区分建物の登記

〇不動産登記法:44~48,55,58,73,74条
〇過去問
・管理業務主任者 H21問43、H25問43、H28問43
・マンション管理士 H14問18、H17問19、H18問18、H19問18、H20問18、H21問18、H22問18、H24問18、H25問18、H27問18、H28問18、H29問18
 
 
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区分建物の建物の表題登記の申請
●建物の表題申請義務(47条、48条)
 
・”新築した建物の所有権を取得した者(多くの場合分譲マンションの分譲業者)”は、所有権取得の日から1ヶ月以内に、建物全体の表題部と各専有部分の表題部すべてについて、一括して表題登記の申請をしなければならない。転得者には申請義務はない。
 
〇申請者
・新築した建物の所有権を取得した者(多くの場合分譲マンションの分譲業者)
・区分建物の原始取得者が死亡(法人では合併)等の時には、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする表題登記ができる。
規約共用部分の登記
1)共用部分である旨の登記(58条)
 
・規約共用部分の登記の申請は、該当の建物の共用部分の表題部の所有者又は所有権の登記名義人(多くの場合はマンションの分譲会社)が、”共用部分である旨を定めた規約を設定したことを証する情報”や”団地共用部分である旨を定めた規約を設定したことを証する情報”を添付して行う。”公正証書による規約の設定”に該当。
 
〇共用部分である旨が記載される箇所
・区分建物の表題部→専有部分の建物の表示欄→原因及びその日付欄
 
〇申請者
・共用部分である旨の登記の申請ができるのは以下。
①建物の表題部所有者
・一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録において、まだ所有権の保存の登記がされていない時点で、表題部に所有者として表示されている者が表題部所有者。
・多くの場合、建築主が該当。
・表題部は物理的な現況を示しているだけで、権利関係を記録しないので、所有者といってもこのままでは、原則、第三者に対抗はできない。
②所有権の登記名義人
・一筆の土地または一個の建物に関する登記記録において、不動産に関して”所有権を有する者”として記載されている者が所有権の登記名義人。
・所有権は登記簿の”権利部”の甲区に記録される。
・登記義務はなく、任意なので、表題部所有者の名義とは異なることがある。
 
〇他の権利者の同意
・共用部分である旨の登記は、当該共用部分に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人の承諾があるときでなければ、申請することができない。

〇表題部所有者の登記又は権利に関する登記の抹消
・登記官は、共用部分である旨の登記をするときは、”職権”で、当該建物について表題部所有者の登記(所有権の登記がない建物の場合)又は権利に関する登記(所有権の登記がある建物の場合)を抹消しなければならない。
→今後共用部分は単独で権利の移動はできなくなる。
 
2)規約共用部分を廃止した場合
 
・共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から1月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。
敷地権である旨の登記
1)敷地権とは
 
〇敷地利用権(区分所有法2条)
・専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利。
 
〇敷地権(44条)
・区分建物について、敷地利用権(”登記されたものに限る”)であって、区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないものをいう。
→分離処分が禁止されている敷地利用権が登記された時、不動産登記法上、それを”敷地権”という。
・敷地権の種類は、土地所有権又は登記された地上権に限られず、賃借権でもよい。
 
〇専有部分の床面積の割合と異なる割合の敷地利用権
・マンション分譲業者が、専有部分の床面積の割合と異なる割合の敷地利用権を規約で定めた場合、敷地権の種類及び”割合”を申請情報として提供し、登記することができる。
 
2)敷地権があるときの登記事項
 
〇建物
①一棟の建物の表題部の敷地権の目的たる土地の表示
・敷地の所在及び地番、地目、地積、登記の日付等。
②区分建物の表題部の敷地権の表示
・敷地権の種類、敷地権の割合、原因及びその日付、登記の日付
 
〇土地
・”一棟の建物の表題部”に敷地権の対象となる土地が表示される。
・敷地権も登記事項であるため、登記官が敷地権の割合を調査するための一棟の建物に属する全区分建物の床面積が分かる。(46条)。
 
