マンションの防水層の劣化・調査診断

マンションの防水の劣化、調査診断に関する技術情報をまとめました。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
防水の一般的な耐用年数
・屋上防水やシーリングの耐用年数は、材料の品質や仕様にもよるが、尾上防水層で概略10~20年程度、シーリング材で10年程度。
 
・防水材料の劣化と防水機能の劣化とは必ずしも一致しないことがあり、防水層の外観はそれほど劣化していないのに漏水したり、その逆の事象が発生することもある。
屋上防水の劣化
1)アスファルト防水、コンクリート押え工法
 
・アスファルト保護防水では、アスファルト防水層だけでなく、押さえの層の破損やエフロレッセンス(コンクリートが劣化し、表面が結晶化した白い物質が生じる)、伸縮目地の劣化が生じる。
・コンクリートの下部に防水層が存在するため、直接防水層を見る事は不可能で、表面の押さえコンクリートの劣化状況で推測する事になる。
・押さえ層に破断、損傷(ひび割れ、浮き、欠損、反り)
・雑草の繁殖。根がアスファルト防水層を突き破る可能性がある。
・笠木、パラペットのひび割れ。笠木が水切の役割を果たしていないため、雨水が伝わって防水層端末から浸入する恐れがある。
 
2)アスファルト防水、露出工法
 
・5年前後経過すると退色や磨耗が現れる。
・15年前後で重ね合わせ部分などに局所的に不具合が現れ、漏水の原因になる。
・紫外線や太陽熱、風雨の影響を直接受けるため、アスファルト防水層のふくれや硬化して破断に至るケースがある。
・全体的に保護塗装面が劣化。
・笠木、パラペット部の膨れ、亀裂。
・防水材料の継ぎ目部分の破断。
・勾配不良による水溜りの発生。
 
3)シート防水
 
・熱収縮で隅部で下地から剥離したり、下地との接合部で剥離が生じ易い。
・飛来物や鳥などにより、局部的な損傷を受け易い。
・破断や接合部分の接着不良などで防水機能に支障をきたす場合がある。
・防水層が破断していなくても、壁や笠木の取り合い部分などから雨水が浸入し、水枕状となることもある。
・接合部分のはがれ
・浮き、膨れ、シワ。
・破れ、穴あき。
 
4)ウレタン塗膜防水
 
・流動性のある塗膜が硬化して防水層を形成するため、膜厚の不足、塗り残りなどが劣化の原因となることが多い。
・下地の挙動に追従できずに破断。
・トップコートの劣化(色褪せ・退色)
トップコートは紫外線や加水分解などからウレタン防水層を保護するために塗られているが、トップコートが機能を消失すると、ウレタン防水層の劣化が進んでしまう。
バルコニー、階段・開放廊下防水の劣化
・床面の下に居室が無いために庇と同じ様な感覚で床面にコンクリートを打ち込み、防水モルタルで仕上げるのが一般的な施工方法だったが、最近は、ウレタン塗膜防水(バルコニーの場合)やシート防水などが行われている。
・バルコニーの床面は躯体の乾燥・収縮、又は地震などのよる挙動のため、クラックの発生は避けられない。
・打ち放しコンクリートの床面にはモルタルが塗られており、寒暖の差や凍結等により表面のモルタル浮きが発生し易くなる。
防水の調査
(1)アスファルト露出防水の調査
 
○1次診断
・目視で、漏水状況やその痕跡を調べ、入居者への聞き取り調査を行う。
 
○2次診断
・目視観察、指触観察、スケールや打診ハンマーなどを用いて屋上防水全体を調査する。
 
○調査項目
・防水層の破断・ひび割れ、防水層の剥離、立ち上がり隅角部の浮き、表面劣化、防水層のふくれ
 
○3次診断
・防水層やアスファルトなどから試料を採取し、引張り強度、アスファルトに対する針入度・軟化点などを測定する。
 
(2)アスファルト保護防水の調査
 
○1次診断
・目視で、漏水状況やその痕跡を調べ、入居者への聞き取り調査を行う。
 
○2次診断
・目視観察、指触観察、スケールや打診ハンマーなどを用いて屋上防水全体を調査する。
 
○調査項目
・平面部・立ち上がり部の押さえ層のひび割れ・欠損、パラペット(手すり壁)の押し出し、シール切れ・欠損
 
○3次診断
・防水層やアスファルトなどから試料を採取し、引張り強度、アスファルトに対する針入度・軟化点などを測定する。
 
(3)シート防水の調査
 
○1次診断
・目視で、漏水状況やその痕跡を調べ、入居者への聞き取り調査を行う。
 
○2次診断
・目視観察、指触観察、スケールや打診ハンマーなどを用いて屋上防水全体を調査する。
 
○調査項目
・防水層の破断・端末剥離、防水層接合部の剥離、立ち上がり隅角部の浮き、表面劣化、膨れ
 
○3次診断
・試料を採取し、現場試験と実験室試験を行う。
 
(4)塗膜防水の調査
 
○1次診断
・目視で、漏水状況やその痕跡を調べ、入居者への聞き取り調査を行う。
 
○2次診断
・目視観察、指触観察、スケールや打診ハンマーなどを用いて屋上防水全体を調査する。
 
○調査項目
・防水層の破断・端末剥離、防水層接合部の剥離、立ち上がり隅角部の浮き、表面劣化、膨れ
 
○3次診断
・試料を採取し、現場試験と実験室試験を行う。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください