝以上のもの
 
5)防火構造
 
●防火構造とは(法2条8号)
・外壁と軒裏が防火性能を有するもの。
・国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものor国土交通大臣の認定を受けたもの
〇主な対象建築物
・準防火地域内の木造建築物
・大規模な木造建築物等の外壁・軒裏。
 
●防火性能(令108条)
・建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁or軒裏に必要とされる性能をいう。(法2条8号)
・”建物の周囲で発生する火災”のみを考慮したもので、”建物内で発生する火災”は考慮していない。
 
①外壁(耐力壁)の非損傷性
・建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間、構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊その他の損傷を生じない。
②外壁・軒裏の遮熱性
・建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間、加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)が、可燃物燃焼温度以上に上昇しないもの。
※耐火性能、準耐火性能と異なり、建物内で発生する火災は考慮していないので、外壁・軒裏の遮炎性は求められていない。
 
※耐火構造と防火構造
・耐火構造・準耐火構造というのは、”建物内で発生する火災”と”建物の周囲で発生する火災”の両方を考慮。外部からも内部からもどちらに対しても火災に対して強くないといけない。そのために建築物の倒壊防止と延焼の防止が必要となる。
・防火構造というのは、”建物の周囲で発生する火災”だけを考慮する。隣家からの火災に対して延焼を受けないようにする。
耐火建築物、準耐火建築物
1)耐火建築物
 
●耐火建築物とは
 
・主に、主要構造部:耐火構造 + 延焼のおそれのある部分の開口部:防火設備
注)耐火建築物は、”主要構造部を耐火構造とした建築物”とは異なり、開口部について一定の性能が要求されている建築物。
・火災の終了後も損傷しない、高い性能を有する建築物
・対象の用途、立地、規模
 ・不特定多数の人が集まる大規模な建築物等(特殊建築物)
 ・建物が密集した地域で一定規模以上の建築物(防火・準防火地域)
 
●耐火建築物のタイプ(令108条の3)
 
以下のいずれかにタイプに適合したもの。
 
a)耐火構造タイプ
〇主要構造部
・耐火構造
〇延焼のおそれのある部分の開口部
・防火設備
 
b)耐火性能検証法タイプ
〇主要構造部
・耐火性能検証法により確かめられた構造
〇延焼のおそれのある部分の開口部
・防火設備
※耐火性能検証法で検証されれば、木造でも耐火建築物として認められる。
 
c)国土交通大臣の認定を受けたもの
・耐火性能検証法の基準に適合するものとして認定されたもの。
 
2)準耐火建築物
 
●準耐火建築物とは
・主に、主要構造部:準耐火構造 + 延焼のおそれのある部分の開口部:防火設備
・火災の継続中は損傷しないが、火災終了後には損傷する可能性がある建築物
・対象の用途、立地、規模
 ・不特定多数の人が集まる中・小規模の建築物等(特殊建築物)
 ・建物が密集した地域で中・小規模の建築物(防火・準防火地域)
 
●準耐火建築物のタイプ(令109条の3)
 
以下のいずれかにタイプに適合したもの。
 
a)準耐火構造タイプ(イ準耐火)
・主に木造。”木造 + 防火被覆”など
〇主要構造部
・準耐火構造
〇延焼のおそれのある部分の開口部
・防火設備
 
b)準耐火構造に準ずる構造のタイプ(ロ準耐火)
・主に非木造
①外壁耐火構造タイプ
・RC造の外壁、S造+ALC外壁
〇外壁
・耐火構造
〇屋根
・不燃化
〇延焼のおそれのある部分の屋根
・20分間の非損傷性能
〇延焼のおそれのある部分の開口部
・防火設備
〇柱、はり、床
・規制はない。木造も可。
 
②軸組み不燃タイプ

・軸組を鉄骨等の不燃材料としたもの
〇主要構造部
・柱・梁:不燃材料、その他:準不燃材料
〇屋根
・不燃化
〇延焼のおそれのある部分の外壁
・防火構造
〇3階以上の階の床orその直下の天井
・30分間の非損傷性能
〇延焼のおそれのある部分の開口部
・防火設備

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