マンションにおけるアスベスト除去工法

マンションの大規模修繕工事等で実施されるアスベスト除去工法についてまとめました。
 
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マンションにおける石綿の使用箇所
●石綿とは
・天然鉱物を由来とする極めて微細な繊維状の物質。
・以下の6種類が建材に使われている。
 クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、アンソフィライト、アクチノライト、トレモライト
 
●石綿の性能
・不燃性や断熱性などに優れ、少量混ぜるだけで性能が格段に良くなることから、建材には非常に多種多様に使われ、色々な建物に用いられてきた。
 
●マンションに置ける石綿の使用箇所
〇機械室やエレベータシャフト
・吹付け石綿等
〇天井
・吹付けバーミキュライト
・吹付けパーライト
・吸音天井板
〇内壁
・各種ボード
〇床
・ビニル床タイル
〇配管
・保温材
〇内壁、外壁
・仕上塗材
 
●一般のマンション大規模修繕工事における対象工事
・外壁仕上塗材
・アスファルト防水(既存防水層を撤去する場合)
・隔て板(交換等の工事が含まれる場合)
注)石綿含有仕上塗材の除去を伴わない外壁改修工事においても、足場をつなぐための穿孔やひび割れ補修に伴う切削等の作業に伴い、仕上塗材の切削等が行われる場合があるので注意する。
石綿含有建築用仕上塗材の改修
1)建築用仕上塗材の概要
 
●材料
・セメントや合成樹脂などの結合材と顔料、骨材が主原料
 
●施工方法
・吹付け、ローラー塗り、こて塗りといった多様な施工方法で凹凸模様やゆず肌模様などのテクスチュアに仕上げられる。
・下塗り、主材塗り、上塗りという工程で塗り重ねていくのが基本で、数㎜~10 ㎜程度の膜厚を形成する。
 
2)建築用仕上塗材と石綿
 
・石綿は微細な繊維で周りの物質とよく馴染み、少量入れるだけで性能が非常に良くなることから塗膜のひび割れや施工時の垂れを防止するためにクリソタイル(白石綿)を若干量(1%程度)添加していた時期があった。
 
●”吹付け工法”による仕上塗材と石綿則の”吹き付けられた石綿”
〇石綿則の”吹き付けられた石綿”の吹付け石綿
・石綿の含有率が数10%と高く、石綿含有の仕上塗材とは違う性質のもの。
・劣化と共に空気中にふわふわ舞ったり、こぼれ落ちたり、剥がれたりする場合があり、非常に飛散性が高いことから、建築基準法で規制対象にされている。
〇”吹付け工法”による仕上塗材
・仕上塗材の場合には、石綿の含有率は1%前後で、プラスチック系の結合材や顔料などほかの色々な成分の中に塗り固められた状態なので、性質や石綿の飛び易さの観点では成形板と見なすのが妥当。
 
●アスベスト対応の必要な改修工事等
〇対象工事
・2006年8月までに施工された石綿含有仕上塗材の改修工事、解体工事
・改修工事において、石綿含有仕上塗材の主材層を除去、または洗浄する場合
・解体工事において、石綿含有仕上塗材を除去する場合
 
〇対象範囲外
・石綿を含有していない一般的な仕上塗材の改修工事・解体工事
・上塗材が施工されていない薄塗材・厚塗材で、劣化が認められない既存仕上塗材層表面の汚れを水洗いまたは15MPa以下の高圧水洗で洗浄する処理
・上塗材が施されている複層塗材・厚塗材で、上塗材には白亜化、エフロレッセンス、剥がれ、膨れ、割れの何れかが認められるが、主材層は劣化しておらず、上塗材表面の汚れ、付着物または脆弱な上塗材の部分を、水洗いもしくは15MPa以下の高圧水洗(集じん装置付き高圧水洗含む)で洗浄・除去する処理
・過去に実施された改修工事において、石綿含有仕上塗材の表層に石綿を含有しない改修塗装系が施されており、既存仕上塗材層の洗浄・除去に当たって石綿含有仕上塗材主材層に全く影響を及ぼさない処理
 
