マンション外壁タイル、塗り仕上げによる改修

マンション外壁タイルの塗り仕上げによる改修についてまとめました。
※他の参考記事
マンションの外壁タイルの劣化・調査診断
タイル張り仕上げ改修工事の概要
 
 
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タイルの汚れ、クリーニング
・高圧水と酸性フッ化アンモニウムなどを主成分とする弱酸性系の洗浄剤でタイル表面のクリーニングを行うことが多い。
※最近では、環境に配慮してクエン酸などを主成分とする洗浄剤も使用されるようになっている。
・酸性度の高い洗浄剤ほど見た目の洗浄効果が高いといえるが、薬品によってタイル表面を溶かすことで汚れを除去しているので、一時的にはきれいになってもタイル表面を傷めすぎてかえって汚れの進行を招いてしまうこともあり注意が必要。
→あまり汚れの目立たない色調や質感のタイルが採用されている場合は、薬品クリーニングの程度についても検討しておくことが望ましい。
塗り仕上げによる改修
1)タイル張り外壁と塗装の比較
 
〇タイル外壁が勝る点
・汚れにくい
・耐久性がある。
 
〇タイル外壁が劣る点
・イニシャルコストが高い。
・浮き・剥落に注意が必要
 
2)改修工法
 
・浸透性吸水防止材
・アクリルシリコンクリヤー
・繊維強化弾性クリヤー
・光触媒コーティング材
・ピンネット工法
・石材調シート
浸透性吸水防止材
●浸透性吸水防止剤がない場合
・タイル自体には経年による劣化はほとんどないが、モルタル目地部においては酸性雨や塩害、凍害等の影響により、徐々に劣化が進行する。
・特に目地部への雨水の吸水の影響は大きく、表面だけでなく内部まで水が浸入し、中性化やエフロレッセンス等の劣化現象を引き起こす。
 
●浸透性吸水防止材とは?
・陶磁器タイル面の特にモルタル目地部に浸透して、内部に強固な防水層を形成。
→中性化、凍害等を抑制し建物を保護
・浸透性吸水防止剤の防水層は、水をハジクこと(撥水)により吸水防止性を発揮する。
 
●特長
〇外観維持
・無色透明で外観(意匠性・質感)が変わらない
・経年での変色・汚れが少ない
 
〇吸水防止性
・透水量が少なく、中性化、塩害、凍害、エフロレッセンス、苔・カビ汚れなどを抑制
 
〇耐久性
・防水層の持続により、長期の吸水防止性がある
 
●製品例 『タイルセラクリーン』エスケー化研
 
〇概要
・浸透性に優れた特殊シラン化合物を主成分とした弱溶剤形のセラミック浸透性吸水防止材。
・モルタル目地部の内部に深く浸透し、強固なセラミック吸水防止層を形成。
→長期にわたり雨水の浸入を防ぎ、陶磁器タイル表面、モルタル目地部および躯体の劣化を防止。
 
〇優れた浸透性
・浸透した特殊シラン化合物はモルタル目地内部で3次元的に結合し、強固なセラミック吸水防止層を形成する。
 
〇優れた吸水防止効果
・モルタル目地部に深く浸透してセラミック吸水防止層を形成。
→その浸透性吸水防止層がモルタル目地部への水の浸入を防ぎ、躯体を保護。
 
〇水蒸気透過性
・三次元網目構造を形成し、水蒸気透過性に優れている。
 
〇超耐久性
・特殊シラン化合物が浸透することにより形成されたセラミック吸水防止層は、優れた耐久性を示し、長期にわたり吸水防止効果を発揮。
 
〇超低汚染性
・陶磁器タイル表面に形成された架橋セラミック層が汚れを寄せつけず、優れた低汚染性を発揮。
 
〇エフロレッセンス防止
・セラミック吸水防止層が裏面からの水廻りによる目地部のエフロレッセンスの発生を抑制。
アクリルシリコンクリヤー
●概要
・アクリルシリコンクリヤー塗膜はタイル壁面に強固に接着し、タイル面の艶の回復や、目地の保護・中性化抑制になる塗膜を形成する。
 
●特長
〇強固な密着性
・アクリルシリコン樹脂の持つ化学構造により、タイル面に強固に接着(タイル面表面と化学結合を生じる)。
 
〇目地の劣化防止
・耐水性に優れ長期に亘り目地の中性化防止・塩害防止・酸性雨による劣化を防止。
 
〇高耐久性、低汚染性能
・アクリルシリコン樹脂であり卓越した耐久性を発揮。
・親水性などの低汚染性能を持つものもある。
 
●製品例 『タイルフレッシュ』エスケー化研
 
〇特長
・セラミック成分を複合化することにより、塗膜は高硬度、低帯電性、親水性を示し、汚れを寄せ付けず、付着した汚れも雨などで洗い落とすため、いつまでも美しい表面を維持することができる。
・アクリルシリコン樹脂を採用することで、卓越した耐久性、耐候性を発揮する。
・耐水性、耐酸性、耐アルカリ性に優れているため、長期に亘り目地の中性化防止、塩害防止、酸性雨による劣化を防止し、防水性を向上させる。
・アクリルシリコン樹脂のもつ強靭な化学構造(シロキサン結合)と下地への優れた浸透性により、シーラー不要で直接下地と強固に密着する。
アクリルシリコンクリヤー
●特長
・既存外装タイルの色調保持
・タイル仕上層の剥落に対する将来的な予防効果
・防水性の向上
 
●メカニズム
〇モルタル層から剥落する場合のメカニズム
・建物の挙動や日射による膨張収縮の繰返しによって張り付けモルタルの浮きやひび割れが生じ、モルタル層から剥落する。
 
〇タイル単体の剥落の場合のメカニズム
・タイル裏足の破壊や張付けモルタルの脆弱化によってタイル単体で剥落する。
 
〇繊維強化弾性クリヤーの予防効果
①専用アンカーピン
・モルタル層をアンカーピンが躯体にしっかりと連結することで、モルタル層からの剥落をブロック。
②特殊機能強化アクリル樹脂
・二重三重に塗布された特殊アクリル樹脂がタイル上で一体膜となり、タイルが剥がれるのをブロックする。
 
●施工工程の例
①穿孔
②アンカー打込み
③プライマー塗布
④主材塗布(1層目)
⑤主材塗布(2層目)
⑥主材塗布(3層目)
⑦トップコート塗布(1層目)
⑧トップコート塗布(2層目)
 
●製品例 『クリヤーネットアンカー』ハマキャスト
 
〇概要
・既存のタイル仕上層を撤去せず、上から特殊な透明樹脂と透明ネットで被覆し、アンカーピンで躯体に強固に固定。
・既存のタイル外壁の意匠と色彩を保持したまま、劣化したタイルの脱落を防止。
 
〇特徴
・タイルとネット入りの脂被膜を一体化させて特殊アンカーピンで躯体に固定。
・タイルの剥離剥落防止の改修工法として適応できる工法。
・現状タイルの色彩とイメージの恒久的保持を実現。
・地震時のタイル落下防止工法として、その威力を発揮。
・室内環境保護対策を実現。
・施工時の騒音振動も小さく、産業廃棄物発生も殆んどない環境対応型工法
 
〇構成部材
①透明樹脂皮膜
・防水プライマー(モルタルに対して、含浸性・接着性・防水性のある透明アクリルシリコン塗膜)
・ハマクリヤー樹脂(クリヤーネットを固定し、塗膜を形成する透明耐候性アクリルシリコン樹脂)
・クリヤーネット(耐引張強度に優れ、ハマクリヤーで固定されることで透明になる補強ネット)
・ニューハマトップ(雨だれやほこり汚染を防止する強力な自己洗浄性があり、耐候性・融合性・接着性とともに高レベルのタイル補強膜を形成)
 
