債権の概要、債務不履行

〇民法:399~422条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問2,9、H14問4、H15問9、H16問5,11、H18問6、H19問10、H21問6、H22問11、H24問11、H26問10、H28問11
・マンション管理士 H15問16、H16問15、H17問16、H18問14、H20問12,17、H21問12,17、H22問13,15、H24問13、H27問10,12、H28問16、H29問14
 
 
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債権の概要
1)債権とは
 
・財産に関して、ある人が他のある人に対してある行為を請求しうる権利。
・物権とともに財産権の2大体系。
・債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。(399条)
 
●物権との相違
 
〇物権
・物権は物に対する直接の支配権として排他性をもつ。
・物権法定主義により、民法その他の法律で定められたもの以外には、当事者で自由に創設することはできない。(民法上は10個)
 
〇債権
・債権は人に対する請求権として排他性をもたない。
・契約自由の原則により、当事者間で自由にその内容を定めることができる。
 
●債権発生の原因
・”契約”が基本。
・契約以外に、不法行為,事務管理、不当利得の3つが民法で定められている。
・債務者が債務を履行しないときは(債務不履行)、債権者はその強制履行を求め、また損害賠償を請求することができる。
 
2)債権の種類
 
●特定物債権
 
〇特定物債権とは?
・特定物の引渡しを目的とする債権。
・例えば、特定の馬や特定の絵画などを対象として売買契約が成立した場合、買主の債権は特定物債権となる。
 
〇特定物の引渡しの場合の注意義務(400条)
・債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
 
●種類債権(不特定債権)
・その目的物が種類のみによって指定された債権のことをいい、一定の種類と分量だけを定め、その引き渡しを目的とする債権。
・例えば、売主が、買主に馬1頭を売るとの売買契約を締結した場合、買主は売主に対し馬1頭の引渡しを求める債権を有するが、この債権は、種類債権。
 
●金銭債権
・金銭の引渡しを目的とする債権。
・金銭債権は典型的な種類債権であり,履行不能はありえない。
・売買,賃貸借,金銭消費貸借などの契約により生じる代金,賃料,貸金債権や,不法行為による損害賠償債権などはいずれも原則として金銭債権。
債務不履行の概要
1)債務不履行の種類
 
〇履行遅滞
・債務者が、履行期に、債務の履行をしないこと。 ・履行が可能だが、履行が遅れている。
 
〇履行不能
・債務の履行が不可能であること
 
○不完全履行
・履行はされたものの、本旨に従った完全な履行ではない。
・不完全履行は、最終的には履行遅滞か履行不能に還元される。
 
●履行期と履行遅滞(412条)
 
①確定期限(第1項)
・期限が到来した時が、履行遅滞になる時期
②不確定期限(第2項)
・期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時が、履行遅滞になる時期
例)”私の父が死亡すれば、この家を引き渡す”等のような場合。
→父が死亡したということを、債務者が知ったとき。
③期限の定めのない債務(第3項)
・期限の定めがない場合、債権者は、”いつでも請求”できる。
→”債権者の請求があった時”から履行遅滞になる。
※不法行為による損害賠償債務は、期限の定めのない債務とされるが、この場合は例外で、債権者が請求しなくても、”損害発生の時から直ちに遅滞に陥る”としている。
 
※同時履行の抗弁権を主張して履行を拒絶する場合は、履行遅滞とはならない。
 
●原始的不能(412条の2)
〇原始的不能とは
・契約に基づく債務の履行が、その契約成立の時に、すでに不能な場合。
例)建物の売買契約を締結したが、契約直前に滅失していた。
〇債権者の対応
・債権者は、その債務の履行を請求することができない。
・履行の不能によって生じた損害の賠償は請求できる。
 
2)債務不履行時の債権者の対応
 
①履行の請求
〇履行の強制(414条)
・債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。
・この強制履行をするには、債務者の責めに帰すべき事由は不要とされている。
 
②損害賠償請求
 
③契約の解除
債務不履行と損害賠償
1)債務不履行による損害賠償(415条)
 
〇対象の行為
・債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき
・債務の履行が不能のとき
 
〇債務者の帰責事由(債務者の故意・過失)
・契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償請求ができない。
 
〇請求、賠償の方法
・催告は不要。催告が必要なのは解除をする場合。
・損害を賠償する方法は、原則として、金銭賠償。
 
〇契約成立前の損害賠償
・契約準備段階であっても、打ち切りに至る過程に信義則上の注意義務違反があれば、損害賠償責任は生じ得る。
 
〇損害賠償請求権の消滅時効
・本来の債務の履行を請求できる時から進行する。
 
2)損害賠償の範囲(416条)
 
・通常生ずべき損害の賠償になるが、特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
 
〇通常損害(第1項)
・”通常生ずべき損害”というのは、通常人ならば誰でも予見できるようなもの。
・当事者の予見は不問。
例)建物を引き渡す債務が履行それない場合のホテル代、賃借アポートの賃料相当額など。  
〇特別損害(第2項)
・”特別の事情によって生じた損害”というのは、契約の内容や契約締結の事情、当事者の職業といった事実からだけでは一般的に予見できないような損害をいう。
→債権者から知らされなければ分からないような事情。
・当事者がその事情を”予見すべきであった”ときだけ、債権者は、その賠償を請求することができる。
例)転売目的の不動産の売買において、売主の履行遅滞により転売価格が下落した場合の下落分など。
 
●過失相殺(418条)
・債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
・裁判において、債務者の主張は不要だが、過失となる事実については、債務者が立証しなければならない。
 
3)金銭債務の特則(419条)
 
〇債務者の帰責事由
・金銭債務については債務者の帰責事由は不要。
・金銭の給付を目的とする債務の不履行については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
 
〇履行不能がない
・金銭債務の場合は、債務不能が起こりえない。常に履行遅滞となる。
 
〇立証責任の軽減
・損害の発生、損害額の証明は不要。履行遅滞の事実だけ証明すればよい。
 
〇賠償額
・法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率
※法定利率:当初は年3%。3年を1期とし、1期ごとに見直される。
 
4)賠償額の予定(420条)
 
・当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
→債権者は、債務不履行の事実だけを証明すればよく、損害の発生・損害額の証明が不要になる。
・違約金は、損害賠償の予定と推定される。
・損害が発生する前であれば、契約成立後でも可能であり、金銭以外のものでもすることができる。
 
〇注意点
・債権者に過失がある場合は、過失相殺の規定が適用される。
・予定した額が暴利行為など公序良俗違反となるような場合には、債務者は減額の請求ができる。

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