制限行為能力者

〇民法:3~21条、838~881条
〇過去問
・管理業務主任者 H17年問1、H23年問5、H28年問1
・マンション管理士 H20問7,13、H26問13
 
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権利能力(3条)
・権利能力とは、権利を得たり、義務を負えたりする主体となりうる能力(資格)のことをいう。
・自然人(生身の人間)と法人には権利能力があり、法的な権利・義務が帰属する。
 
〇胎児の権利能力
・本来権利能力がないが、次の3つの場合に限り胎児に権利能力を認めている。
イ)不法行為に基づく損害賠償請求
ロ)相続
ハ)遺贈
 
〇法人の権利能力
・法人には、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利能力が認められる。
 
〇管理組合との関連
・法人になっていない管理組合のうち、理事長などの代表者がいて、管理規約など団体運営上のルールが定められているときは、”権利能力なき社団”に該当する。
意思能力
・意思能力とは、自分の行為の結果を認識し判断できる能力のこと。
・契約等を行うにあたっては、意思能力というものが必要だとされる。
→法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力がなかった場合は、その法律行為は無効となる。
・意思能力が欠ける者の例:乳幼児、高度の精神病、極度の泥酔者、極度に脅迫されている者など。
制限行為能力者
〇行為能力
・単独で契約することができる能力。
・単独で財産を管理し、取引を有効に行うことができる能力・資格
 
〇制限行為能力者
・未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人。
・意思能力の有無に関係なく、本人または保護者が一定の行為を取り消せるようにしたものが制限行為能力者制度。
・制限行為能力者が単独で契約等を行った場合には、これを取り消すことができる。
 
〇制限行為能力者であるかどうかの判断
・本人や親族等が家庭裁判所に審判というのを申し立てて判定。
・家裁の審判があったかで形式的に判断される。
・精神上の障害があるとしても家庭裁判所の審判を受けていなければ、制限行為能力者とはならない。
 
〇支援の必要度:補助<保佐<後見
 
①自分の行為の結果を理解できる能力
後見:常に理解できない状態
保佐:著しく不十分
補助:不十分
 
②自己の財産を管理・処分する行為
後見:自分ではできない
保佐:常に援助が必要
補助:援助が必要な場合がある
 
③重要な財産行為
後見:自分ではできない
保佐:日常的な買い物はできるが、不動産の売買など重要な契約はできない
補助:できるかもしれないが、不安がある
制限行為能力者の保護
 
1)制限行為能力者の保護
 
・あらかじめ保護者を付けて、保護者に代理権(後見人)・同意権(保佐人、補助人)を与える。(同意権は審判により代理できることもある)
・制限行為能力者が単独で行った契約行為は一応有効だが、事後的方法として、本人と保護者には取消権を、保護者には追認権を与える。
 
●居住用不動産の処分についての裁判所の許可(859条の3、876条の5、876条の10)
・保護者が、制限行為能力者の居住用建物またはその敷地の売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定などをするには、家庭裁判所の許可が必要。
・許可なく行われた契約は無効。
 
2)制限行為能力者の相手方の保護
 
●制限行為能力者の相手方の催告権(20条)
 
・その制限行為能力者や保護者に対して、1月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
〇催告先
・保護者
・行為能力回復後の本人
・被保佐人、被補助人(この場合は、”保佐人・補助人の追認を受けるように”と催告する)
 
〇期間内に確答がない場合の効果
・催告先が、”単独で追認できる場合”(行為能力回復後の本人、保護者)
→”追認”とみなされる
・催告先が、”単独で追認できない場合”(被保佐人、被補助人)
→”取消”とみなされる。
 
●制限行為能力者の詐術(21条)
・制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
 
3)第三者との関係
 
・取消した場合、その効果を第三者にも対抗できる。
・第三者はたとえ善意であり、登記を備えていても、保護されない。
 
例)不動産がA→B→Cと譲渡された場合
その後、Aが成年被後見人であることを理由に取消。
→CがたとえAが成年被後見人であるということを知らなかったとしても(善意)、Aは契約を取り消して不動産を取り戻すことができる。
登記には公信力がないので、登記を信じたとしてもCが所有権を取得することはできない。
未成年者
●未成年者の法律行為(5条)
・未成年者が法律行為をするには、その法定代理人(親権者または未成年後見人)の同意を得なければいけない。
・同意なく行われた行為は、本人または法定代理人が取り消すことができる。
※)未成年者の法定代理人は同意権を有しているので、未成年者が法定代理人の同意を得て行った賃貸借契約は取り消すことができない。
 
〇同意不要の例外
①単に権利を得、または義務を免れる法律行為
例)単純贈与(負担のない贈与)を受けること
②法定代理人が処分を許した財産の処分行為
例)保護者からもらった小遣いをつかうこと。
③法定代理人から営業を許可された場合の、その営業上の行為
例)宅建業を許可された場合の”業者”として行う行為
 
●婚姻による成年擬制(753条)
・未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
→20歳未満の者でも、婚姻すれば一人で契約できる
成年被後見人
●後見開始の審判(7条)
・請求をすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求。
※管理組合はこのいずれにも該当しない。
 
●成年被後見人の法律行為(9条)
・成年被後見人が単独で法律行為を行うと、その行為は取り消すことができる。
※成年被後見人の法律行為は取り消すことができるが、後見開始の審判以前の行為まで取り消せるわけではない。
 
〇成年後見人の同意権
・成年被後見人は一人では基本的に何もできないので、成年後見人には同意権はない。
・成年被後見人が、成年後見人の同意を得て行ったとしても、その行為を、取り消すことができる。
※”日用品の購入その他日常生活に関する行為”は、単独で行った場合でも取消しはできない。
被保佐人
・”一定の重要な行為”は一人で行うことはできないが、通常の契約ならば一人で行うことができる。
→未成年者や成年被後見人と異なり、被保佐人や被補助人が一人で契約等をした場合は、原則として有効だが、例外的に一定の場合には取り消すことができる。
 
●保佐開始の審判(11条)
・家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。
 
●保佐人の同意を要する行為等(13条)
①不動産その他重要な”財産に関する権利”の得喪を目的とする行為
②長期の賃貸借(建物の場合は3年)
③新築、改築、増築又は大修繕をすること。
 
・保佐人の同意を得なければならない行為(不動産の売買等)について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
 
〇代理権付与の審判
・保佐人には、法律上当然には代理権は与えられていない。
・家庭裁判所の審判で、特定の行為(不動産の売買等)について、保佐人に代理権が与えられることがある。
被補助人
●補助開始の審判(15条)
・家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。
・本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
 
●補助人の同意を要する旨の審判等(17条)
・被補助人の能力は、被保佐人よりも高いので、法律行為を行うにあたって、原則として補助人の同委は不要。
・”一定の重要な行為”(家庭裁判所から同意を要する旨の審判を受けた特定の行為)については、補助人の同意が必要。
※補助人が同意しない場合に、補助人の同意に代わるの家庭裁判所の許可の制度がある。
 
〇代理権付与の審判
・同意権付与の審判の代わりに、または併せて、家庭裁判所の審判で、特定の行為について、補助人に代理権が与えられることがある。

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