②特殊アンカーピン
・低騒音で、引張り強度・せん断強度共に、安全度の高い特殊ピンを使用。
 
〇通常のタイル樹脂コーティング工法の問題点、再乳化現象、室内で結露
・コンクリートやモルタルは、水を通しにくいように見えるが、水分は通す。
→室内の溜まった水蒸気や水分は、コンクリート、モルタルを通し、タイル目地から外部に放出されている。
→タイルと目地が樹脂コーティングされると、水分は外部に放出されず、モルタル部分や目地に水となって溜まってしまう。
→室内側では結露が発生しやくなる。
→造膜・硬化した防水塗膜が、水に接して溶け出し(再乳化現象)、タイル目地やタイル面が白く濁ってくる。
 
〇クリヤーネットアンカーの対策
・WATER VAPOR DRAIN(水蒸気脱気盤)を、現状のタイル面に合わせて設置しコンクリートやモルタル内部の水蒸気を外部へ放出させ、室内結露を防ぐ。
 
〇施工工程
①事前調査
・タイル欠落、浮き部などの調査。
・タイル付着力の測定。
②補修
・タイル欠落部の補修
・浮き部の注入補修など。
③ピン用穴の穿孔
・1㎡あたり4本。縦横共500㎜間隔。
④洗浄
・洗浄にて汚れ除去。
⑤プライマー塗布
・目地部の防水を兼ね、白華を抑える。
⑥ハマクリヤー1回目塗布
・コテまたはローラーで塗布。0.5kg/㎡
⑦ハマクリヤー2回目塗布
・コテまたはローラーで塗布。0.5kg/㎡
⑧クリヤーネット貼付け
・コテでネットを埋め込み。
⑨アンカーピン打込み
・1㎡あたり4本。縦横共500㎜間隔。
⑩アンカーピン頭周辺、ハマクリヤー塗布
・ピン頭周辺にハマクリヤーを確実に塗る。
⑪ハマクリヤー3回目塗布
・コテまたはローラーで塗布。0.5kg/㎡
⑫ハマトップ2回塗り
・ローラーまたはエアーレスで塗布。0.1kg/㎡×2
光触媒コーティング材
●概要
・磁器タイルの改修で防汚効果に優れるコーティング材。
・下塗りに浸透性吸水防止材を組み合わせることで、タイル目地も長期にわたり保護する。
・塗装面への防汚仕上げには使用できない。
 
●特長
①防汚機能(セルフクリーニング機能)
・光触媒機能を持った酸化チタンを配合しており、塗膜表面に付着した有機物の汚れを分解する。
・超親水性の塗膜表面は、雨水により汚れを洗い流し、長期にわたり磁器タイルの美観を守る。
〇メカニズム
光が表面に照射
→活性酸素が光触媒コーティング材表面に発生
→汚れが活性酸素で分解され、付着力が弱くなる
→汚れが親水性の塗膜表面から雨により洗い流される。
 
②防カビ、防藻性
・カビ、藻を分解し、繁殖を抑制。
ピンネット工法
●概要
・ピンで既存仕上げ層を固定し、さらに繊維ネットで補強することにより、既存仕上げ層の剥落を防止する工法。
 
●特徴
①既存仕上げ層を強固に固定し剥落を防止する
・既存仕上げ層をピンと繊維ネットで躯体に固定・補強
②建物の寿命を延ばし蘇らせる
・雨水の浸透や鉄筋腐食による劣化抑制と耐久性の向上
③多彩な仕上材が使用でき意匠性が高まる
・塗り仕上げにより色、模様、光沢など多彩な意匠性
④工事での廃材が少ない
・既存の仕上げ層を除去しないので廃棄物を削減
 
●製品例 『ハマテックス・ネットアンカー』ハマキャスト
 
〇概要
・既存のタイルやモルタル仕上層を撤去せず、上から樹脂モルタルとビニロン3軸ネットで被覆し、アンカーピンで躯体に強固に固定、新たな下地層を形成し、劣化したタイルやモルタル仕上層の脱落を防止する。
 
〇特長
・耐震補強材として威力を発揮。
・既存仕上げ層を撤去せずに工事できる。
・軽量で補強効果が良好な新規下地層を構築できる。
・温冷繰返し試験もひび割れは皆無。
・作業中の騒音や振動が小さい。
・廃材が非常に少なく環境にやさしい。
 
〇構成部材
①ハマテックス
・カチオン系ポリマーセメントモルタル
・微弾性があり、ガラスから金属までの幅広い素材に対応し、接着強度が高い下地調整剤。
②ビニロン3軸ネット
・繊維の中でも耐アルカリ性(耐セメント性)が良好で、抗張力は縦・横だけでなく、斜め方向にも強いのが特長。
③アンカーピン
・無垢のSUS410のステンレス製。
・強度があり耐腐食に優れ、打込むことで確実に固定できる。
 
〇施工工程
①タイル浮き部打診調査
②タイルはつり工事
③高圧水洗浄
④打継部・誘発目地、捨てシール打ち
⑤ネット貼付け、モルタル下塗り
⑥アンカーピン用穴穿孔
⑦アンカーピン打込み
⑧モルタル仕上げ塗り
⑨目地棒貼付け
⑩ハマキャスト外装仕上げ(下吹き、本吹き)
⑪表面サンダーカット
⑫トップコート2回塗り
石材調シート
●特長
①建物の安全性確保
・材料の軽量化で、建物にかかる負担を軽減
・シートの一体化で、剥落防止力を付与
②長寿命化
・保護防水性を付与し、外壁の劣化要因をシャットアウト
③デザイン性
・外観イメージの差別化、優れた意匠性
④環境性
・騒音、塗装飛散、異臭がなく、省廃棄物
 
●施工、改修
〇質感・テクスチャーを活かす
・専用のローラー、コテなどで模様付け
 
〇特殊意匠性仕上げ塗材の改修における注意点
①シーラー+フラット仕上げ
・艶が上がり、土壁調の質感を失ってしまう
②サーフェーサー+フラット仕上げ
・既存パターンが潰れてしまい、質感が低下する
※サーフェーサー
・塗膜の平滑性を向上させるために塗布されるもので、一般に下塗りと上塗りの中間に使用することが多く、中塗り塗料を指す場合が多い。
 
〇特殊意匠性仕上げ塗材専用の改修塗材の特長
①意匠性
・質感維持
・テクスチャーを活かした仕上り
②ひび割れ追従性
③透湿性
・ふくれの抑制
 
●製品例 『モダンアートストーン』菊水化学
 
〇概要
・外壁のはく落を防止するとともに建物の長寿命化を実現した外壁改修材料・工法。
・はく落防止・タイル改修リフォーム材、シート状装飾材
 
〇特長
①高い安全性、長寿命化
・鎧張り工法で、はく落・劣化に強い。
・一枚壁なのではく落に強い
・劣化要因をブロックし、長寿命化に貢献
・重ね張りにより壁面の防水性アップ
・材料を軽量化し、建物への負荷を軽減
 
※鎧張り工法
・耐久性の高い専用ボンドで一枚ずつ圧着して張り合わせ、一体化接合を行う。
・目地を重ね合わせて張ることで、仕上げ層は連続した一枚壁となり、より丈夫な外壁を形成することができる。
・磁器タイルの上に施工できるので、改修時の建設廃材を削減したい場合に最適。
 
②環境にやさしい安心施工
・塗料の飛散・騒音・悪臭の心配がない。
・様々な仕上材・建材に施工可能
・現場加工が簡単なので手軽に施工できる
・タイルを残した改修で、廃棄物を削減。
 
③上質かつ自由なデザイン
・美しい石材調で意匠をグレードアップ。
・下地を選ばず自由なデザインが可能。
・密着張りで厚みを抑えて、すっきり仕上げ
 
〇施工工程
①水洗
②カチオン系ポリマーセメント系下地調整塗材
③MAボンドS
④モダンアートストーン
 
※磁器タイル改修工法(MA-α工法)
・鎧張り工法の工程に、専用のアンカーピンを追加して仕上げる一貫工法。

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