3)敷地権である旨の登記(46条)
 
・”区分建物の登記記録の表題部”に”敷地権”と登記をするときは、当該敷地権の目的である”土地”の登記記録の方にも、登記官が職権で、”敷地権たる旨の登記”を土地の登記記録の相当区事項欄に記載する。
 この相当区事項欄とは、敷地利用権が所有権のときは甲区、地上権や賃借権の場合は乙区。
→これにより、建物の専有部分と土地の利用権は分離して処分できなくなる。
・土地にも敷地権の表記があると、権利変動は建物の登記記録によってのみ公示されることになる。
・建物の登記記録を調べた人は、”敷地権の表示の登記”があるので、土地の登記記録に、専有部分の所有者のことが記載されていなくても、この所有者が土地にも権利を持っていることが分かる。
・実務上は、該当の土地の登記記録は、閉鎖されたのと同じになる。
区分建物の所有権保存登記
●所有権保存の登記(74条)
 
・所有権保存登記は、表題部にしか登記がない不動産につき、初めてする所有権の登記
 
〇申請できる人
・表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
・表題部所有者から所有権を取得した者
・敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
※原則は、”表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人”だが、区分建物では、表題部所有者は多くの場合、分譲業者なので、表題部所有者から所有権を売買により取得した者であっても、当該敷地権の登記名義人の承諾があれば、所有権の保存の登記ができるようになっている。
 この場合の所有権保存登記では、売買で所有権を取得した者は、自己の名義で所有権保存登記を申請する。
 
〇申請手続き
・区分建物の表題部所有者(原始取得者)である分譲会社から購入した場合の所有権保存登記申請は、分譲会社から購入した者が、申請人となり添付書類として、
①登記原因証明情報(売買契約書)
②住所証明書(住民票)
③承諾書(分譲会社からの 不動産登記法第74条2項の規定による承諾書)
を提出(司法書士を使うなら、④代理権限証書(委任状)も追加する)して行う。
敷地権付き区分建物に関する権利の登記等(73条)
1)一体的登記の効力
 
・”敷地権”の登記がされると、区分建物に対して行われる所有権や担保権(一般の先取特権、質権、抵当権)に関する登記は、原則として、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についても登記されたのと同じ効力を持つ。
→敷地権となった土地は、今後、所有権移転の登記や担保権などの設定ができなくなる。
 
2)登記の制限
 
●敷地権である旨の登記をした土地(73条2項)
・敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記、または、敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることはできない。
 
〇例外
①その土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの
②敷地権についての仮登記・質権・抵当権に係る権利に関する登記で、その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じたもの。
※敷地権の本登記、一般の先取特権は対象外
 
〇①の例:規約敷地を後から追加した場合(73条2項)
・”規約敷地を新たに追加”した場合は、”当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの”に該当し、また分離処分禁止の場合に該当しないので、既に区分建物に登記されている抵当権と同一の債権を担保する敷地権のみを目的とする抵当権設定の登記をすることができる。
 
●敷地権付き区分建物(73条3項)
・敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転の登記、または、当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることはできない。
 
〇例外
①その建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの
②その建物のみの所有権についての仮登記、その建物のみを目的とする質権・抵当権に係る権利に関する登記で、その建物の敷地権が生じる前に登記原因が生じたもの。
※所有権の本登記、一般の先取特権は対象外
 
※担保権に係る権利の登記
①”質権又は抵当権”
・敷地権付き区分建物についての”質権又は抵当権”が、区分建物に関する敷地権の登記をする前に登記されていると、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権については効力がない。
・敷地権付き区分建物については、当該建物のみを目的とする抵当権の設定の登記をすることはできないが、その抵当権の設定登記の登記原因が当該建物の敷地権が生ずる前に生じたものであるときは、当該建物のみを目的とする抵当権の設定の登記をすることができる。
②一般の先取特権
・上記のような規定はない。
※債務者の一般財産である土地と建物の上に成立しているため、分離した効力は認められない。

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