マンションの給水方式の変更

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給水システムの変遷
①1960年(昭和35年)~
・郊外団地型:高架水槽棟
・1棟型:高置水槽
 
②1970年(昭和45年)~
・従来の高置水槽方式のほかに加圧給水方式(圧送方式)が普及してくるが、小規模のマンションでは圧力タンク方式が主流、一部団地型マンションではポンプ圧送方式も採用され始めた。
 
③1980年(昭和55年)~
・80年代に入り圧送ポンプが本格的に採用されはじめる。
 可変運転が可能なポンプ圧で直接給水する方式。
 
④1990年(平成2年)~
・98年頃より直結増圧方式が出始める。
・90年代に入り、住戸内配管に”さや管ヘッダー工法”を水廻りに採り入れらるようになった。
給水方式の種類、特徴
(1)水道直結方式
 
・貯水槽を設けず、水道本管から各戸に直接給水。
・受水槽・高置水槽等が不要で清掃・点検及び維持管理費用がかからない。
 
1)直圧直結方式
 
・道路内の水道本管から水道管の水圧により直接供給する方式。
・低層マンションでは利用できる。
〇メリット
・停電時でも断水にならない。
〇デメリット
・高台で圧力が低いところや夏季の使用水量が多い時期は水圧低下が起こる場合がある。
・水道本管断水時には供給ができない。
 
2)直結増圧給水方式
 
・増圧給水ポンプにより水道管の水圧に加圧し、水道本管から直接供給する方式。
・各水道事業者、地域で設置が可能な場所と不可能な場所がある。
・1日最大使用水量が50m3以下で10階程度までであればマンションでも利用できる。
〇デメリット
・増圧給水ポンプの点検及び維持管理費用が必要。
・増圧給水ポンプは東京都では年1回の法定点検が義務付け。5~7年でオーバーホール(分解整備)、10~15年で交換が目安。
・停電時には上層階で断水が生じる。
 
(2)貯水槽方式
 
・貯水槽、高置水槽の定期的な清掃、点検、水質検査が必要。
・貯水槽、高置水槽の外面の保護塗装や付帯機器類(ボールタップや定水位弁等)の交換が定期的に必要。
 
1)高置水槽給水方式
 
・水道本管からの水をいったん受水槽に貯めポンプにより高置水槽に送り揚げた上で各戸に給水する方式。
〇メリット
・停電になった場合でも、高置水槽に貯められた水を利用することができる。
〇デメリット
・高置水槽等の設置スペースが必要。
 
2)加圧給水方式
 
・水道本管からの水をいったん受水槽に貯め、高置水槽を設ける代わりに加圧ポンプにより圧送給水する方式。
〇メリット
・災害時等に断水になった場合でも受水槽に貯められた水を利用することができる。
・高置水槽が不要であり、外観・美観上よく、積載荷重の軽減を図ることができる。
〇デメリット
・停電時にはポンプ等が停止するため給水できない。
専有部の給水・給湯配管
1)先分岐方式
 
・水道メータや給湯機等の上流側から下流側に向けて、太い配管から各水栓ごとに配管を細い配管に分岐させていく。
〇使用管種
・銅管、ステンレス鋼管、ライニング鋼管、、塩ビ管
〇管径決定
・先分岐のため、配管各区間毎の設計が必要であり、金属管の場合は流速の制約がある。
・流速が小さいため、必要に応じて空気溜まり対策を考慮する。
〇配管経路、施工性
・他配管や構造物との取合いや曲がり部・接合部に制約が多い。
・継手接合部が多く、熟練した接合技術を必要とするものが多い。
〇補修・更新性
・隠蔽部での接合が多く、腐食や接合不良等による漏水等のトラブル発生要因が多い。
・隠蔽部でのトラブル発生時の処置も煩雑になる(床や内装等の解体・復旧工事、トラブル発生箇所、原因の調査・特定)。
〇施工費
・使用管種、設計条件にもよるが、さや管ヘッダー式配管工法に比べて施工費用は安い。
〇湯待ち時間
・使用関連系統の管路の保有水量が多く湯待ち時間が長くなりやすい。
〇同時使用の湯量安定性
・管径を大きめにしておかないと他水栓の影響を受けやすい。
〇熱伸縮対策
・給湯配管では、配管条件(直線配管長さ、曲がり部や接合部などの固定状態等)により熱伸縮対策が必要。
 
2)さや管ヘッダー方式
 
・ヘッダーを住戸内に設置して、そのヘッダーから管をたこ足状に分岐して、各給水・給湯栓ごとにそれぞれ単独で接続する方式。
・接続部がヘッダーと給水栓など末端器具との接続部分だけであり、その間は接続部がないため隠蔽部での漏水の危険性が少ない。
〇ヘッダーの設置位置
・通常は、床面より高い位置で、日常の点検や接続部からの漏水などの異常発生時の発見が容易にできるような場所に設置するのが良い。
〇使用管種
・架橋ポリエチレン管、ポリブテン管
〇管径決定
・単独系統の為、設計が簡略で、流速も比較的大きく取れ、管径も小さくできる。
・流速が大きく取れるため、通常は空気溜まり対策は不要。
〇配管経路、施工性
・長尺のフレキ管のため配管経路の設定は自由度が大きい。
・接合部はヘッダー部と水栓部だけであり、現場施工は容易。但し、融着接合は施工管理を十分に行う必要がある。
〇補修・更新性
・隠蔽部での接合がないため、トラブル発生の要因は少ない。
・トラブル発生時や配管更新の場合も、床や内装に関係なく配管替えが容易にできる。
・ヘッダーと混合栓の間に樹脂製のさや管を敷設し、内装工事終了後に給水・給湯管を通すことにより事故を防止するとともに、更新しやすくしている。(導入前は、給水・給湯配管に銅管を使っていたが、内装工事の際に銅管に釘を打ち込んでしまって漏水事故が多発していた。)
〇施工費
・先分岐方式に比べて施工費は高い。
〇湯待ち時間
・小径管の単独系統のため管路の保有水量が少なく湯待ち時間が短い。
・ヘッダーと混合栓の間の管の容積が小さくなり、管内の湯が冷めてしまうことによるエネルギーロスも小さくすることができる。
〇同時使用の湯量安定性
・単独系統の為、湯量は安定して得られる。
〇熱伸縮対策
・通常は特別な熱伸縮対策は不要。
 
3)ループ方式
 
・給湯器具や給湯栓を、直列に連結しあい、配管全体をループ状にする配管方式。
・温水暖房配管等では一般的に用いられるが、住戸内給湯配管での採用例は少ない。
直結方式への変更
(1)給水方式変更の検討
 
〇直結方式への変更
・高経年マンションでは、高置水槽給水方式が一般的だが、受水槽・高置水槽の劣化を契機に、給水システムを受水槽・高置水槽を必要としない水道本管直結給水方式や直結増圧給水方式に変更することが考えられる。
※受水槽は非常時の防災用水槽に転用することもある。
 
〇加圧給水方式への変更
・災害時等に断水になった場合に受水槽の水を利用できるメリットを重視し、高置水槽を必要としない加圧給水(ポンプ圧送)方式への変更も考えられる。
 
〇増圧改修
・高層マンションでは、上階において水圧や水量の不足が生じることがあるため、増圧改修を行うことが考えられる。
・高置水槽方式の場合、上階部分を別系統としてブースターポンプ等により増圧する。
・既存配管が十分に増圧に耐え得るものであること、パイプスペース、屋上回りに配管の盛り替えを行うスペースがあることが施工条件となる。
 
(2)直結方式への変更
 
1)直結方式へ変更するメリット
 
〇飲料水の品質
・直接的に新鮮な水が供給される。
 
〇受水槽の定期清掃・点検費用が不要
・小規模マンションで増圧ポンプを設置する場合は、増圧ポンプの法定点検費用と同程度となる場合もあるので要注意。
※受水槽の清掃費用は受水槽のサイズに応じて高くなるが、増圧ポンプの法定点検費用はポンプのスペックが上がっても台数が同じであれば費用は同等のため。
 
〇電気代の削減
・受水槽方式では貯水槽で一度水圧を大気圧にしてしまうのに対し、直結増圧方式の場合は水道管の水圧を利用し、水圧が足りないときにだけ補助的に増圧ポンプの電気エネルギーを利用するので電気代の節約になる。
 
