区分所有法 建替え

〇建物の区分所有等に関する法律:62~64条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問34、H15問38、H19問37、H24問37、H26問31
・マンション管理士 H13問11、H14問9、H16問11、H18問6、H20問10、H22問9、H23問9、H27問7
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
建替え決議(62条)
(1)建替えの要件
 
〇建替えを行う土地の要件
・当該建物の敷地orその一部の土地or当該建物の敷地の全部or一部を含む土地。
→旧建物の土地と再建建物の敷地が一部でも重なりあえばよい
 
〇建替え後の建物
・使用目的の同一性は不要。住居専用のマンションを商業用の建物にすることも可能。
・マンションの棟数の制限はない。
 
●建替え決議の要件
 
・区分所有者および議決権の各4/5の多数による集会の決議が必要。
 
(2)建替え決議の流れ
 
1)集会の会日の2ヶ月前(集会の招集通知の発送期限)
 
○召集通知
・規約で2ヶ月前の期間を伸長することはできる。短縮は不可。
 
○通知事項
・会議の目的である事項(議題)、議案の要領のほか以下の事項を通知しなければならない。
①建替えを必要とする事由。
②建替えをしない場合の効用の維持または回復を要する費用の額、その内訳。
③修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容。
④修繕積立金の積み立て額
 
2)説明会の1週間前(説明会の開催通知の発送期限)
 
・説明会を開催する旨の通知。
・この期間は規約で伸長は可能、短縮は不可。
 
3)集会の会日の1ヶ月前(説明会の開催期限)
 
・説明会を開催。
・集会の召集の際に通知された事項について説明が行われる。
 
4)集会の会日
 
〇議事録の記載
・決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、または記録しなければならない。
※決議反対者に対し、売渡請求権を行使することがあるため、賛否を明らかにしておく。
→議事録に賛否の記載がないときには、議事録を更生したうえで賛成しなかった者に催告をしなければ、売渡請求権発生のための期間は進行せず、売渡請求権も発生しないことになる。
 
○決議すべき事項  
①新たに建築する建物の設計の概要。
②建物の取り壊しおよび再建建物の建築に要する費用の概算額
③②に規定する費用の分担に関する事項
④再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
※③及び④は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない)
※”敷地利用権”の帰属に関する事項は決議の要件とはされていない。
 
○注意
 
・敷地の変更を伴う建替えを実施する場合は、”再建建物の設計の概要”に含まれ、変更された敷地を前提に再建建物の設計の概要を定め、建替え決議を行うことになる。
・建替えは、あくまでも建物を取り壊し、かつ、新たに建物を建築することなので、建物が全部消失したときは、建物の”取り壊し”が起こりえないので、区分所有法による建替え決議をすることができない。
→民法の共有の規定によることになり、全員の同意がなければ、建物の再建築や敷地の処分はできない。
・建物が政令で指定された災害により全部滅失したときには、被災区分所有法の適用を受ける。
売渡し請求(63条)
1)売渡し請求等手続き
 
●催告
 
・集会を召集した者(管理者または理事)は、非賛成者に対して、建替えに参加するかどうかを回答するよう、書面又は電磁的方法で催告しなければならない。
 
○催告を受けた区分所有者
・催告を受けた日から2ヶ月以内に回答しなければならない。
①”参加”と回答:賛成者、買受指定者とともに再建の合意者とみなされる。
②”不参加”と回答:建替え不参加が確定。
③無回答:建替えに参加しない旨の回答をしたものとみなされる。
 
●買い受けることができる者の指定
 
・建替え決議の賛成者、上記催告に対して参加する旨を回答した区分所有者の”全員”の合意により、区分所有権および敷地利用権を買い受けることができる者(買受指定者)を指定することができる。
 
●区分所有権等の売渡し請求
 
・賛成者、催告による参加者、買受指定者は、催告期間が満了した日から2ヶ月以内に、不参加区分所有者に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
 
〇建替組合から請求
・区分所有法に基づいて行うほか、建替円滑化法に基づいて建替組合から請求することもできる。
・円滑化法では建替組合の設立認可公告後に、建替え不参加者に対する売渡し請求の手続きを定めている(円法15条)。
 
2)売渡し請求の効果
 
●売渡し請求の効果
 
○形成権
・一方的な意思表示が相手方に到達することにより効果が発生する権利。
 
○売渡し請求の効果
・建替え参加者が不参加者に対して、売渡し請求権を行使することにより、参加者と不参加者との間で、売買契約がされたのと同様の効果が生じることになる。
・売渡し請求をした者は、買主として代金支払い義務を負い、売渡し請求を受けた者は、売主として専有部分の引渡しおよび区分所有権等の移転登記手続をする義務を負う。これらの義務は、同時履行の関係に立つことが原則。
 
●明渡し期限の許与
 
・その生活上著しい困難を生ずる恐れがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるとき、その者の請求により、代金の支払または提供の日から1年を超えない範囲内で裁判所は建物の明渡し猶予期間を許与することができる。
 
●再売渡し請求
 
〇請求者
・区分所有権および敷地利用権を売渡した者。
 
〇請求内容
・買主が支払った代金に相当する金銭をその区分所有権または敷地利用権を有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。
 
〇請求が可能な時期
・建替え決議の日から2年以内に建物の取壊しの工事に着工しない場合で、この期間の満了の日から6ヶ月以内に請求することができる。
・建物の取り壊しの工事に着手しなかったことにつき正当な事由が有り、取壊しの工事に着手しなかった場合において、取壊し工事の着手を妨げる理由がなくなった日から6ヶ月以内にその工事に着手しない場合は、その理由がなくなったことを知った日から6ヶ月以内またはその理由がなくなった日から2年以内のいずれか早い時期までに請求することができる。
建替えに関する合意(64条)
以下のもの(その承継人を含む)は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす
・建替え決議に賛成した各区分所有者
・建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者
・区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者
 
〇管理組合→”建替え集団”への移行
①管理組合:共用部分等の管理のための団体
②建替え決議
・賛成した区分所有者は、建替えに合意したとみなし、”建替え集団”入りが確定。
・その後に不参加の意思表示をすることは不可。
③売渡し請求権を行使:建替えに不参加の区分所有者を排除
④管理組合は事実上消滅
・マンションの建替えは、旧建物を解体して、新建物を建築することであり、旧建物の管理組合は消滅することになるので、新しいマンションの建設につき建設業者と請負契約を締結することはできない。
⑤建替え団体が事実上成立。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください