事故対応後の復旧工事、過剰見積に注意

漏水や設備故障などが発生した場合、復旧優先で管理会社から言われるがままの見積内容で復旧工事を実施してしまいがちです。
 
計画的な修繕工事のときのように相見積をしてじっくり検討することはもちろんできませんが、見積書の詳細内訳をじっくり見て、修繕の内容を理解することが重要です。
 
詳細内訳の内容が理解できると、不要不急の項目が含まれていたり、修繕範囲が過剰となっていることに気づくことができる場合もあります。
 
以下、事故対応後の復旧工事の見積において、過剰と思われる項目が含まれていた事例を紹介します。
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
自動ドアの一つの部品(コントローラー)の故障なのに一式交換の見積
1)自動ドアの故障の状況
 
●自動ドアの故障の内容
・自動ドアの一つ部品(コントローラー)の不良で、数回に1回、自動ドアが開放されたままの状態になってしまう。
 
●故障対応報告書の記載
・コントローラの不良。
・ドアエンジンとコントローラーの更新を推奨する。
・自動ドアの設置年数:7年、交換推奨年数:7年
・自動ドアの開閉回数の測定値:約30万回
 
●見積書の内容
・コントローラを含む9種類の部品の一式交換:約50万円
 
●保守部品の推奨交換基準の資料
・ドアエンジン:使用年数7年、作動回数300万回
・コントローラー:使用年数7年
・その他の駆動部品(プーリー、ベルト等):使用年数7年、作動回数200~500万回
 
2)管理会社、メーカーへの質問と回答
 
①不具合のあったコントローラのみの交換は可能か?
→ドアエンジンは、ドアコントローラーと互換性を維持することが望ましいので、ドアエンジンとセットで交換することが推奨。
 
②使用年数は7年経過しているが、使用回数は30万回で交換基準の200万回~500万回より大幅に少ないので、部品一式交換による予防保全ではなく、故障部品のみの交換で良いのではないか?
→メーカーとしては、使用年数と作動回数のどちらかが基準に達したら交換を推奨している。
 
3)理事会の判断
 
小規模のワンルームマンションなので、一般的な規模のファミリーマンションと比べて自動ドアの作動回数が大幅に少なくなっていると思われます。
 
風雨の影響などがある環境では使用年数の経過に応じて劣化する要素もあるかと思いますが、そのような環境にはなかったので、自動ドアの開閉回数を根拠にドアコントローラーとドアエンジンのみの交換(約30万円)としました。
 
 
今回の故障対応をした保守業者は、保守部品の交換基準の資料も提供してくれて、良心的でした。ただ、保守業者も世間一般のファミリーマンションの事例を基にしたり、社内の原則的な基準に基づいて機械的に見積書を作成する場合も多いようです。
壁面換気口からの雨漏り被害なのに部屋の全壁面のクロス貼替?
1)雨漏り被害の状況
 
●室内の雨漏り被害の状況
・大雨の際にバルコニー側の壁面にある換気口から漏水発生。
 
●雨漏り被害復旧の見積書の内容
・漏水調査:約1.5万
・ボード一部補修:約3万
・壁クロス張替(約30m2):約4万
・ハウスクリーニング:約2.5万
・その他:約7万
・合計:約18万
 
2)管理会社への質問と回答
 
最初に見積書の合計金額18万円を見た瞬間、”なんでこんなに高いの?”と驚きました。ワンルームの賃貸後のリフォーム費用で、設備交換や床の張替えがない場合に10万円を超えることはほとんどなかったためです。
 
見積書の内訳を見ると、壁クロス張替の約”30m2″や、ハウスクリーニングの2.5万の費用が含まれていて、部屋全面のクロス張替やクリーニング費用が含まれているように思えました。
 
〇管理会社からの回答
漏水の被害範囲は、一部のクロス、ボード、巾木が対象だが、それぞれ一部のみ補修すると補修部分と補修しない部分で色の違いやデザインの違いが生じる為、部屋内の一式交換が必要。
 
〇理事会からの反論
国土交通省の原状回復のガイドラインの記載では、以下のように記載されている。
 
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)(PDF) p14~15
 
“壁等のクロスの場合、毀損箇所が一部であっても他の面との色や模様あわせを実施しないと商品価値を維持できない場合があることから、毀損部分だけでなく部屋全体の張替えを行うことが多い。
  :
当該部屋全体のクロスの色や模様が一致していないからといって、賃貸借の目的物となりえないというものではなく、当該部屋全体のクロスの色・模様を一致させるのは、賃貸物件としての商品価値の維持・増大という側面が大きいというべきで、その意味ではいわゆるグレードアップに相当する部分が含まれると考えられる。したがって、当該部屋全体のクロスの張替えを賃借人の義務とすると、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではない。
  :
したがって、クロス張替えの場合、毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた賃借人の負担とすることが妥当と考えられる。”
 
 
上記反論をしたところ、被害箇所の壁面のみのクロス貼替に変更してもらい、見積総額は約10万円となりました。

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