3)建築用仕上塗材の改修
 
●仕上塗材の改修工法
①上塗り材の表面のみが劣化している場合
・傷んだ部分だけケレンをして上塗り材を塗り直す
②主材層が劣化して膨れや割れ、剥がれなどが出ている場合
・仕上塗材を全面撤去して改めて塗り直す
③主材層が部分的に劣化している場合
・悪い部分を撤去して再施工、模様合わせをして上塗り材の全面塗装をする。
 
●建築用仕上塗材の代表的な改修例
〇薄付け仕上塗材
・高圧水洗(15MPa)で仕上塗材層を部分除去し、薄付け仕上塗材で改修
・全面除去し、仕上塗材等で改修
〇複層仕上塗材
・高圧水洗で上塗材、主材を部分除去し、可とう形改修用仕上塗材で改修
・主材まで劣化した部分を除去し、除去部分に模様付けし、上塗材を全面塗装
・劣化した上塗材を洗浄し、上塗材を全面塗装
〇厚付け仕上塗材
・洗浄、上塗材再塗装
・主材の部分的除去、部分的模様付け等
石綿含有建築用仕上塗材の除去工法
※国立研究開発法人建築研究所、日本建築仕上材工業会「建築物の改修・解体時における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針」平成28年4月28日
※厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局大気環境課「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」令和3年3月
 
①水洗い工法
・既存仕上塗材層を除去する必要がなく、表面の付着物や粉状物を清掃する場合に適用されるケレン工法。
・デッキブラシやウェス等で水洗する。
 
②手工具ケレン工法
・皮すき、スクレーパ、ワイヤブラシ等で既存仕上塗材層の劣化部分を除去する工法。
・ディスクグラインダーケレン工法と比較すれば、相対的に発じんは少ない。
 
③集じん装置併用手工具ケレン工法
・手工具ケレン工法を行うと同時に、高性能真空掃除機の吸入口(粉じん飛散防止カバー付き)を利用して、ケレン部分の局所集じんを行う工法。
 
④高圧水洗工法(15MPa 以下、30~50MPa 程度)
・専用の機器によって圧力をかけた水を既存仕上塗材層に噴射し、既存仕上塗材層表面の汚れの洗浄や仕上塗材層の除去に用いられる工法。
・15MPa 以下の吐出圧力による高圧水洗工法は、一般的に既存仕上塗材層表面の粉状物や付着物を除去・清掃する工法であるが、既存仕上塗材層表面が経年劣化などにより脆弱な場合や、既存仕上塗材層と下地との付着力が著しく低下している場合などには、既存仕上塗材層が部分的に除去される。
・30~50MPa 程度の吐出圧力よる高圧水洗工法は、既存仕上塗材層を全面的に除去する場合または部分的に既存仕上塗材層を除去する場合などに用いられる工法。
 
⑤集じん装置付き高圧水洗工法(15MPa 以下、30~50MPa 程度)
・飛沫防止カバーを取り付けて吸引する工法で、壁面等から跳ね返った水が周辺に飛散しないため、石綿含有仕上塗材の除去等にあたっては有効。
・ただし、開口部回りや入隅など飛沫防止カバーによって高圧水が作用しない部分については、剥離剤併用手工具ケレン工法、剥離剤併用超音波ケレン工法、集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法など、他の除去工法を併用するとよい。
 
⑥超高圧水洗工法(100MPa 以上)
・30~50MPa 程度の吐出圧力よる高圧水洗工法とほぼ同様な目的で使用されるが、既存仕上塗材層に作用する力が大きいので堅固な厚塗材C(セメントスタッコ)など比較的除去が難しい場合の既存仕上塗材層の除去に適している。
・ただし、コンクリートに貫通ひび割れがあると漏水する場合があるので、事前にひび割れを補修しておくことが肝要。
・開口部回りなど他の建材との取り合い部分では、他の建材を損傷する可能性があるので、部分的に他の除去工法との併用を検討したほうがよい。
 
⑦集じん装置付き超高圧水洗工法(100MPa 以上)
 
⑧超音波ケレン工法(HEPA フィルター付き掃除機併用含む)
・機器の刃先に発生する高速な音波の微振動によって仕上塗材層を除去する工法。
・すべての既存仕上塗材に適用できるが、仕上塗材層を機器の刃先で削る方法なので作業効率は低い。ただし、入隅や開口部回りなどの狭い部分にも適用できるので、適用部位や箇所に応じて用いるとよい。
・作業時に粉じんが発生するので、粉じんの飛散を防止する場合にはHEPAフィルター付き掃除機で粉じんを吸引しながら作業を行うと良いが、1人工でケレン作業と吸引作業を同時に行うことは困難であるため、2 人1 組で作業を行うなど検討を要する。
 
⑨剥離剤併用手工具ケレン工法
・剥離剤を有機系の既存仕上塗材層表面に塗付けて軟化させ、柔らかくなった仕上塗材層をスクレーパや皮すきなどの手工具でケレンする工法。
・防水形あるいは可とう形の仕上塗材など比較的有機量の多い仕上塗材の除去に適している。
・開口部回りなど機器を使用する工法では除去できない部分などへも適用できる。
・セメントやけい酸塩を結合材とする無機系の仕上塗材には効果がないので適用できない。
 
⑩剥離剤併用高圧水洗工法(30~50MPa 程度)
・剥離剤併用手工具ケレン工法の手工具のかわりに高圧水で既存仕上塗材層を除去する工法。
・エポキシ系の反応硬化形仕上塗材など、下地への接着力が強い既存仕上塗材層の除去に適している。
 
⑪剥離剤併用超高圧水洗工法(100MPa 以上)
 
⑫剥離剤併用超音波ケレン工法
・剥離剤で軟化させた既存仕上塗材層を超音波ケレン機でケレンする工法。
・剥離剤併用手工具ケレン工法では作業効率が悪い場合、高圧水洗が併用できない場合、開口部回り等での作業に有用。
 
⑬ディスクグラインダーケレン工法
・高速回転する電動器具にディスクを取り付けて研磨する工法で、多量の粉じんが発生するため石綿含有仕上塗材の除去にあたっては、作業場隔離による工事が必須となる。
 
⑭集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法
・集じん装置によって粉じんの飛散を防止する工法。
・実験結果では集じん装置を取り付けることによって、集じん装置を取り付けない工法に比べ、1/10000 程度の総繊維数濃度に低減している。
 
⑮その他(石綿則第6 条第1 項に基づく同等以上の効果を有する工法)
 
●一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)「現居住共同住宅外壁修繕工事における石綿含有仕上塗材対応ガイドライン」2019年6月の処理工法
 
【削孔補修等】
〇壁つなぎドリリング
① 一般ハンマドリル
② 水循環式無振動ドリル
③ 集じん機付きハンマドリル
〇樹脂注入ドリリング
④ 一般ハンマドリル
⑤ 水循環式無振動ドリル
⑥ 集じん機付きハンマドリル
 
【ひび割れ補修】
〇Uカットシール
⑦ 一般Uカット工法
⑧ 集じん機付きUカット工法
〇低圧樹脂注入
⑨ 石綿対応工法
 
【欠損箇所補修】
〇手ばつり
⑩ 通常工法
⑪ 湿潤工法
⑫ 集じん機併用工法
〇機械ばつり
⑬ 通常工法
⑭ 集じん機併用工法
 
【塗膜剥離】
〇サンダーケレン
⑮ 一般工法(集塵無し)
⑯ 集じん機付工法
〇超音波ケレン
⑰ 一般工法
⑱ 剥離剤併用工法
〇手ケレン
⑲ 剥離剤併用工法
⑳ 湿潤工法
〇高圧洗浄
・集じん装置付き
除去工法の事例
1)穿孔
 