〇停電時の水利用
・停電時は、受水槽方式は受水槽内の水のみ利用可能だが、直結増圧方式の場合は、低層階は引き続き利用できる。
 
〇受水槽の交換費用
・先々の受水槽交換費用が不要となる。
・地下ピットに受水槽が置かれている場合は、屋外に設置されている場合と比較して交換費用が高くなり、直結方式に変更する費用より高くなる場合が多い。
 
2)直結方式への変更の時期
 
・既存の給水ポンプ(加圧ポンプ、揚水ポンプ)の取替の時期、受水槽の取替の時期を考慮して、給水ポンプや受水槽が交換時期となる前に変更の検討を行う。
 
・給水ポンプの取替目安:14~18年
・受水槽の取替目安:26~30年
※貯水槽が地下ピット内に設置されている場合は、紫外線による劣化が少ないので、一般的に寿命はもっと長くなる。
 
3)増圧ポンプが必要か検討
 
・一般的には、低層階の場合は増圧ポンプを使わなくても各部屋に給水可能で、その地域の水圧によって、増圧ポンプが不要な階数が異なる。
・水道局にそのマンションの地域水圧を確認し、その水圧で建物最上階の末端給水栓まで増圧ポンプなしで給水可能か水理計算を行う。
 
〇東京都の場合
①直圧給水方式(増圧ポンプ不要)
・建物階高制限:3階まで。
②増圧直結給水方式(増圧ポンプ必要)
・建物階高制限:なし。水理計算上可能な範囲
③特例直圧給水方式(増圧ポンプ不要)
・現状の配水管の水圧で、建物の4階以上へ直接給水できる場合に、増圧給水設備の設置を留保し、特例として直圧で給水する方式
・建物階高制限:なし。水理計算上可能な範囲
 
4)直結方式への変更工事の注意点
 
●引込管の増径が必要となる場合がある
〇引込管とは
・道路の下にある水道局の本管からマンション敷地境界付近にある親メーターまでの配管のこと。
 
〇増径が必要な場合
・一般的に配管の口径は、配管内を流れる水量に応じて決められるが、水量が少なければ口径は小さく、水量が大きければ口径を大きくする。
・受水槽方式の場合は、受水槽に水を貯めておき、水の使用量が多い朝夕のピーク時には貯まった水を使うため、引込管を流れる毎分あたりの水量は少なくてすみ、引込管の口径も小さくてすむ。
・一方、直結増圧方式の場合、タンクに貯めないので、朝夕のピーク時には、引込管を流れる水が受水槽方式の場合より多くなる。
→直結増圧方式にする場合、現状よりも引込管の口径を太くする必要があるのか、調査が必要とる。
 高経年マンションでは、竣工当初より、世帯あたりの人数が減っていることが多く、使用水量も竣工当初からは少なくなっていることが多いため、引込管の増径が必要ない場合も多い。
 
〇引込管増径工事
・引込管を増径する場合、道路工事も必要となるが、東京都では令和4年時点では東京都が負担で実施できる。
 
●配管の耐圧試験結果によっては、給水管の更新工事も必要
・直結増圧化に伴い、増圧ポンプより先の配管内の水圧が高くなり、それとともに、経年劣化等で水圧に耐え切れずに、配管が漏水事故を起こすリスクも高まる。
→直結増圧化を行う前には、配管の耐圧試験を受ける必要がある。
・耐圧試験で不合格だった場合、増圧ポンプから先、パイプシャフト内の水道メーターまでの配管の更新が必要となる。
・特に、パイプシャフト内の水道メーターまわりの配管は、異種金属接合で腐食しやすく、市町村によっては、直結増圧化に伴い、水道メーターまわりをメーターユニットに配管しなおすことを義務化している場合もある。
 
●メーターバイパスユニットの設置
・水道メーターは8年に1度取替えるが、直結方式の場合、親メーター取替えの際、受水槽がないため、全戸断水となってしまう。
→これを避けるため、行政によっては直結化する際には親メーターに、メーターバイパスユニットの設置を義務付けている。
 メータバイパスユニットがあると、メータ引換時にはバイパス側を通水させ、断水を回避できる。
 
●吸排気弁の設置
・立上り管の最頂部に、吸排気弁等を設置する。
・必要に応じて、配管上で空気の溜まりやすい位置にも、吸排気弁等を設置する。
直結増圧方式への変更、施工(東京都の場合)
特例直結方式への変更、施工(東京都の場合)
改良工事
給排水管改修工事の注意点

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