●水循環式無振動ドリル
・足場組立時に塗膜剥離剤を用いて除去することは困難なため、HEPAフィルター集じん機能付き振動ドリルや水循環式無振動ドリルを使用。
・水循環式無振動ドリルを用いた場合は、排水は石綿が含有しているため、セメント等で固化し、特別管理産業廃棄物として処分する。
 
2)ひび割れ補修
 
●Uカット
・石綿含有仕上塗材を除去してからUカット。既存仕上塗材を残したままサンダーでU字溝を施工すると隔離養生の対象となる。
 
3)欠損箇所補修
 
・切込み部や斫り部のアスベスト含有塗膜を事前に剥離する
 
4)塗膜剥離
 
●湿式工法
・剥離剤併用高圧水洗工法(30 ~ 50Mpa)や集じん装置超高圧水洗工法(100Mpa以上)の湿式工法は、石綿含有建築用仕上塗材を除去する面積が多い場合に有効な施工方法。
 剥離剤併用手工具ケレン工法では除去できない下地調整材に石綿が含有している場合においても有効となる工法。
・湿式工法の場合、洗浄汚水を適切に回収して処理する必要がある。廃石綿を特別管理産業廃棄物として処分する際には、セメント等で固化する必要がある。
・洗浄汚水の回収処理のため、高圧洗浄車のほかに強力吸引車、水処理機、ノッチタンクなど機械類の設置が必要となる。
 
●剥離剤併用手工具ケレン工法
・剥離剤を塗布して所定のオープンタイムを確保した後に手工具を用いて、塗膜を除去。
・除去した塗膜や養生材は特別管理産業廃棄物として2重梱包の上、処分。
 
●剥離剤併用温水高圧水洗工法(30 ~ 50Mpa)
・上塗り材に石綿が含有されていた場合に有効。
・剥離剤で塗膜を湿潤させ、水を用いて除去することから粉じんの発生を大幅に抑制することができる。
・除去の歩掛りが多いことから、他の工法に比べ安価、且つ工期短縮に貢献できる。また、剥離残しのない仕上げができることが特徴。
 
●集じん装置付き超高圧水洗工法(100Mpa 以上)
・上塗り、下地材共に石綿を含有している場合に有効で、特に剥離剤が効かない無機系下地材に力を発揮する。
・超高圧で噴射する水圧による除去と同時に、破砕物を集じんすることから粉じんの飛散抑制が可能となる。
 
●既存シーリングの撤去
・既存仕上塗材を撤去後、シーリング材を撤去。
 
●有機系塗料の剥離
・剥離剤で塗膜を軟化し、手工具で削り取る。
→その際、粉塵をHEPAフィルター付集塵機で収塵する。
→塗膜除去面に浸透性固化材を塗布し、残留物を固化する。
 
●無機系塗料等の剥離(バルコニー上裏全面剥離)
・剥離剤が効かない無機系塗料や下地調整材は集塵装置付ディスクグラインダーでケレンする。
→作業場所をビニルシート等で囲い作業場の外への粉塵飛散を防止する(飛散防止ビニルシートは粉塵と共に特別管理産業廃棄物として処分する)。
→塗膜除去面に浸透性固化材を塗布し、残留物を固化する。
 
●集じん装置付きディスクグラインダー工法
・壁面に密着していれば集じん能力が発揮されるが、作業方法によっては粉じんが漏れ出る可能性があるため飛散防止への配慮が一層必要となる。
 
●剥離剤併用超音波ケレン工法
・石綿含有無機系下地材の場合、剥離剤が反応しないため上塗り塗膜を削った際に粉じんが発生する可能性があるなど、注意が必要。
 
5)その他の注意点
 
●保護衣を着用する工法(集じん装置付きディスクグラインダー工法も含む)
・専用の更衣室を用意するなど飛散防止対策が必要となるので、対象建築物の敷地の大きさ等の条件によって選定可能な工法。

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